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X3 世界に3つ現存すると噂されるキリストの衣・・・
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香港へのフライト・・・。 約3時間・・・。
香港。ホンコン。HONGKONG。其処はアジア屈指の多民族社会。
PEACH機がHONGKONG国際空港迄、飛行して居た間、プレジデントが所持して居たPAPER資料も見た。我々のHONGKONGでの最終目的地は、香港クリアウォーターベイSB区と在った。
香港に到着すると、我々は、あのジャッキー・チェンが修業した場所として名高い『ミラドール・マンション』のマーケットに向かった。其処のカレー店でプレートをオーダーした。若き日のジャッキーも、此処で食べただろうか。世界のジャッキーファンが、ミラドール・マンション・ビルヂングを訪れたいと願って居る。私達は其処で一瞬映画スターの気持を味わった。此のビルヂングでは主に印度亜大陸系行商人らが、ハイテクショップから、カレー・レストラン迄、幅広く店を営んで居る。我々がテーブル席に着いたクイジンは、ハラル式カレー店だ。チキンカレーとアジア米、悪く無い。カレーを食べながらプレジデントの持ち込みワインを飲んだ。香港は多文化構造の世界、まるでアナザープラネット。プレジデントがモンゴルの乳酸菌飲料を供した。其の後、彼はラジオ付ヘッドフォンステレオ(プレジデント世代はウォークマンが好きだ)をテーブルに置いた。不思議な音楽が鳴り始めた。ふと、私は眠くなって来た・・・。
プレジデントは香港ウォーカーとして上級だ。私は仕事で数回来て居るが実の処香港地理に然程強く無い。プレジデントは私に言った、「DEEP香港をイントロデュースしよう・・・。」彼はまず私にDEEP香港を体験してもらいたい、と重慶マンション(ウォン・カーワイ監督『恋する惑星』舞台の一つ)に宿を取って居た。プレジデントには、重慶マンションに特別の想いが有る。そう云う世代なのだ。重慶マンションから連想する事、其の全てがプレジデントの青春だったはずだ。一九九五年ジェット・トーン・プロダクションズ製作映画『恋する惑星』、ウォン・カーワイ、クリストファー・ドイル、トニー・レオン、フェイ・ウォン、夢中人、タケシ・カネシロ、ブリジット・リン、揺れるスクリーン、・・・其れらは一躍世界的知名度を獲得した。重慶マンションには其の全てが集約されて居るのだ。重慶マンションは歴史に成った。世界映画史の一頁に。前述の映画に於いて、カーワイ監督とクリストファー・ドイル撮影監督は、ココの魅力を余す所無く紹介した。もはやココはメジャー香港で在り、DEEP香港とは言えないのかも知れなかった。
プレジデントと共に香港から船で珠海(ジュハイ)島へ渡った。此れはDEEPな体験だ。珠海でふと鏡を見た。鏡の中の私を見た。「エッ!」(何コレ???)私は、動物のマスクを被って居た。プレジデントは其れを取るよう云う。私はマスクを外した。其れを外した時に再び見た光景に驚いた。私はハラルカレー店奥のソファに只座って居た。今迄見て居た景色、味わった体験は何だったのか?
「VRなんだよ。ワインを飲んだ後から今迄の全ては。ワインの後、君に聴かせた音楽には睡眠効果が有った」プレジデントはそう説明した。私はどう云う事か更に彼に訊いた。プレジデントは言う「クリント君、君が居た場所はVRプログラム『BOATLER』の中だったんだ。世界の選りすぐりのプログラマーに依って構築された、もう一つの地球、・・・とも言える。ほぼ現実の地球上の様に作られて居るが実体は無い。VRだ。余りにリアルで、入り込んで居る事にさえ気付かないだろう?
『BOATLER』は秘密裏にプログラムされたサイバースペースで、現在三十三万人程度のアバタールが加入して居る。VR内アバタールらは皆、内部での移動手段として必ずハイパーボートを所持せねばならない。ハイパーボートで移動すれば、アバタールはVR地球上を何処へでも瞬時に移動出来る。現実世界をゆっくり旅行する事もまま成ら無い多忙なメイトらが加入して居る。彼らは、オモイオモイの姿のアバタールに成り変わって居る場合も多い。或る者はアニメに、或る者は動物に、或る者は人形に・・・・。」
其の時、ギャルソンと名乗る者が現れた。
##### 登場人物 GARCON (ギャルソン):
【彼の風貌はワイルドそのものだ。白いカウボーイハットと『サイバーグラス』と呼ばれるサングラス。黒のライダージャケットにパンタロン&ブーツ。怪人フーマンチューのような、サルバドール・ダリのようなファッショナブルな髭が自慢だ。だが彼はアルコールをせずポルトガルのスイーツとカフェにたっぷり蜂蜜を入れたものを食するのが好み】
ギャルソンは現在、オーストラリアに暮らして居る。本名は謎だがギャルソン(給仕)と呼ばれる。天才的な助っ人で在った事が由来して居るらしい。彼はかつて冒険家だったが、其の旅の生活に別れを告げ、今は静かに妻とオーストラリアにて暮らして居る・・・。だが時々、昔の何かが疼くのか、香港の秘密のジャングルに隠された彼のラボに自家用機で行き、暫し何かの研究をして居るらしい。其の隠れ家は、かつてアジアを席巻した映画スタジオ、しかし、失われた映画スタジオ、もう、誰も其処に出入りする事の無い、シークレットゾーンに在る。失われたスタジオは、人知れずジャングルに為って居たのだ・・・。スタジオの奥(裏側)、其処は誰も知らないジャングル。其処に人知れず、ゲルが建って居る。其れは、ギャルソンの隠れ家。ギャルソンは『ゲル育ち』なのだ。其れを懐かしみ、此処にゲルを建てて居る。だが、中は、ハイテクで満ちて居る。世界のデータを此の中で、入手出来る。CIAにも並ぶ情報収集ネットだ。ギャルソンは又、黒澤明監督『影武者』が撮影された姫路城のファンでも在る。其処に隠されて居た、忍法書を持って居る様だ。
やがて、TAKAKURAが到着した、「あっ、プレジデント。やっぱり此のハラル・カレー屋に居たんですね。プレジデントは此処が好きだから! 多分ここにいるんじゃないかって思ったんだ。 あれっ? 此のひとは?」
プレジデントは言う、「此れはギャルソン。今回のリサーチメンバーは、ミスターTAKAKURA、きみと、そして、クリント君、さらに、此のギャルソンだ」
***香港クリアウォーターベイSB区***
【そこは、前述の理由から、ひとしれず映画ファンの聖地となっている。『ジャングルと化した映画スタジオ』と称されながら・・・。自然がコンクリートを呑み込む・・・。南方樹林群が人工物を覆い隠す。千年も前の遺跡のようになる・・・】
其処はギャルソンの隠れ家。(皮肉な事に謎のフィルムは此の傍で撮影された)
ギャルソンはVRプログラム『BOATLER』にも詳しい。ギャルソンは説明する、・・・ ・・・
此のVR世界BOATLERのアクセスメンバーは三十三万人。
其の内、四百人がVIPメンバーと呼ばれて居る。
VIPは、BOATLER*WORLDインサイドに自己デザイン可能なLAND(ランド)を買って居る。LANDは所有者VIPの趣味で彩られた仮想地区。他のアクセスメンバーに開放されたフリーLANDも在るが、入場料を支払って入るLANDも多い。最近人気は、ANIME LAND 8801だ。反重力で仮想香港の空に浮かぶLANDで在る。其処に入ると、アニメの世界に入った様なVRアピアランスが広がる。ANIME LANDでは入場に伴ない、自動的にBOATLERらはアニメ化される。(アニメ風アバタールで無い者もアニメ風に描き換えられる。)そういう面白LANDだ。
兎に角、BOATLER*WORLDは地球そっくりに作って在り、リサーチ時間を短縮出来る様だ。そして、或る独裁国家の製造したロボット『メカヘッド』が我々を探し回って居る事も知らされた。(プレジデントは、其の事を私に注意した。)我々は香港映画資料館ライブラリ等をはじめ、くまなく香港を探索。新たな手掛かりが見つからず、暫し解散した。(私、クリントは馴染みの町の在るシシリーに戻った。)
イタリアの南、シシリー島へ向かうカーフェリーの港に着いた。出港迄、二時間有る。『東マレーシア映画社』から借りて居るホワイトジープでシシリーに向かって居る所だ。シシリーは南国、私は寒さが苦手だからシシリーが好きだ。若者はシシリーが余りの田舎故に出たがる。(名作映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のトトもそうだった。) 若者は総じて田舎が嫌いだ・・・。若い頃は其れで良い。だが今の私にとって、シシリーは静かで他人に邪魔されず何かを考察するには良いカントリーサイドだ。フェリーは五時十五分から車両積載が始まる。私は休暇はエレクトリックパッドを持ち歩か無いので、車両積載時間を忘れぬ様、記す為にカズオ・イシグロのペーパーバックの余白を利用した。
フェリーでシシリーへ渡り、島の『アンヘルアパルトマン』に借りて居る部屋から、香港で加入したBOATLERにアクセスした。此のVRでのVIPは無作為に選ばれる様だが、何故か私はVIPメンバーに成って居た・・・・・。暫しシシリーで過ごした。毎日の様にBOATLERにアクセスして居た。
そんな或る日・・・。
私は其の時、BOATLER*WORLD内のお気に入りLANDに為って居た、ANIME LANDに居た。もう随分長居して居た。ANIME LANDには『クラブ・ココナツグローブ』と云うリゾートが在り、其のリゾートは南国風の風物や背景がアニメ化されて居て、アニメ世代の私には夢の中に滞在して居る様な心地よさが感じられるのだ。此処はVRならではのハチャメチャさも有った。リゾート内には『おりおん』というマイアミ風のカフェが在るが、隣には北京風の茶屋レストランも在る。其の向うには『イタリア・トスカーナ荒野』と名付けられた南欧の乾いた風景がアニメ化されて居る。全てルンバ女史とか云う所有者VIPの趣味らしい。だが私は其れを気に入り、カフェ『おりおん』の傍に長期滞在し、毎日の様に『おりおん』に居た。客らとも顔馴染みに為った。
此処に来るBOATLER達は、別に海の男でも無いのだが、海の男風の内装が好きらしかった。馴染みの女性客らも出来た。グリーンレディ・アニタやシャンシャンとは親しくなった。(だが、バーチャル世界だけでの事だ。)私は余りに此の『おりおん』が気に入ってしまい、此処にピジョンホール(私書箱)を設置し、クラシックな絵葉書を此処で受け取ったり送ったり出来る設定をした。暫くすると、此処で知り合ったBOATLER達が絵葉書を送ってくれる様に為った。アニタはカーマニアの女性で、私に小型二人乗りヨーロッパ車の様な外見のハイパーボートを勧めてくれた。彼女は、其のハイパーボートでバーチャル香港をドライブすると最高だと云う。注文した。VR世界では注文すると即座に納品される。『おりおん』の横のマングローブ林に囲まれた中庭に注文のハイパーボートが来た。良い感じだ。ハイパーボートをアニタと見て居た其の時、シャンシャンが(バーチャル)恋人と『おりおん』に入って行くのが見えた。 ANIME LANDでは、お互い趣味の合う者同士が(バーチャル)恋人と成って居る事が多い。私はアニタとバーチャル香港ドライブに出た。
そうこうして居る内に、なんと、TAKAKURAとギャルソンが、実は生き別れた兄弟だった事が判明。事件は何時の間にか動いて居た。TAKAKURA、ギャルソンらはジャングルと化した映画スタジオで『ランラン・ショウの手記』を発見したのだ。其処に書かれて居たのは、或るマケドニア正教会聖堂にイエス・キリストの奇跡の衣を隠した、と云う事だった。
私、クリントはマケドニアに飛び、其の聖堂をBOATLER*WORLDのVR上に再現した。
私、クリントは、ギャルソンとVR世界で再会・・・。
ギャルソンとVRで再現されたマケドニア正教会聖堂へ入る。聖堂内には階段が在り、鐘楼へ続く階段が不自然に長い・・・。実は階段の途中の壁に隠し扉が在ったのだ。私、クリントは其の部分までしっかりとBOATLER*WORLD内にVR再現した聖堂を作りこんで居た。
(クリント:)「此処だよ、此処に隠し部屋が在る。」
(ギャルソン:)「なる程、クリント君、流石だ。よく作り込んで居る。」
我々二人は隠し部屋へ入った。其処には三百六十度壁一面に巨大な壁画が在る! 昔の町の光景だ。鍛冶屋、本屋、服屋、馬小屋、宝石屋、パン屋、学校、薬屋が描かれて居る・・・。
(クリント:)「独裁者から秘宝を守り、眩ませる為にかつて修道士らと共にミスター・ショウは其れを絵画に隠したのだな。」
(ギャルソン:)「手記によるとキーワードは、『イエズス・クリストの生まれた場所を探せ』・・・だ。」
(其処へ追って現れたTAKAKURA:)「 (気取り笑) ハッハッハ。で、貴方達は馬小屋の絵に何か在る、と思ったろう? 其れが甘いんだな、イエズス・クリストはベツレヘムで生まれた・・・。ベツレヘム、ベイト・レームの二語から成る単語、ヘブライ語だ。意味は、『パンの、家』だ・・・、分かったろう?」
[実体]がマケドニアに最も近い私クリントが、実際の聖堂隠し部屋のパン屋の壁画奥から秘宝{聖衣}を見つけ出した。そして聖堂を出てジープに乗った所で、『奴』(メカヘッド)のヘリの急襲に遭った!
私クリントはホワイトジープの中。ヘリがホワイトジープにミサイル発射。爆発でジープは崖から湖底へ落下。私クリントの意識が遠のく。
暗闇に一瞬、眩い光が近づき遠ざかる。
パワーアウトしたかに見えたホワイトジープ内の計器が次々に再点灯。私は意識を取り戻した! 車内モニターにプレジデントが映る。
(プレジデント:)「クリント君、其の程度では壊れはしない、私のホワイトジープはね、『グリーンホーネット』のケイトーがやった程度は改造して在るんだ」
私は其のまま湖底をドライブし、対岸の草むらから陸に上がった。そしてテサロニケ迄、其のままホワイトジープで向かった。
(後で聞いた話だ、)プレジデントは其の頃、テサロニケのTAKAKURAに連絡を取って居た。TAKAKURAは、テサロニケの行き着けのパスタバー(タバーン)でプレジデントからの音声通信を受けた。
(プレジデント:)「大学生のころ、映画について語るために、友人らと夜じゅうレストランやカフェでかたったりした日々があった。あの時代、「映画」はいつも一つの事件だった。Twenty something years later...時代過ぎ、私は夜じゅうVRにアクセスしている」
(TAKAKURA:)「そうですね、90年代、映画は事件で在り体験でした」
(プレジデント:)「今は映画を体験出来る時代と言えるかも知れない」
(TAKAKURA:)「用件は?」
(プレジデント:)「体験せよ、BUSAN-b」
(TAKAKURAは:)「は?」 (プレジデント:)「これを見てくれ。」
TAKAKURAのVRゴーグルにCMが入った。
@@@@@ @@@@@ @@@@@
BUSAN広域市そっくりに、VRスペース上に構築された仮想LAND。ハードボイルドなアバタールらが闊歩する。
アランドロンを超えた! ハードボイルド・エンターテインメント、『BUSAN-b』
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香港。ホンコン。HONGKONG。其処はアジア屈指の多民族社会。
PEACH機がHONGKONG国際空港迄、飛行して居た間、プレジデントが所持して居たPAPER資料も見た。我々のHONGKONGでの最終目的地は、香港クリアウォーターベイSB区と在った。
香港に到着すると、我々は、あのジャッキー・チェンが修業した場所として名高い『ミラドール・マンション』のマーケットに向かった。其処のカレー店でプレートをオーダーした。若き日のジャッキーも、此処で食べただろうか。世界のジャッキーファンが、ミラドール・マンション・ビルヂングを訪れたいと願って居る。私達は其処で一瞬映画スターの気持を味わった。此のビルヂングでは主に印度亜大陸系行商人らが、ハイテクショップから、カレー・レストラン迄、幅広く店を営んで居る。我々がテーブル席に着いたクイジンは、ハラル式カレー店だ。チキンカレーとアジア米、悪く無い。カレーを食べながらプレジデントの持ち込みワインを飲んだ。香港は多文化構造の世界、まるでアナザープラネット。プレジデントがモンゴルの乳酸菌飲料を供した。其の後、彼はラジオ付ヘッドフォンステレオ(プレジデント世代はウォークマンが好きだ)をテーブルに置いた。不思議な音楽が鳴り始めた。ふと、私は眠くなって来た・・・。
プレジデントは香港ウォーカーとして上級だ。私は仕事で数回来て居るが実の処香港地理に然程強く無い。プレジデントは私に言った、「DEEP香港をイントロデュースしよう・・・。」彼はまず私にDEEP香港を体験してもらいたい、と重慶マンション(ウォン・カーワイ監督『恋する惑星』舞台の一つ)に宿を取って居た。プレジデントには、重慶マンションに特別の想いが有る。そう云う世代なのだ。重慶マンションから連想する事、其の全てがプレジデントの青春だったはずだ。一九九五年ジェット・トーン・プロダクションズ製作映画『恋する惑星』、ウォン・カーワイ、クリストファー・ドイル、トニー・レオン、フェイ・ウォン、夢中人、タケシ・カネシロ、ブリジット・リン、揺れるスクリーン、・・・其れらは一躍世界的知名度を獲得した。重慶マンションには其の全てが集約されて居るのだ。重慶マンションは歴史に成った。世界映画史の一頁に。前述の映画に於いて、カーワイ監督とクリストファー・ドイル撮影監督は、ココの魅力を余す所無く紹介した。もはやココはメジャー香港で在り、DEEP香港とは言えないのかも知れなかった。
プレジデントと共に香港から船で珠海(ジュハイ)島へ渡った。此れはDEEPな体験だ。珠海でふと鏡を見た。鏡の中の私を見た。「エッ!」(何コレ???)私は、動物のマスクを被って居た。プレジデントは其れを取るよう云う。私はマスクを外した。其れを外した時に再び見た光景に驚いた。私はハラルカレー店奥のソファに只座って居た。今迄見て居た景色、味わった体験は何だったのか?
「VRなんだよ。ワインを飲んだ後から今迄の全ては。ワインの後、君に聴かせた音楽には睡眠効果が有った」プレジデントはそう説明した。私はどう云う事か更に彼に訊いた。プレジデントは言う「クリント君、君が居た場所はVRプログラム『BOATLER』の中だったんだ。世界の選りすぐりのプログラマーに依って構築された、もう一つの地球、・・・とも言える。ほぼ現実の地球上の様に作られて居るが実体は無い。VRだ。余りにリアルで、入り込んで居る事にさえ気付かないだろう?
『BOATLER』は秘密裏にプログラムされたサイバースペースで、現在三十三万人程度のアバタールが加入して居る。VR内アバタールらは皆、内部での移動手段として必ずハイパーボートを所持せねばならない。ハイパーボートで移動すれば、アバタールはVR地球上を何処へでも瞬時に移動出来る。現実世界をゆっくり旅行する事もまま成ら無い多忙なメイトらが加入して居る。彼らは、オモイオモイの姿のアバタールに成り変わって居る場合も多い。或る者はアニメに、或る者は動物に、或る者は人形に・・・・。」
其の時、ギャルソンと名乗る者が現れた。
##### 登場人物 GARCON (ギャルソン):
【彼の風貌はワイルドそのものだ。白いカウボーイハットと『サイバーグラス』と呼ばれるサングラス。黒のライダージャケットにパンタロン&ブーツ。怪人フーマンチューのような、サルバドール・ダリのようなファッショナブルな髭が自慢だ。だが彼はアルコールをせずポルトガルのスイーツとカフェにたっぷり蜂蜜を入れたものを食するのが好み】
ギャルソンは現在、オーストラリアに暮らして居る。本名は謎だがギャルソン(給仕)と呼ばれる。天才的な助っ人で在った事が由来して居るらしい。彼はかつて冒険家だったが、其の旅の生活に別れを告げ、今は静かに妻とオーストラリアにて暮らして居る・・・。だが時々、昔の何かが疼くのか、香港の秘密のジャングルに隠された彼のラボに自家用機で行き、暫し何かの研究をして居るらしい。其の隠れ家は、かつてアジアを席巻した映画スタジオ、しかし、失われた映画スタジオ、もう、誰も其処に出入りする事の無い、シークレットゾーンに在る。失われたスタジオは、人知れずジャングルに為って居たのだ・・・。スタジオの奥(裏側)、其処は誰も知らないジャングル。其処に人知れず、ゲルが建って居る。其れは、ギャルソンの隠れ家。ギャルソンは『ゲル育ち』なのだ。其れを懐かしみ、此処にゲルを建てて居る。だが、中は、ハイテクで満ちて居る。世界のデータを此の中で、入手出来る。CIAにも並ぶ情報収集ネットだ。ギャルソンは又、黒澤明監督『影武者』が撮影された姫路城のファンでも在る。其処に隠されて居た、忍法書を持って居る様だ。
やがて、TAKAKURAが到着した、「あっ、プレジデント。やっぱり此のハラル・カレー屋に居たんですね。プレジデントは此処が好きだから! 多分ここにいるんじゃないかって思ったんだ。 あれっ? 此のひとは?」
プレジデントは言う、「此れはギャルソン。今回のリサーチメンバーは、ミスターTAKAKURA、きみと、そして、クリント君、さらに、此のギャルソンだ」
***香港クリアウォーターベイSB区***
【そこは、前述の理由から、ひとしれず映画ファンの聖地となっている。『ジャングルと化した映画スタジオ』と称されながら・・・。自然がコンクリートを呑み込む・・・。南方樹林群が人工物を覆い隠す。千年も前の遺跡のようになる・・・】
其処はギャルソンの隠れ家。(皮肉な事に謎のフィルムは此の傍で撮影された)
ギャルソンはVRプログラム『BOATLER』にも詳しい。ギャルソンは説明する、・・・ ・・・
此のVR世界BOATLERのアクセスメンバーは三十三万人。
其の内、四百人がVIPメンバーと呼ばれて居る。
VIPは、BOATLER*WORLDインサイドに自己デザイン可能なLAND(ランド)を買って居る。LANDは所有者VIPの趣味で彩られた仮想地区。他のアクセスメンバーに開放されたフリーLANDも在るが、入場料を支払って入るLANDも多い。最近人気は、ANIME LAND 8801だ。反重力で仮想香港の空に浮かぶLANDで在る。其処に入ると、アニメの世界に入った様なVRアピアランスが広がる。ANIME LANDでは入場に伴ない、自動的にBOATLERらはアニメ化される。(アニメ風アバタールで無い者もアニメ風に描き換えられる。)そういう面白LANDだ。
兎に角、BOATLER*WORLDは地球そっくりに作って在り、リサーチ時間を短縮出来る様だ。そして、或る独裁国家の製造したロボット『メカヘッド』が我々を探し回って居る事も知らされた。(プレジデントは、其の事を私に注意した。)我々は香港映画資料館ライブラリ等をはじめ、くまなく香港を探索。新たな手掛かりが見つからず、暫し解散した。(私、クリントは馴染みの町の在るシシリーに戻った。)
イタリアの南、シシリー島へ向かうカーフェリーの港に着いた。出港迄、二時間有る。『東マレーシア映画社』から借りて居るホワイトジープでシシリーに向かって居る所だ。シシリーは南国、私は寒さが苦手だからシシリーが好きだ。若者はシシリーが余りの田舎故に出たがる。(名作映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のトトもそうだった。) 若者は総じて田舎が嫌いだ・・・。若い頃は其れで良い。だが今の私にとって、シシリーは静かで他人に邪魔されず何かを考察するには良いカントリーサイドだ。フェリーは五時十五分から車両積載が始まる。私は休暇はエレクトリックパッドを持ち歩か無いので、車両積載時間を忘れぬ様、記す為にカズオ・イシグロのペーパーバックの余白を利用した。
フェリーでシシリーへ渡り、島の『アンヘルアパルトマン』に借りて居る部屋から、香港で加入したBOATLERにアクセスした。此のVRでのVIPは無作為に選ばれる様だが、何故か私はVIPメンバーに成って居た・・・・・。暫しシシリーで過ごした。毎日の様にBOATLERにアクセスして居た。
そんな或る日・・・。
私は其の時、BOATLER*WORLD内のお気に入りLANDに為って居た、ANIME LANDに居た。もう随分長居して居た。ANIME LANDには『クラブ・ココナツグローブ』と云うリゾートが在り、其のリゾートは南国風の風物や背景がアニメ化されて居て、アニメ世代の私には夢の中に滞在して居る様な心地よさが感じられるのだ。此処はVRならではのハチャメチャさも有った。リゾート内には『おりおん』というマイアミ風のカフェが在るが、隣には北京風の茶屋レストランも在る。其の向うには『イタリア・トスカーナ荒野』と名付けられた南欧の乾いた風景がアニメ化されて居る。全てルンバ女史とか云う所有者VIPの趣味らしい。だが私は其れを気に入り、カフェ『おりおん』の傍に長期滞在し、毎日の様に『おりおん』に居た。客らとも顔馴染みに為った。
此処に来るBOATLER達は、別に海の男でも無いのだが、海の男風の内装が好きらしかった。馴染みの女性客らも出来た。グリーンレディ・アニタやシャンシャンとは親しくなった。(だが、バーチャル世界だけでの事だ。)私は余りに此の『おりおん』が気に入ってしまい、此処にピジョンホール(私書箱)を設置し、クラシックな絵葉書を此処で受け取ったり送ったり出来る設定をした。暫くすると、此処で知り合ったBOATLER達が絵葉書を送ってくれる様に為った。アニタはカーマニアの女性で、私に小型二人乗りヨーロッパ車の様な外見のハイパーボートを勧めてくれた。彼女は、其のハイパーボートでバーチャル香港をドライブすると最高だと云う。注文した。VR世界では注文すると即座に納品される。『おりおん』の横のマングローブ林に囲まれた中庭に注文のハイパーボートが来た。良い感じだ。ハイパーボートをアニタと見て居た其の時、シャンシャンが(バーチャル)恋人と『おりおん』に入って行くのが見えた。 ANIME LANDでは、お互い趣味の合う者同士が(バーチャル)恋人と成って居る事が多い。私はアニタとバーチャル香港ドライブに出た。
そうこうして居る内に、なんと、TAKAKURAとギャルソンが、実は生き別れた兄弟だった事が判明。事件は何時の間にか動いて居た。TAKAKURA、ギャルソンらはジャングルと化した映画スタジオで『ランラン・ショウの手記』を発見したのだ。其処に書かれて居たのは、或るマケドニア正教会聖堂にイエス・キリストの奇跡の衣を隠した、と云う事だった。
私、クリントはマケドニアに飛び、其の聖堂をBOATLER*WORLDのVR上に再現した。
私、クリントは、ギャルソンとVR世界で再会・・・。
ギャルソンとVRで再現されたマケドニア正教会聖堂へ入る。聖堂内には階段が在り、鐘楼へ続く階段が不自然に長い・・・。実は階段の途中の壁に隠し扉が在ったのだ。私、クリントは其の部分までしっかりとBOATLER*WORLD内にVR再現した聖堂を作りこんで居た。
(クリント:)「此処だよ、此処に隠し部屋が在る。」
(ギャルソン:)「なる程、クリント君、流石だ。よく作り込んで居る。」
我々二人は隠し部屋へ入った。其処には三百六十度壁一面に巨大な壁画が在る! 昔の町の光景だ。鍛冶屋、本屋、服屋、馬小屋、宝石屋、パン屋、学校、薬屋が描かれて居る・・・。
(クリント:)「独裁者から秘宝を守り、眩ませる為にかつて修道士らと共にミスター・ショウは其れを絵画に隠したのだな。」
(ギャルソン:)「手記によるとキーワードは、『イエズス・クリストの生まれた場所を探せ』・・・だ。」
(其処へ追って現れたTAKAKURA:)「 (気取り笑) ハッハッハ。で、貴方達は馬小屋の絵に何か在る、と思ったろう? 其れが甘いんだな、イエズス・クリストはベツレヘムで生まれた・・・。ベツレヘム、ベイト・レームの二語から成る単語、ヘブライ語だ。意味は、『パンの、家』だ・・・、分かったろう?」
[実体]がマケドニアに最も近い私クリントが、実際の聖堂隠し部屋のパン屋の壁画奥から秘宝{聖衣}を見つけ出した。そして聖堂を出てジープに乗った所で、『奴』(メカヘッド)のヘリの急襲に遭った!
私クリントはホワイトジープの中。ヘリがホワイトジープにミサイル発射。爆発でジープは崖から湖底へ落下。私クリントの意識が遠のく。
暗闇に一瞬、眩い光が近づき遠ざかる。
パワーアウトしたかに見えたホワイトジープ内の計器が次々に再点灯。私は意識を取り戻した! 車内モニターにプレジデントが映る。
(プレジデント:)「クリント君、其の程度では壊れはしない、私のホワイトジープはね、『グリーンホーネット』のケイトーがやった程度は改造して在るんだ」
私は其のまま湖底をドライブし、対岸の草むらから陸に上がった。そしてテサロニケ迄、其のままホワイトジープで向かった。
(後で聞いた話だ、)プレジデントは其の頃、テサロニケのTAKAKURAに連絡を取って居た。TAKAKURAは、テサロニケの行き着けのパスタバー(タバーン)でプレジデントからの音声通信を受けた。
(プレジデント:)「大学生のころ、映画について語るために、友人らと夜じゅうレストランやカフェでかたったりした日々があった。あの時代、「映画」はいつも一つの事件だった。Twenty something years later...時代過ぎ、私は夜じゅうVRにアクセスしている」
(TAKAKURA:)「そうですね、90年代、映画は事件で在り体験でした」
(プレジデント:)「今は映画を体験出来る時代と言えるかも知れない」
(TAKAKURA:)「用件は?」
(プレジデント:)「体験せよ、BUSAN-b」
(TAKAKURAは:)「は?」 (プレジデント:)「これを見てくれ。」
TAKAKURAのVRゴーグルにCMが入った。
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BUSAN広域市そっくりに、VRスペース上に構築された仮想LAND。ハードボイルドなアバタールらが闊歩する。
アランドロンを超えた! ハードボイルド・エンターテインメント、『BUSAN-b』
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