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 そして、Nは蒸発した。ある日、Nはタイムエンペラーの黄金の鎧に取りつかれ、取り囲まれ、そのメカの内部へと同化し、・・・そう、それはまるで、20世紀奇妙SF映画『TETSUO』の主人公のようになり、メカと化したのかも知れず、・・・そして、タイムエンペラーはNと合体し、次元の彼方にか、パラレルワールドにか、怒りと憎しみとともに消失したのだ、あるいは、その怒りと憎しみが次元を歪ませ、クオンタムルートを造り出したといってもいいのかもしれなかった。







 Nは憎しみと怒りとともに、何処へ消えてしまったのだろう・・・。私に、とくにそれに関わる義理などはなかったが、Nは犠牲者であり、この事件を追うことは、新たな犠牲者の発生を阻止することになる。その動機で私はNの手掛りを探した。
 私の拠点を、それでキングジョージ駅そばのグロースクリークハウスへ移動した。この辺は、サリーと呼ばれる地区だ。グレーターバンクーバーは、バンクーバー、バーナビー、サリー、ニューウエストミンスターの地区に分かれる。超他民族社会はモザイク的に形成され、地区によって、民族分布モザイクがそれぞれ特徴を持っているのが、このVAN-CITYだ。このようなシティゆえに、あの名作SF小説『ニューロマンサー』が生まれる下地になったのだろう。そう、サイバースペースは、80年代から動き出していたのだ。
 バンクーバーを渡る列車スカイトレインは、それぞれが自分の好みを駅でベースに活用すればいい。グランビルステーションは、バンクーバー中心街の使いやすい駅となる。この駅を中心街のベースにすれば、そこから歩きで(ちょっと距離はあるが)シネワークスなどの映画製作オフィスまで行ける。私はかつてそこで仕事をしていた。シネワークスでは映画の編集を3ヶ月ほどやっていた。シネワークスは、表はシネマテークになっていて、ワールドシネマをよく上映していた。ヴィスコンティの特集週間や、ロシア映画、バンクーバー国際映画祭作品や、アトムエゴーヤン作品、古典SF映画、2001年、ソラリス、キンザザなど、・・・様々な世界を体験できた。シネワークはバックドアから出入りする。私は朝まで映画の編集をし、バックドアから朝日を浴びながら帰宅したりしていた。近所のコーナーにスターバックスがあり、そこでよくチャイティーを飲んでいたが、カナダ西岸では、どちらかといえば、WAVESのチャイのほうが好みの味だ。
 夜遅くグランビル駅を通って、スカイトレインで当時の下宿のあった29番アベニュー駅エリアへ戻る日もあったが、そのときはよく、英国人が経営するグランビル構内の春巻屋で夕食を買って帰った。3ヶ月の間、いつ終わるとも知れない、国連職員が冒険に巻き込まれるSF映画の編集をしていた。
 この映画である。
https://www.youtube.com/watch?v=70MxEsHBGXc

 バーナビーのディアレイクにもよく行った。そこで人生のことをいろいろおもって泣いた日もあった。あふれるほどの緑だった。美しい緑だった。
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