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第五十五話 今夜は修学旅行のように【前編】
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雨期に入ってから夕食の後は深夜まで宅飲みという流れが続いている。食器を洗い終えて居間に戻った俺は、酒のつまみ代わりにカードを三人の前で並べて見せた。
「カードゲームですか」
テレサがカードを一枚の絵札を手に取る。
「この絵をおっちゃんと一緒に描いたの……」
ルリは頬を少し赤く染めながら鼻を膨らます。
「で、どうやって遊ぶんだ?」
ハート、ダイヤ、スペード、クラブと四種類のマークに分けてから、1から13までのカードを順番に並べてトランプの説明する。
「A、J、Q、Kが1、11、12、13でジョーカーという道化師一枚の絵札をあわせ計53枚を使って遊ぶカードゲームだ」
絵札に数字を書きたし分かりやすくはしたが、各カードの呼称は異世界に合わせず、そのまま使うことにした。俺はカードを全員に配り、まずは手札をお互いに見せながらゲームを始めた。
「なるほど同じ番号がそろえば山に捨てるのか」
テレサは俺の説明をすぐに飲み込みカードを捨てる。ルリとレイラもおぼつきながらカードを捨て始めた。俺はレイラの手札を確認したら、まだ捨て切れていないカードを指摘した。
「順番に相手のカードを引き抜きながら、最後にこの|ジョーカー(ババ)が自分の手札に残ったら負けだ」
最初の一回でこのゲームのルールが伝わった。数回やるにつれこれが心理戦だということに皆が気付く。レイラが俺の手札を引き抜いたとき肩をビクッと引きつらせた。
「ぷぷぷ~レイラ、ババ引いた」
ルリが吹き出す。
「引いてね―し」
レイラは目を泳がせながら完全否定……低次元の心理戦が始まった。ババを引き当てたレイラはテレサがつかんだカードを見て笑みを浮かべた。
「やっぱりこのカード取るの止めます」
違うカードを引き抜かれ、えっ!? と言う顔を露骨に出してレイラは落胆する。一流冒険者とは思えないほどババの存在を露見させてしまう彼女は、最後までババを持ち続けた……。手札の中からババを中央に入れ少し高くすると、面白いようにババを引き抜いていたレイラだったが、流石に二時間もババ抜きをしていると簡単なトラップには引っかからくなった。そこで新しいゲームを始めることにした。
「次のゲームは全部のカードを裏に向けて、二枚のカードをめくり同じ数字ならカードを獲得できる。失敗すればカードを伏せ直して次のプレイヤーがカードをめくる。最終的に一番多くカードを取った奴が勝ちというルールだ」
俺は簡単な説明をしながらカードを裏向けに並べ始めた。記憶力の勝負だけに負けを覚悟して始めたのだが――序盤はゲームが順調に進み中盤に問題が発覚した。一度開けたカードをテレサは完全に暗記していた。そうなると彼女のワンサイドゲームとなってしまった。隣のカードがアタリだったとかそういう隙がこのゲームの面白さの一つなのだが、その隙が無くなればテレサ以外楽しめない。神経衰弱の面白さが全く伝わらずゲームは終了した。俺は滑り知らずのゲームを次にチョイスした。
「コインを三枚中央に置き、それぞれの手札を4枚持ち、いらない手札を一枚同時に右隣のプレイヤーに手渡して、同じ数字が四枚そろったらコインを一枚取る。手札がそろってないプレイヤーもその後はコインを取る権利が生まれ、コインを取り損なった人が負け。四枚のカードが揃っていないのに最初にコインを取っても負けだ。一度負けたら『う』で二回目負ければ『す』、三回目で『の』、四回目で『ろ』――『うすのろ』となり負けが決定する。負けた奴は『うすのろのばか』でゲームが終了する」
地獄の『うすのろ』が今開催される――
「「「「いっせいのーせ」」」」
四枚の手札がそれぞれ相手に手札が回る。二回目
「「「「いっせいのーせ」」」」
先ずは俺が動いて金貨を取った! その動きを見て素早くレイラが金貨をつかみ、その後テレサが最後の金貨をダッシュした。
「うぐぐっ」
ルリの顔が醜く歪む。俺たちはそれを見て爆笑する。
「「「「いっせいのーせ」」」」
かけ声が数回繰り返されルリが金貨に飛びついた。残った二枚の金貨を目指し三人の手が伸びる――どや顔でニシシと笑いながら俺に金貨を見せつけるレイラ。俺はすまし顔で悔しさを顔に微塵も出さない。またかけ声がかかる。少し間をおいてから素知らぬ顔をして俺が金貨をさらりとつかんだ。ルリとテレサはハッとした顔で慌てて金貨をつかむ。レイラは何が起こったか最初分からなかった。俺は彼女の顔に金貨を近づけウヒヒヒと笑ってやった。
「おっちゃん! 汚すぎるぞ~」
レイラが声を荒げて俺を睨み付けてきた。
「カードが四枚揃ったから金貨を取っただけですが、何か問題があったのかしら?」
「問題ないぞ」
「間違ってない」
テレサとルリがレイラを追い込んだ。彼女は顔を真っ赤にしながらカードを切り皆に配り直す。
「「「「いっせいのーせ」」」」
ルリが最初の金貨をつかんだ瞬間、その悲劇は起こる。「うごっ!」俺が何故か仰向けに転がった。
「なに転がってんだよ」
レイラが俺の目の前で金貨を見せつけながら、手をさしのべてきた。(おまえに吹っ飛ばされたんだよ)と言う言葉をグッと飲み込んでレイラの手をつかむ。
「問題ない……ありがとう」
三人はそれを見てケラケラ笑う。かけ声がまた数回繰り返されテレサが金貨に飛びつく。
「うごっ!」俺は倒れたまま金貨を握りしめニヤリと笑う。レイラがチッと舌打ちした。勝負は一進一退を繰り返し、レイラと俺は互いにつぶし合い三回負け『う・す・の』で負けのリーチが掛かった。『ろ』を賭けた勝負が始まる。
「「「「いっせいのーせ」」」」
俺が金貨を取る。続いてレイラ、テレサが続いた。しかしここで不思議なことが起こった。金貨が一枚だけ場に残っている。四人は不思議そうな顔をして顔を見合わせる。
俺は握りしめた手を開いて見せた。その手のひらには金貨は無かった。ルリもにやりと笑う。
「レイラさんや、あなたの手札に同じカードが四枚あるんですか?」
俺は彼女に問いかけた。彼女はそのとき何が起こったか理解した……手札が揃っていないのに金貨を最初につかんだら負けということに」
「「「うすのろのばかーーーーー」」」
レイラを指さし、俺たちは一斉に言葉を投げつけた。
おっちゃんの家では空が白むまで怒号が飛び交う。
「カードゲームですか」
テレサがカードを一枚の絵札を手に取る。
「この絵をおっちゃんと一緒に描いたの……」
ルリは頬を少し赤く染めながら鼻を膨らます。
「で、どうやって遊ぶんだ?」
ハート、ダイヤ、スペード、クラブと四種類のマークに分けてから、1から13までのカードを順番に並べてトランプの説明する。
「A、J、Q、Kが1、11、12、13でジョーカーという道化師一枚の絵札をあわせ計53枚を使って遊ぶカードゲームだ」
絵札に数字を書きたし分かりやすくはしたが、各カードの呼称は異世界に合わせず、そのまま使うことにした。俺はカードを全員に配り、まずは手札をお互いに見せながらゲームを始めた。
「なるほど同じ番号がそろえば山に捨てるのか」
テレサは俺の説明をすぐに飲み込みカードを捨てる。ルリとレイラもおぼつきながらカードを捨て始めた。俺はレイラの手札を確認したら、まだ捨て切れていないカードを指摘した。
「順番に相手のカードを引き抜きながら、最後にこの|ジョーカー(ババ)が自分の手札に残ったら負けだ」
最初の一回でこのゲームのルールが伝わった。数回やるにつれこれが心理戦だということに皆が気付く。レイラが俺の手札を引き抜いたとき肩をビクッと引きつらせた。
「ぷぷぷ~レイラ、ババ引いた」
ルリが吹き出す。
「引いてね―し」
レイラは目を泳がせながら完全否定……低次元の心理戦が始まった。ババを引き当てたレイラはテレサがつかんだカードを見て笑みを浮かべた。
「やっぱりこのカード取るの止めます」
違うカードを引き抜かれ、えっ!? と言う顔を露骨に出してレイラは落胆する。一流冒険者とは思えないほどババの存在を露見させてしまう彼女は、最後までババを持ち続けた……。手札の中からババを中央に入れ少し高くすると、面白いようにババを引き抜いていたレイラだったが、流石に二時間もババ抜きをしていると簡単なトラップには引っかからくなった。そこで新しいゲームを始めることにした。
「次のゲームは全部のカードを裏に向けて、二枚のカードをめくり同じ数字ならカードを獲得できる。失敗すればカードを伏せ直して次のプレイヤーがカードをめくる。最終的に一番多くカードを取った奴が勝ちというルールだ」
俺は簡単な説明をしながらカードを裏向けに並べ始めた。記憶力の勝負だけに負けを覚悟して始めたのだが――序盤はゲームが順調に進み中盤に問題が発覚した。一度開けたカードをテレサは完全に暗記していた。そうなると彼女のワンサイドゲームとなってしまった。隣のカードがアタリだったとかそういう隙がこのゲームの面白さの一つなのだが、その隙が無くなればテレサ以外楽しめない。神経衰弱の面白さが全く伝わらずゲームは終了した。俺は滑り知らずのゲームを次にチョイスした。
「コインを三枚中央に置き、それぞれの手札を4枚持ち、いらない手札を一枚同時に右隣のプレイヤーに手渡して、同じ数字が四枚そろったらコインを一枚取る。手札がそろってないプレイヤーもその後はコインを取る権利が生まれ、コインを取り損なった人が負け。四枚のカードが揃っていないのに最初にコインを取っても負けだ。一度負けたら『う』で二回目負ければ『す』、三回目で『の』、四回目で『ろ』――『うすのろ』となり負けが決定する。負けた奴は『うすのろのばか』でゲームが終了する」
地獄の『うすのろ』が今開催される――
「「「「いっせいのーせ」」」」
四枚の手札がそれぞれ相手に手札が回る。二回目
「「「「いっせいのーせ」」」」
先ずは俺が動いて金貨を取った! その動きを見て素早くレイラが金貨をつかみ、その後テレサが最後の金貨をダッシュした。
「うぐぐっ」
ルリの顔が醜く歪む。俺たちはそれを見て爆笑する。
「「「「いっせいのーせ」」」」
かけ声が数回繰り返されルリが金貨に飛びついた。残った二枚の金貨を目指し三人の手が伸びる――どや顔でニシシと笑いながら俺に金貨を見せつけるレイラ。俺はすまし顔で悔しさを顔に微塵も出さない。またかけ声がかかる。少し間をおいてから素知らぬ顔をして俺が金貨をさらりとつかんだ。ルリとテレサはハッとした顔で慌てて金貨をつかむ。レイラは何が起こったか最初分からなかった。俺は彼女の顔に金貨を近づけウヒヒヒと笑ってやった。
「おっちゃん! 汚すぎるぞ~」
レイラが声を荒げて俺を睨み付けてきた。
「カードが四枚揃ったから金貨を取っただけですが、何か問題があったのかしら?」
「問題ないぞ」
「間違ってない」
テレサとルリがレイラを追い込んだ。彼女は顔を真っ赤にしながらカードを切り皆に配り直す。
「「「「いっせいのーせ」」」」
ルリが最初の金貨をつかんだ瞬間、その悲劇は起こる。「うごっ!」俺が何故か仰向けに転がった。
「なに転がってんだよ」
レイラが俺の目の前で金貨を見せつけながら、手をさしのべてきた。(おまえに吹っ飛ばされたんだよ)と言う言葉をグッと飲み込んでレイラの手をつかむ。
「問題ない……ありがとう」
三人はそれを見てケラケラ笑う。かけ声がまた数回繰り返されテレサが金貨に飛びつく。
「うごっ!」俺は倒れたまま金貨を握りしめニヤリと笑う。レイラがチッと舌打ちした。勝負は一進一退を繰り返し、レイラと俺は互いにつぶし合い三回負け『う・す・の』で負けのリーチが掛かった。『ろ』を賭けた勝負が始まる。
「「「「いっせいのーせ」」」」
俺が金貨を取る。続いてレイラ、テレサが続いた。しかしここで不思議なことが起こった。金貨が一枚だけ場に残っている。四人は不思議そうな顔をして顔を見合わせる。
俺は握りしめた手を開いて見せた。その手のひらには金貨は無かった。ルリもにやりと笑う。
「レイラさんや、あなたの手札に同じカードが四枚あるんですか?」
俺は彼女に問いかけた。彼女はそのとき何が起こったか理解した……手札が揃っていないのに金貨を最初につかんだら負けということに」
「「「うすのろのばかーーーーー」」」
レイラを指さし、俺たちは一斉に言葉を投げつけた。
おっちゃんの家では空が白むまで怒号が飛び交う。
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