24 / 27
第二章 逃亡者と幼馴染
素人
しおりを挟む
「ひぃいいいい!」
「……」
癒羅と刹樹は広い庭園の中を走る。その後ろを、
「まてぇえええええ!ぐへへへへ!」
と追いかけてくるジュノアだ。
「気持ち悪い……」
「何で刹樹ちゃんは冷静なのぉおおおお!」
ヒィヒィ言いながら走る癒羅に、刹樹は涼しい顔だ。
「叫ぶと無駄に体力を消費しますよ?」
「分かってるけどぉ!」
勇者になって体力も上がったが、それでも癒羅は元々運動しない。と言うか、運動音痴だ。
対して刹樹は現役で新体操部に所属しているので、流石と言うべきなのか、息を乱さず走っている。
そして二人はそのまま角を曲がり、
「逃がすかぁ!」
ジュノアも追って角を曲がると、
「うぉ!」
待ち構えていた刹樹がナイフをジュノアに向かって突き出すが、
「あぶねぇあぶねぇ」
それを避け、後ろに下がるジュノアだが、刹樹はナイフをブンブン振り回しながら追い詰めるが、
「よっと!」
ジュノアはナイフを人差し指と中指で挟むようにして白羽取りしてきた。
「お前、素人だな?」
「……」
刹樹は何も語らないが、ジュノアには直ぐに分かった。
ナイフの握りかたからして、完全に素人。
「お前転生者だろ?良くいるんだよ。能力貰うと使ったこともない武器を使うやつがよ。バカだよなぁ。幾ら身体能力の向上とかの恩恵を受けれるとはいえ、ろくに使ったこともない武器なんざなんの役のもたちやしねぇよ!」
「っ!」
ドス!と腹部を蹴られ、刹樹は胃から競り上がってきたものを口から吐き出しながら、地面を転がった。
「さ、刹樹ちゃん!」
そこに癒羅が駆け寄り、刹樹に呼び掛けると、刹樹も大丈夫だと言いながら立ち上がる。
正直、結構キツいのは確かだった。そもそも刹樹は戦闘経験はない。空は勿論、美矢のように弓術を修めたわけではなく、中学時代から続けていた新体操部で鍛えた身軽さのみだ。
そのため肉体的なスペックで言うなら、十分素のままでも高い。だがそれを戦闘に生かせるかは別の話だった。
「へぇ、素人にしては冷静だな」
「良く言われます」
昔から良く感情がないと言われる。新体操でも、動きはいいのに表現が出来てないと言われてもいた。
余り口が達者な訳でもないし、表情も乏しい。これでも大分勇誠と出会って改善した方だ。まぁそれはさておき、
「では撤収です」
「そ、そうだね!」
刹樹と癒羅はクルリと背を向けて走り出す。
「はぁ!?ちょっと待てよ!」
ジュノアは一瞬呆気に取られ、反応が遅れたものの、急いで追い掛け出した。
今回の戦いは、当然のことだが勇誠は反対している。厳密には、こういう風の別れてたたかうことにだが。
理由は危険すぎるから。だがそれでも、最終的には美矢が説き伏せ、こういう風になった。
とは言え、普通にやっても勝てないのは100も承知している。
刹樹も癒羅も幾ら勇者になってるとは言え一般人だ。だから、
「戦える者がやる。ですわ」
「っ!」
突如ジュノアの右足に激痛が走り、そのまま地面を転がる。
「あ……が!こ、これは!」
右太股に深々と刺さった矢を見て、ジュノアが驚愕すると、続けざまに右腕に矢が刺さった。
「あぎゃ!」
ど、どこから!?とジュノアがキョロキョロ見回すが、近くに弓矢を構える人影はない。
そんな中、美矢は構えていた弓を下ろして息を吐く。
「間に合いましたわね」
庭園は入り組んでおり、迷路のような作りだ。しかし、所々に隙間のように、遠くから狙撃できるポイントがある。
マクアを倒した美矢は、そこからジュノアを狙撃した。それだけだ。
刹樹と癒羅はその為に時間を稼ぎつつ、適度にジュノアを誘い込んでくれた。
因みに準備完了の合図は手鏡を月明かりに反射させるという酷く原始的な方法で、下手するとジュノアにまで気づかれる可能性があった。まぁそうならないように刹樹も上手く視線を誘導してはくれてたが。
そして準備が終われば後は美矢がジュノアを狙撃するだけ。
「急所は外しておきましたし、問題はありませんわね」
そんなことを呟く中、刹樹と癒羅はジュノアに近付き、
「ま、待て!い、命だけは」
『……』
突然の命乞いに、刹樹と癒羅は眼を合わせつつも、
「えい!」
「……」
刹樹と癒羅は飛び上がり、そのまま落下。
「ぐぇ!」
そしてヒップドロップを決めると、ジュノアは白目を剥いて気絶した。
「そ、そんなに私重かったかな?」
「まぁ癒羅先輩は大きいので」
「そう?身長そんなに変わらないよ?」
いや色々大きい。と刹樹は癒羅の胸やお尻を見つつ、自分の体を見て思う。
まぁ刹樹も貧相なわけではなく、運動部特有の引き締まった綺麗な体型なだけだ。
「まぁ、取り敢えず……」
「うん。こっちは終わりだね」
と二人は言い合い、ハイタッチを交わすのだった。
「……」
癒羅と刹樹は広い庭園の中を走る。その後ろを、
「まてぇえええええ!ぐへへへへ!」
と追いかけてくるジュノアだ。
「気持ち悪い……」
「何で刹樹ちゃんは冷静なのぉおおおお!」
ヒィヒィ言いながら走る癒羅に、刹樹は涼しい顔だ。
「叫ぶと無駄に体力を消費しますよ?」
「分かってるけどぉ!」
勇者になって体力も上がったが、それでも癒羅は元々運動しない。と言うか、運動音痴だ。
対して刹樹は現役で新体操部に所属しているので、流石と言うべきなのか、息を乱さず走っている。
そして二人はそのまま角を曲がり、
「逃がすかぁ!」
ジュノアも追って角を曲がると、
「うぉ!」
待ち構えていた刹樹がナイフをジュノアに向かって突き出すが、
「あぶねぇあぶねぇ」
それを避け、後ろに下がるジュノアだが、刹樹はナイフをブンブン振り回しながら追い詰めるが、
「よっと!」
ジュノアはナイフを人差し指と中指で挟むようにして白羽取りしてきた。
「お前、素人だな?」
「……」
刹樹は何も語らないが、ジュノアには直ぐに分かった。
ナイフの握りかたからして、完全に素人。
「お前転生者だろ?良くいるんだよ。能力貰うと使ったこともない武器を使うやつがよ。バカだよなぁ。幾ら身体能力の向上とかの恩恵を受けれるとはいえ、ろくに使ったこともない武器なんざなんの役のもたちやしねぇよ!」
「っ!」
ドス!と腹部を蹴られ、刹樹は胃から競り上がってきたものを口から吐き出しながら、地面を転がった。
「さ、刹樹ちゃん!」
そこに癒羅が駆け寄り、刹樹に呼び掛けると、刹樹も大丈夫だと言いながら立ち上がる。
正直、結構キツいのは確かだった。そもそも刹樹は戦闘経験はない。空は勿論、美矢のように弓術を修めたわけではなく、中学時代から続けていた新体操部で鍛えた身軽さのみだ。
そのため肉体的なスペックで言うなら、十分素のままでも高い。だがそれを戦闘に生かせるかは別の話だった。
「へぇ、素人にしては冷静だな」
「良く言われます」
昔から良く感情がないと言われる。新体操でも、動きはいいのに表現が出来てないと言われてもいた。
余り口が達者な訳でもないし、表情も乏しい。これでも大分勇誠と出会って改善した方だ。まぁそれはさておき、
「では撤収です」
「そ、そうだね!」
刹樹と癒羅はクルリと背を向けて走り出す。
「はぁ!?ちょっと待てよ!」
ジュノアは一瞬呆気に取られ、反応が遅れたものの、急いで追い掛け出した。
今回の戦いは、当然のことだが勇誠は反対している。厳密には、こういう風の別れてたたかうことにだが。
理由は危険すぎるから。だがそれでも、最終的には美矢が説き伏せ、こういう風になった。
とは言え、普通にやっても勝てないのは100も承知している。
刹樹も癒羅も幾ら勇者になってるとは言え一般人だ。だから、
「戦える者がやる。ですわ」
「っ!」
突如ジュノアの右足に激痛が走り、そのまま地面を転がる。
「あ……が!こ、これは!」
右太股に深々と刺さった矢を見て、ジュノアが驚愕すると、続けざまに右腕に矢が刺さった。
「あぎゃ!」
ど、どこから!?とジュノアがキョロキョロ見回すが、近くに弓矢を構える人影はない。
そんな中、美矢は構えていた弓を下ろして息を吐く。
「間に合いましたわね」
庭園は入り組んでおり、迷路のような作りだ。しかし、所々に隙間のように、遠くから狙撃できるポイントがある。
マクアを倒した美矢は、そこからジュノアを狙撃した。それだけだ。
刹樹と癒羅はその為に時間を稼ぎつつ、適度にジュノアを誘い込んでくれた。
因みに準備完了の合図は手鏡を月明かりに反射させるという酷く原始的な方法で、下手するとジュノアにまで気づかれる可能性があった。まぁそうならないように刹樹も上手く視線を誘導してはくれてたが。
そして準備が終われば後は美矢がジュノアを狙撃するだけ。
「急所は外しておきましたし、問題はありませんわね」
そんなことを呟く中、刹樹と癒羅はジュノアに近付き、
「ま、待て!い、命だけは」
『……』
突然の命乞いに、刹樹と癒羅は眼を合わせつつも、
「えい!」
「……」
刹樹と癒羅は飛び上がり、そのまま落下。
「ぐぇ!」
そしてヒップドロップを決めると、ジュノアは白目を剥いて気絶した。
「そ、そんなに私重かったかな?」
「まぁ癒羅先輩は大きいので」
「そう?身長そんなに変わらないよ?」
いや色々大きい。と刹樹は癒羅の胸やお尻を見つつ、自分の体を見て思う。
まぁ刹樹も貧相なわけではなく、運動部特有の引き締まった綺麗な体型なだけだ。
「まぁ、取り敢えず……」
「うん。こっちは終わりだね」
と二人は言い合い、ハイタッチを交わすのだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる