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第七話 修羅場① ※
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メッセージを送り終えた僕は、ごろんとベッドに転がって枕を抱きかかえた。
……恵人くん、可愛いと思ってくれるかな。うんうん、きっと大丈夫。ハルもレンもショーちゃんもAyumiさんもあれだけ可愛いって言ってくれたし。そもそもこの服だって恵人くんが選んでくれたものだし。
この姿で誘惑したら手出したりしてくれないだろうか。
以前ナイトルーティン動画を撮影するとき、ベッドの中で身体をすり寄せてみたらめちゃくちゃキスしてくれたことを思い出す。ああ、恵人くんは僕とキスができるんだって、本当に嬉しかったのだ。彼、ノンケなのにね。
ハッと思い立ってクローゼットを開く。つい浮かれて通販で女性用の下着を買ったんだった。一つはリボンのついた可愛らしいやつ。もう一つは穴の開いたセクシーなやつ。
うーん。いやいや、後者はあからさますぎてダメだ。恵人くんには刺さらない。僕は今清楚系なのに。
って、こんな煩悩だらけの僕に清楚系なんて無理があるんだ。少しだけしゅんとした気持ちで可愛らしいほうの下着を身に着けてみる。
まもなく、玄関のチャイムが鳴った。
僕は慌てて過激なほうの下着をクローゼットの奥にしまいこんで、玄関へと向かう。恵人くん、来るの早すぎないだろうか。いくら徒歩圏内に住んでいるとはいえ、準備と合わせて三、四十分は見積もっていたのに。
「けっ恵人くん……」
「じゃなくて悪かったな?」
「え、あっ、悠真!?」
そこに立っていたのは恵人くんではなく悠真だった。彼は部屋に入ってバタンとドアを閉めると、強引に僕の腕を引く。そしてベッドに仰向けに倒された。
「何、そのカッコ」
「あ……えっと」
「佐原くんがノンケだから女の子の格好で誘惑しようと思った? そしたら手出してくれると思って?」
「ち……違う! 動画の撮影だよ。恵人くんとのチャンネルじゃなくて、グループの方の動画。来週にはアップされると思…………あぁっ」
悠真の右手が僕の服の下に入ってきた。そのまま胸の突起をこすられる。
「なるほど。でもすぐにメイク落とすのは惜しいから、どうせなら佐原くん家に呼んで誘惑しようと思ったわけだ」
「ん、んん……ち、ちが」
違わない。完全にそのとおりだった。
服の裾を胸の上までたくし上げられ、自分で持っているよう指示される。その通りにすれば、露わになった胸を彼の舌でつつかれた。
「ん……やぁ……っ」
「は、エッロ」
ゾク、とおなかのあたりが疼いた。
欲情した彼の瞳を見れば、僕もほしくてほしくてたまらなくなる。
今度はスカートの中に入ってきた手が、太ももから中心に向かってねっとりと動く。
「佐原くんのこと、また好きになっちゃった?」
「ふっ……、ぁん」
「残念だけど彼は、きみに手を出す勇気はないよ」
「んん……っ」
可愛いリボンの下着を抜き取られ、見向きもされないままにベッドの下に投げ捨てられた。
後ろに伸びてきた指にぐちぐちと中を犯される。
「渉、エロいことするの好きでしょ?」
「好き……好きぃ」
「ほら、後ろ向いて」
四つん這いの体制になると、先端が後ろにあてがわれた。周囲をなぞるだけで入ってこないのがもどかしく、思わず自ら腰を動かす。
「何? どうしてほしいの?」
「入れてほし……っ」
「淫乱。佐原くんにこんな姿見られたら嫌われちゃうね」
「やぁ……っ」
「大丈夫。俺が抱いてあげるからね」
背中にやさしいキスをされた。首を回すと、目元、そして口にもキスをしてくれる。
そして次の瞬間、僕の中に悠真のものが入ってきた。
「あっ……!」
強い刺激に目をチカチカさせているうちにも、ぐっぐっと奥の方を突かれる。
「あっ、あぁ」
「気持ちいい? 渉」
「気持ちいい……っ」
「俺のこと好き?」
「好き、悠真のこと好き」
夢中になって彼を求めた。
どれくらい交わっていたか、時間の感覚もなくなりかけた頃。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
「っ!?」
すぐに後ろから口を覆われる。
「しっ。佐原くんでしょ。声出すなよ」
「あっ、やだっ、僕出たい」
「この状況で出るの?」
「僕が呼んで、わざわざ来てくれて……」
「服もメイクもぐちゃぐちゃで、おまけに俺に犯されてるのに? 本当に出るの?」
「……っ」
僕はふるふると首を横に振った。
ピンポーン、ピンポーンと立て続けに鳴るチャイムを聞きながら、腰の律動が再開される。
恵人くん、恵人くん。頭の中が恵人くんのことでいっぱいになる。後ろから口をふさがれたまま、僕はわけもわからず乱れた。
と、その時だった。
ガチャ、と玄関の扉が開く音がする。
「あっ、渉くん、鍵かけ忘れて……」
……目が合った。腰を突き出した格好で悠真に抱かれる僕の姿を、しっかり捉える恵人くん。
「……何?」
ぴくりとも動かない恵人くんを見て、悠真が彼に問いかける。
「佐原くんも混ざる?」
「いっいえ結構です!」
そう言って彼は家を飛び出していった。
「うっ、うぅ~」
泣きじゃくる僕に飲み物を差し出してくれる悠真。
あれから僕の涙が止まらなくなってしまったのでセックスは中断した。
「……はぁ。もう無理だわ」
「ふぇっ」
「どうあがいても無理。別れよう渉」
「ふえぇ」
「ふえぇじゃないんだけど。なんで恋人に浮気現場見られて被害者ぶって泣くやつのムーブしてるんだよ。てか俺が恋人なんだけど。なんで俺が浮気相手みたいな扱いされてんの」
「違っ」
「違くない。渉、もう俺に一切気持ちないだろ」
「違っ、僕には悠真しか」
「うんうん。俺しかいなかったのにね。残念」
そう言うと、悠真は荷物をまとめてさっさと家を出て行ってしまった。
……えっ、捨てられた? こんなにあっさり?
……恵人くん、可愛いと思ってくれるかな。うんうん、きっと大丈夫。ハルもレンもショーちゃんもAyumiさんもあれだけ可愛いって言ってくれたし。そもそもこの服だって恵人くんが選んでくれたものだし。
この姿で誘惑したら手出したりしてくれないだろうか。
以前ナイトルーティン動画を撮影するとき、ベッドの中で身体をすり寄せてみたらめちゃくちゃキスしてくれたことを思い出す。ああ、恵人くんは僕とキスができるんだって、本当に嬉しかったのだ。彼、ノンケなのにね。
ハッと思い立ってクローゼットを開く。つい浮かれて通販で女性用の下着を買ったんだった。一つはリボンのついた可愛らしいやつ。もう一つは穴の開いたセクシーなやつ。
うーん。いやいや、後者はあからさますぎてダメだ。恵人くんには刺さらない。僕は今清楚系なのに。
って、こんな煩悩だらけの僕に清楚系なんて無理があるんだ。少しだけしゅんとした気持ちで可愛らしいほうの下着を身に着けてみる。
まもなく、玄関のチャイムが鳴った。
僕は慌てて過激なほうの下着をクローゼットの奥にしまいこんで、玄関へと向かう。恵人くん、来るの早すぎないだろうか。いくら徒歩圏内に住んでいるとはいえ、準備と合わせて三、四十分は見積もっていたのに。
「けっ恵人くん……」
「じゃなくて悪かったな?」
「え、あっ、悠真!?」
そこに立っていたのは恵人くんではなく悠真だった。彼は部屋に入ってバタンとドアを閉めると、強引に僕の腕を引く。そしてベッドに仰向けに倒された。
「何、そのカッコ」
「あ……えっと」
「佐原くんがノンケだから女の子の格好で誘惑しようと思った? そしたら手出してくれると思って?」
「ち……違う! 動画の撮影だよ。恵人くんとのチャンネルじゃなくて、グループの方の動画。来週にはアップされると思…………あぁっ」
悠真の右手が僕の服の下に入ってきた。そのまま胸の突起をこすられる。
「なるほど。でもすぐにメイク落とすのは惜しいから、どうせなら佐原くん家に呼んで誘惑しようと思ったわけだ」
「ん、んん……ち、ちが」
違わない。完全にそのとおりだった。
服の裾を胸の上までたくし上げられ、自分で持っているよう指示される。その通りにすれば、露わになった胸を彼の舌でつつかれた。
「ん……やぁ……っ」
「は、エッロ」
ゾク、とおなかのあたりが疼いた。
欲情した彼の瞳を見れば、僕もほしくてほしくてたまらなくなる。
今度はスカートの中に入ってきた手が、太ももから中心に向かってねっとりと動く。
「佐原くんのこと、また好きになっちゃった?」
「ふっ……、ぁん」
「残念だけど彼は、きみに手を出す勇気はないよ」
「んん……っ」
可愛いリボンの下着を抜き取られ、見向きもされないままにベッドの下に投げ捨てられた。
後ろに伸びてきた指にぐちぐちと中を犯される。
「渉、エロいことするの好きでしょ?」
「好き……好きぃ」
「ほら、後ろ向いて」
四つん這いの体制になると、先端が後ろにあてがわれた。周囲をなぞるだけで入ってこないのがもどかしく、思わず自ら腰を動かす。
「何? どうしてほしいの?」
「入れてほし……っ」
「淫乱。佐原くんにこんな姿見られたら嫌われちゃうね」
「やぁ……っ」
「大丈夫。俺が抱いてあげるからね」
背中にやさしいキスをされた。首を回すと、目元、そして口にもキスをしてくれる。
そして次の瞬間、僕の中に悠真のものが入ってきた。
「あっ……!」
強い刺激に目をチカチカさせているうちにも、ぐっぐっと奥の方を突かれる。
「あっ、あぁ」
「気持ちいい? 渉」
「気持ちいい……っ」
「俺のこと好き?」
「好き、悠真のこと好き」
夢中になって彼を求めた。
どれくらい交わっていたか、時間の感覚もなくなりかけた頃。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
「っ!?」
すぐに後ろから口を覆われる。
「しっ。佐原くんでしょ。声出すなよ」
「あっ、やだっ、僕出たい」
「この状況で出るの?」
「僕が呼んで、わざわざ来てくれて……」
「服もメイクもぐちゃぐちゃで、おまけに俺に犯されてるのに? 本当に出るの?」
「……っ」
僕はふるふると首を横に振った。
ピンポーン、ピンポーンと立て続けに鳴るチャイムを聞きながら、腰の律動が再開される。
恵人くん、恵人くん。頭の中が恵人くんのことでいっぱいになる。後ろから口をふさがれたまま、僕はわけもわからず乱れた。
と、その時だった。
ガチャ、と玄関の扉が開く音がする。
「あっ、渉くん、鍵かけ忘れて……」
……目が合った。腰を突き出した格好で悠真に抱かれる僕の姿を、しっかり捉える恵人くん。
「……何?」
ぴくりとも動かない恵人くんを見て、悠真が彼に問いかける。
「佐原くんも混ざる?」
「いっいえ結構です!」
そう言って彼は家を飛び出していった。
「うっ、うぅ~」
泣きじゃくる僕に飲み物を差し出してくれる悠真。
あれから僕の涙が止まらなくなってしまったのでセックスは中断した。
「……はぁ。もう無理だわ」
「ふぇっ」
「どうあがいても無理。別れよう渉」
「ふえぇ」
「ふえぇじゃないんだけど。なんで恋人に浮気現場見られて被害者ぶって泣くやつのムーブしてるんだよ。てか俺が恋人なんだけど。なんで俺が浮気相手みたいな扱いされてんの」
「違っ」
「違くない。渉、もう俺に一切気持ちないだろ」
「違っ、僕には悠真しか」
「うんうん。俺しかいなかったのにね。残念」
そう言うと、悠真は荷物をまとめてさっさと家を出て行ってしまった。
……えっ、捨てられた? こんなにあっさり?
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