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第二章
2-6 力の使い方
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結論から言うと、僕の真っ赤な太陽は誰一人焼き殺す事はなかった。生徒会長にファイアボールをぶつけようとした瞬間にゴエモンが僕の鳩尾を全力で殴り、全く予想だにしていなかった攻撃を受けた僕はそのまま気絶してしまったのだ。
僕の意識が失われたため、火球はひどく小さく弱いものになって生徒達の魔法と相殺され、僕を欠いたF組の仲間はみんな手ひどい攻撃を受け重傷を負うことになってしまった。
僕の火球に腰を抜かした生徒会長は、自分の恥を雪ぐかのように熾烈な攻撃を加えようとしたが、すんでのところでティーチャーはじめとする教師たちが止めてくれたらしい。
「そ、それで一命を取り留めたわけです」
ハカセの説明を聞き終わる。
「な、なぜあんなことをしたのですかな?」
滅多にないハカセの責めるような口調に気後れするが、僕も考え無しに暴走したわけじゃない。
「やらなきゃやら……
「やらなきゃやられたは通用しねえぞ」
ゴエモンと僕の声が重なった。彼の怒りがその声と表情から痛いほど伝わってきた。
「どうして! あれをずっと続けられてたらこっちがもたずにやられてただろ!」
「維持してたろ」
「……え?」
「解除した赤以外のシールドと対物理攻撃用のシールド、あんなでっけえファイアボール出しながらそっちも維持してただろ。それだけできるんならまだまだ守れたはずだ」
「そ……そんなの時間の問題じゃないか! 結局最後にやられるんじゃおんなじだ!」
「オール!」
「う……」
「あいつらも天聖学院の一員で、卒業後は天聖者になって人々を救う大事な仲間だ。そいつらを殺してどうすんだよ?」
「向こうが先に、しかもあんな大人数でやってきたことじゃないか!」
「俺たちの誰か死んだか?」
「そ、それは……」
「俺たち全員のコンビネーションでほとんどの攻撃は防いでいたはずだ。ハカセの傷もバンコが治してたし、俺たちが攻撃をしなきゃいけない理由が一体どこにあった? あの場の生徒を皆殺しにするようなでっけえファイアボール召喚する必要はどこにあった?」
「…………」
「お前はただムカついてただけだ。『攻撃をされたからやり返していい』なんてのは馬鹿の言い分じゃねえか。あいつらが教師の指示でやっていたらどうするつもりだ? そうでなくてもあの生徒会長に嫌々従ってたやつもいたんじゃねえのか? 卒業後に魔王に操られた村人が相手だったとしても同じ理由で殺すのか?」
ゴエモンの正論に僕は黙るしかなかった。彼の言っていることは当たっていたし、確かに全てその通りとしかいいようがない。
「あ、危ない時は小生がきちんと伝えますぞ。お、オール殿も我々を信じてくだされ」
「ご……ごめん。僕が馬鹿だったよ……。そうだよね、あんな簡単に人を殺そうとするなんて、よく考えたらとんでもないことだ。どうしてそんな事がわからなかったんだろう。人を殺したいだなんて今まで考えた事なかったはずなのに」
「仕方ねえよ。この世界じゃ殺して殺されてが日常茶飯事だ。実際俺だって綺麗な体のまんまここに来たわけじゃねえ。転生者の頃はそれなりにやることもやってんだ。でもよ、だからと言ってそれが当たり前になっちゃいけねえよ。それをギリギリまで後に伸ばしてえし、やらなきゃならねえってんなら相手は選びてえ。正解なんかはどこにもありゃしねえ、だから俺が俺を許せるやり方でやっていきてえんだ」
ゴエモンがここまできちんと考えていたことに驚き、反対に僕の短絡さがとても恥ずかしくなった。彼は命を奪う事に対して最大限の抵抗をしながらも、その選択肢を選ぶことを後悔しない生き方をしているのだ。
(力と同じだけの責任を持たなくちゃいけない)
僕たちは四人で再びぎゅっと手を握り合った。
「そういや天聖学院ってどんなとこなんです?」
「あー、サンちゃんは軍行ってないからしらんか。まあ一言で言うとクソやね」
「ひど!」
「だってなあ、あそこ来る奴ってだいたいみんな自分が一番と思って来よるからな。今回のオールみたいな案内人からの推薦組は『推薦された俺スゲエ才能マックス! コンテニュー組って才能ないから現場行ってたんでしょ? おつかれぃ~っす!』 って思ってるし、転生世界でハッピーエンド迎えてから更にコンテニューした組は『現場で活躍した俺スゲエ! 実際に戦闘したら推薦組なんて雑魚雑魚経験者の俺が最強っしょ、え、君世界救ったことないの?』、って考えてるし」
「きっつ。でもクラス分けあるんでしょ? どんだけプライド高くてもそこで現実を知ることになるんじゃないです?」
「実はあのクラス分けが一番ウケルやつでな! SSからCまであるけどあれ頭の悪い順にSSから並べとんねん」
「えええ!? なんですかそれ! おもしろ!」
「転生者の能力の上下なんてそんな明確に決まるもんやないねん。特に軍みたいに大人数になると一人一人がしっかり自分の役割こなさんかったらどんだけ個々がある程度強くても結局負けるし。まあ俺ぐらい強かったら話は全然ちゃうけどな」
「ハイハイ、よく存じておりますよ」
「SSはそういう分担とか協調とかないがしろにしてる能力ブンブン振り回して俺ツエエエエエやってるやつら入れるとこ。そういう奴らってAとかBに入れたらそれだけで発狂して腕試しだ力比べだとか騒ぎよるからな。SSは馬鹿隔離場。他はだいたい能力の方向性似てる奴集めて入れてるわ。教える方もその方が楽やからな」
「ああ確かに教える方の手間はありますね」
「それになー、能力持ちの集団って組み合わせによってハメ技みたいなんも余裕でできるからな。メイカーがやってるけどアイツまじでやばいで。俺でも勝てんし」
「え、あの人そんな強いんですか?」
「なんぼサンちゃんが仲間ゆうても人の能力ホイホイと教えるわけにはいかんけどな、今度本人に聞いてみ、教えてくれるかはわからんけど」
「はー、みんなすごいんですねえ」
「サンちゃんも十分すごいから大丈夫大丈夫。ああ、でも学院のクラスってSSからC以外にも実はいくつかあってな。そこのやつらはクラス分け関係なく特定の目的で集められたやつばっかりおるクラスやねん」
「へー、特殊部隊みたいな感じなんですかね」
「そうそう、SSからCのクラス記号には意味ないねんけどな。特別クラスはそのクラスの目的ごとに特定の英語の頭文字とってるねん。確かE組がEvilで……あとはなんやったかな」
「EvilのE組ってずいぶん物騒なクラスがあるんですね。なんというか天聖目指してる学院のクラスにしてはなかなかなさそうなもんですけど」
「そりゃまあ汚れ役っていうのはどこにいっても必要なんやろうな。俺らみたいに」
「そうですねー。オール君無事卒業できますよねえ?」
「してもらわんとめちゃめちゃ困るなあ」
「そうですねえ」
僕の意識が失われたため、火球はひどく小さく弱いものになって生徒達の魔法と相殺され、僕を欠いたF組の仲間はみんな手ひどい攻撃を受け重傷を負うことになってしまった。
僕の火球に腰を抜かした生徒会長は、自分の恥を雪ぐかのように熾烈な攻撃を加えようとしたが、すんでのところでティーチャーはじめとする教師たちが止めてくれたらしい。
「そ、それで一命を取り留めたわけです」
ハカセの説明を聞き終わる。
「な、なぜあんなことをしたのですかな?」
滅多にないハカセの責めるような口調に気後れするが、僕も考え無しに暴走したわけじゃない。
「やらなきゃやら……
「やらなきゃやられたは通用しねえぞ」
ゴエモンと僕の声が重なった。彼の怒りがその声と表情から痛いほど伝わってきた。
「どうして! あれをずっと続けられてたらこっちがもたずにやられてただろ!」
「維持してたろ」
「……え?」
「解除した赤以外のシールドと対物理攻撃用のシールド、あんなでっけえファイアボール出しながらそっちも維持してただろ。それだけできるんならまだまだ守れたはずだ」
「そ……そんなの時間の問題じゃないか! 結局最後にやられるんじゃおんなじだ!」
「オール!」
「う……」
「あいつらも天聖学院の一員で、卒業後は天聖者になって人々を救う大事な仲間だ。そいつらを殺してどうすんだよ?」
「向こうが先に、しかもあんな大人数でやってきたことじゃないか!」
「俺たちの誰か死んだか?」
「そ、それは……」
「俺たち全員のコンビネーションでほとんどの攻撃は防いでいたはずだ。ハカセの傷もバンコが治してたし、俺たちが攻撃をしなきゃいけない理由が一体どこにあった? あの場の生徒を皆殺しにするようなでっけえファイアボール召喚する必要はどこにあった?」
「…………」
「お前はただムカついてただけだ。『攻撃をされたからやり返していい』なんてのは馬鹿の言い分じゃねえか。あいつらが教師の指示でやっていたらどうするつもりだ? そうでなくてもあの生徒会長に嫌々従ってたやつもいたんじゃねえのか? 卒業後に魔王に操られた村人が相手だったとしても同じ理由で殺すのか?」
ゴエモンの正論に僕は黙るしかなかった。彼の言っていることは当たっていたし、確かに全てその通りとしかいいようがない。
「あ、危ない時は小生がきちんと伝えますぞ。お、オール殿も我々を信じてくだされ」
「ご……ごめん。僕が馬鹿だったよ……。そうだよね、あんな簡単に人を殺そうとするなんて、よく考えたらとんでもないことだ。どうしてそんな事がわからなかったんだろう。人を殺したいだなんて今まで考えた事なかったはずなのに」
「仕方ねえよ。この世界じゃ殺して殺されてが日常茶飯事だ。実際俺だって綺麗な体のまんまここに来たわけじゃねえ。転生者の頃はそれなりにやることもやってんだ。でもよ、だからと言ってそれが当たり前になっちゃいけねえよ。それをギリギリまで後に伸ばしてえし、やらなきゃならねえってんなら相手は選びてえ。正解なんかはどこにもありゃしねえ、だから俺が俺を許せるやり方でやっていきてえんだ」
ゴエモンがここまできちんと考えていたことに驚き、反対に僕の短絡さがとても恥ずかしくなった。彼は命を奪う事に対して最大限の抵抗をしながらも、その選択肢を選ぶことを後悔しない生き方をしているのだ。
(力と同じだけの責任を持たなくちゃいけない)
僕たちは四人で再びぎゅっと手を握り合った。
「そういや天聖学院ってどんなとこなんです?」
「あー、サンちゃんは軍行ってないからしらんか。まあ一言で言うとクソやね」
「ひど!」
「だってなあ、あそこ来る奴ってだいたいみんな自分が一番と思って来よるからな。今回のオールみたいな案内人からの推薦組は『推薦された俺スゲエ才能マックス! コンテニュー組って才能ないから現場行ってたんでしょ? おつかれぃ~っす!』 って思ってるし、転生世界でハッピーエンド迎えてから更にコンテニューした組は『現場で活躍した俺スゲエ! 実際に戦闘したら推薦組なんて雑魚雑魚経験者の俺が最強っしょ、え、君世界救ったことないの?』、って考えてるし」
「きっつ。でもクラス分けあるんでしょ? どんだけプライド高くてもそこで現実を知ることになるんじゃないです?」
「実はあのクラス分けが一番ウケルやつでな! SSからCまであるけどあれ頭の悪い順にSSから並べとんねん」
「えええ!? なんですかそれ! おもしろ!」
「転生者の能力の上下なんてそんな明確に決まるもんやないねん。特に軍みたいに大人数になると一人一人がしっかり自分の役割こなさんかったらどんだけ個々がある程度強くても結局負けるし。まあ俺ぐらい強かったら話は全然ちゃうけどな」
「ハイハイ、よく存じておりますよ」
「SSはそういう分担とか協調とかないがしろにしてる能力ブンブン振り回して俺ツエエエエエやってるやつら入れるとこ。そういう奴らってAとかBに入れたらそれだけで発狂して腕試しだ力比べだとか騒ぎよるからな。SSは馬鹿隔離場。他はだいたい能力の方向性似てる奴集めて入れてるわ。教える方もその方が楽やからな」
「ああ確かに教える方の手間はありますね」
「それになー、能力持ちの集団って組み合わせによってハメ技みたいなんも余裕でできるからな。メイカーがやってるけどアイツまじでやばいで。俺でも勝てんし」
「え、あの人そんな強いんですか?」
「なんぼサンちゃんが仲間ゆうても人の能力ホイホイと教えるわけにはいかんけどな、今度本人に聞いてみ、教えてくれるかはわからんけど」
「はー、みんなすごいんですねえ」
「サンちゃんも十分すごいから大丈夫大丈夫。ああ、でも学院のクラスってSSからC以外にも実はいくつかあってな。そこのやつらはクラス分け関係なく特定の目的で集められたやつばっかりおるクラスやねん」
「へー、特殊部隊みたいな感じなんですかね」
「そうそう、SSからCのクラス記号には意味ないねんけどな。特別クラスはそのクラスの目的ごとに特定の英語の頭文字とってるねん。確かE組がEvilで……あとはなんやったかな」
「EvilのE組ってずいぶん物騒なクラスがあるんですね。なんというか天聖目指してる学院のクラスにしてはなかなかなさそうなもんですけど」
「そりゃまあ汚れ役っていうのはどこにいっても必要なんやろうな。俺らみたいに」
「そうですねー。オール君無事卒業できますよねえ?」
「してもらわんとめちゃめちゃ困るなあ」
「そうですねえ」
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