ペーパーバック・ファンタジア2012

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 彼方へ プロログ:
(TAKAKURAの手記より:)【20XX年X月X日の手記】
 私TAKAKURAは前の旅が一先ず終了した後、今後の研究テーマに思いを馳せて居た。私のテーマの中心には何時も文化人類学と民主主義が在る。此れ等に関わる時、様々な旅のミッションが何処からとも無くやって来る。

 ラテンアメリカ、初夏。
 朝五時に起床後、私は『マケドニア』へのフライトに搭乗する為の準備をした。暫く通称マコンダー島で研究生活を送った後でも在り、久々のミッション用の携帯品を揃えるのにもたついた。マコンダー島での日々は良かった。其処に居ると全てを忘れてしまう。此の時期、島は温度が上昇し、ジャングルの深緑は一層其の濃さを増す(此の土地には様々な過去を持つ放浪者が多いが、彼らの記憶全てをジャングルは覆ってしまうのだ)。ネイチャーの圧倒的パワーと甘美さを同時に私は感じる。夏季雨量増加が島内河川の流れを溢れさせるが其れは生命の躍動でも在るのだ。ラテンの民は、此の荒ぶる生命の力と其の光を愛でる。其の内、時間さえも忘れてしまう様だ。一日が千年の様でも在り、千年が一日の様でも在る土地・・・。私は暫く前、文化人類学で博士号を修め、一万二千年前に栄えたとされるスーパー古代文明の遺構を見て来た。だが此のマコンダー島に居ると、『一万二千年』が然程長い訳では無い様な気分にも為る。そんな場所に私の研究拠点は在るのだ。私が留守の間、隣に住む姪が此処を管理してくれて居る。彼女の愛犬は此処のガーデンにも自由に入って来る。私は其の犬(名はフランシスコ)にも暫し別れを云い、『マケドニア』へ出発した。

 そして、伝説の残る地マケドニアへ・・・・・・・
 飛行機はトルコ・イスタンブールを明け方出て、マケドニア・スコピエ市に午前八時半に着いた。基本的には予定通りだ。インターナショナル・ハウスからハウス・オーナーが迎えに来てくれて居た。スコピエ国際空港(かつてはアレクサンドロス空港と呼ばれた)からインターナショナル・ハウス(Iハウス)迄、車でソコソコの距離は有る。Iハウスが在るコミュニティの中心には騎馬に乗った英雄のスタチュー(像)が置かれて居た。此のモニュメントの御陰で、方向音痴の私はコミュニティで迷子に為らずに済みそうだ。
 Iハウスは、騎馬の尻方角に在る、倫敦等欧州都市で御馴染サーカス型交差点の、センターファウンテン(スコピエの水は旨いと評判)より眺めた際、騎馬像ストリートから左三番目路地奥に建って居る。オーナーELVIC(エルビック)と其のパートナーZAA(ツァー)は、私がスコピエ滞在に早く慣れる様、色々アドバイスした。まず、食べ物だが、スコピエ市民のブランチによく出るのが『ブーレ』だ。此れは昔ルシアン・コミュニティで時々食べて居たピロシキに似て居る。
 大体の生活物資(食料含む)が手に入るグリーン・マーケット(市で在る)へ行って見る。私は基本一日二食だが、此の市場で最初のブランチを済ませた。ブーレの具にチーズとスピナッチを入れたモノだ。そしてマケドニアでは定番のヨーグルト(ブルガリアとの関係性も大きい此の地ではヨーグルト飲料は欠かせ無い)。六〇デナリ。約一米ドル。マケドニアの通貨は『デナリ』だ。気候や風土はカナダ西岸(バンクーバー島)を思い出させる。ファーストネーションの長老の言葉を聴く為、昔一年居た。あの土地と、緑の色が似て居る。私はIハウス周辺を散歩し其の緑を楽しんだ、手に市で買った一キロ(マケドニアの重量単位はキロ)のアメリカンチェリーを持って(大粒アメリカンチェリー一キロ=百デナリ=約一・五米ドル)。散歩中、チキン丸焼きの屋台店を見付けた。一つ百五十デナリ(約二・五米ドル)。旨い。水はファウンテンでFREEだ。
 Iハウスが所有して居るファームで暫し農作業をした。チェリーやベリーが実って居た。その後マケドニアンスタイル・ディープ珈琲をワンカップ頂いて、センターに在るマケドニア考古学博物館へ向かった。昔、民族学博物館関連の仕事で出会ったミズ・レンフィルドが其処を高く評価して居たからだ。素晴らしいコレクションだった。正にアレクサンダー時代からのヒストリーを体験したかの様だった。そしてオールドバザールでゆっくりプレジデントの『インフォ』を再度視聴した。プレジデントは最後に『セ・グレタメ』と言って居た。此れはマケドニア語で、SEE YOU(又ね)と云う意味らしい。

 夏。
 スコピエ郊外に在る『MATKA』(マケドニア語:子宮)の地を調査する。水源でも在る。水はかなり冷たい。此の地を訪れた者の中で「MATKAにしては冷た過ぎる」と云うジョークを言う者も居る。(ここはダムとしても巨大なエレクトリシティを産み出して居る)
 私TAKAKURAは『東マレーシア映画社』では、カヴァー・ストーリーとしての映画等の製作・企画も担当する。カヴァー・ストーリーとは、捏造された物語の事だ。真実を混乱させる事で市民生活を安定させる効果も有る。例えば(或る人々は云うが)、スティーブン・スピルバーグ監督・脚本映画『未知との遭遇』(一九七七年)は一つのカヴァー・ストーリーだ。既に宇宙人らとコンタクトを取って居たUSAガバメントは其の事を一般化する為にまず、映画に依って市民に『宇宙人(エイリアン)との交流は此の様なモノだ』と伝えたのだ。天才監督の映画作品に依って人々は宇宙人に慣れた。実際の宇宙人との共同作業が如何なるモノで在るかは見せず、平和的交流で在る事が大切だった。
 今回、私、TAKAKURAは世界各地の古代シバリンガム遺跡の存在を、一般的には混乱情報として捏造する役割をも担って居る。今回の捏造情報は漫画メディアを利用する。プレジデントが其れを指定して来た。現在ヨーロッパ全域に流布して居る、MANGA/ANIMEカルチャーが既に若年層の間ではワールド・コモンセンスとして従来の映画以上の広がりを見せて居るからだ。
 そうして、私はΠETPOBパーク(公園)でアジア系漫画家M(マクシミリアンのイニシャルだと云う説アリ)に会う事に為った。
 ΠETPOBパークはマケドニア首都スコピエ市郊外に在る。
 Mはミステリアスな人物らしい。
 Mは昼頃ΠETPOBパークで食事するらしい。
 Mはライ麦パンとサーディン缶、そしてアップルジュースをパークのベンチで食す。
 Mはアロハに半ズボンの出で立ちが多い。Mは靴下を穿かず、素足にモカシンを穿く。Mはアジア系らしいが、恐らく日本人では無いだろう。日本人で靴下を穿かないのはJと云う俳優だけだそうだからだ。
 MはΠETPOB像の傍のベンチが御気に入りらしい。昼食後は其処でアジア系の情報マガジンを暫し読んで居るみたいだ。今回は直ぐに判別が付く様、『メルトフ・ポリツァヱツ』(英語でデッド・コップの意)と云うペーパーバック小説を持って居る約束だ。
 
 数時間後、Mに会う。Mは噂通りの男だった。アロハと半ズボンでやって来た。前情報通り、靴下は穿いて無い。半ズボンはギリシャ模様のモノを穿いて居た。彼は何時からプレジデントと知り合いなのだろう? プレジデントのネットワークは世界中に広がって居るから、全く訳が分から無い。私としては80年代の漫画はよく読んで居たが、近年殆ど新作を読ま無く為ってしまい、Mの作品を知ら無い。Mは本当に『MANGAKA』なのだろうか? そもそも『M』と云う呼称も何だか怪しい。『ダイヤルMを回せ』(アルフレッド・ヒチコック映画作品)、『Mバタフライ』(ジョン・ローン主演映画作品)、ジェームズ・ボンドのボス『M』、・・・怪しいコトにはMが付く。
 Mが来る迄、パークでヌンチャク(NUNCHUKS=雙節棍)の練習をしていた。時々ヤバい事に巻き込まれる『東マレーシア映画社』のビジネスでは、此のマーシャルアーツが自衛の為選ばれて居る。プレジデントがブルースリー好きって話もある。私はプレジデントの紹介で、かのウォン・フェイホンからの流れを汲むマーシャルアーティストに広州でヌンチャクを教わった。

 Mは今から直ぐにテサロニケへ向うと云う。突然の移動だ。テサロニケの海には現在『東マレーシア映画社』管理下のシバリンガム遺跡が在るが、其れは既にエナジーを使い果たしてしまい、今は只の遺構でしか無いはずだが・・・。まあ、いい。Mがそう言うなら共に行って見よう。・・・と言っても、スコピエからテサロニケ迄の便は多く無い。ギリシャ経済危機以降、トレインは早朝四時四十五分出発便のみだ。
 我々はパークから5番ダブルデッカーバスに乗り、センターのアレクサンダー大王像広場迄まず、移動した。私の、TAKEO KIKUCHIデザインのリュックには取り敢えず程度の荷物しか入って居無い。必要な物はあっちで手に入れられるだろう。
 トレインの出発時間迄十二時間も有る。私たちは少々腹拵えをする為に『ペキン・ガーデン』と云うチャイニーズ・レストランに入った。CHOW-MEINはなかなかの味だ。そしてオールドバザールを少し歩く。
 Mは言った、「まだ数時間有るが、そろそろテサロニケ行のチケットを買っとこうか」。マケドニア国鉄のスコピエ駅はオールドバザールから歩いて其れ程遠くは無い。チケットは十二ユーロ。五時間弱のライドで在る。スコピエ駅はジャイアントな造りだ。旧共産圏的な堂々とした長いプラットフォーム群が設計されて居る。ジャイアントでシンプル。共産時代と連動するアールデコ風建造物はコミューン思想実現を目指して邁進した二十世紀夢想の残香。
 トレインライドの前に、Mは私をスコピエ駅傍のナイトクラブへ誘った。音楽(ムジカ)にノッて踊る女性達を見ながらマケドニアの酒を飲んだ。此の地バルカンの音楽は独自の発展を遂げて居る。エスマ・レジェポバ、ディノ・マーリン、キリル・ジャイコフスキ(彼のサウンド『ジャングル・シャドー』は、スパイアクションテーマ曲懸ったクールなローファイコンテンポラリーで、正に我々『東マレーシア映画社』の為のソングと云う感じ)等が掛かって居た。確か前のミッションで一緒だった仲間、クリントのパートナーはマケドニアのクラブハウステクノに興じて居た、と聞いた。

 Mはテサロニケ行トレインに乗ってからはずっと黙ってヘッドホン・ステレオでムジカを聴いて居た。彼はアジア人の様だが、生まれは香港だろうか・・・、イヤホンから少し漏れて聴こえるサウンドはどうやらフェイ・ウォンの『夢中人』だ。ヘッドホン・ステレオはSONY製ウォークマン。情報では、彼がスコピエに住み始めたのは十二年前だと云うが・・・・・・・・・・。ふん、詮索するのは止めよう、私の性分じゃ無い。どうでもいい事だ。私は其れ程他人に興味は無い。
 等と考えて居ると、MがふとウォークマンをPAUSEして口を開いた。
「私の事が気になるんですか、ムッシュー・TAKAKURA?」
 私は別にどうでもよかったのだが、「いえ、どうでもいいです」と云う応えは多少失礼かと思い、黙って居た。するとMは「そうですか、ふうむ。私の事が気になるんですね、・・・では少し私の事を話しましょうか」と言う。
 私は思った、「ヤッバー。此の男M、思わせ振りな雰囲気を醸し出して、本当は自分の事を話したくて仕方無いタイプだ。で、大体こう云う手合はろくな事言わ無いんだよね、聞かなきゃ良かったってな事言うタイプだ、此のM・・・」。(冷や汗)
 Mは微笑して喋り始めた。
「結論から言えば、私は吸血鬼の血を引く漫画家です。いえ、漫画はそんなに売れてません。ロンドンのウエストエンドに在るインディー系のコミックショップで少々売って居る位です。プレジデントとは十五年前クアラルンプールで会いました。彼は私の漫画を気に入り、其れで時々『東マレーシア映画社』から依頼を受ける様に為りました。フェイ・ウォンを聴いて居た事から、香港出身と御思いでしょうが生まれは倫敦中華街です。母はウエストエンドのアジア系女性ダンサーでした・・・・・、父が東欧から倫敦中華街に移り住んだ吸血鬼だったんです」

 は? 

 やはり此の男、やばい奴だった・・・、私は返す言葉も無く黙って居た。

「あ、ムッシュー・TAKAKURA。私の父の事、知りませんか? 父の事はロンドンの文筆家だったブラム・ストーカー氏が書いて居ます。そう、あの吸血鬼ですよ、私の父親は」とM。

 やばいよ、此の男、狂ってるぅ・・・。

 Mは続ける、「私も歳を取った。もう一五〇歳ですからね。(えっ、何だって? 此の男、せいぜい五〇歳位にしか見え無いが!) 父はストーカー氏が書いて居る様に、ジョナサン・ハーカーらに倒されました・・・。私はひっそりと母に育てられました。私は父の様に人間社会を破壊するつもりは有りません、半分は人間ですから・・・。たまにロンドン生活時代を思い出しますよ。マケドニア共和国では静かに目立たぬ様暮らして居ます。スコピエ市郊外の、Γopчe ΠETPOB(ギョルチェ・ペトロフ【1865-1921・革命家】)雄姿像界隈コミューンはなかなか居心地が良い」。
 Mは私を不気味に見つめ、そう話すのだった。全然話さなくていい事をペラペラと話されて迷惑だ・・・、一緒に同じトレイン・コンパートメントに居るんだぜ、仮眠も取れ無いじゃないか!
「あ、いえ、ムッシュー・TAKAKURA、御疲れなら寝て下さい。到着まで充分四時間は有りますから」Mは見透かした様にそう言うのだった。私の額から膝に汗が数滴落ちた・・・。
「あ、私の話、ジョークですよ、ブリティッシュ・ジョーク!」Mは突然そう言った。だが、本当にジョークなのだろうか、数々の超常現象を見て来た私にとって彼の云った事も又リアリティを感じさせた。考え過ぎても仕方無い、私は目を瞑り寝た振りをした。


 テサロニケ・アゴラにて。

 会う予定の人物は俗物キオスク新聞雑誌をテサロニケのアゴラで読んで居るはずだ。
 情報通り其れらしき人物は居た。
 私は思った、あれは見覚えの有るシルエットだ・・・。あれは前に一緒に仕事をしたクリントじゃないか! 俗物雑誌のリーダーだが悪い奴じゃ無い。

 テサロニケは歴史の宝庫だ。何度か調査で来ている。テサロニケではお気に入りのホテルがある。ギリシャ国鉄テサロニケ駅から四百㍍程の所に在るアルゴ酒店(宿)だ。グローサリーで買ったアップルジュースと、地中海ツナサラダ缶詰を頬張りながら、此の古いコーナーINNの、鎧戸付大窓の隙間から光が漏れ差し込むのを眺めて居た・・・。
 ジャポン国営電視台番組で見た、宮崎駿【映画監督・1941 AD - 】氏の旅ドキュメンタリーを思い出した。氏は彼の敬愛するサンテグジュペリの郵便飛行機航路を辿りフランスから北アフリカ迄向うのだが、途中、仏郵便飛行士らの常宿と為って居た或るホテルに滞在する。此の宿(アルゴ酒店)の造りは其のホテルに似て居る。1930年頃のヨーロッパ宿場建築群には共通する懐かしさの様なモノが在るのだ。
 翌日、旅疲れで目が覚めると午前十一時を廻って居た。正午にチェックアウトだから、未だ小一時間有ると思ったらクリントとMが部屋のドアをノックし、「もう出ますよ」と言う。(何故?) 
 マケドニア共和国からギリシャへ入ると現地時間は一時間早まるのだ。うっかりして居た。(だからもう正午過ぎだったのだ。)
 直ぐに支度をしてクリント、Mと共にテサロニケのポート迄急いだ。
 其処には驚くべきモノが停泊して居た。
『エクラノプラン』だ・・・。
 こんなモノが突然出て来るから、『東マレーシア映画社』の仕事は辞められない。
 エクラノプランは旧ソ連が開発した水上浮揚飛行トランスポートだ。分類的には飛行機の一種と為る。
「此の機体は旧ソ連の払下げだ。プレジデントが購入した」とクリント。
 まあ、毎度の事だが、此のエクラノプランも『東マレーシア映画社』が随分改造して居るのだろう・・・・・・。
「まあ、乗りたまえ」クリントはそう言うと先に乗り込みパイロットシートに座った。(其の隣はM。)
 えっ、運転するの、クリント? 私はちょっとビックリした。
「最近プレジデントから呼出しを受けて、専門家から操縦法を叩き込まれたんだ」とクリント。
 クリントがスタートボタンを押すとエンジンが動き始め、機は港を出た。
 所が、段々海面下へ沈み始めたのだった!
「え、あのー、沈んでマスケド。」
 (私はクリントに言って見た。)
「あ、そうだYO! ムッシュー・TAKAKURA。此の機体は『東マレーシア映画社』がサブマージ(潜水)システムを付加して改造したモノなんだ」とクリント。
 二百メートル程潜水しただろうか、・・・其処に完全に機能を停止し遺跡と成ったシバリンガムが在った。此の深さだとかなり明るい人工灯が無いと、殆ど輪郭も分から無い。クリントは我々のエクラノプランの前方サーチライトを最大出力にスイッチした。暗い海底で目前に浮び上がる一つの巨大ヨーニ(女性器をシンボライズした構造物)と二つの巨大シバリンガム(男性器をシンボライズした構造物)・・・・・・。
(TAKAKURA:)「サウスコリアのモノと少し寸法が違う様だが構造は同様だ。サウスコリア・シバリンガム・コンプレックス(第三シバリンガム)には、ヨーニは二体在ったが・・・。(沖縄シバリンガムも二対だ)」
 エクラノプラン(サブマリンでも在るが)は巨大構造物の周囲を旋回する。
 此れを発見したのは私の考古学チームだったが、あの時は多忙で投げやりに為ってしまい、私は実物を目視して居無かった。(実物を見て初めて気付く事は多い。データはやはりデータなのだ。リアルにはかなわない)
(クリント:)「海底からの高さは全高百メートル。此のシバリンガムは一万六千年前に建造された超古代文明のエナジー・ジェネレーターだと分かって居る。が、今は何のエナジーも発しては居無い」
 私には或る事が引っ掛かった、「うーん、おかしい。解せ無い。ヨーニが一体、シバリンガムが二体。文化人類学を長年研究して来た私の見解では、ヨーニとシバリンガムは男女を表し、常に一対として存在するモノ。ヨーニが一つ足り無い。足り無いヨーニが文字通り鍵なのだ。シバリンガムは其の名の通りシバの男性性を表して居る。そして、ヨーニはシバの妻なのだ。シバの妻、其れが作動キーだ」
(M:)「何か段々、漫画でカヴァーストーリーの製作をするのが難しいって気がして来たね」
「否、此れこそ漫画さ!」と私。「おそらく何かの最終決戦は、タイランド、プーケットになるだろう。そこは南アジア・インドと東アジア・チャイナの接点。フィフティフィフティで此の二者のカルチャーが融け合う。そしてかつてスンダランドだった!」
 Mは言う、「だが、それでどうなる? スンダランドは超テクノロジーを持って居たかも知れないが、もう存在しない」
 瞬間クリントが明かした、「じつは、少し前に連絡が入った。沖縄シバリンガムが決壊した・・・」
 Mはよく分かって居ない、「どういうこと?」
 私は真面目に言う、「では解き放たれた、ということか?」
 クリントは応える、「そうだ。『仮面』が解き放たれた。正確に言えば、スンダランド人が造ったハイパー電子頭脳を持つ電脳サイバーアンドロイド、通称『仮面』だ。『仮面』を崇拝する者らが蘇えらせたのだ。やつらは『仮面』を奉り、ユーラシアを独裁しようとしている!」
「『仮面』はレッドドラゴンを動かす。もう古代のゴーレムだけが対抗策だな」と私。

 [ウルティメート・エクラノプラン]

(クリント:)「タイランドへ行こう」(クリントはジェットXモードに切り替えた。)
『東マレーシア映画社』のエクラノプランは、鯨が飛沫を上げて海上に飛び出すが如く、かつて『レッドオクトーバー』も持って居たと云う水中ジェットエンジンから飛行用ジェットにスイッチして飛び上がった。そして暫し海上を低空浮揚飛行すると、一気に格納されて居た延長翼を出して大空へと舞い上がるのだった。
 だが、レーダーに追手のAIドローンジェットプレーンが映った。
(クリント:)「ヤバイ! 奴ら、追って来た」
後方から、かなり正確なレーザー砲撃をして来る。
(クリント:)「やつらだよ、奴らがユーラシアの独裁を目指す暗黒組織なんだ。アレは其の手下だ。AIを利用して居る。奴らはシバリンガムの力を使い、かつて世界を支配したと云う、あのアポカリープスにも書かれて居る『炎の帝国』時代のレッドドラゴンを復活させようとして居るんだ。私たちは奴らに取って邪魔らしい」
「何故、何時の時代も争い事が絶えないんですかね?」Mは言う、「私などはカントリーサイドでのんびり日々を過ごしたいだけなのに・・・」
(クリント:)「ムッシュー・TAKAKURA、そして、MOΠJ(モピ)、しっかり掴まってて!」
(TAKAKURA:)「え、君の名前、MOΠJ(モピ)って云うの? だからMか」
 AIドローンジェットのレーザーを上手く避けるクリントだが、機内は大混乱。荷物が棚からドサドサ落ちる。
(M:)「フルネームは長いからMデス。 MOΠJ MAXIMILLIAN MORI デス」
(TAKAKURA:)「MMMや!」
(M:)「あーあーあー。こんな事に為るなんて! 戦争なんてまっぴらなんです。水木しげるサンから学びました。私は翻訳されて居る水木サンの漫画本を沢山読みました。母が好きだったからね。あれは水木サンからのメッセージなんだよね。狂気の戦争に参加させられて集団主義やファシズムの中でヒドイ目に会わされた水木サンからのね。だからキタロウは基本的に特に何もせずに木の上の家で昼寝の毎日でしょう。争いなんてする位なら、昼寝生活がずっといいって言ってるんです。トラブルを持って来るのはネズミ男なんだけど、彼でさえファシストよりずっとマシさ。そういう事を言いたかったんだよね、水木サンはサ」

「此れは、確かに狂気の戦いなのかも知れ無い・・・」クリントは言った。

(M:)「此処を上手く切抜けたら、もう、アンタらのお供なんて辞めるからね! プレジデントも何かオカシイって思ったんだ・・・! もういやッ! ボクちゃんには元モデルの恋人が居るんだ。君らなんかに付合っちゃ居られないYO!」

 クリントは叫ぶ、「もう、ヤバイよ。奥の手だ!」クリントは操縦桿を目一杯引いた。機は百八十度宙返り。我々はエネミーのAIジェット機の後方に付いた。クリントは後方からAIジェットをレーザー砲撃。AIジェットは何の事無くヒョイヒョイかわすのだった。
(クリント:)「さすがAI・・・」
(TAKAKURA:)「感心しないでー」
 AIジェットも、百八十度宙返りを打つ。
(クリント:)「やっべー! 又後ろに付かれちゃったYO!」
(TAKAKURA:)「どーすんの!」
 後方からバンバン攻撃して来るエネミー。
(クリント:)「ダミーを射出するか!」
(TAKAKURA:)「何すか?」
(クリント:)「エアバッグダミーで、射出すると、此の機と同じ形、大きさに膨れる。だが只の風船だ。AIは胡麻化されないだろうな」
(M:)「もうッ、はやくしてー」
(クリント:)「射出!」クリントはダミー射出ボタンを押した。ダミーは射出され、エクラノプランと同じ大きさに膨れた。
 やはり、AIは騙せなかった。AIは本体の方へ集中砲火。エクラノプラン本体爆発。爆発に巻き込まれ、エネミーのAIジェット自体も爆発してしまった・・・。


{アラビアン・シー}

 クリント、M、私は、其の海上に居た。シンドバッドも此の海を漂っただろうか・・・。
(クリント:)「いやはや・・・。まいったね」
(TAKAKURA:)「いやいや、助かったから良かったYO!」
(M:)「泣けてくる・・・」
(TAKAKURA:)「ま、よかったよね! ダミーの方にパイロットルームがくっついて射出される仕組みだったなんてさ!」
(クリント:)「まーね、でも此のダミーはさ、こうなると只のゴムボートなの。だから此処からインド洋を越えてタイランドへ向かうのはかなり大変よ」

 ダミーゴムボートのエクラノプランの甲板に寝そべり私は黄色い空を見て居た・・・。クリントの声がした、「ちょっと来て!(汗)」彼の声は上ずって居た。一体何だ? 
 Mは「おいおい、どうしたの、いつも冷静なクリントさんなのに」とノロノロ腰を上げてクリントの居る後部へ歩いて行った。Mの大声が聴こえた、「あああー!」
 私はそれで、やっと彼らの方へ向かった。なんと其処に居たのは、・・・『人魚』だ!
 こいつは驚きだ、だが、半分吸血鬼のMは別に驚かなくてもいいだろう?(似たような存在でしょう?) ま、此の世界にはこんな事も在るのさ、私は随分冒険慣れをした様だ。
 人魚は我々に言う、「行きなさい、あなた方が目指す処へ。タイランド。そうです、其処に失われた古代文明が在った」クリントとMは余りの驚きで気絶した。私が驚かなかったのは古代亜細亜の神話を読んで居たからかも知れない、古代亜細亜の白猿の英雄ハヌマンの妻は人魚だった。だから人魚が古代文明に関与して居た可能性を私はいつも考えて居た。
 人魚が去ると、霧が我々を覆い、しばらくして風が其の霧を吹き消すと、その向うから中国船籍の船がやって来た。船は次第に大きくなる。こっちに近づいているのだ。(人魚が知らせてくれたのだろうか。) 船長からのアナウンスが聞こえた。
「この船は香港行きだ。君たちを救助しよう。」



終章 KAOHSIUNG&タイランド編(ギャルソンの思い出)

 それはまだ百年前にもならない。ジャポネーゼがNAZIと共闘してクダラナイEGOを持って東南アジア侵略をした時代があった。KAOHSIUNGには、其の時代の遺構が残る。だがまだ夏真っ盛りの十月の其の土地では、椰子の木々の気怠い騒めきで、人間のクダラナイEGO等、忘却の彼方へ飛ばされかねない。そんなネイチャーの圧倒性が其処に在った。自然とは恵みであり、時に狂暴なものだ。だが我々の体は汚されたネイチャーの中ではおかしくなってしまう・・・。ネイチャーを狂わせるような原子力を使用する文明は駄目だ。それはすでに原発事故によって知らしめられた。私は『ギャルソン』と呼ばれて久しい。何故仏蘭西語でギャルソンと呼ばれるのかはもう様々な場所で語った事があるが、此れ以上は止そう。ただ、仏蘭西映画はどの国の映画よりも好きだ。数年前、私は東アジアから東南アジアを放浪した。京都から始まり、上海、ソウル、釜山、大邱、香港、広州、恵州、バンコク、アユタヤ、マレーシア迄。共生文化の未来を見た。さて私、ギャルソンは妻の故郷ジャポン・FUKUOKAのカレッジで最近まで暫し教鞭を執って居た。ホトボリヲサマス為だ。多くの出来事が有ったが、私は今もプレジデントとは懇意で居る。自分の在りかたに反省もした。今、私はFUKUOKAエアポートに居る・・・。今しがた、TAIWANドルを四千五百クレジット程購入した。(二万ジャパニーズ円)

 二〇XX年十月二十日。
 プレジデントの呼び出しを受け、17時55分PM発のKAOHSIUNG(高雄)行きフライトに乗るのだ。機はタイガーエア。到着まで約二時間半の飛行と為る。東南アジアは島々から成るゾーンである。これ等はかつて地上で在った土地の高地群の名残であると海洋考古学者らは言う。やがて台湾島が見えてくる。KAOHSIUNGは島の南部に位置する。其の国際エアポートへの着陸寸前に、機はオレンジ色のライトで点灯された巨大インダストリアルエリア上空を通過する。景色は甘美な気怠さに満ちている。
 エアポートに降りると、其処に既にプレジデントが居た。「やあ、ギャルソン。久しぶりだね」プレジデントはいつもの様な落ち着いた面持ちで言った。プレジデントはいつもスマートに事を運ぶ。彼が今の時期をミーティングに選んだ理由は明らかだ。高雄映画祭の期間中なのだ。此の期間、KAOHSIUNGには世界中から人々が訪れる。映画祭とは常にインターナショナルなイベントなのだ。我々は其処に紛れる事が出来る。『映画』という芸術が百年をとうに超えて、その目新しさが然程感じられなくなってさえ、人々は映画という幻惑に引き付けられる。だからこそ、プレジデントは『東マレーシア映画社』の看板を掲げて居るのだろう。其の看板のおかげで、表向きには我々はフィルムインダストリーを装って居る。実際は国際諜報組織なのだが・・・。我々の目的は常に『ワールドピース』と『生命・ライフ』だ。此の原則を譲らない。
 プレジデントは私に言う。「ギャルソン、君のルームは既に用意して居る。まず、此の高雄国際空港からMRTレッドライン地下鉄にライドし、美麗島ステーションへ行く」
 美麗島ステーションで交差する地下鉄路線に乗り換え、ひと駅だ。そのステーションが、信義國小(小学校)駅。其の5番出口から地上に上がり、中正三路を東へ五十メートル歩くと、民族二路と交差する。民族二路を北へ8ブロック歩く。其処が七賢一路。七賢一路を右に曲がり百メートル程行った処に、この町での私の五日間のルーム、RUI・GUホテルが在った。RUI・GUはマイナーだが居心地は良かった。プレジデントは六合夜市に私を連れて行ってくれた。臺灣系チャイニーズのナイトライフは夜市だ。ストリートは煌びやかなライトで彩られナイトマーケットと化す。プレジデントはいつもソコソコのヒントをくれるが、その後は人任せだ。今回も彼はこう云った、「ギャルソン君、では、ここからの探求はお任せするよ。君の探求の旅の出発を記念して其処の屋台で一緒に臭豆腐をいただこう」臭豆腐とは、臺灣フードカルチャーに欠かせないTOFU料理である。プレジデントは此れが大好き。此れと臺灣麦酒。彼は酒が入ると饒舌にも成る。臺灣ナイトマーケットは食べ物に事欠かない。臺灣チョーメン、臺灣ビーフステーキ、ミントティー、ロータスミルクティー、羊肉の串焼き、・・・夜は満腹しながら過ぎて行く。そこでプレジデントは話を切り出すのだ、「ギャルソン君、もう、少しは知っていると思うが、スンダランド文明と人魚グリーンマーメイドの事だ。もう今では一般化した知識だが、今の様に世界規模で陸地が海洋に覆われる前には、ずっとずっと沢山の地表がアジアに在った」
「そうですね」私は応えた。彼は続ける、「海洋遺跡は人類の興味をそそるものだ。多くの意味で明るみに出すべきだろう。しかし、蘇らせてはならない力も在る。グリーンマーメイドの遺跡の封印は解いてはいけなかった・・・・・」
 私は聞き返す、「グリーンマーメイド?」
「そうだよ。ギャルソン君。わたしの調査では、グリーンマーメイドは今の人類の勃興が起きる以前に地球上で最も繁栄した知的生命体だ。ビブリカル・スクリプト『アポカリプス』に記された邪悪な赤色有翼大蛇を地中に閉じ込めた種族でもある。シバリンガムは有翼大蛇レッドドラゴンと其のコントローラーでもある『仮面』を封印していた。動かしてはいけなかったんだ。しかし既にシバリンガム遺構は発見された・・・。これらの出来事の一切をカヴァーストーリーとして封じるのが、『東マレーシア映画社』に託された今回の大仕事と為ったのだ」
 私はプレジデントに尋ねた、「しかし、考古学者のTAKAKURAや、そしてあなたの参謀でもあるクリントらが動いて居ると聞いているが・・・?」
「うむ。たしかに。だが今、彼らは苦戦している。人類の中に悪魔に魂を売った様な連中が居るのだ。其の連中はAI技術を使い、世界の至るところに秘密ロボットメカを派遣し、地球征服を狙って居る。だからTAKAKURAらは、その攻撃に遭って居る」と、プレジデント。
「プレジデント、貴方はスンダランドを秘密のベールに包まれたままにして置く方がいい、そう考えていますね?」
「部分的にはそうだ。今の人類にはまだ・・・」



 我々は六合夜市の福澤カフェでもう一杯ロータスミルクティーをオーダーし、暫し其れを飲みながら夜市を見て居た。プレジデントはふと、脇道(明星街5號)に在る教会を指し、あそこで少し祈ろう、と言った。そうなんだ、いつの時代も、テクノロジーがどんなに進歩しようとも、祈りは大切だ。いや、それこそが大切なんだ。
 アベマリア、アベマリア、アベマリア、全ての呪いを断ち切って下さっているアベマリア・・・。

 翌日プレジデントと私、ギャルソンは、T老師(別名:パンダコウイチロウ・神話学者)とランチの時間を持った。ミルクフィッシュ・スープは此のKAOHSIUNGのローカルグルメとして知る人ぞ知る美味。店に入るとサクソフォン奏者が曲を奏でていた。
 T老師は話好きだ。
「人魚って、いろいろ伝承があるけど、ほんとうに居たんだろうか? 古代神話の中では、後に西遊記の主人公のモデルとなった、東南アジア・インドの伝説ラマヤナに登場する、猿の英雄ハヌマーンの妻が人魚であった、とされる。タイに行ったときに、ハヌマーンの妻の絵が描いてある土産を買った。ハヌマーンの妻も、超自然的な存在としてローカルの信仰対象になっているのだ。大学院のころ、神話リサーチセンターにいた。人類学は結構すきだ。私の信仰的立ち位置のベースは聖書なのだが、比較神話学のキャンベルの研究書はすごくおもしろい」 
 わたしら(T老師、プレジデント、そして私ギャルソン)は記念写真をサッと撮り、ミルクフィッシュのシンプルながら深みあるテイストで楽しい話が出来た。

 古代の事は常に想像の域だ。見て来た訳では無い。それだから面白いとも言える。私、ギャルソンも香港図書館の考古學文献を沢山読んだ。古代から世界はキャラバンによって繋がって来た。ユダヤ人キリスト教徒(ネストリウス派)がユーラシアを横断してジャポンへ行った事も近年話題だ。ジャポン八幡系シュラインは彼らが造ったという。内部に飾られる天狗の様な面がジューイッシュの顔を模したものであると言われている。古代はワンダーだ。

 プレジデントがT老師と会う理由は、ほんとうのところ、老師から『キー』を受け取るためだった。老師は紙袋をプレジデントに渡した、「プレジデント・・・、わたしが発見した此れが、おそらく・・・、ヨーニが一つ欠けていたという、シバリンガム・システムを動かすキーであるとオモイマス・・・」

 TAKAKURAはテサロニケからプレジデントに報告していた様だ。
 シバの妻を模った古代ハイテク・デバイス。それが、『キー』だ。
 そしてT老師は其れを我々に渡した。

***** ***** ***** *****
 かつて世界を支配したい、と目論んだ私だったが今はそんな気は微塵も無い。世界は多様性に満ち、自由で民主的で在るべきだ。だが、かつての私の様に『恐怖』と『怒り』と『憎しみ』に満ちた心で此の世界を我物にしたいと無謀な迄の野心を耕す独裁者らが未だ居るのだ。
***** ***** ***** *****

 さて、私ギャルソンは香港経由でタイランドへ。(場所は伝説の地プーケット) 香港にて、TAKAKURA、クリント、Mに会う。其の場所は名門、香港浸會大學・・・。基督の言葉が書かれた命の木の壁画の前で、我々4人は合流を果たした。

 プレジデントは『キー』を持ち、次元宇宙船でテサロニケへ。

 我々は・・・・・・・、

 香港国際空港からタイ南部迄、『東マレーシア映画社』のチャーター便で約3時間。 
 P.D.コード:N.タイ南部【SOUTH*THAI】から上陸。追手である謎のディクテーターを混乱させるための航路だ。
 別のニセ電波を放って置いたから、奴らは正確には我々の位置は計算出来無いだろう。
 『仮面』とレッドドラゴンは既にサウス・ジャポンからこっちに向かっているとの情報だ。伝説のスンダランドを掌握し、そのパワーで世界を支配するつもりなのだろう。防ぎきれなかったんだ。『怒りと憎しみ』を。人類は・・・。レッドドラゴンに『怒りと憎しみ』という餌を与えてしまったんだ。蘇えらせてしまったんだ・・・。
 私たちはプーケット島上陸後30KM程離れた西岸のPATONGを目指した。

 既に東マレーシア映画社のホワイトジープはタイランド迄輸送済だった。いつもながら準備の良さには感銘を受ける。

 PATONGは観光地として賑わっていた。此処は英雄ハヌマンとその妻である人魚の伝説が生き続ける土地だ。折しも此処が最終決戦場となるのか?
 我々は腹ごしらえにグリーンカレーとヨーグルト飲料を食した。そして、エヴァキュエーション活動を開始した。人々に避難を促した。すると、海にひそかに住んでいた人魚族とその友であるドルフィンたちが人々の避難を総出で助けた!

 テサロニケからLIVEビジュアルが送られて来た・・・・・。
 『キー』が発動したのだ。ヨーニとシバリンガムが合体して、スーパー・グリーンの光が天に届く程の威力をもって輝き、その光が周囲を包んだかと思うと・・・、黄色煙が巻き起こり、動き出した・・・、あの伝説のゴーレム(シバリンガム機械巨人)が・・・!

 ゴーレムは亜空間を作り出し空間に巨大な穴を開け、其の穴を通り抜けてまるで自分の役割を知っているかのようにタイランド・プーケット(PATONG)へ移動した。我々はホワイトジープごと、ゴーレムの頭部に吸い込まれた。有翼大蛇レッドドラゴンが目前へと近づいて来る!
 PATONGは、レッドドラゴンとゴーレム(シバリンガム巨人=シバのアバタールであるハヌマン?)の激突のフィールドとなるのだった。 

 プレジデントは次元宇宙船でタイランドへと駆け付けた。次元宇宙船は暗黒組織に依って蘇生した有翼大蛇(レッドドラゴン)に体当たりする。次元宇宙船のドライブシステムが異常を起こす。タイランド周辺の時空が歪む。其の赤色有翼大蛇と、シバリンガム機械巨人は私達を乗せたまま超古代へとタイムスリップ(時間移動)してしまった・・・・・。(独裁者は時間の彼方へ消滅してしまった。) ゴーレムは、250Mはあろうか、巨大な人型のようでもあり、海中生物のようでもあった。蘇えったレッドドラゴンは、周囲を破壊し、それはまるで地上の全てにディストラクションをもたらすかの様だ・・・。それは飛び、炎を吐き、全てを燃やし、消し飛ばすかのような『憎しみ』だ・・・。レッドドラゴンは人類の『仮面』の下の『憎しみ』なのか・・・? 何故憎しむのか? 何故、怒りを捨てないのか・・・? 己をも破壊する狂気の怒りと憎しみが起きた。あらゆる衝撃は時間を揺るがし消し去った。もはや我々は何時の時代に居るのかさえ分からなかった。ただ、其処に在ったのは、ゆるすことを知らぬ怒りと憎しみだった・・・、そして其れは破壊と消滅だった。ゴーレムは、この破壊と消滅をもたらすものに立ち向かった。衝撃は、古代の町の様なものを(我々は今、古代の町に居るのか・・・?)崩し消す・・・。人々が、山へ丘へ逃げるのが見えた。我々もかろうじて動くホワイトジープで、ゴーレムの足元をかいくぐるように脱出した。多くの脱出者たちが無事に山へ丘へ辿り着くのが見えた。古代の女王は、この全てを見届けようとしていた。丘からは、ゴーレムとレッドドラゴンがぶつかり合って居るのが見えた。レッドドラゴンは其の口から、灼熱の炎をゴーレムに浴びせる。ゴーレムはその神秘の力をもって燃えたぎる炎を無力化しながらレッドドラゴンに体当たりしている。やがてレッドドラゴンはその体を失い、純粋な『憎しみ』と『怒り』の暗黒の炎となっていた・・・。ゴーレムは大いなるエメラルドグリーンの愛の光の粒子が集合した巨大な玉にと、その存在を換えている・・、その光は『憎しみ』と『怒り』の暗黒を包み込み・・、聖母マリアのゆるしの光のような、この世のものとは思えない圧倒的輝きによって暗黒が消滅した・・・・・・! 奇しくも、この日はクリスマスだった。

(c)Jownmakc 2022



*2012からドクターKとスタートしたローマ帝国リサーチの十年分リザルトとして

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