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一章「出会い」
1.プロローグ-K
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『今までありがとう、楽しかった。じゃあね。』
人通りもなくなり音が消えた世界にスマホの操作音だけが響く。摩天楼の一角、ビルの屋上の椅子に腰掛け、少年は使い慣れたスマホに目を向ける。その目元は白い肌に似合わず青隈に染まっていた。
「送信っと。」
シュパンッ、という送信音が少年の鼓膜を揺らした。少年はスマホから目を離すと不夜城となった街を見下ろす。そのギラつく輝きとは対照に人の気配はなくそこは光と闇だけの世界であり、誰に呼びかけるでもないネオンサインがその異様な雰囲気に拍車をかけていた。
そのサインに惹かれるように、もしくは夜の闇に吸い込まれるように、少年は熱を奪われ冷め切った屋上の床を進んでいった。屋上の端にある柵に跨ると、先程まで大人しかった風が音を立てて通っていった。その風はどこか寂しく、されど気分を高揚させる、そんな夜の象徴のような風だった。
『うん、楽しかった。またね。』
ピロンという通知音とともに一件のメッセージが届く。少年は通知欄でその内容を確認すると少し困ったような表情で微笑を浮かべ、スマホを胸ポケットにしまった。
少年は一拍置くとゆっくりと柵の上に立ち上がり、夜に背を向け、両腕を大きく横に開いた。まるで『俺はここにいいるぞ』と、なにかに訴えているように。
「よしっ、行くか――」
少年は再び微笑を浮かべるとゆっくりとまぶたを閉じた。その笑みはさっきまでのそれとは異なり、自分に宛ててか、それとも他のなにかに宛ててか、嘲笑とも取れる憫笑だった。
そして、深く息を吸い込むと、少年はその息を吐く間もなく夜の闇に消えていった。
「――今よりマシな世界へ。」
人通りもなくなり音が消えた世界にスマホの操作音だけが響く。摩天楼の一角、ビルの屋上の椅子に腰掛け、少年は使い慣れたスマホに目を向ける。その目元は白い肌に似合わず青隈に染まっていた。
「送信っと。」
シュパンッ、という送信音が少年の鼓膜を揺らした。少年はスマホから目を離すと不夜城となった街を見下ろす。そのギラつく輝きとは対照に人の気配はなくそこは光と闇だけの世界であり、誰に呼びかけるでもないネオンサインがその異様な雰囲気に拍車をかけていた。
そのサインに惹かれるように、もしくは夜の闇に吸い込まれるように、少年は熱を奪われ冷め切った屋上の床を進んでいった。屋上の端にある柵に跨ると、先程まで大人しかった風が音を立てて通っていった。その風はどこか寂しく、されど気分を高揚させる、そんな夜の象徴のような風だった。
『うん、楽しかった。またね。』
ピロンという通知音とともに一件のメッセージが届く。少年は通知欄でその内容を確認すると少し困ったような表情で微笑を浮かべ、スマホを胸ポケットにしまった。
少年は一拍置くとゆっくりと柵の上に立ち上がり、夜に背を向け、両腕を大きく横に開いた。まるで『俺はここにいいるぞ』と、なにかに訴えているように。
「よしっ、行くか――」
少年は再び微笑を浮かべるとゆっくりとまぶたを閉じた。その笑みはさっきまでのそれとは異なり、自分に宛ててか、それとも他のなにかに宛ててか、嘲笑とも取れる憫笑だった。
そして、深く息を吸い込むと、少年はその息を吐く間もなく夜の闇に消えていった。
「――今よりマシな世界へ。」
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