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第二章 逃亡者と幼馴染
不穏
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「ふぅ」
勇誠は額を伝う汗を手の甲で拭いながら曲げていた膝を伸ばす。かれこれ1時間はたっただろうか。取り敢えず庭園の端から綺麗にし始めたが、全く終わる目処がたたない。
(これどう考えても俺達だけでやる仕事じゃねぇな)
勇誠は心の中でそうぼやく。正直、1週間でこの広さの庭園の掃除は、完全に無茶だった。
「ねぇねぇお兄ちゃん。フラメこんなに拾ったよ」
と、両手一杯に落ち葉を拾ったフラメがやって来て見せてくる。この広さの庭園で言ったら、恐らくミジンコサイズの量だろう。だが、
「そうか。頑張ったな」
勇誠はフラメの頭を撫でつつ、拾ってきて貰ったごみを袋に入れる。
「ぜぃ……はぁ……」
そんなフラメとは対照的に、クルルーラは息を切らせながら仕事をしていた。
「相変わらず体力無いですねぇ」
「こ、こちとら候補生の力がなきゃ一般人……いや、力に頼りきってるお陰で並未満の超貧弱ボディですよ」
あっさり認める辺り、本当に疲れているようで、膝がプルプルと笑っている。
「これを機に運動を始めては以下がです?」
「オ、オルトバニアでなければ力が使えるので別に……」
そうやって力に頼るから……と言いうと勇誠は、
「空……までいくのはあれですけど、それでもアイツなんてオルトバニアに来る前から超人でしたよ?いざってときは自分の肉体しか頼れないからっていってね。折角だし鍛えてもらったらどうです?」
「いえいえいえいえいえいえいえいえ結構!」
ブルルルル!と物凄い速度で首を横に振り、クルルーラは勘弁して欲しいと言う。
そんなに運動が嫌なのか?と勇誠は思うが、実際はちょっと違う。しかしそれを言う程クルルーラは口が軽くないので、黙っておいた。
そんなやり取りのせいで、勇誠は
思わず空を探してしまう。すると、
「あれ?空は?」
『え?』
周りで作業していた他の皆も顔を上げ、見回すが確かに空は忽然と姿を消していた。
一方その頃、屋敷を遠くから見る影がある。
「おいおい。まさかアイツらがここで仕事してたのかよ」
と言いながら見ているのはレイジ。そしてタケル含めた他の仲間達だ。
「まぁいいや。良い女もいることだし序でに貰ってこうぜ?」
「おいおいレイジ。俺達もヤってちまっても良いんだよな?」
当然だろ?と笑うレイジ達だが、タケルはそれを苦々しい顔で見ていた。だがなにも言わない。
すると、
「ったく。何か嫌な気配がすると思って見に来たら、誰が貰っていくって?」
その声に、皆が振り替える。そこに立っていたのは空だ。
「ようタケル。勇誠が世話になったなぁ」
歩を進めながら空がそう言うと、空に向かってレイジの仲間の一人が前に歩み寄る。
「良いねぇお嬢ちゃん。俺君みたいな子が好きなんだよ」
「私みたいなってどんなだよ」
「ちっちゃくて強気な所だよ!」
というが早いか手を伸ばしてくるので、空はその腕を取ると素早く捻り上げ、
「誰がチビだ!ちゃんと160あるわ!」
空は身長160cmギリギリで、地味にそれを気にしている。この身長は他の女性陣所か、現在中学生の勇女より低い。
なのでそれを言われるのは、かなり嫌らしく、秒で堪忍袋の緒が切れた空は、そのまま捻り上げた腕を使って相手をぶん投げ、
「ぐぇ!」
地面に叩きつけた。
「っ!」
「やめろぉ!」
そこにタケルが走りだし、そのまま空にタックル。
それを空は跳んで回避すると、ぶん投げた相手は素早く立ち上がり、空に飛び掛かろうとするが、
「おい!ジュノア!もう行くぞ!」
「っ!」
ジュノアと言うらしい男は、レイジの言葉に不満そうに振り替えるが、
「あとタケル!その女始末してから来いよ!勘づかれると面倒だからな」
「う、うん」
レイジはそう言って、ジュノアと仲間を連れていってしまう。
「おい!何が勘づかれると面倒だって?」
空はレイジを追い掛けようとするが、タケルが立ちふさがった。
「どけよ」
「どきません」
空は舌打ちを一つしながら、指をボキッと鳴らす。
「ならぶちのめして追わせて貰う」
と言いながらタケルと間合いを詰めると、
「ふん!」
「っ!」
予備動作無しで、いきなり下っ腹に前蹴りを叩き込んだ。
「うぐぇ!」
鍛え上げた爪先蹴りは、タケルの下っ腹に突き刺さり、タケルは胃の中身を撒き散らしながら後ろに下がった。
下っ腹は一番鍛えにくく、筋肉による防御ができない。その為空の木製バットもへし折る程の蹴りで蹴られれば、本来なら大怪我だが、そこは一応手加減はしていた。
「ラァ!」
「ぐぶっ!」
そして更に間合いを詰め、空の右フックがタケルの脇腹に刺さる。
「勇誠から聞いたぜ。手足と頭の攻撃が効かないんだろ?」
「くっ!」
タケルは慌てて両腕でガードの構えを取るが、ガードの隙間を縫うように突きを入れ、タケルは怯みつつも、無理矢理腕を振って攻撃しようとするが、それを空は伏せて避け、ワンツーフックでタケルの両脇腹を連打し、動きが止まったところに拳を引いて足を前後に開き、
「デラァ!」
「っ!」
渾身の正拳突きが炸裂し、タケルが後方に吹き飛んだ。
前にも言ったように、空は身長は160しかないが、体重は70キロ近くある。
これは筋肉量が多いためで、空にとって自分の動きを阻害しないギリギリの筋肉量だ。多すぎると自重で動きが悪くなってしまう。
そして空が気分を向上させるために行うことはあれど、 乾藤流古武術には構えと言われるものはない。だが相手に攻撃しつつ、技を放つ際の流れの中には、それに近いものもある。
それが空が今行った正拳突きで名前は、
「乾藤流古武術・砕禍」
歴代の継承者には、大岩も素手で破壊する者も居たらしく、それが得意としたのがこの技。
乾藤流古武術独自の体重移動により、拳に1gの無駄もなく全体重を乗せ、更に正拳突きを放つ際に、足先から順に関節を捻り、その速度を次々と関節ごとに加速を上乗せしながらパスしつつ正拳突きを放つことで、音速に匹敵する速度で突くことが出来る。
つまり、70キロの音速で飛んでくる物体が腹に直撃したようなものだ。そんなものをまともに喰らえば、本来命に関わるが、今度は最初の蹴りとは違い加減は無しだ。さっさとレイジ達を追い掛けなければならない。でないと追い付けなくなる。
しかし、空はタケルから目は離さなかった。
残心。武術にはそう言うものがある。攻撃を終えた後も気を緩めず、相手に心を残しておく。万が一討ち損ない、相手から反撃されても対処できるように。
だからか空は気づいた。タケルが血を吐きながらも立ち上がり、
「っ!」
がん!と何故か自分の両拳をぶつけ合うタケルの姿があった事に。それが一回二回ではなく、何度もだ。
「ちっ!」
何か嫌な予感がする!と空はタケルに向かって走り出す。しかし、
「だぁああああああ!」
「っ!」
タケルが拳を振り上げ、空に向かって拳を突き出すと、爆音と共に凄まじい衝撃波が空に向かって飛んできて、木々を薙ぎ倒し、土煙を上げながら、空を吹き飛ばした。
「はぁ、はぁ。げほっ!」
ビチャッ!と血の塊を吐き出して、タケルはフラフラしつつも、
「やった。倒した……」
と呟きながらその場を後にする。そしてしばらくすると、
「なんだなんだ!?」
と勇誠達が走ってきた。仕事をしていたら突然の爆発音だ。何があったのかと気になり、現場にやって来た。
「なにこれ?」
魔実が言うように、辺りの木々はまるで真っ直ぐ何かが走ったように一直線に薙ぎ倒されており、地面も抉れている。
「明らかに作為的」
「ですわね」
そんな光景を冷静に見る刹樹と美矢。
「まさか魔物!?」
「うぇ!?」
それとは対照的に怯えていたのは癒羅で、思わず近くにいたクルルーラを抱き締めていた。
そしていきなり抱き締められたクルルーラは驚きながら変な声を上げつつも、
(うわぁ。フカフカだぁ)
とバストサイズは女子達の中でもトップを誇る癒羅の胸を顔全体で感じていた。
「クルルーラお姉ちゃん変な顔してる」
「そ、そんなこと無いですよ?」
しかしそれを指摘され、クルルーラは慌てて顔を引き締め、
「魔物が入り込んだにしては変ですね。魔物が暴れたならもっと広範囲が酷いことになってるはずです」
「あぁ、魔物じゃねぇからな」
突然の声に、皆が振り替えるとそこには、
「うぉおおおおお!」
『きゃあああああ!』
「なんだなんだ皆してお化けでも見たような顔と叫び方して」
そこに立っていたのは、頭から夥しい血を流し、服がボロボロで下着所か、胸が出ている女の子。まぁ空なのだが、一目見たときは誰だか判別ができなかった。
「そ、空なのか?」
「なんだ勇誠。愛しの彼女の顔も分かんなくなったのかよ」
ブスッと答えられ、確かに空なのだと皆は安堵したが、
「って言うかなんだその怪我!大丈夫なのか!?」
「ん?あぁー」
血も凄いが、腕も変な風に曲がっているし、さっきから血の塊が口の中に貯まってしまう。その為、ペッと口の中の血を吐きつつ、
「一回元の世界に戻るわ」
「是非そうしてくれ」
と言うが早いか消え、すぐに戻ってくると体は綺麗さっぱり戻っていた。序でに服も。
「いやぁ、タケルに良いの貰っちまったわ。喰らう瞬間に鋼体使ってなかったらヤバかったぜ」
それでも全身バキバキに折られたけど、と笑う空に皆は冷や汗を垂らす。あの惨状に変えるほどの一撃を、空は喰らったと言うのに生きていた。勇者の力で頑丈になってるとはいえ、それでも信じられないタフさだ。
「しかしなんでここでタケルと戦ってたんだ?」
「あ……」
そんな中、勇誠の問い掛けで皆が何時までも空の頑丈さに驚いている場合じゃないことを思い出した。
そう、何故ここにタケルが居たかが問題だ。
「タケルだけじゃなくてレイジとか仲間も来てたぜ?」
「それはまた」
何か嫌な予感がしますわね。美矢が言うと、他の皆も同意するように、頷くのだった。
勇誠は額を伝う汗を手の甲で拭いながら曲げていた膝を伸ばす。かれこれ1時間はたっただろうか。取り敢えず庭園の端から綺麗にし始めたが、全く終わる目処がたたない。
(これどう考えても俺達だけでやる仕事じゃねぇな)
勇誠は心の中でそうぼやく。正直、1週間でこの広さの庭園の掃除は、完全に無茶だった。
「ねぇねぇお兄ちゃん。フラメこんなに拾ったよ」
と、両手一杯に落ち葉を拾ったフラメがやって来て見せてくる。この広さの庭園で言ったら、恐らくミジンコサイズの量だろう。だが、
「そうか。頑張ったな」
勇誠はフラメの頭を撫でつつ、拾ってきて貰ったごみを袋に入れる。
「ぜぃ……はぁ……」
そんなフラメとは対照的に、クルルーラは息を切らせながら仕事をしていた。
「相変わらず体力無いですねぇ」
「こ、こちとら候補生の力がなきゃ一般人……いや、力に頼りきってるお陰で並未満の超貧弱ボディですよ」
あっさり認める辺り、本当に疲れているようで、膝がプルプルと笑っている。
「これを機に運動を始めては以下がです?」
「オ、オルトバニアでなければ力が使えるので別に……」
そうやって力に頼るから……と言いうと勇誠は、
「空……までいくのはあれですけど、それでもアイツなんてオルトバニアに来る前から超人でしたよ?いざってときは自分の肉体しか頼れないからっていってね。折角だし鍛えてもらったらどうです?」
「いえいえいえいえいえいえいえいえ結構!」
ブルルルル!と物凄い速度で首を横に振り、クルルーラは勘弁して欲しいと言う。
そんなに運動が嫌なのか?と勇誠は思うが、実際はちょっと違う。しかしそれを言う程クルルーラは口が軽くないので、黙っておいた。
そんなやり取りのせいで、勇誠は
思わず空を探してしまう。すると、
「あれ?空は?」
『え?』
周りで作業していた他の皆も顔を上げ、見回すが確かに空は忽然と姿を消していた。
一方その頃、屋敷を遠くから見る影がある。
「おいおい。まさかアイツらがここで仕事してたのかよ」
と言いながら見ているのはレイジ。そしてタケル含めた他の仲間達だ。
「まぁいいや。良い女もいることだし序でに貰ってこうぜ?」
「おいおいレイジ。俺達もヤってちまっても良いんだよな?」
当然だろ?と笑うレイジ達だが、タケルはそれを苦々しい顔で見ていた。だがなにも言わない。
すると、
「ったく。何か嫌な気配がすると思って見に来たら、誰が貰っていくって?」
その声に、皆が振り替える。そこに立っていたのは空だ。
「ようタケル。勇誠が世話になったなぁ」
歩を進めながら空がそう言うと、空に向かってレイジの仲間の一人が前に歩み寄る。
「良いねぇお嬢ちゃん。俺君みたいな子が好きなんだよ」
「私みたいなってどんなだよ」
「ちっちゃくて強気な所だよ!」
というが早いか手を伸ばしてくるので、空はその腕を取ると素早く捻り上げ、
「誰がチビだ!ちゃんと160あるわ!」
空は身長160cmギリギリで、地味にそれを気にしている。この身長は他の女性陣所か、現在中学生の勇女より低い。
なのでそれを言われるのは、かなり嫌らしく、秒で堪忍袋の緒が切れた空は、そのまま捻り上げた腕を使って相手をぶん投げ、
「ぐぇ!」
地面に叩きつけた。
「っ!」
「やめろぉ!」
そこにタケルが走りだし、そのまま空にタックル。
それを空は跳んで回避すると、ぶん投げた相手は素早く立ち上がり、空に飛び掛かろうとするが、
「おい!ジュノア!もう行くぞ!」
「っ!」
ジュノアと言うらしい男は、レイジの言葉に不満そうに振り替えるが、
「あとタケル!その女始末してから来いよ!勘づかれると面倒だからな」
「う、うん」
レイジはそう言って、ジュノアと仲間を連れていってしまう。
「おい!何が勘づかれると面倒だって?」
空はレイジを追い掛けようとするが、タケルが立ちふさがった。
「どけよ」
「どきません」
空は舌打ちを一つしながら、指をボキッと鳴らす。
「ならぶちのめして追わせて貰う」
と言いながらタケルと間合いを詰めると、
「ふん!」
「っ!」
予備動作無しで、いきなり下っ腹に前蹴りを叩き込んだ。
「うぐぇ!」
鍛え上げた爪先蹴りは、タケルの下っ腹に突き刺さり、タケルは胃の中身を撒き散らしながら後ろに下がった。
下っ腹は一番鍛えにくく、筋肉による防御ができない。その為空の木製バットもへし折る程の蹴りで蹴られれば、本来なら大怪我だが、そこは一応手加減はしていた。
「ラァ!」
「ぐぶっ!」
そして更に間合いを詰め、空の右フックがタケルの脇腹に刺さる。
「勇誠から聞いたぜ。手足と頭の攻撃が効かないんだろ?」
「くっ!」
タケルは慌てて両腕でガードの構えを取るが、ガードの隙間を縫うように突きを入れ、タケルは怯みつつも、無理矢理腕を振って攻撃しようとするが、それを空は伏せて避け、ワンツーフックでタケルの両脇腹を連打し、動きが止まったところに拳を引いて足を前後に開き、
「デラァ!」
「っ!」
渾身の正拳突きが炸裂し、タケルが後方に吹き飛んだ。
前にも言ったように、空は身長は160しかないが、体重は70キロ近くある。
これは筋肉量が多いためで、空にとって自分の動きを阻害しないギリギリの筋肉量だ。多すぎると自重で動きが悪くなってしまう。
そして空が気分を向上させるために行うことはあれど、 乾藤流古武術には構えと言われるものはない。だが相手に攻撃しつつ、技を放つ際の流れの中には、それに近いものもある。
それが空が今行った正拳突きで名前は、
「乾藤流古武術・砕禍」
歴代の継承者には、大岩も素手で破壊する者も居たらしく、それが得意としたのがこの技。
乾藤流古武術独自の体重移動により、拳に1gの無駄もなく全体重を乗せ、更に正拳突きを放つ際に、足先から順に関節を捻り、その速度を次々と関節ごとに加速を上乗せしながらパスしつつ正拳突きを放つことで、音速に匹敵する速度で突くことが出来る。
つまり、70キロの音速で飛んでくる物体が腹に直撃したようなものだ。そんなものをまともに喰らえば、本来命に関わるが、今度は最初の蹴りとは違い加減は無しだ。さっさとレイジ達を追い掛けなければならない。でないと追い付けなくなる。
しかし、空はタケルから目は離さなかった。
残心。武術にはそう言うものがある。攻撃を終えた後も気を緩めず、相手に心を残しておく。万が一討ち損ない、相手から反撃されても対処できるように。
だからか空は気づいた。タケルが血を吐きながらも立ち上がり、
「っ!」
がん!と何故か自分の両拳をぶつけ合うタケルの姿があった事に。それが一回二回ではなく、何度もだ。
「ちっ!」
何か嫌な予感がする!と空はタケルに向かって走り出す。しかし、
「だぁああああああ!」
「っ!」
タケルが拳を振り上げ、空に向かって拳を突き出すと、爆音と共に凄まじい衝撃波が空に向かって飛んできて、木々を薙ぎ倒し、土煙を上げながら、空を吹き飛ばした。
「はぁ、はぁ。げほっ!」
ビチャッ!と血の塊を吐き出して、タケルはフラフラしつつも、
「やった。倒した……」
と呟きながらその場を後にする。そしてしばらくすると、
「なんだなんだ!?」
と勇誠達が走ってきた。仕事をしていたら突然の爆発音だ。何があったのかと気になり、現場にやって来た。
「なにこれ?」
魔実が言うように、辺りの木々はまるで真っ直ぐ何かが走ったように一直線に薙ぎ倒されており、地面も抉れている。
「明らかに作為的」
「ですわね」
そんな光景を冷静に見る刹樹と美矢。
「まさか魔物!?」
「うぇ!?」
それとは対照的に怯えていたのは癒羅で、思わず近くにいたクルルーラを抱き締めていた。
そしていきなり抱き締められたクルルーラは驚きながら変な声を上げつつも、
(うわぁ。フカフカだぁ)
とバストサイズは女子達の中でもトップを誇る癒羅の胸を顔全体で感じていた。
「クルルーラお姉ちゃん変な顔してる」
「そ、そんなこと無いですよ?」
しかしそれを指摘され、クルルーラは慌てて顔を引き締め、
「魔物が入り込んだにしては変ですね。魔物が暴れたならもっと広範囲が酷いことになってるはずです」
「あぁ、魔物じゃねぇからな」
突然の声に、皆が振り替えるとそこには、
「うぉおおおおお!」
『きゃあああああ!』
「なんだなんだ皆してお化けでも見たような顔と叫び方して」
そこに立っていたのは、頭から夥しい血を流し、服がボロボロで下着所か、胸が出ている女の子。まぁ空なのだが、一目見たときは誰だか判別ができなかった。
「そ、空なのか?」
「なんだ勇誠。愛しの彼女の顔も分かんなくなったのかよ」
ブスッと答えられ、確かに空なのだと皆は安堵したが、
「って言うかなんだその怪我!大丈夫なのか!?」
「ん?あぁー」
血も凄いが、腕も変な風に曲がっているし、さっきから血の塊が口の中に貯まってしまう。その為、ペッと口の中の血を吐きつつ、
「一回元の世界に戻るわ」
「是非そうしてくれ」
と言うが早いか消え、すぐに戻ってくると体は綺麗さっぱり戻っていた。序でに服も。
「いやぁ、タケルに良いの貰っちまったわ。喰らう瞬間に鋼体使ってなかったらヤバかったぜ」
それでも全身バキバキに折られたけど、と笑う空に皆は冷や汗を垂らす。あの惨状に変えるほどの一撃を、空は喰らったと言うのに生きていた。勇者の力で頑丈になってるとはいえ、それでも信じられないタフさだ。
「しかしなんでここでタケルと戦ってたんだ?」
「あ……」
そんな中、勇誠の問い掛けで皆が何時までも空の頑丈さに驚いている場合じゃないことを思い出した。
そう、何故ここにタケルが居たかが問題だ。
「タケルだけじゃなくてレイジとか仲間も来てたぜ?」
「それはまた」
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