ハーレムエンド後のギャルゲーの主人公が勇者になってヒロイン達と魔王を倒して世界を救うようです

ユウジン

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プロローグ 勇者にさせられました

皆で一緒に

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「え!?やっぱり美矢もオルトバニアに行けそう?」
「はい」

夕方。普段は放課後は皆で集まって勉強会(特に勇誠と、赤点常習犯で卒業が危ぶまれる空)をしているのだが、今日は急遽取り止めにして、学校から勇誠達は急いで帰ってくると、美矢がお茶を淹れてくれながら話してくれた。

「でも確か、神候補生って一人につき一人しか転生者にできないんじゃありませんでしたっけ?だか今朝もそういう話に……ねぇクルルーラさん?」
「え、えぇそうなんですけど……て言うかなんなんですかこの人!答えても答えても次から次へと質問してくるんですよ!もう私疲れましたよぉ……」

勇誠は、げっそりとしたクルルーラ若干同情する。美矢は悪気はないのだが、何かしらの疑問にたいして、矢継ぎ早に質問し、その中で生まれた疑問もどんどん質問していく癖があり、そのせいで、東桜高校(実際詳しくは聞いてないが高校以前も)でも何人もの先生が美矢の質問に答えきれず、プライドも精神もボロボロにされて去っていくのを見たことがある。

今でこそ落ち着き、他者への配慮や手加減を覚えた美矢だが、久々にヒートアップしたのか、それが出てしまったようだ。

「ごめん。丁度私もフラメちゃんを連れて外に散歩兼買い物に出てたから、抑えれなかった」

と、申し訳なさそうにしている癒羅見てから、今度は美矢を見て、

「少しは手加減してあげなよ」
「すいません。ついつい興奮してしまいましたわ」

美矢も申し訳なさと恥ずかしさが混じったような表情をして、目を背けた。美矢も悪いとは思っているらしい。

「クルルーラさん。ごめんね。俺からも謝るよ」
「いいぇ~。良いですよ~」

ヘロヘロ~っと萎れた表情で答えるクルルーラに、勇誠は大丈夫かこの人と思いつつも、

「それで?美矢もオルトバニアに行けそうって、一体どう言うこと何だ?」
「はい、今朝方も言ったように、神候補生が勇者を選べるのは一人だけ。ですが、フラメさんを見て思いましたの。隷属契約ならどうかしら?と。フラメさんがオルトバニアから、こっちの世界に来れたのは、魂だけの存在な上に、隷属契約を結んでいたから。つまり、オルトバニア製の力は、こちらでもある程度有効出ると言うこと。隷属契約が今でも結ばれている以上ですわ。つまり、オルトバニアでなくても、オルトバニアの力である隷属契約は、行えるのではないかと。殆どシステムの穴を突くような形になりますが、隷属契約は転移系で、主について行くかとが出来るようになるのなら、こちらで隷属契約を結べば、もしかしたら……と思い、クルルーラさんに聞いてみましたの。そしたら前例はなく、やってみなくては分からないものの、もしかしたら行けるかもとのことです。ただしその場合、勇誠さんとの隷属契約で行く都合上、勇誠さんの身に何かあって、ましてや命を落とすようなことがあれば、私達もオルトバニアからこちらに強制的に戻され、記憶も失われるようですが」

美矢の説明を聞き、勇誠は頷きつつ、そうなんですか?と今度はクルルーラに聞くと、クルルーラは顔をあげて表情をしゃっきりさせた。

「はい。まぁ今美矢さんも話しましたが、最初にオルトバニアには魂だけが転移している状態だとお話ししましたよね?なので隷属契約による魂同士を繋げることは出来るはずです。元々隷属契約じたいは魔力が無くても可能なのでね。勿論こちらの世界では普通は無理なので、私を通してやることになりますよ?ほら、言ったでしょう?神候補生として、大概の事はできるって。転生者を複数選ぶことはできませんが、転生者本人を連れていって、こっちの世界で隷属契約を行い増やすのを、禁止する項目はありませんから。と言うか、流石に先代の神様も、こっちの世界に戻ってくる力とか、そう言うのを願う人がいるとは思ってなかったんでしょうね~。私だって勇誠さんに言われるまで考えもしませんでしたし」
「でもそれできるなら勇者は一人しか選べないって言うルールが意味のないものになりません?」

魔実が言うこともわかる。実際確かにそういう項目がないとは言え、それをすることで何かしらの不都合がでないとも限らない。ゲームだってバグ技を使うと想定外の出来事が起こるものだ。そんな心配に、クルルーラは確かに言いつつも、

「ですが隷属契約は契約する本人同士が居ないとダメですし、更に一度転移すれば普通はもう戻ってこれません。これは神候補生の力でもできないと言うルールです。これに関しては勇誠さんのように、オルトバニアこっちの世界を行き来すると言う能力を予めもっていないといけませんからね。まぁ、何度も言うように、ルールにもオルトバニアに行った者がこちらの世界に戻ってきて隷属契約して連れていくのがダメ何て言うのはないので、ゼーンゼン問題ナッシングでーす!いや美矢さんが嫌がってるのに、勇誠さんが無理矢理連れていくと言うなら絶対協力しませんけど。飽くまでお互いの同意が絶対です」
「まぁ私は問題ありませんわ」

なんて事ないように美矢は言う。嫌なわけがなかった。勇誠のためならどんなことでもする。そう美矢は決めている。例えどんな障壁が合ったとしても……だ。勇誠と、そして皆と一緒に生きると決めたとき、美矢決めたことだった。邪魔するものは敵。そして敵対するものには滅びを。それが美矢の信条である。だから美矢は、隷属契約の際に受けるデメリットも覚えているし、一応改めて勇誠から受ける影響も聞いているが、何の心配もしていなかった。どんな命令でも聞く?寝首をかけない?どちらも美矢と勇誠の間には、何の関係もないデメリットだ。と言うか、デメリットと言うのも憚られるものだった。

そう思いながら、美矢は勇誠に手を出すように言う。

「取り合えず実際に実験してみましょう?」
「まぁそれが良いかな」

美矢のそんな思いを知ってか知らずか、勇誠は大人しく手を出して、美矢はそれに自らの手を重ねる。手を触れあわせるのは始めてじゃない。よくあることだが、なんと言うか、今更改めてこうして触れあっていると、何となく気恥ずかしい気分になってくる。

「けっ!」
『え?』
「あいや、失礼。思わずリア充爆発しろと祈ってしまいまして」

神候補生として、人知を越えた力を持っているクルルーラの呪詛は、存外馬鹿に出来ない物だ。そんな彼女の呪詛にちょっと背筋を、美矢と勇誠が冷たくしていると、それからクルルーラは更にその上に手を重ね、

「えぇと、これでどうするんですか?」
「はいはい。これをですね……」

クルルーラは二人の重ねあった手に意識を集中。全身光らせ、今度は天使の輪ではなく、両手が光って、力を溜めていくと、

「ふぬぬぬぬぅぅうううううううう……くぇぇええええええい!」
『いやどういう掛け声?』

必殺!神候補生ビームと言い、この変な掛け声といい、人知を越えた存在である神候補生……らしいのだが、若干そうは見えなくなってしまうクルルーラに、皆は我慢できずに思わず突っ込む中、一瞬勇誠と美矢の体が脈を打ち、二人はフラッとしながら、少し離れた。

「一応これで隷属契約は完了しているはずです。と言うわけなので、一回ちょっとオルトバニアに行ってみて貰えます?」
「はい」

勇誠はクルルーラに頷き、

「えぇとじゃあ……転移!」

と言った瞬間勇誠がバタン!と倒れ、フラメがスゥっと空気に溶け込むように消えていく。

『ちょ!?フラメも!?』
「勇誠さんが転移した影響で、一緒に引っ張られていったんですね~」

と落ち着いてのんびりしているクルルーラを尻目に、突然の出来事に他の皆は、勇誠が頭を打ってないか確認している。しかし、

「あら?私は?」
「え?あれ?」

そう。美矢がそのままだった。隷属契約であれば、勝手について行くはずなので、勇誠が転移したら美矢も転移を始めて倒れているはずだった。だがここに立っていると言うのは……

「えぇとクルルーラさん?転移とはどうするんです?」
「え?あぁ、転移はこう何て言うか……転移ー!ってお腹に力をいれる感じですかね」

美矢は、クルルーラに転移の説明を聞き、美矢は分かりましたわ、と頷くと仁王立ちし、

「転移!」
『え?』

と次の瞬間。今度は美矢までバタンと倒れ、残った面々は今度は美矢も頭を売ってないかのチェック……をしていると、

「うぉ!起きたか!」

勇誠がガバッと起き上がり、空がびっくり。それが美矢を見ていた癒羅も同じ行動をされて驚いている。その直後にフラメもスゥっと現れる。

「成程……こっちの世界で隷属契約すると、オルトバニアへの転移はそれぞれ個人のタイミングなんですね~」

それは計算外でしたと言いながらクルルーラは、美矢の額に手を当てて何か確認すると、

「ふむ、能力もちゃんと付加されてますね」

クルルーラが美矢を見ながらそういうと、癒羅がどう言うことか聞く。

「勇誠さんにも説明しましたが改めて。オルトバニアに行く際には本来なら3つ能力を付加されます。1つ目は勇者としての身体能力。まぁ普通の人間の身体能力じゃ限界がありますからね。2つ目は転生した人間の功績や特技から作られる能力。3つ目は神候補者から転生者にあげる能力。残念ながら3つ目は無いですが、2つ目までは無事美矢さんにも付加されます。成程成程……能力は魔弓士ですか。これは珍しいと言うか面倒な能力ですね」
「そうなんですの?」
「えぇ、魔法と弓矢を組み合わせた戦闘を得意とする能力で、矢に魔法を乗せて撃つことが出来るんですが、詠唱の内容を全部暗記しないといけないんですよ。魔法使いなら魔導書を片手に杖振って唱える事が出来るんですけど、魔弓士専用の詠唱が必要な上に、強力な魔法を乗せようと思うと相応に長いし、そもそも魔法を遠くに撃とうと思ったら普通に詠唱して撃った方が早いと言う結構悲しい能力でして……まぁ威力は普通の魔法より高めで、更に魔法によって矢自体の威力を上げれるので普通の弓矢使いよりは有用ですが……」
「まぁ構いませんわ。元々勇誠さんの勉強を見るためですもの」

美矢は肩を竦めながら答える。最初から目的は冒険じゃない。勇誠の勉強のためだ。ならどんな能力が付与されようが、美矢にとっては関係のないことだった。それより、無事成功したことの方がめでたい。まさに行幸である。これで準備は完了……と思っていると、そこに今度は魔実はクルルーラの方に寄り、

「思ったんですけど……この手使えば私も行けません?オルトバニアに」
「あぁ、大丈夫だと思いますよ?」

ピキ!と空気が固まった。厳密には美矢の表情が固くなった。カッチコチである。もしくは能面のようだとも言える。

そして魔実は、クルルーラの答えに満足して、勇誠の方を見ると、

「じゃあ勇誠。手を出して頂戴」
「あ、あのですね魔実さん!?今朝も言いましたけど、飽くまで私が行くのは勉強時間の確保を……」

と一応の抵抗を見せるが、じゃあ私も勇誠と勉強するので。と言われ、美矢は口を真一文字に結んで不満げな顔をする。実際、魔実は勇誠と一緒に美矢の指導を受けており、そのお陰で勇誠と共にテストの点数が延びている。まぁ魔実は元々出来が良かったのだが、それでも真面目に勉強に一緒に取り組んでいたのは事実だ。そしてなにより先輩として、勉強したいと言う意思を、邪魔すると言うのは、それはダメなことである。とは思う。思うのだが、何か面白くない。しかも、

「何か異世界って面白そうだし私もお願いしよっと」
「あ、私もお願いします。ベンキョーシタイノデ」
「そうだね。私も勉強したいしお願いしようかな」

空・刹樹・癒羅の三人まで参戦である。だがソレには美矢が待ったをかけた。

「お待ちになって!刹樹さんは百歩譲って良くても、癒羅は今のままでも充分でしょう!それに空さん!あなた今異世界って面白そうだしって言いましたわね!?私達は遊びに行くんじゃありませんわよ!?あくまでも勉強の為ですわ!」
「わかってますよ~。えぇとほら、見聞を広めるため?ってやつです。色んな物を見て知る勉強みたいな?」
「ほっほぅ。随分口が回るようになりましたわね。ソレでもっとスラスラ言えれば演技は完璧ですわよ」

コメカミをビクンビクンとさせながら、美矢は空に詰め寄り、その迫力にちょっと空が引くものの、

「ただ先輩。異世界ってことはこっちの常識が通じないこともありますよ」
「えぇ、でしょうね」
「そんとき、話し合いだけじゃ済まないこと。あるんじゃないっすか?」
「……」

確かに空の言うとおりだった。勇誠も言っていたが、モンスターもいる世界。そして今の面子を見たが、勇誠が幼い頃からやっていた剣道がある。そして自分も昔から嗜みとして弓道ができる。だが魔実・刹樹・癒羅は一般人だ……

「って!」
「はい契約完了でーす!」

とクルルーラがいつの間にか刹樹と癒羅まで契約させていた。この神候補生と来たら余計なことを……と思わず思ってしまいながら、

「あ、あ……」

美矢が口をパクパクさせ、何て言おうか考えるため、頭をフル回転させようとすると、

「どうします?勇誠と美矢先輩だけで皆を守る自信あります?特に勇誠の身に何かあったら不味いんじゃないですか?」
「く……」

実際、空の実力は本物だ。それは間違いない。今この時点でも、この世界で上から数えた方がいいくらいだと思っている。それに、ある一点で美矢は空と通じあっている部分があった。

それは、勇誠や皆のためなら、どんなことでもするし、どんな手でも使うことだ。そのどんなことや、どんな手でもと言うのは、倫理観や道徳。人道と言ったものをガン無視して、と言うのも含まれている。言うなれば、勇誠達の幸せのためなら、人として外れた行動を取ることに、躊躇いがない。

さっき言った、話し合いだけじゃ済まないこと、と言うのは、そういうことだ。勇誠たちは優しすぎる。そして異世界が此方の常識が通じない場所だった場合、その優しさは大切で尊いものだが、それが命取りになる場合がある。空はそれを暗に言っているのだ。

そしてそれを聞き美矢は、

「分かりましたわ。お願いします」
「シャア!」

空はガッツポーズをして、クルルーラに契約をお願いしに行く。

「皆楽しそうですね~」
「勇女さんはいいんですの?」
「私はいいですよ~。異世界って怖そうだし」

と言って笑う勇女は契約はしなかった。そして、全員の契約が終わり、能力も付与されると、

「これは素晴らしい。魔実さん黒魔術師。空さんは武術家で刹樹さんは暗殺者。癒羅さんは白魔術師ですか。結構バランスいい感じですね」

全員を勇誠と契約させ、ニコニコと笑みを浮かべるクルルーラ。と言うのも、

(最初は勇誠さんが乗り気じゃないから、こりゃだめかと思いましたが、思わぬ形で人手が集まりましたね。これは良いですよ~ぐへへへへへ!思わぬ副産物です!)
(って思ってる顔だな)

そんな感じで、内心小躍りしているクルルーラの邪な思いを見抜きつつ、皆は取り合えず今日はそれぞれの家に帰ろうとなった。

「それでは確認をしましょう。先程確認しましたが、転移する場合タイミングなどは自由になりますが私達は勇誠さんを中心とした一定範囲内にしか転移できないようです。なのでお互い時間を合わせてオルトバニアに早速今夜から行ってみません?どんな感じなのか見てみたいところではありますし」
『さんせーい』

その際に美矢がそう提案し、皆は特に反対する必要もないため賛成して解散。

皆はそれぞれの家路につき、一先ずはそれぞれ食事をし、準備を済ませておく事にする。なので勇誠たちも、

「さぁて、取り合えず飯にするか」
「そうだねぇ」
「わーい」

因みに今更だが、フラメは勇誠の家で預かることになっている。まぁ家に両親が居ないのは勇誠の所だけなので、仕方がない。いきなりこんな小さな子供を連れていったら、ほぼ間違いなく騒ぎになる。後何より、フラメは勇誠に一番なついていると言うのも、勿論大きいのだが。

等と考えていると、勇誠達の背後から、

「私今夜はお肉が食べたいですねぇ」
「いやクルルーラさん。あんたも食っていく気なのか……」

いやぁ、神候補生は食べなくても平気なんですけどね?と今朝方してた話をまたクルルーラは言いつつ、

「私の世界と言うか、神の世界では食べ物がなんと言うか変なものが多くて、美味しくありませんからねぇ。栄養補給に特化しすぎた感じ?ですかね。まぁ神やそれに連なるもの達にとって、食事って栄養補給の手段でしかありません。でもその点人間の食べ物って美味しいんですね。今朝食べて初めて知りました!めっちゃ感激してます!なのでご飯ください」
『はぁ……』

目をキラキラさせながら期待を込めて言うクルルーラに、勇誠と勇女が大きなため息を吐く。とは言えだ、こうまでいってくる相手に、ダメだやらないなんて言えるなら、きっと今自分は複数の彼女を持っていないだろう。そう思うと少し悲しくなってくるが……

「わかったわかった。いいよクルルーラさん。いいよ。食べていきな。悪いんだけど勇女。一人追加いいかな?」
「うん。一人くらいなら全然大丈夫だよ任せて」
「おぉ!まさしく神です!ありがとうございます」

いやあんたに至ってはマジもんの神候補生でしょうが……と勇誠と勇女は兄弟揃って、呆れながら突っ込むのだった。
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