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第百三十九話 他山の石
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ソラと別れてから数日が過ぎた。うちの雛鳥たちが全員そろい、ソラと別れた経緯を話した。ルリとテレサからどういう言葉が返ってくるか不安だったが杞憂に終わる。俺たちの話を聞いた二人は、涙を見せながら「ソラが幸せで何よりだね」そう言って笑った。
「実は悪い話しばかりじゃないんだ……」
俺は勿体ぶりながら話し出した。
「おっちゃん、悪い顔になっている」
ルリが嫌悪感を露わにする。
ニヤリと笑いながら、懐に隠し持っていた龍石をテーブルにゆっくりと置いた。
「うわっ! 眩しい……何ですかこれは?」
テレサは龍石を見て目を見張る。
「竜王からお礼に貰った宝石だ! 龍石という名前を聞いたことはないか?」
「龍石って国が一つ買えるという、その龍石の事なのか!?」
テレサはテーブルの宝石を手に取り、眩しさに目を細めてマジマジと眺める。
「ヌフフフ、そう、あの龍石だ。小指大の龍石が戦争を引き起こしたという、ローランツ王国の秘宝と同じ石だな」
「凄い……」
ルリも石を撫で回しながら感心する。
「はい! 今日から我々は、勝ち組です。一介のしがない冒険者から、超セレブへと生まれ変わるのです!!」
「流石、おっちゃん!!」
ルリがパチパチと手を叩いた。
「で、今日からこの石を守るためテレサを、『龍石を守る会』の警護隊長に任命したいと思います。そしてルリが副隊長だ」
「ははー、任された」
テレサの目は完全に$になっている。
「なあ、おっちゃん……三人で盛り上がっているのは良いことだが、この石をどうやって売るつもりだ?」
レイラはそう言って、懐から龍石を取り出し、テーブルに転がした。
「「キャーーーッ♪ 龍石が二つも!!」」
テレサとルリは、お互いの両手を握り合い喜びを表した。
「ギルドに持ち込めば、何とかなるんじゃねえのか」
「ハハハ、小指大の石で戦争が起こった代物をどの担当者が売りさばけると……」
「それじゃあ、ダブリンに頼んで見るとか」
声がだんだんと、小さくなる。
「宝石を自慢してなんぼの世界で、誰にも見せられない龍石を買う貴婦人たちが何処にいるんだ」
「それなら、 ブルボン王に直に売っぱらえばいいじゃないか」
自分で望み身のない解決策を言いながら、落胆してしまう。
「そうだ、小指大の石でさえ国が買えるのに、その数十倍の龍石にどれだけお金を積むか想像出来ただろ」
「無理」
ルリがぽつりと言い切る。
「仕方がない……勿体ないが、この石を小さくして売り払おう」
「おっちゃん……龍石はこの世で一番堅い石だと言われている。この石で戦争が起こりかけたとき、これがあるからと言って賢王がこの石を砕くことを命じた。しかし誰にも龍石を砕くことが出来なかったという逸話が残っており、それがまたこの石の名声を高めていると聞いたことがあるぞ」
この思わぬテレサの話しに、レイラが言葉を繋ぐ。
「付け加えるなら、この石の美しいカッティングは偶然の産物だ。金持ちたちは、ごま粒みたいな竜石を指輪にして、自慢し合っている」
レイラは見てきたかのように語った。俺は気づいてしまった……レイラの奴これを売ろうとして動いていたのを……
「じゃあこの石は……」
「光る、石ころだな」
レイラの一言で『龍石を守る会』の解散が決まった。三人の雛鳥たちは、何事もなかったように自分たちの部屋に帰っていく。只の石を握りしめながら、唖然と立ち尽くす俺を置いて……
もう少しだけ話しの続きが残っている――
トイレの床には、紙で包んだ龍石が無造作に置かれ、夜の闇を明るく照らしていた……。
「実は悪い話しばかりじゃないんだ……」
俺は勿体ぶりながら話し出した。
「おっちゃん、悪い顔になっている」
ルリが嫌悪感を露わにする。
ニヤリと笑いながら、懐に隠し持っていた龍石をテーブルにゆっくりと置いた。
「うわっ! 眩しい……何ですかこれは?」
テレサは龍石を見て目を見張る。
「竜王からお礼に貰った宝石だ! 龍石という名前を聞いたことはないか?」
「龍石って国が一つ買えるという、その龍石の事なのか!?」
テレサはテーブルの宝石を手に取り、眩しさに目を細めてマジマジと眺める。
「ヌフフフ、そう、あの龍石だ。小指大の龍石が戦争を引き起こしたという、ローランツ王国の秘宝と同じ石だな」
「凄い……」
ルリも石を撫で回しながら感心する。
「はい! 今日から我々は、勝ち組です。一介のしがない冒険者から、超セレブへと生まれ変わるのです!!」
「流石、おっちゃん!!」
ルリがパチパチと手を叩いた。
「で、今日からこの石を守るためテレサを、『龍石を守る会』の警護隊長に任命したいと思います。そしてルリが副隊長だ」
「ははー、任された」
テレサの目は完全に$になっている。
「なあ、おっちゃん……三人で盛り上がっているのは良いことだが、この石をどうやって売るつもりだ?」
レイラはそう言って、懐から龍石を取り出し、テーブルに転がした。
「「キャーーーッ♪ 龍石が二つも!!」」
テレサとルリは、お互いの両手を握り合い喜びを表した。
「ギルドに持ち込めば、何とかなるんじゃねえのか」
「ハハハ、小指大の石で戦争が起こった代物をどの担当者が売りさばけると……」
「それじゃあ、ダブリンに頼んで見るとか」
声がだんだんと、小さくなる。
「宝石を自慢してなんぼの世界で、誰にも見せられない龍石を買う貴婦人たちが何処にいるんだ」
「それなら、 ブルボン王に直に売っぱらえばいいじゃないか」
自分で望み身のない解決策を言いながら、落胆してしまう。
「そうだ、小指大の石でさえ国が買えるのに、その数十倍の龍石にどれだけお金を積むか想像出来ただろ」
「無理」
ルリがぽつりと言い切る。
「仕方がない……勿体ないが、この石を小さくして売り払おう」
「おっちゃん……龍石はこの世で一番堅い石だと言われている。この石で戦争が起こりかけたとき、これがあるからと言って賢王がこの石を砕くことを命じた。しかし誰にも龍石を砕くことが出来なかったという逸話が残っており、それがまたこの石の名声を高めていると聞いたことがあるぞ」
この思わぬテレサの話しに、レイラが言葉を繋ぐ。
「付け加えるなら、この石の美しいカッティングは偶然の産物だ。金持ちたちは、ごま粒みたいな竜石を指輪にして、自慢し合っている」
レイラは見てきたかのように語った。俺は気づいてしまった……レイラの奴これを売ろうとして動いていたのを……
「じゃあこの石は……」
「光る、石ころだな」
レイラの一言で『龍石を守る会』の解散が決まった。三人の雛鳥たちは、何事もなかったように自分たちの部屋に帰っていく。只の石を握りしめながら、唖然と立ち尽くす俺を置いて……
もう少しだけ話しの続きが残っている――
トイレの床には、紙で包んだ龍石が無造作に置かれ、夜の闇を明るく照らしていた……。
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