驚異的時間

yoshimax

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 宇宙拉麺シェフは言う。

「チュパカブラは火星種の生物で、我々がこのハビタブルエリアに入植し
たときに入り込んでしまった。スマン。」
  高倉健似の宇宙人との会話の中で、多くの謎が解けた・・・。
 平安京デジタリアン、と名付けられた八十年代のロム・カセットのゲームワールドに、イーブル意識『タイム・エンペラー』が封印されていた。それは、あの時代の光ディスク・ゲーム形式だった。宇宙人らは高度なテクノロジーで、地球のゲームカセットカートリッジを改造していた! それは、
宇宙的VR空間とのコネクトさえ可能にしていたのだ。決戦の場は宇宙人らの技術により、VRスペースに持ち込まれていたのだが、それに参戦する選ばれしデジウォリアーが現れていなかった。『コードネーム:平安京デジタリアン』、そのセントラル・プログラム『タイム・エンペラー』は擬人化さ
れたシークレット地球開発プログラムだ。だが、このプログラムは八十年代に考案されたもので、すでに古びた開発意識を持ち続けているのだ。開発者は去り、『タイム・エンペラー・システム』のみが動き続けて、地球崩壊への間違った道の途上に居た。これは、GAME化されたコントロールメソッドで動作しており、古びた開発意識を、RE・IMAGINATIONし、エコシステム化するために全プログラムを改変するには、ウォリアーが、そのGAMEに参加し、擬人化したリーディングプログラム『タイム・エンペラー』と、動作システムを二十一日間で断ち切り、意識システムを刷新するしかない。
 宇宙人は言う、「『タイム・エンペラー』は分断を主張する過去的人類意識の権化だ。過去の分断を継承させんとする権力を行使しようとする意識だ。だが、時代は変わろうとしている。地球規模の気候変動、グローバルクライシス、もう国家主義では対応できない。新しい世代は感覚的に受け止めている、もう、変わらねばならないと。すでに国家主義、民族主義は過去のものとなり、グローバルクライシスを人類全体の問題として解決するために考える時代が来ている。人類の心に期待している。」

 宇宙人との会話で分かったこと。

* 湖に落ちていたのは、隕石ではなく、宇宙船。(かつて火星に存在した、インテレクチュアル・ビーイングが、自ら起こした環境破壊によって住環境が壊滅したために、ゴッドウィン南山奥ジャングルに舟で移住し、彼らは古代からひそかに住み続けていた。 ・・・バブル時代の開発でジャングルが消され、彼らのハビタブルエリアに人間がはいりこんだ。)

* 火星の住環境の崩壊は気候危機がまねいた。不必要なものを無駄につくってそれを過剰に消費し続ける社会構造・社会形態が、土地・惑星・大地・ハビタブルゾーン・海を汚染し、けがしていった。だが、かれらの生活は火星崩壊をまねいたことから学び、極度にエコ化していた。

* より暮らしやすい住環境を求めて、宇宙人らは移動しようとしている。

 宇宙人はモニタリングを始めた。

 我々はアバタールの仮想ボディを借り、VR内の首都へ到達。

 アバタールは次元を超えたのだ!

 ハイパー・ロム・カートリッジに仕組まれた異次元世界。

 平安京デジタリア・・・。

『平安京デジタリア』は、デジタリーメイド・サイバースペースの中に存在する、ひとつの国だ。都市国家のようなものかもしれない。だが、それは巨大だ。八十年代ジャパニーズが発案・開発した、自動生成VRワールド。
 都市国家外郭は八世紀頃のジャパニーズデザインを懐古主義的に取り入れているが、その実、サイバーゾーンとして機能しているようだ。
 それは自動的に拡大してゆく、・・・・・五千五百万個のカスタム連結型Z80A集積回路CPUのプロセッシングによって。

 デジタル世界のエルサレム(平和の都市)・・・そうか、それゆえに平安京・・・。
 そこに入る者は『平安京デジタリアン』と呼ばれる。

 デジタルの民。REALか、SURREALか・・・。
 エゴと分化された意識が飛び交うデジタル・エルサレム。
 サイバー・シティ・平安京デジタリアの『平安』は、リアルワールドに直リンクしているらしい。ここが支配されればリアルワールドも『支配』に屈しなければならない。
 タイム・エンペラー・システムは、怒りと憎しみを餌に増長する。
 怒りと憎しみに『支配』されてはならない。
 それは噂なのか真実なのか分からない、だが、『怒りと憎しみに支配された都市は滅ぶ』と言われる。
 我々はアバタールボディを借りVR首都へ飛ぶ。そこはローマの街そっくりにプログラムされていた。
 本物のローマの街と見紛うかの様な風景。実感。
 なぜ開発者はVR首都をローマのように設計したのか。
 ローマに悠久の人類の営みを見たのか。
 VR首都には少数のアバタールが、その時点で住んでいた。住んでいた、というよりはアクセスしていた、・・・何かに導かれるように、我々アバタールは何処からともなく其処に集まって居たと言えるだろう。もちろん、私も彼らもアバタールのデジタルボディでリンクインしていたから、コントローラーたちの素性は互いに誰も知らない。だが、それがサイバースペースだ。

 VR首都にはトラットリアもある。私は其処でスパゲッティとエスプレッソを頂く。なかなかの味だ。トラットリアでは男女の恋の囁きも聴こえる。
 なるほど、ローマ風もわるくない、フェデリコフェリーニが愛した街だ。

 五千五百万個のZ80Aが造り出すサイバースペース。八十年代の設計とはいえ、想像を凌駕している。いや、八十年代こそ、そんな時代じゃなかったか? ウィリアム・ギブソンはサイバースペースの未来を提唱し、ジェネレーションXはその未来の夢を共有した。
 デジタル最先端の北カリフォルニアでは世界初のPC用サイバースペース・ハビタットが企画された。その前年は、一九八五年、ポップカルチャー界では惑星直列と迄言われる夢の爆発時代。

 サイバースペースの覇者となるべく駆り立てるメディアワールド。

 だが、そこに現れたのは悪しき支配者。怒りと憎しみに我を忘れたタイム・エンペラー。彼は失われた謎の力で地竜を甦らせた。巨大な地竜は凶暴なパワーを用い、VR首都を破壊し始めた。

 決戦か・・・。

 アバタールのひとりが私に話しかけた。
「ハイパー・ゴーレムだよ」
「えっ?」
「地竜を倒すのはハイパー・ゴーレムだ」
「あなたは、いったい?」
「わたしだよ」
「プレジデント・・・っ!」
「八十年代は祝福であり呪いだ。我々は次の方向性を模索せねばならない時にある。八十年代が生み出した『よきもの』を保ちつつ、あの時代、ギガントな方向へ、ギガントな方向へ、と膨らみ続けた呪いを捨てねばならない」
「調査財団グループ、って貴方だったのですね、プレジデント」
「放浪は、創造主と人間性の探求の為だった、全て・・・。そう、怒りと憎しみを、怒りと憎しみによって倒すことは出来ない。ハイパー・ゴーレムは、ゆるしの力、愛の力、生命力、・・・本質的な光を解き放つのさ、ほら、エルビスの歌が聴こえてきた。フリーダム。聖母マリア・・・」
 放浪した我々の魂が祈りで一致したとき、古代賢人が隠したハイパー・ゴーレムが動き出す。VRゲームの隠れキャラなのか? 幻惑? 幻想?
 幻? 私は今、どこにいるのだろうか?
 ゴヤの描く巨人のようにハイパー・ゴーレムは光さす雲々を分け、やって来た。グスタフ・マイリンクのゴーレムとは全く別物だ。
 
 タイム・エンペラーと地竜は、ハイパー・ゴーレムが放った、聖母マリアのような光に包まれ消滅。

 私は、気付くと聖母のメダイを握りしめていた・・・・・。

 今日は何日だ?
 2021年8月15日、・・・聖母マリア被昇天の日。
 霊的なゆるしの日、平和の日、あたらしい旅立ちの日。

   おわり
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

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yoshimax
2021.09.14 yoshimax

ありがとうございます! こういうのもやってます
映像作品を制作:(以下の3部作に纏める)
https://www.youtube.com/watch?v=wJAdKHgv5is タカクラオメガトリロジー・その1 Taka Kura Omega by Jownmakc Yoshimax
https://www.youtube.com/watch?v=w0T6VNfDcv8 タカクラオメガトリロジー・その2 ITALIA by Jownmakc Yoshimax
https://www.youtube.com/watch?v=_w-E7McI_po タカクラオメガトリロジー・その3 GODWIN by Jownmakc Yoshimax

解除

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