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第十四章「関ヶ原の戦い」

第八十一話「開戦」

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辰の刻

関ヶ原を覆っていた深い霧が徐々に晴れて行く。それと同時に鉄砲の大きな音が関ヶ原に響き渡る。
「始まったか!」
拙者は歓喜の表情を浮かべる。
しばらくすると使いの者が報告に来る。
「井伊隊が宇喜多勢に向かって発砲。開戦致しました!」
「おお、でかした!」
「おお~万千代。やりおったわ!」
時を同じくして各陣から戦の始まりを合図する狼煙が上がる。
宇喜多勢には福島正則が、石田勢には黒田長政、細川忠興らが相手をする。福島隊の背後にいた藤堂高虎、京極高知は大谷勢に攻撃する。徳川譜代の本多忠勝、井伊直政、松平忠吉は島津勢目指して突撃する。織田、古田、生駒は小西勢に突っ込んで行く。霧が晴れた関ヶ原でぶつかり合う両軍。それは天を轟かし地を動かすが如くでした。
しばらくの間、一進一退の攻防を繰り広げる両軍。互角に見える戦いですが、上方勢で戦っているのは石田、小西、宇喜多、大谷ら約三万。ほぼ全軍戦っている徳川勢の半分ほどしかありませんでした。それでも互角に渡り合う上方勢に、家康公は爪を噛みながら苛立ちを抑えられませんでした。
「何故、押し切れんのだ!」
と、その時、突如、旗本が乗る一頭の馬が暴れ出した。馬上の旗本は何とか抑えようとするが、言う事を聞かず家康公の御馬の前まで乗り付けてしまう。
「ええい、このような時に何をしておるか!」
怒りを露にする家康公は腰の太刀を抜き放つ。
「殿、落ち着き下され」
驚き慌てる近習を余所に家康公は太刀を携え旗本の元へと向かう。
あわやという所で、ようやく旗本は馬を抑えつけその場から逃げ去る。
「し、失礼致しました!」
怒りの収まらない家康公は、側にいた小姓の指物を切り落とす。
張りつめた空気の中、家康公は太刀を納めながら下知する。
「陣を前に移す!」
一瞬の間をおいて家臣達は命に従う。
「はっ」
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