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しおりを挟む[北九州空港]
八月二十一日。午後。私はキャプテン・ジャバウォッキーのビジネスジェットで、ジャポンは、北九州空港へ向かっている。又、どっさり仕事があるのだ。
仕事で移動が多く、この部分の記録はダンペンテキダ.
PCの調子モ,オカシカッタ.
エクスプレス・レールウェイの中で・・・。
むかし、AMTRACKでアメリカ合衆国西海岸を縦断した。あの時の事をリコールして居る。
祖父はアメリカが大好きだった。だが、一度も行った事が無かった。私の祖父は若いころ、インドシナに居た。私は、インドシナについて詳しくないが祖父の話を聞いていたからだろうか、その名称に親近感さえ沸く。
ステーションでミネラルウォーターを飲みながらベンチに座っている。となりの洒落た服を着たティーンの少女がスマートフォンで漫画を読んでいる。前世紀には無かった風景だ。
前世紀には出会えなかった真理、出会えなかった知識に出会う。
私のメンターでもあったムシュー・ホロビンヌは私に人生の大切なことを教えてくれた。魂について・・・。見えないもの、・・・しかし魂のあり方のインポータンス、・・・・・・・私はムシュー・ホロビンヌにネットを介して出会い、そのことに感謝している。彼はスコットランドにルーツがある。先祖はアメリカのニューイングランドに移住、ボストンを拠点にファミリーは広がった。私は一時期、ある大学教授に付いてアメリカ文学をまなんでいた。アメリカ文学創成期の世界観にひたることに、不思議な心地よさを感じる。実際は臆病な私だが、アメリカ文学の傑作「モビーディック白鯨」が持つ、熱い冒険心と当時のアメリカ北部ピューリタンが建設した社会システムのアピアランスに惹かれた。ピューリタンはアメリカ北部に移民し、所謂「神の与えし新天地」繁栄の希望の中、非常に過酷でもある開拓発展に尽力した。其れは、希望と共に、多くの危険、想像を絶する自然の脅威、そしてエネルギー資源獲得の為のアクションと繋がって居た。血気盛んな若人イシュマエルが其の血の疼きを、海での冒険にささげる旅に出る。それが此のアメリカ文学の傑作が云わんとするところのストーリーであり又、今で言うならエコロジーや海洋生物学のナレッジを内包している、ともされるアメリカ的物語・・・・・。アレコレ考えながらKOKURAの町を、舟に乗り込む前のイシュマエルのように彷徨っていた。
船に乗る朝が来た・・・・・・・・・・・・。
昨夜は、自由に使える調理部屋がフロアにひとつ設置されている、安ホテルに居た。私は、考えてみると、こういう安ホテルを多くの国々で渡り歩いていた事もある。わりと嫌いではない。いや、好きなんだと思う。
ホテルは、あまり居心地が良かったとは言えないが、アジアの夏の熱帯夜の中で旅をしているのだから仕方がない。共同調理部屋で簡単な料理をして、昨夜は夜食を食べた。ホテルの一階に隣接しているコーナーストアで、小さ目のケチャップと、ピーマン、オリーブオイルの小ビン、ソイソース、そして、乾燥スパゲッティを買い込んできた。そしてミネラルウォーター・・・。
これで、設置されている電気コンロで炒めれば簡単なパスタ料理とウォーター、そんな夜食だ。ピーマンは、ナイフでなく手で千切って入れる。こういう簡易料理を、安ホテルや安ドミトリーを渡り歩く中で考え、ほかにも幾つかレシピが在る。むかし、同じ安宿に滞在して居たバンコックから来た女の子にご馳走したら、とても喜ばれた、・・・彼女はタイの面白さを教えてくれた。其れが私にとってバンコックへ行く切っ掛けでも在った。
そして、バンコックで妻と出会うのだから・・・。其れも何かの巡りあわせだ。
そういえば、バンコックの日々は、ある意味、なにか、ハリウッドアクション映画の中にでもいるんじゃないか、という錯覚を私にもたらしたのを覚えて居る。暑さは、けっして居心地がわるい暑さでは無いのがバンコックの良さでもあるが、気温が現実からアタマを遊離させるのに、うまく、そして特殊に働く、そんな感じだった。
映画関係の仕事をしていると、現実では想像もつかないような、・・・・・そんなコトに出会う。映画というものが、夢であれ、悪夢であれ、ファンタジーを観客に見せる芸術だからだろう。
ファンタジーから出てこられなくなったら、現実的だと思える昔の記憶を思い出すようにする。ふと、親のことを思い出すこともある。父はジャポネーゼ(日本人)・・・いや、ジャポネーゼだった、というべきか。DNAはそうだ。しかし、ひょんなことから、政変が起きた故国のモナークに幼少の頃、もらわれたのだ。そうしたアンユージュアルな体験が在ったから、父はアイデンティティ障害を持った。母はブラジル生まれのカトリックの女性だ。ブラジル的な陽気さがある人だ。父王と母はリオのカーニバルで出会ったと云う。だが、彼らの出会いについて、あまり詳しい事は知らない。私も、故国の政変に翻弄されて、幼少から各国を行ったり来たりしていて、半ば逃亡生活だったから、彼らと落ち着いて話せなかったのだ。
私は、バンコック・カオサン通りで、妻と知り合ったのだ。彼女も追手に追われながらの生活であったが・・・。彼女は追手の目をくらませるために、特殊メイクで顔を変えたりしていた。
TAIPEIへと船は動いていた。
船旅は良い。本を読んだり、考えたりする時間が豊富に持てる、・・・・・私は一人用の船室キャビンの中で、森永ミルクキャラメルを食べながら、考えて居た。逃亡生活の中でよく旅をした。興味がある場所に足を運んだ。それは、エジプト。多くの宇宙人との出会いが起きたと言われているエジプトに入った。首都カイロにある国際空港から、私のエジプトでの行動は開始された。イスラミックサウンドが響き渡るハウジングに私は数日の宿を取ったことがある。あの数日のジャーナルもある。
{ジャーナル}
二〇〇九年一月九日
グローサリーで、米ドル二十八ドル分の買い物をした。
自分の部屋に戻って、食事を楽しんだ。
ミスター・ヌードルズ(ベジタブル味)と、ハンガリアン・サラミ。私の好きな味なのだ。ハンガリアン・サラミが、熱いベジタブル・スープに浸り、すこし固くなった時、ヌードルと一緒に食べるのが旨い。
二〇〇九年一月十日
カイロの街中で、ふとキリスト教の伝道者に出会い、共に祈りを捧げた。
主イエズス・キリストは言う、「私は、世の終わりまで、あなたと共にいる。」
教会は教える、「主は私たちを見つめる。」
神様はすべてを見ている。私たち夫婦のことも。私の定まらぬ心のことも。
其の修道士はこう云う、
「イエス・キリストは言った。『恐れないで。君たちの髪の毛一本までも数えられている。心を騒がせないで。神を信じなさい。つるぎを取るものは、つるぎで滅びる。子供のようにならなければ、天の国に入ることはできない。小さな人々を一人でも軽んじないように気をつけなさい。私が愛したように互いに愛し合いなさい。いちばん上になりたい人はみんなの世話をする人になりなさい。祈る時、だれかに対してわだかまりがあるなら、まずゆるしてあげなさい。祈り求めることは、すべてすでにかなえられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになる。私は復活であり、命。』・・・エジプトには何故か世界から、さすらいびとがやって来る。自分の居場所を探しに・・・。私も旅から得る事は多いと考える。そういう中で自分の心にも出会う。」
修道士は続けた、
「神がモーシェに現れた時、燃えているが決して燃え尽きない木の元に彼を誘った。神はモーシェの生来の好奇心を知っていたゆえに、そのような不思議な現象において、モーシェを神の元に引き寄せたのだ・・・。
神のなさることは面白い。貴方もマルコ・ポーロを知って居るだろう。マルコ・ポーロにとっては、東方見聞録を残すことが、神が彼に与えた使命だった。マルコは富と名誉を手に入れたかもしれないが、それが彼の目的ではなかった。彼が途方もない旅をしたのは、それらのためではなく、彼に生来与えられていた、好奇心、冒険心のためであり、彼は生まれながらの世界旅行家だった。そこに民族主義を突破する人間の心があった。それがマルコ・ポーロの心だ。」
修道士はこう言い残して、眩しい光の中に消えた。(そのように見えた。)
「人間は現在、多くの自然に対し危機的状況をつくり出しているという。しかし人間はテクノロジーを必要とする。其れが無ければ生きられない。我々は、自然環境とテクノロジーの共存を模索していかねばならないのだ。これは『生命』に関する課題だ。」
二〇〇九年一月十一日
人生、すなわち地上での生命には段階がある。時がある。だんだん歳を重ねると、意外と幸せが身近にあったと気付く。私の場合、片田舎の生活に幸せを見出せるようになったのは、三十五になってからだ。ローカルの小さな料理屋さんのオリジナルスープの美味しさや、麦畑の美しさ。そうした幸せは、十代では気付かない。若さは、まだ見ぬ遠い世界を見たい心だ。エジプトを見て起きた感情もある。
ジャーナルによって思い出す想いが在った・・・。
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