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第九十五話 屑と女騎士【楽屋裏】

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 馬車が着いた先は、二階建て木造建築のしっかりとした門扉がある高級宿屋だった。クレハンに家を譲って貰う前は、一日の宿代が銅貨数枚のたこ部屋暮らしも経験していたので、逆に豪華すぎて泊まるのに躊躇ちゅうちょしてしまう。彼女たちは平気な顔をしてロビーに入っていったが、俺は身体を小さくしてレイラの後に付いていった。

「三人部屋、お願いね」

 彼女が宿屋の女将に金貨を数枚渡すのを、俺は見て見ぬ振りをした。部屋に入ったが、室内は広すぎて三人部屋には到底見えない。十人部屋といってもおかしくはないぐらいの広さがあった。

 宿が決まった安心感から、腹の音が「ググー」と鳴った。

「すぐに食えるぜ」

 レイラは笑いながら、腹の虫に答えた。

 食事は部屋まで運んできてくれるので、安心して食事を楽しめそうだ。

 三人とも長旅で疲れていたので、部屋に入るやいなや風呂に飛び込んだ。バスタブに浅いお湯が張っているだけで、三人で湯船につかることが出来ず脱力してしまう。大浴場があるのか聞きたいところであったが、面倒くさいので湯浴みで済ませてしまう。それでもお湯で汗を流しただけで、今日の疲れが十分落ちた気がした。

 風呂から上がるとテーブルの上に、酒と料理が並べられ頂くことにする。皿には焼いた肉が薄く切られ、ソースが掛けられていた。見た目とは裏腹に普通の味でガッカリする。レイラに宿屋の料理の質を聞いたところ

「こんなものよね」

 素っ気ない返事が返ってきた。

「タリアでも、これだけお金を積めば、それなりの料理屋が見つかるぞ」

「料理やと宿屋は別だろ? 高級な食事がつく宿屋なんて、王都でも一握りしかないぜ」

「じゃあ、タリアの町は?」

「そんな宿屋が、あの町にあるわけ無いな」

 彼女が俺の家に居着いた理由が明かされた。風呂にゆったりと浸かれて、食事は上げ膳据え膳で、プリンがついて世話までしていたら居着くよな。まさか俺の手作り料理が、宿の食事を上回っているとは思っても居なかった。俺は今度から稼ぎの良い雛鳥たちから、金貨数枚の日銭を取ろうと決意した。

 お酒は旨かったので、料理をつまみに盛り上がる。

 疲れていたので変にテンションが上がってしまい、テーブルの上にある銀皿二枚を使って、股間をお盆で隠して、左右交互に入れ替えた裸踊りを披露した。観客が暖まったところで、股間に一枚のお皿で隠し左右の手で落とさないようにハラハラドキドキの芸で締めくくる。

「ヒィイイ~~~おっちゃんオレを殺す気か!!」

 ゲラゲラと笑い転げる。ルリを見ると白目を向いて失神していた(笑いすぎて)。これでお盆を裏返すネタを組み入れたら、異世界で覇権がとれることを確信した。
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