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第一章 龍と虎
突入
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「ふわぁ……」
「眠そうね」
高級外車を運転する水祈に言われ、すまんと龍は言うと、
「良いのよ。何だかんだ殆ど寝て無いでしょ?」
「そうだな」
ゴキッと首をならすと龍は煙草に火を着けて煙を吐き出す。煙を肺に満たすと、少し頭がシャキッとした。
「しかし帝獄ホテルを拠点にって金があるなぁ」
「全くね」
帝獄ホテルと言えば、日本でもトップクラスで有名なホテルだ。サービスもだが高級ホテルと言う意味でもだが。
「で?ホテルに着いたらどうする?」
「そうね……取り敢えず部屋がどこなのかわからないとねぇ」
帝獄ホテルは大きい。しかも梶原から聞いたとは言え、獠牙が本当にいるとは限らないし、虎白がそこにいるかも分からない。
それでも他にやりようはないので、とにかく帝獄ホテルにいくしかないだろう。
「もし虎白がいるとして、獠牙の妨害はあるよな?」
「あるでしょうね。まさかあの陳ってやつが一人な訳ないでしょうね」
しかしあの陳って奴も獠牙の人間だろう。と龍はまた煙を吐き出し、
「もし本気で獠牙とやりあうってなったら、大分ヤバイよな」
「ヤバイでしょうね。下手すると歌舞伎町に居られなくなるレベルで」
だよなぁ、と龍は頭を掻く。
「獠牙か。余り組織の名前に詳しくない俺でも知ってるからなぁ。すごい有名だ。色んな意味でな」
規模も人員もそして何よりも危険性もだ。
獠牙と敵対して無惨な最後を迎えた組織も多い。三界組は、幸運が重なったのが大きかった。それでもどうにか歌舞伎町から追い出すのが限界だったのだ。
だが今回はたった二人で行かなくてはならない。正直に言えば、無茶も良いところである。
「お前だけでも帰れ何て言わないでよ」
「言うかよ。俺とお前は一蓮托生。だろ?」
えぇ、と水祈が笑うと、龍も笑みを浮かべる。
何時だって、二人は一緒だ。生きるときも死ぬときも。相手が生きるなら自分も生き、死ぬときは自分も死ぬ。そう互いに誓ったのだから。
◆
「でっけぇホテルだなぁ」
車を飛ばし、帝獄ホテルに到着した二人だが、改めて外観を見るとため息が出る。
「この中から虎白本人か、それに関する情報を手に入れなきゃならんのか」
「そうね」
取り敢えず入るか。と二人は中に入ると、ボーイに出迎えられた。
「ご予約の御方でしょうか?」
そう言うボーイの眼には、若干の侮蔑が見て取れた。
確かに龍の格好はTシャツとジーンズ。水祈はこの季節には少し似合わないロングコートを着込んでいる。
この高級ホテルである帝獄ホテルを利用するには、浮いた格好と言わざるを得ない。しかし水祈は気にした様子はなく、
「えぇ、ちょっとね」
と返しつつ、水祈はボーイの背後の方から歩いてくる男を見る。その男は真っ直ぐこちらに来ながら胸元に手を入れると、中から銃を抜き此方に向けた。
「間違いないわね」
水祈がそんな事を呟きながら、ボーイを思い切り突き飛ばすと、それを合図に龍も走り出す。それを追うように男は銃を発砲。
「うひゃあ!」
ボーイは突然の銃声に怯み、水祈と龍はフロントを飛び越えて隠れた。
「取り敢えずいるみたいね」
「だな」
そして発砲した男は、中国語で何かを叫ぶと、周りからゾロゾロと出てくる。
「おいおい。周りの客って皆獠牙の人間かよ」
「まぁ入ったときから視線は感じてたけどね」
ここまでは流石に予想外。と水祈は呟き、龍も頷く。
「お、お客様!一体何をばっ!」
そして正気に戻ったボーイは何事かと叫ぶと、パン!と銃声がし、眉間から血を吹き出しながら倒れた。
『きゃあああああああ!』
悲鳴を上げたのは、銃声に気付き出てきた他のスタッフ達だ。しかしそんなスタッフ達にも、発砲した男以外の奴等まで銃を抜き、銃を撃っていく。硝煙と血飛沫が上がり、あっという間に地獄絵図に変わった。
「容赦無しかよ」
「ほんとだわ」
龍と水祈はそう言いつつも動かない。
龍は多少であれば撃たれても良いが、この量に撃たれたら流石にキツイ。
水祈は当たり前だが大小関わらず撃たれたら危ないため、スタッフには悪いが様子を見ていると、一斉にリロードを始めた。
「今!」
「あぁ!」
その瞬間に二人は飛び出し、龍の拳と水祈の蹴りがそれぞれの敵を倒し、龍が相手の落とした銃とマガジンを拾って装填し、
「水祈!」
「サンキュ!」
水祈も銃とマガジンを拾って装填し、龍が投げた銃をキャッチすると2丁拳銃で周りの敵に発砲。
急所は外しつつも、次々撃ち抜き弾が切れると投げ捨て、龍が変わりに水祈に撃たれた敵を殴り飛ばして銃を奪うと、それを水祈に投げ渡し、それを再度発砲。撃たれてない奴が慌ててこちらに銃口を向けるが、龍が銃を持つ手を殴ると、味方の方に向かって撃ってしまい、同士討ちになってしまった。
「はぁああああああ!」
その間に水祈は更に銃を撃ち、龍が次々奪った銃を渡していく。そうして暫く銃声と殴る音が鳴り響くと、
「はぁ……はぁ」
「ふぅ」
銃を捨てながら、水祈と龍は一息いれた。
「アァ……」
「ウゥ……」
周りには水祈の銃弾で撃ち抜かれたり、龍の拳でぶっ飛ばされて動けなくなった連中が倒れている。
「これで全員……っ!」
龍が一瞬気を抜いた瞬間、物陰から飛び出してきた奴が、ナイフを龍に向けて突き出し、龍の脇腹に刺さる。だが、
「っ!」
少し刺さったところで止まってしまい、その後はそれ以上深く刺さらず、抜くことも出来なくなってしまった。
「お前……」
ガシッ!と龍は相手の顔を掴み、そのまま持ち上げると、
「虎白を追い掛けてきてたやつだな」
そう。見てみれば虎白と会った日の夜と、歌舞伎町を案内してたときに出会った奴だった。包帯をあちこちに巻いてて少し分かりにくいが。
「ま、どうでも良いけどなぁ!」
そしてそのまま床に頭を叩きつけて倒すと、脇腹に刺さったナイフを抜いて捨てる。
「行くか」
「まるでターミ○ーターね」
誰かだと突っ込みつつ、龍と水祈はフロントに向かい、そこに置いてあるリストを見た。大体こう言うのはすぐホテル側が確認できるように近くに置いてあるものだ。
「成程、最上階のスイートルームにその階下3階まで埋まってる」
「となるとスイートルームか?」
「多分ね」
そう言いながら、水祈は倒れたボーイの体をまさぐると、
「あった」
「なんだそれ?」
水祈が出したのはなにやら黒いカードキーだ。
「ここはスイートルームに上がるには専用エレベーターにこのカードキーを読み込ませる必要があるのよ」
「そう言うことか」
逆に言えば、これならエレベーターに乗っていっても途中で獠牙の奴等と鉢合わせすることは無い。
好都合だなと、二人は目を合わせてからその専用エレベーターに向かい、水祈がカードキーで解錠すると、簡単に開いた。
「ねぇ龍」
「ん?」
するとエレベーターに乗る直前。水祈が真面目な表情を浮かべ、
「ここから先は退けなくなるわよ。準備は良い?」
「勿論」
なら良いわね。と水祈は言うと、エレベーターのスイッチを押し、エレベーターは最上階のスイートルームに向けて上がっていくのだった。
「眠そうね」
高級外車を運転する水祈に言われ、すまんと龍は言うと、
「良いのよ。何だかんだ殆ど寝て無いでしょ?」
「そうだな」
ゴキッと首をならすと龍は煙草に火を着けて煙を吐き出す。煙を肺に満たすと、少し頭がシャキッとした。
「しかし帝獄ホテルを拠点にって金があるなぁ」
「全くね」
帝獄ホテルと言えば、日本でもトップクラスで有名なホテルだ。サービスもだが高級ホテルと言う意味でもだが。
「で?ホテルに着いたらどうする?」
「そうね……取り敢えず部屋がどこなのかわからないとねぇ」
帝獄ホテルは大きい。しかも梶原から聞いたとは言え、獠牙が本当にいるとは限らないし、虎白がそこにいるかも分からない。
それでも他にやりようはないので、とにかく帝獄ホテルにいくしかないだろう。
「もし虎白がいるとして、獠牙の妨害はあるよな?」
「あるでしょうね。まさかあの陳ってやつが一人な訳ないでしょうね」
しかしあの陳って奴も獠牙の人間だろう。と龍はまた煙を吐き出し、
「もし本気で獠牙とやりあうってなったら、大分ヤバイよな」
「ヤバイでしょうね。下手すると歌舞伎町に居られなくなるレベルで」
だよなぁ、と龍は頭を掻く。
「獠牙か。余り組織の名前に詳しくない俺でも知ってるからなぁ。すごい有名だ。色んな意味でな」
規模も人員もそして何よりも危険性もだ。
獠牙と敵対して無惨な最後を迎えた組織も多い。三界組は、幸運が重なったのが大きかった。それでもどうにか歌舞伎町から追い出すのが限界だったのだ。
だが今回はたった二人で行かなくてはならない。正直に言えば、無茶も良いところである。
「お前だけでも帰れ何て言わないでよ」
「言うかよ。俺とお前は一蓮托生。だろ?」
えぇ、と水祈が笑うと、龍も笑みを浮かべる。
何時だって、二人は一緒だ。生きるときも死ぬときも。相手が生きるなら自分も生き、死ぬときは自分も死ぬ。そう互いに誓ったのだから。
◆
「でっけぇホテルだなぁ」
車を飛ばし、帝獄ホテルに到着した二人だが、改めて外観を見るとため息が出る。
「この中から虎白本人か、それに関する情報を手に入れなきゃならんのか」
「そうね」
取り敢えず入るか。と二人は中に入ると、ボーイに出迎えられた。
「ご予約の御方でしょうか?」
そう言うボーイの眼には、若干の侮蔑が見て取れた。
確かに龍の格好はTシャツとジーンズ。水祈はこの季節には少し似合わないロングコートを着込んでいる。
この高級ホテルである帝獄ホテルを利用するには、浮いた格好と言わざるを得ない。しかし水祈は気にした様子はなく、
「えぇ、ちょっとね」
と返しつつ、水祈はボーイの背後の方から歩いてくる男を見る。その男は真っ直ぐこちらに来ながら胸元に手を入れると、中から銃を抜き此方に向けた。
「間違いないわね」
水祈がそんな事を呟きながら、ボーイを思い切り突き飛ばすと、それを合図に龍も走り出す。それを追うように男は銃を発砲。
「うひゃあ!」
ボーイは突然の銃声に怯み、水祈と龍はフロントを飛び越えて隠れた。
「取り敢えずいるみたいね」
「だな」
そして発砲した男は、中国語で何かを叫ぶと、周りからゾロゾロと出てくる。
「おいおい。周りの客って皆獠牙の人間かよ」
「まぁ入ったときから視線は感じてたけどね」
ここまでは流石に予想外。と水祈は呟き、龍も頷く。
「お、お客様!一体何をばっ!」
そして正気に戻ったボーイは何事かと叫ぶと、パン!と銃声がし、眉間から血を吹き出しながら倒れた。
『きゃあああああああ!』
悲鳴を上げたのは、銃声に気付き出てきた他のスタッフ達だ。しかしそんなスタッフ達にも、発砲した男以外の奴等まで銃を抜き、銃を撃っていく。硝煙と血飛沫が上がり、あっという間に地獄絵図に変わった。
「容赦無しかよ」
「ほんとだわ」
龍と水祈はそう言いつつも動かない。
龍は多少であれば撃たれても良いが、この量に撃たれたら流石にキツイ。
水祈は当たり前だが大小関わらず撃たれたら危ないため、スタッフには悪いが様子を見ていると、一斉にリロードを始めた。
「今!」
「あぁ!」
その瞬間に二人は飛び出し、龍の拳と水祈の蹴りがそれぞれの敵を倒し、龍が相手の落とした銃とマガジンを拾って装填し、
「水祈!」
「サンキュ!」
水祈も銃とマガジンを拾って装填し、龍が投げた銃をキャッチすると2丁拳銃で周りの敵に発砲。
急所は外しつつも、次々撃ち抜き弾が切れると投げ捨て、龍が変わりに水祈に撃たれた敵を殴り飛ばして銃を奪うと、それを水祈に投げ渡し、それを再度発砲。撃たれてない奴が慌ててこちらに銃口を向けるが、龍が銃を持つ手を殴ると、味方の方に向かって撃ってしまい、同士討ちになってしまった。
「はぁああああああ!」
その間に水祈は更に銃を撃ち、龍が次々奪った銃を渡していく。そうして暫く銃声と殴る音が鳴り響くと、
「はぁ……はぁ」
「ふぅ」
銃を捨てながら、水祈と龍は一息いれた。
「アァ……」
「ウゥ……」
周りには水祈の銃弾で撃ち抜かれたり、龍の拳でぶっ飛ばされて動けなくなった連中が倒れている。
「これで全員……っ!」
龍が一瞬気を抜いた瞬間、物陰から飛び出してきた奴が、ナイフを龍に向けて突き出し、龍の脇腹に刺さる。だが、
「っ!」
少し刺さったところで止まってしまい、その後はそれ以上深く刺さらず、抜くことも出来なくなってしまった。
「お前……」
ガシッ!と龍は相手の顔を掴み、そのまま持ち上げると、
「虎白を追い掛けてきてたやつだな」
そう。見てみれば虎白と会った日の夜と、歌舞伎町を案内してたときに出会った奴だった。包帯をあちこちに巻いてて少し分かりにくいが。
「ま、どうでも良いけどなぁ!」
そしてそのまま床に頭を叩きつけて倒すと、脇腹に刺さったナイフを抜いて捨てる。
「行くか」
「まるでターミ○ーターね」
誰かだと突っ込みつつ、龍と水祈はフロントに向かい、そこに置いてあるリストを見た。大体こう言うのはすぐホテル側が確認できるように近くに置いてあるものだ。
「成程、最上階のスイートルームにその階下3階まで埋まってる」
「となるとスイートルームか?」
「多分ね」
そう言いながら、水祈は倒れたボーイの体をまさぐると、
「あった」
「なんだそれ?」
水祈が出したのはなにやら黒いカードキーだ。
「ここはスイートルームに上がるには専用エレベーターにこのカードキーを読み込ませる必要があるのよ」
「そう言うことか」
逆に言えば、これならエレベーターに乗っていっても途中で獠牙の奴等と鉢合わせすることは無い。
好都合だなと、二人は目を合わせてからその専用エレベーターに向かい、水祈がカードキーで解錠すると、簡単に開いた。
「ねぇ龍」
「ん?」
するとエレベーターに乗る直前。水祈が真面目な表情を浮かべ、
「ここから先は退けなくなるわよ。準備は良い?」
「勿論」
なら良いわね。と水祈は言うと、エレベーターのスイッチを押し、エレベーターは最上階のスイートルームに向けて上がっていくのだった。
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