17 / 17
第二章 猛る虎
猛る龍
しおりを挟む
カラン、と猛風はBarの扉を開けると、中を確認。そこには、一人で酒を飲みながら待っていた。
「虎白様は?」
「今頃水祈と火月さんと3人で遊園地だよ」
そうか。と猛風が行った次の瞬間、一気に突っ込んで間合いを詰め、拳を握って殴りかかる。
「っ!」
龍はそれを口に含んだ酒を吹き、思わず猛風は足を止めた。その次の瞬間、
「っ!」
龍はテーブルの上にあったウィスキーの瓶を掴み、猛風の頭に叩きつける。
「フン!」
しかし、猛風は今度は怯まず足を一歩前に出し、掌打を龍の顎に打ち込み、ガラ空きになった腹部に拳を当て、次の瞬間、衝撃と共に龍は吹っ飛んだ。
そのまま店の椅子を壊しながら転がりつつも、立ち上がり息を整える。
「気持ち悪いな」
「良く耐えるのう」
ペッペと、口に溜まったツバを吐き捨て、龍は改めて拳を握った。
「愚かな男じゃ」
「あ?」
龍は眉を寄せ、猛風を見る。
「どうあがいても、貴様に勝ち目はない。獠牙にも、ワシにもなぁ!」
猛風は拳を握り、龍に殴りかかる。しかし、
「らぁ!」
龍は頭突きを放ち、猛風の拳を迎え撃つ。普通であれば、猛風の拳が砕けるだろう。しかし、鍛え抜かれた彼の拳は、砕けることはなく、寧ろ龍の額から血が垂れてきた。
「バカはてめぇだ。クソジジイ」
しかし、ニッと龍は笑い、
「喧嘩ってのはよ。相手がどれくらい強いとか、何人いるかっていちいち考えてやらねぇだろ。ムカつく、腹立つ、許せねぇ。そんな単純なもんでいい」
それにな、と龍は更に続けると、
「お前は言ったな。自分たちで探すと。それを虎白が考えなかったと思うのか?」
「……」
猛風は黙る。それは猛風もわかっていたことだろう。
「アイツにとって、獠牙は信じられる場所じゃない。だからこそ、アイツは自分でこの国に来たんだ」
「そうであろうな」
だが、と猛風は少し下がり、
「先代と誓ったのだ。虎白様を守ると。成長し、一人前となるときまで守ると誓ったのだ!」
猛風はそう言って、拳を握って構えると、足を踏み鳴らす。床が凹み軋む中、
「そうかい。なら俺は虎白と約束したのでね。母親の家族を見つけ出すってな!」
龍も同様に拳を握り、首を鳴らすと低い姿勢を取る。それはまるで、野生の獣が、狩りをするために取るような体勢。
「ガァ!」
龍の低い姿勢からの体当たりに、猛風は拳で迎撃。拳の速度自体はそこまで早くない。寧ろゆったりとした動きだ。
だが龍にあたった瞬間、凄まじい衝撃となり、龍の脳を揺らそうとする。
「ぬぅ!」
しかし、猛風も龍の体当たりにより衝撃で後ろに吹き飛びそうになる。衝撃を足元に逃がすが、それでも凄まじい衝撃だ。
「ダラァ!」
するとそのまま、龍は猛風の腰を掴み、そのまま上にぶん投げる。
「ハァアアアア!」
そしてアッパーの要領で拳を振り上げて追撃。
「ヌウン!」
しかし猛風は空中で力を抜き、龍の拳を受けると、
(軽い!?)
まるで羽を殴ったような感覚がし、そのまま龍の腕を転がると、床に着地した。
「フワフワしたり重くなったり忙しいやつだな」
「お前さんも大概バケモンじゃな」
猛風は振り返りながら、口から垂れた血を拭う。
「見たところ、なんの武術も身につけておらぬ。ただの頑丈さで突破し、馬鹿力で殴り飛ばす。そこに技術はない。野生の獣じゃ。だがそんなことは本来人間はできぬ。獣のような頑丈さやパワーはない。だから技を作ったのじゃ」
実際、猛風は恵まれた体躯の持ち主ではない。寧ろ、小柄な体だ。
だからこそ技を磨き、高めた。その技で、幾度となく先代の獠牙の当主を守ったのだ。
「じゃからこそ、負けられんのう」
そう言って、猛風は上着を脱ぎ捨てる。その肉体は一切の無駄がない。小柄な肉体を限界以上に追い込み、鍛え上げた肉体。とても老人の肉体ではない。
「そうかよ」
龍もニッと笑いながら、拳を握ったその時、
「やめて!」
そう言って店に飛び込んできたのは、虎白だ。その後ろには水祈と火月がごめんとアイコンタクトしている。
だが、
「悪いがやめられませんぞ。虎白様」
そう言ったのは、猛風だ。
「だめ!今すぐやめて!」
「なりませぬ!」
猛風の声が響き、虎白は体を震わせる。猛風が虎白に声を荒げることなど、今までなかったのだが、
「我が武は、力を捻じ伏せるために磨いたもの。今まで、幾度となくねじ伏せてきた。じゃが、この男はまだ立っている。それは我が武の敗北。それを認めるわけには行きませぬ!」
はぁ?と虎白があんぐりすると、水祈と火月がクスクス笑う。
「諦めなさい虎白。あれは止まらないわ」
「え?」
「そうねぇ。完全に男の子の目になってるもの」
虎白は理由がわからず首を傾げているが、水祈と火月は笑っている。そして龍も、
「来いよジジイ。ぶっ潰してやる」
それを合図に、猛風が突撃し、龍はカウンター気味に拳を放つ。だが、猛風はそれを肩を突き出して受けると、その反動を利用して回転して受けながらし、その勢いそのままに龍の腹部へ肘を叩き込んだ。
この一撃は、龍のパワー+猛風のパワーをあわせた一撃。だが龍はそれも耐えきり、両腕を振り上げると、ハンマーナックルの要領で、振り下ろしてきた。
「ぬぅ!」
それを猛風は受け止めるが、受け流しきれない程のパワーに、ガードを崩され、両肩に炸裂した攻撃に怯む。更に、
「オォオオオオオオ!」
龍は、続いて右拳を固く握り直し、腕を振り上げた。アッパーというよりは、馬鹿力に物を言わせた腕の振り上げ攻撃。だがそれは猛風の顎を的確に当て、
「ぬぐぁ!」
そのままに上空に打ち上げると、そのまま地面に転がるのだった。
「虎白様は?」
「今頃水祈と火月さんと3人で遊園地だよ」
そうか。と猛風が行った次の瞬間、一気に突っ込んで間合いを詰め、拳を握って殴りかかる。
「っ!」
龍はそれを口に含んだ酒を吹き、思わず猛風は足を止めた。その次の瞬間、
「っ!」
龍はテーブルの上にあったウィスキーの瓶を掴み、猛風の頭に叩きつける。
「フン!」
しかし、猛風は今度は怯まず足を一歩前に出し、掌打を龍の顎に打ち込み、ガラ空きになった腹部に拳を当て、次の瞬間、衝撃と共に龍は吹っ飛んだ。
そのまま店の椅子を壊しながら転がりつつも、立ち上がり息を整える。
「気持ち悪いな」
「良く耐えるのう」
ペッペと、口に溜まったツバを吐き捨て、龍は改めて拳を握った。
「愚かな男じゃ」
「あ?」
龍は眉を寄せ、猛風を見る。
「どうあがいても、貴様に勝ち目はない。獠牙にも、ワシにもなぁ!」
猛風は拳を握り、龍に殴りかかる。しかし、
「らぁ!」
龍は頭突きを放ち、猛風の拳を迎え撃つ。普通であれば、猛風の拳が砕けるだろう。しかし、鍛え抜かれた彼の拳は、砕けることはなく、寧ろ龍の額から血が垂れてきた。
「バカはてめぇだ。クソジジイ」
しかし、ニッと龍は笑い、
「喧嘩ってのはよ。相手がどれくらい強いとか、何人いるかっていちいち考えてやらねぇだろ。ムカつく、腹立つ、許せねぇ。そんな単純なもんでいい」
それにな、と龍は更に続けると、
「お前は言ったな。自分たちで探すと。それを虎白が考えなかったと思うのか?」
「……」
猛風は黙る。それは猛風もわかっていたことだろう。
「アイツにとって、獠牙は信じられる場所じゃない。だからこそ、アイツは自分でこの国に来たんだ」
「そうであろうな」
だが、と猛風は少し下がり、
「先代と誓ったのだ。虎白様を守ると。成長し、一人前となるときまで守ると誓ったのだ!」
猛風はそう言って、拳を握って構えると、足を踏み鳴らす。床が凹み軋む中、
「そうかい。なら俺は虎白と約束したのでね。母親の家族を見つけ出すってな!」
龍も同様に拳を握り、首を鳴らすと低い姿勢を取る。それはまるで、野生の獣が、狩りをするために取るような体勢。
「ガァ!」
龍の低い姿勢からの体当たりに、猛風は拳で迎撃。拳の速度自体はそこまで早くない。寧ろゆったりとした動きだ。
だが龍にあたった瞬間、凄まじい衝撃となり、龍の脳を揺らそうとする。
「ぬぅ!」
しかし、猛風も龍の体当たりにより衝撃で後ろに吹き飛びそうになる。衝撃を足元に逃がすが、それでも凄まじい衝撃だ。
「ダラァ!」
するとそのまま、龍は猛風の腰を掴み、そのまま上にぶん投げる。
「ハァアアアア!」
そしてアッパーの要領で拳を振り上げて追撃。
「ヌウン!」
しかし猛風は空中で力を抜き、龍の拳を受けると、
(軽い!?)
まるで羽を殴ったような感覚がし、そのまま龍の腕を転がると、床に着地した。
「フワフワしたり重くなったり忙しいやつだな」
「お前さんも大概バケモンじゃな」
猛風は振り返りながら、口から垂れた血を拭う。
「見たところ、なんの武術も身につけておらぬ。ただの頑丈さで突破し、馬鹿力で殴り飛ばす。そこに技術はない。野生の獣じゃ。だがそんなことは本来人間はできぬ。獣のような頑丈さやパワーはない。だから技を作ったのじゃ」
実際、猛風は恵まれた体躯の持ち主ではない。寧ろ、小柄な体だ。
だからこそ技を磨き、高めた。その技で、幾度となく先代の獠牙の当主を守ったのだ。
「じゃからこそ、負けられんのう」
そう言って、猛風は上着を脱ぎ捨てる。その肉体は一切の無駄がない。小柄な肉体を限界以上に追い込み、鍛え上げた肉体。とても老人の肉体ではない。
「そうかよ」
龍もニッと笑いながら、拳を握ったその時、
「やめて!」
そう言って店に飛び込んできたのは、虎白だ。その後ろには水祈と火月がごめんとアイコンタクトしている。
だが、
「悪いがやめられませんぞ。虎白様」
そう言ったのは、猛風だ。
「だめ!今すぐやめて!」
「なりませぬ!」
猛風の声が響き、虎白は体を震わせる。猛風が虎白に声を荒げることなど、今までなかったのだが、
「我が武は、力を捻じ伏せるために磨いたもの。今まで、幾度となくねじ伏せてきた。じゃが、この男はまだ立っている。それは我が武の敗北。それを認めるわけには行きませぬ!」
はぁ?と虎白があんぐりすると、水祈と火月がクスクス笑う。
「諦めなさい虎白。あれは止まらないわ」
「え?」
「そうねぇ。完全に男の子の目になってるもの」
虎白は理由がわからず首を傾げているが、水祈と火月は笑っている。そして龍も、
「来いよジジイ。ぶっ潰してやる」
それを合図に、猛風が突撃し、龍はカウンター気味に拳を放つ。だが、猛風はそれを肩を突き出して受けると、その反動を利用して回転して受けながらし、その勢いそのままに龍の腹部へ肘を叩き込んだ。
この一撃は、龍のパワー+猛風のパワーをあわせた一撃。だが龍はそれも耐えきり、両腕を振り上げると、ハンマーナックルの要領で、振り下ろしてきた。
「ぬぅ!」
それを猛風は受け止めるが、受け流しきれない程のパワーに、ガードを崩され、両肩に炸裂した攻撃に怯む。更に、
「オォオオオオオオ!」
龍は、続いて右拳を固く握り直し、腕を振り上げた。アッパーというよりは、馬鹿力に物を言わせた腕の振り上げ攻撃。だがそれは猛風の顎を的確に当て、
「ぬぐぁ!」
そのままに上空に打ち上げると、そのまま地面に転がるのだった。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
私と継母の極めて平凡な日常
当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。
残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。
「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」
そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。
そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。
※他のサイトにも重複投稿しています。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる