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第八十五話 エルフ皇国【其の四】
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王宮の貴賓室で、仕立て直したばかりの革ジャンにオイルを塗って悦に入っている。 継ぎ接ぎの粗い修繕後が嘘のように消え、新たにあてがった皮が良い味を出していた。これなら、新しい革ジャンを買う方が断然安上がりだが、テトラに甘えて仕立て直してもらい本当に良かったと――。
革ジャンは手入れをするほど愛着がわく。しかもこの革ジャンは、俺の身体を幾度も怪我から救ってくれた相棒だ。オイルで優しく撫で上げると歓喜の声が聞こえてくるようだ……。どうやら今日一日テトラに連れ回され、疲れで感情がおかしくなっているのに気が付き苦笑した。
明日も早起きをさせられそうなので、そろそろ寝ようとしたとき、扉を数回ノックする音が聞こえた。侍女が何か急用を伝えに来たのかと思い、扉を開けるとそこにはエルゾナ皇妃がいた。
「すいませんこんな遅い時間に訪問してしまって……」
「こちらこそ、寝間着のままで失礼したな」
俺はぺこりと頭を下げ彼女を部屋に招き入れた。侍女も連れてきていないので、込み入った話があるのではと不安になる。とりあえず、部屋にあるテーブルに皇妃と二人向き合うことになった。
「おっちゃん様、そんなに身構えないで下さい。娘のことを色々話し合いたくて来ただけですから」
「じゃあ、様は抜いてくれ」
「私も娘と同じようにおっちゃんと呼びますね」
いたずらっ子のような目つきで笑う。
「早くに父親を亡くしまして、まだ幼いと思い、娘を甘やかして育ててしまいました。そろそろ、皇女としての立場を自覚させなければいけないと、手綱を締めたら逃げ出してしまいました。まさか馬に荷物を積んで家出するとは、娘のお転婆には呆れてしまいます……。まさかそのときは帰ってこないなど夢にも思っていませんでしたが」
彼女は『はー』と、重い溜息をついた。
「テトラ自身も、少しの間だけ隠れるぐらい軽い気持ちで馬を出したらしいぞ」
「まあ、あの子ったら……。娘はこの旅で大きく成長しました。人の恩、お金の価値、友人、世の悪意など、沢山の事を学び私の元に帰ってきてくれましたわ。おっちゃんには、感謝してもしきれないぐらい借りが出来ました」
「感謝の言葉でお腹一杯だからこれで終わりだ、それより他に聞きたいことが山のようにあるから、侍女も連れずに、ここに来たんだろ」
皇妃は見透かされたのがよっぽど恥ずかしかったのか耳まで赤くなっていた。俺はテトラの出会いから此処に来るまでの物語を、空が白み始めるまで語った。
「こんな朝まで付き合わしてしまい、感謝……アッ!!」
お互いに見つめ合いながら笑った。
「俺の帰還の件なんだが……」
「もちろん国一番の乗り物で、人間国まで送らせて頂きます」
「それな……エルフ族は魔法に長けているよな、転移魔法は使えないのか?」
「ええ、一部のエルフは使えますが、転移先が示されていないと使えないんです」
「転移先があるといったらどうする? 実はラミア王族と付き合いがあり、人間国に転移ポイントが作られている。エルフ皇国はラミア国と国交はないのか?」
彼女はかなり驚いた顔を作り
「国同士の付き合いではなく、ナーナ女王とは面識はありますが……」
「俺、ナーナ女王とその娘とは知り合いなんだわ」
「おっちゃんて何者!?」
とりあえず、俺は転移魔法でラミア王国まで行ける道筋を作り、そこから国に帰れるかは彼女の外交に任せることにした。たぶん問題はないという感じだったので、その後の話しも続ける。
「出立は馬車でお願いします。もし人間国にエルフ皇国のパスが出来ると知ったら、娘はすぐに飛んでいってしまうので、当分は秘密にして下さい」
「そうだな、熱い鉄は今のうち打ち続けた方がいいさ」
二人は密約を交わしお開きとなった。
革ジャンは手入れをするほど愛着がわく。しかもこの革ジャンは、俺の身体を幾度も怪我から救ってくれた相棒だ。オイルで優しく撫で上げると歓喜の声が聞こえてくるようだ……。どうやら今日一日テトラに連れ回され、疲れで感情がおかしくなっているのに気が付き苦笑した。
明日も早起きをさせられそうなので、そろそろ寝ようとしたとき、扉を数回ノックする音が聞こえた。侍女が何か急用を伝えに来たのかと思い、扉を開けるとそこにはエルゾナ皇妃がいた。
「すいませんこんな遅い時間に訪問してしまって……」
「こちらこそ、寝間着のままで失礼したな」
俺はぺこりと頭を下げ彼女を部屋に招き入れた。侍女も連れてきていないので、込み入った話があるのではと不安になる。とりあえず、部屋にあるテーブルに皇妃と二人向き合うことになった。
「おっちゃん様、そんなに身構えないで下さい。娘のことを色々話し合いたくて来ただけですから」
「じゃあ、様は抜いてくれ」
「私も娘と同じようにおっちゃんと呼びますね」
いたずらっ子のような目つきで笑う。
「早くに父親を亡くしまして、まだ幼いと思い、娘を甘やかして育ててしまいました。そろそろ、皇女としての立場を自覚させなければいけないと、手綱を締めたら逃げ出してしまいました。まさか馬に荷物を積んで家出するとは、娘のお転婆には呆れてしまいます……。まさかそのときは帰ってこないなど夢にも思っていませんでしたが」
彼女は『はー』と、重い溜息をついた。
「テトラ自身も、少しの間だけ隠れるぐらい軽い気持ちで馬を出したらしいぞ」
「まあ、あの子ったら……。娘はこの旅で大きく成長しました。人の恩、お金の価値、友人、世の悪意など、沢山の事を学び私の元に帰ってきてくれましたわ。おっちゃんには、感謝してもしきれないぐらい借りが出来ました」
「感謝の言葉でお腹一杯だからこれで終わりだ、それより他に聞きたいことが山のようにあるから、侍女も連れずに、ここに来たんだろ」
皇妃は見透かされたのがよっぽど恥ずかしかったのか耳まで赤くなっていた。俺はテトラの出会いから此処に来るまでの物語を、空が白み始めるまで語った。
「こんな朝まで付き合わしてしまい、感謝……アッ!!」
お互いに見つめ合いながら笑った。
「俺の帰還の件なんだが……」
「もちろん国一番の乗り物で、人間国まで送らせて頂きます」
「それな……エルフ族は魔法に長けているよな、転移魔法は使えないのか?」
「ええ、一部のエルフは使えますが、転移先が示されていないと使えないんです」
「転移先があるといったらどうする? 実はラミア王族と付き合いがあり、人間国に転移ポイントが作られている。エルフ皇国はラミア国と国交はないのか?」
彼女はかなり驚いた顔を作り
「国同士の付き合いではなく、ナーナ女王とは面識はありますが……」
「俺、ナーナ女王とその娘とは知り合いなんだわ」
「おっちゃんて何者!?」
とりあえず、俺は転移魔法でラミア王国まで行ける道筋を作り、そこから国に帰れるかは彼女の外交に任せることにした。たぶん問題はないという感じだったので、その後の話しも続ける。
「出立は馬車でお願いします。もし人間国にエルフ皇国のパスが出来ると知ったら、娘はすぐに飛んでいってしまうので、当分は秘密にして下さい」
「そうだな、熱い鉄は今のうち打ち続けた方がいいさ」
二人は密約を交わしお開きとなった。
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