1 / 4
一章「出会い」
1.プロローグ-K
しおりを挟む
『今までありがとう、楽しかった。じゃあね。』
人通りもなくなり音が消えた世界にスマホの操作音だけが響く。摩天楼の一角、ビルの屋上の椅子に腰掛け、少年は使い慣れたスマホに目を向ける。その目元は白い肌に似合わず青隈に染まっていた。
「送信っと。」
シュパンッ、という送信音が少年の鼓膜を揺らした。少年はスマホから目を離すと不夜城となった街を見下ろす。そのギラつく輝きとは対照に人の気配はなくそこは光と闇だけの世界であり、誰に呼びかけるでもないネオンサインがその異様な雰囲気に拍車をかけていた。
そのサインに惹かれるように、もしくは夜の闇に吸い込まれるように、少年は熱を奪われ冷め切った屋上の床を進んでいった。屋上の端にある柵に跨ると、先程まで大人しかった風が音を立てて通っていった。その風はどこか寂しく、されど気分を高揚させる、そんな夜の象徴のような風だった。
『うん、楽しかった。またね。』
ピロンという通知音とともに一件のメッセージが届く。少年は通知欄でその内容を確認すると少し困ったような表情で微笑を浮かべ、スマホを胸ポケットにしまった。
少年は一拍置くとゆっくりと柵の上に立ち上がり、夜に背を向け、両腕を大きく横に開いた。まるで『俺はここにいいるぞ』と、なにかに訴えているように。
「よしっ、行くか――」
少年は再び微笑を浮かべるとゆっくりとまぶたを閉じた。その笑みはさっきまでのそれとは異なり、自分に宛ててか、それとも他のなにかに宛ててか、嘲笑とも取れる憫笑だった。
そして、深く息を吸い込むと、少年はその息を吐く間もなく夜の闇に消えていった。
「――今よりマシな世界へ。」
人通りもなくなり音が消えた世界にスマホの操作音だけが響く。摩天楼の一角、ビルの屋上の椅子に腰掛け、少年は使い慣れたスマホに目を向ける。その目元は白い肌に似合わず青隈に染まっていた。
「送信っと。」
シュパンッ、という送信音が少年の鼓膜を揺らした。少年はスマホから目を離すと不夜城となった街を見下ろす。そのギラつく輝きとは対照に人の気配はなくそこは光と闇だけの世界であり、誰に呼びかけるでもないネオンサインがその異様な雰囲気に拍車をかけていた。
そのサインに惹かれるように、もしくは夜の闇に吸い込まれるように、少年は熱を奪われ冷め切った屋上の床を進んでいった。屋上の端にある柵に跨ると、先程まで大人しかった風が音を立てて通っていった。その風はどこか寂しく、されど気分を高揚させる、そんな夜の象徴のような風だった。
『うん、楽しかった。またね。』
ピロンという通知音とともに一件のメッセージが届く。少年は通知欄でその内容を確認すると少し困ったような表情で微笑を浮かべ、スマホを胸ポケットにしまった。
少年は一拍置くとゆっくりと柵の上に立ち上がり、夜に背を向け、両腕を大きく横に開いた。まるで『俺はここにいいるぞ』と、なにかに訴えているように。
「よしっ、行くか――」
少年は再び微笑を浮かべるとゆっくりとまぶたを閉じた。その笑みはさっきまでのそれとは異なり、自分に宛ててか、それとも他のなにかに宛ててか、嘲笑とも取れる憫笑だった。
そして、深く息を吸い込むと、少年はその息を吐く間もなく夜の闇に消えていった。
「――今よりマシな世界へ。」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。


【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる