6 / 6
第五幕「伊賀越え」
しおりを挟む
○河内国 飯盛山付近
酒井「半蔵たちは無事であろうか?」
榊原「戦国最強の男が一緒ですからな。大丈夫でしょう」
酒井「そうじゃな」
石川「しかし、ちと不安な事も多い」
榊原「風の噂では日に日に死人が増えていると聞く」
酒井「聞いた話では、死人に噛まれると死人になるという話じゃ」
穴山「そ、それは真か?」
酒井「さあ、聞いた話ですのでな」
石川「梅雪殿、何か?」
穴山「あ、いや、その・・・」
榊原「まさか死人に噛まれたとか?」
酒井「まさか、そんな訳・・・」
穴山を見詰める一同。頷く穴山。
すぐさま穴山から遠ざかる一同
穴山「ま、まだ死人になるとわかった訳ではあるまい」
榊原「梅雪殿、短い間でしたがありがとうございました」
榊原、太刀を抜く
穴山「だから待てと言っておろうが!」
榊原「死人になる前に拙者が」
穴山「こらこらこらこら」
そこへ茶屋と本多、登場。
茶屋「家康様ー!」
酒井「おおー忠勝に茶屋殿」
肩をなで下ろす穴山
石川「如何致した?」
茶屋「実は、本能寺が」
本多「本能寺が死人の群れに襲われました」
酒井「何と!」
家康「信長殿は?」
本多「我らが行った時にはすでにお姿は」
家康「そうか」
酒井「半蔵たちはどうした?」
茶屋「実は」
本多「・・・信康様が現れました」
石川「何じゃと!」
酒井「茶屋殿の話は本当であったか」
本多「ええ。信康様は我らの前に立ち塞がり、半蔵たちは
信康様を追って本能寺の奥へ」
茶屋「我々は、いち早く家康様に事をお伝えすべく本能寺を
脱出しました」
家康「左様か」
石川「殿!」
家康「その事が本当であるならば儂もこの目で確かめたい」
石川「京へ向かいますか?」
家康「うむ」
穴山「しかし、死人たちの行動がよくわからない以上、迂闊に
動くべきではないのではないか」
榊原「梅雪殿にしてはまともな意見ですな」
酒井「確かに危ないかもしれんな」
茶屋「拙者もできる事ならもう行きとうはないですな」
本多「殿。今、京へ行くのは危険でござる」
家康「しかし、信康が・・・」
本多「信康様は、こちらの話がわかるような状況では
ありませんでした。それに、もし死人に囲まれ、
どうしようもなくなったらどう致します?」
家康「その時は、潔く腹を切る」
石川「殿」
家康「そうでもせんと、儂は信康に・・・申し訳が・・・」
本多「殿。信康様も、殿がこのような所でむざむざ命を捨てる
事を望んではおりますまい」
酒井「忠勝の言う通りでござる」
家康「・・・」
本多「殿。ここは一度、三河に戻り体制を立て直す方が
よろしいかと」
家康「・・・信康」
石川「殿。信康様の件、三河に戻ってからでも遅くはないかと」
家康「数正」
酒井「ここは一度、三河に戻りましょう」
穴山「うん、その方が良い」
家康「左様か・・・相分かった。信康よ、しばし待っておれよ」
榊原「梅雪殿、良かったですな」
穴山「まったくじゃ」
そこへ死人たち、登場
穴山「ひやああ!」
本多「まさか、我らを追いかけて来たか」
石川「ここは退くとしよう」
酒井「そうじゃな」
徳川勢、退場。死人も追いかけて行く。
○本能寺
光秀と斉藤。
光秀「信長様の遺体は見つからんのか!?」
斉藤「あれだけの炎ですので、ご遺体もわからないかと」
光秀「生きて逃れたという事はないか?」
斉藤「物見の話だと、本能寺を覆い尽くすほどの死人の
数だったそうですので」
光秀「そうか・・・」
斉藤「念のため、安土にも兵を出しましたが、信長様のお姿は
見えてはいないそうです」
光秀「信忠様のご遺体も見当たらないか?」
斉藤「はい、信忠様のご遺体も見当たりませぬ」
光秀「本当に亡くなられてしまったのか・・・」
斉藤「殿」
光秀「何じゃ?」
斉藤「これは好機かもしれませんぞ?」
光秀「好機じゃと?」
斉藤「ええ。信長様のいない織田家は、もはや烏合の衆。
この機に畿内を征圧し・・・」
光秀「ま、待て。お主、何を言っておる」
斉藤「殿、殿が天下人になる絶好の機会ですぞ」
光秀「な、何じゃと」
斉藤「織田の諸将たちが散っておる今が好機かと」
光秀「も、もし信長様が生きておったらどうするのじゃ?」
斉藤「すでに各地に物見を放っております故、見つけ次第・・・」
光秀「・・・儂が天下人に」
暗転
○ 河内国 木津川付近
徳川一行、登場。遅れて穴山も登場。
穴山「はぁはぁ、ま、待ってくれ」
榊原「梅雪殿、お急ぎ下され」
穴山「一体、どこへ向かっておるのだ?」
酒井「京は奴らがおるかもしれんので、向かうは東」
石川「伊賀国じゃな」
穴山「伊賀?忍びの国ではないか。そんな物騒な所を通って
大丈夫か?」
本多「昨年、信長殿によって多くの伊賀者が殺された。なので、
今は皆おとなしくしておるはず」
家康「こんな時に半蔵がいてくれればな」
酒井「おますやおかめも伊賀の者じゃからな。
道案内にはうってつけだったのじゃが」
榊原「いない者の事を言うても仕方ありますまい」
石川「そうじゃな、先を急ごう」
穴山「・・・儂、おしっこがしたい」
榊原「・・・梅雪殿」
酒井「ん~如何するかな」
榊原「仕方ない。儂がお供致します」
穴山「おお。す、すまんな」
酒井「では、我らは先に行っておるぞ」
榊原「はっ。すぐに追いかけます」
榊原と穴山以外退場
榊原「では、ここで待ってますので」
穴山「行かんでくれよ」
榊原「はいはい」
穴山、後ろを向いて用を足す。
穴山「ふ~。いや~一時はどうなるかと思ったが、何とか
ここまでは来れたな」
石川「おい康政、ちょっと来れるか?」
榊原「はっ」
榊原を呼ぶ石川。穴山はしゃべっていて聞こえていない。
穴山「と言っても儂は甲斐まで戻らなければならないのでな。
まだ大分あるのだが」
榊原、退場。入れ替わりで逆側から死人登場。穴山に近づく。
穴山「あ、すまんな長くて。結構我慢していたからな。
もうちょっとで終わるからな」
死人、穴山の隣に来る。穴山、気づかない。
穴山「おい、おるのか?」
穴山、顔は見ず手だけで死人の腕を握る。
穴山「お、おったか。行ってしまったかとおもったではないか。
あ、すまんな、汚い手で触ってしまって。いや、しかし、
お主たちも・・・」
穴山、死人に気づく
穴山「ぎゃああ!」
穴山、腰を抜かす。死人が続々登場。
穴山「あ、あ、あ、あああああ」
最初の死人が穴山に襲いかかると次々に穴山に群がる死人たち。
穴山「うぎゃああああああーー」
慌てて榊原が戻るも時すでに遅し。
榊原「梅雪殿!」
石川、登場。
石川「ば、梅雪殿・・・康政、もう無理じゃ。行くぞ」
榊原「梅雪殿・・・」
榊原、酒井退場。
暗転
○ 伊賀国
一人の死人が佇む。背後から半蔵が近づき死人を倒す。
半蔵「どこもかしこも死人だらけじゃな」
信長「狙いは儂のようじゃからな。儂の気配を察しておるのか」
信長、信忠に支えられながら登場。
その後方を守るように、おますとおかめも登場。
信忠「父上、ご無理なさずに」
信長「大丈夫じゃ。それよりも、お主の話は本当であろうな?」
おます「ええ。本能寺で死人を率いていたあの男、
伊賀を治める十二人衆の一人・森田浄雲」
信長「あの男、見覚えがある。儂が殺したはず」
おかめ「おそらく浄雲は、伊賀忍法の秘術を使った」
信忠「秘術?」
半蔵「死んだ者を蘇らせる術、か」
おます「ええ。十二人衆だけに伝えられる秘術」
おかめ「しかし、蘇らせるには死んだ者の強い意志が必要」
信長「それが、儂への恨みという訳か」
おます「おそらく」
半蔵「そうか、それで信康様も」
信忠「で、どうすれば奴らはいなくなるのだ?」
おかめ「あの術は、伊賀にある十二人衆の秘宝がなければ
使えない。だから、その秘宝さえ壊してしまえば」
信長「死人は消えるという訳か」
半蔵「それにしても、お主たちどうしてそんなに詳しいのだ?」
おます「私たちの父も十二人衆の一人でしたから」
半蔵「なるほど。そういう事だったか」
おかめ「そんな父も昨年・・・」
信長「儂が憎いか?」
おます「ええ。何でしたら今ここで殺したいくらいですわ」
信忠「何じゃと!」
信長「信忠、構わん」
信忠「はっ」
信長「お主たち、三河で儂を襲った者たちであろう」
信忠「何!」
おかめ「知っておったのですか?」
おます「では、なぜ今まで」
信長「そんな細かい事に構っておる暇はない。儂の目的は、
天下じゃ。儂に恨みを持つ者は多い。しかし、
そんな者たちにいちいち構っていてはきりがないからな」
おます「我々など眼中にはないと言う事ですか」
信長「そういう事じゃ」
そこへ明智の忍び、登場。五人を囲む。
信忠「何じゃ、お主ら?」
半蔵「伊賀者ではないな」
信忠「その姿、明智殿の忍びか?何故、我らを狙う?」
忍び「・・・」
信長「光秀め、ここに来て欲が出よったな」
信忠「死人だけでも厄介だというのに」
半蔵「やるしかないか」
立ち回り。信忠は信長を守るため参戦しない。ほぼ互角の戦い。
突如、忍びの一人が倒れる。その後ろから酒井、登場。
酒井「半蔵、無事であったか」
半蔵「酒井殿!」
家康一行、登場。
半蔵「殿!」
本多「今は、こやつらが先じゃ」
立ち回り。明智勢、倒れる。
半蔵「殿。ご無事で何よりです」
家康「お主たちもな。そして、信長殿もご無事のようで」
信長「うむ。とんだ旅になってしまったな」
家康「いえ」
半蔵「殿。死人を止める方法がわかりましたぞ」
家康「何と」
おます「伊賀にある十二人衆の秘宝さえ壊せば死人は消えるはず」
榊原「なるほど。で、その秘宝とやらはどこにあるのだ?」
おかめ「この先にある伊賀忍の里にあります」
森田「飛んで火にいる夏の虫とは事のことじゃな」
森田と死人たち登場。客席からも
森田「死人が闊歩する伊賀の地にわざわざ足を踏み入れるとは」
おます「森田浄雲」
森田「ほう、儂を知っておるのか。しかし、知った所で
どうなる訳でもあるまい」
半蔵「おます、おかめ。お主たちは先に行け」
本多「ここは我らに任せよ」
おかめ「はい」
おます、おかめ退場。
森田「追え!」
死人数名、二人を追って退場。
森田「織田信長、もう逃がしはせんぞ」
信長「ふん、ここでけりをつけてくれようぞ」
森田「かかれ!」
大立ち回り。三々五々。
榊原の前に立ちはだかる死人になった穴山。
榊原「梅雪殿!?」
穴山「うぎゃあああ!」
榊原「拙者のせいで、すまぬ」
榊原、穴山を倒す。
穴山「うきゃああ!」
おますとおかめの前に立ち塞がる一人の死人。
おます「父上!」
襲いかかる死人。
おかめ「父上、お止め下さい!」
依然攻撃を続ける死人。
おます「父上、お許しを」
おますとおかめ、死人を倒す。
家康、石川、半蔵の前に信康が立ちはだかる。
家康「信康・・・」
石川「信康様」
信康「はあああ!」
信康、躊躇する事なく襲いかかる。
家康「信康。儂の事がわからんか?」
信康「うあああ!」
信康、気づく様子はない。
家康「だめか」
森田「ふん、死人になった者に何を言っても無駄よ」
石川に襲いかかる信康。鍔迫り合い。
石川「半蔵、今じゃ」
半蔵「はっ」
半蔵、信康に斬り掛かろうとするも刃を止める。
半蔵「くっ。やはり、拙者には信康様は斬れぬ・・・」
信康「はああ!」
信康、半蔵と石川を払いのける。
石川「くっ」
そこへ信長と信忠、登場。
信康「のぶながぁ!」
信長に襲いかかる信康。信忠が立ちはだかる。
信忠「信康殿、死人になってまで父上を殺したいか」
信康「うぐああ!」
信忠「哀れなり」
信長「徳川で相手ができぬのであれば、我らが相手をしてやろう」
信康vs信長、信忠。信長が負傷しているため互角の戦い。
森田「行けぇ!信長を殺すのじゃ!」
信康、二人を押し倒し、倒れた信長に斬り掛かる。
信忠「父上!」
信忠、信長をかばって斬られる。
信忠「ぐっ!」
信長「信忠!」
信忠を抱きかかえる信長。信康はそれをただ見詰める。
信康「はぁはぁはぁ」
信長「信忠、しっかり致せ」
信忠「父上、すみませぬ。このようなところで」
信長「信忠、もうよい。しゃべるでない」
信忠「父、上・・・」
息を引き取る信忠
信長「信忠・・・」
その様子を見ていた信康、頭を抱え出す。
信康「う、ぐ、あ、ああ」
森田「ん、どうした?」
家康「信康・・・」
信康「うぐあ、あああああああ!」
叫び終わると信康、ふらふらと森田に近づき刀で刺す。
森田「うぐっ!な、何じゃと・・・」
森田、倒れる。
家康「信康」
信康「父上、死してまでご迷惑をおかけして申し訳ありませぬ」
信康、倒れる。
家康「信康!」
家康、信康を抱きかかえる。
家康「信康め。困った長男じゃ」
信康「父上」
死人の群れが周囲を取り囲む。
石川「殿」
半蔵「ちと、やばいかもしれませんな」
そこへ酒井、本多、榊原、茶屋、客席から登場。
酒井「殿ー!」
おますとおかめも秘宝を持って客席より登場。
おます「家康様!」
全員、舞台上へ。
おます「これを壊せば死人たちはいなくなります」
おます、秘宝を家康へ渡す。
家康「うむ」
家康、信康を見る。
信康「父上、やってくだされ」
家康「信康よ、先に行って待っておってくれ」
信康「ええ、ゆっくり待っておりますよ」
家康「すまんな、不肖の父を持って」
信康「こちらこそ不肖の息子で申し訳ありません」
家康、秘宝を壊す。
死人たち「う、ああ、あああ」
信康「父上、お達者で」
家康「うむ」
信康を含む死人たち消えてなくなる(森田はそのまま)
榊原「終わりましたな」
酒井「これで心置きなく三河へ帰れる」
森田、素早く起き上がり信長を捕まえる。
信長「貴様!」
半蔵「まだ生きておったか!」
森田「逃さん。こやつだけは逃さんぞ」
石川「何という執念じゃ」
森田「ふっふふふ。こやつも冥府へと道連れにしてくれるわ」
信長「ぐっ!」
森田「ふははは、ふはははは!」
家康「信長殿ー!」
信長と森田、消えて行く。
茶屋「消えてしまった」
酒井「天下人にもっとも近い信長殿がいなくなったら、この後、
一体どうなってしまうのか」
本多「後継ぎである信忠殿も・・・」
榊原「また世が乱れますな」
石川「今はまず三河へ戻る事が先決じゃ」
家康「そうじゃな。三河へ帰るとするか」
半蔵「おます、おかめ。お主たちはどうする?伊賀に残るか?」
おます「我らは、すでに徳川の家臣。一緒に参りまする」
本多「茶屋殿は如何しますか?」
茶屋「ここまで来たのですから、儂も三河までご一緒致しまする」
酒井「殿」
家康「うむ、では皆で三河へ戻るぞ」
一同「はっ」
暗転
○ 幕間 茶屋邸
茶屋「死人たちを倒し、家康様一行は無事に三河へと
戻って行くのであった。めでたしめでたし」
子供「めでたしめでたし」
茶屋「さて、儂のお話はここまでじゃ」
子供「ねぇねぇ、死人は本当に全員いなくなったの?」
茶屋「たぶんな」
子供「え~怖いよ~」
茶屋「安心せい。その時は儂が守ってやる」
子供「絶対守ってね」
茶屋「任せよ」
二人、退場。その後を死人がついて行く。
○三河国
墓の前で手を合わせる家康。半蔵、おます、おかめ登場。
半蔵「殿、こちらでしたか」
家康「伊賀者たちの墓を作った。これで彼らも成仏するであろう」
おます「ありがとうございまする」
おかめ「きっと父も喜んでおります」
家康「うむ。して、如何した?」
半蔵「はっ。明智光秀殿と羽柴秀吉殿が山崎にて戦を行い、
羽柴秀吉殿が勝利したそうです」
家康「そうか。では、次の天下人は秀吉殿という事か」
半蔵「そうなるかと」
家康「・・・いや」
半蔵「?」
家康「ここからじゃな」
半蔵「ここから?」
家康「天下人の争いは始まったばかりじゃ。
儂も名乗りを上げるとするか」
半蔵「殿」
家康「信長殿と、信康の為にもな」
半蔵「最後まで殿について行きまする」
家康「しっかりついて参れ」
半蔵「はっ」
家康を先頭に全員退場。
しばらくした後、墓から手が飛び出す。
暗転
おわり
酒井「半蔵たちは無事であろうか?」
榊原「戦国最強の男が一緒ですからな。大丈夫でしょう」
酒井「そうじゃな」
石川「しかし、ちと不安な事も多い」
榊原「風の噂では日に日に死人が増えていると聞く」
酒井「聞いた話では、死人に噛まれると死人になるという話じゃ」
穴山「そ、それは真か?」
酒井「さあ、聞いた話ですのでな」
石川「梅雪殿、何か?」
穴山「あ、いや、その・・・」
榊原「まさか死人に噛まれたとか?」
酒井「まさか、そんな訳・・・」
穴山を見詰める一同。頷く穴山。
すぐさま穴山から遠ざかる一同
穴山「ま、まだ死人になるとわかった訳ではあるまい」
榊原「梅雪殿、短い間でしたがありがとうございました」
榊原、太刀を抜く
穴山「だから待てと言っておろうが!」
榊原「死人になる前に拙者が」
穴山「こらこらこらこら」
そこへ茶屋と本多、登場。
茶屋「家康様ー!」
酒井「おおー忠勝に茶屋殿」
肩をなで下ろす穴山
石川「如何致した?」
茶屋「実は、本能寺が」
本多「本能寺が死人の群れに襲われました」
酒井「何と!」
家康「信長殿は?」
本多「我らが行った時にはすでにお姿は」
家康「そうか」
酒井「半蔵たちはどうした?」
茶屋「実は」
本多「・・・信康様が現れました」
石川「何じゃと!」
酒井「茶屋殿の話は本当であったか」
本多「ええ。信康様は我らの前に立ち塞がり、半蔵たちは
信康様を追って本能寺の奥へ」
茶屋「我々は、いち早く家康様に事をお伝えすべく本能寺を
脱出しました」
家康「左様か」
石川「殿!」
家康「その事が本当であるならば儂もこの目で確かめたい」
石川「京へ向かいますか?」
家康「うむ」
穴山「しかし、死人たちの行動がよくわからない以上、迂闊に
動くべきではないのではないか」
榊原「梅雪殿にしてはまともな意見ですな」
酒井「確かに危ないかもしれんな」
茶屋「拙者もできる事ならもう行きとうはないですな」
本多「殿。今、京へ行くのは危険でござる」
家康「しかし、信康が・・・」
本多「信康様は、こちらの話がわかるような状況では
ありませんでした。それに、もし死人に囲まれ、
どうしようもなくなったらどう致します?」
家康「その時は、潔く腹を切る」
石川「殿」
家康「そうでもせんと、儂は信康に・・・申し訳が・・・」
本多「殿。信康様も、殿がこのような所でむざむざ命を捨てる
事を望んではおりますまい」
酒井「忠勝の言う通りでござる」
家康「・・・」
本多「殿。ここは一度、三河に戻り体制を立て直す方が
よろしいかと」
家康「・・・信康」
石川「殿。信康様の件、三河に戻ってからでも遅くはないかと」
家康「数正」
酒井「ここは一度、三河に戻りましょう」
穴山「うん、その方が良い」
家康「左様か・・・相分かった。信康よ、しばし待っておれよ」
榊原「梅雪殿、良かったですな」
穴山「まったくじゃ」
そこへ死人たち、登場
穴山「ひやああ!」
本多「まさか、我らを追いかけて来たか」
石川「ここは退くとしよう」
酒井「そうじゃな」
徳川勢、退場。死人も追いかけて行く。
○本能寺
光秀と斉藤。
光秀「信長様の遺体は見つからんのか!?」
斉藤「あれだけの炎ですので、ご遺体もわからないかと」
光秀「生きて逃れたという事はないか?」
斉藤「物見の話だと、本能寺を覆い尽くすほどの死人の
数だったそうですので」
光秀「そうか・・・」
斉藤「念のため、安土にも兵を出しましたが、信長様のお姿は
見えてはいないそうです」
光秀「信忠様のご遺体も見当たらないか?」
斉藤「はい、信忠様のご遺体も見当たりませぬ」
光秀「本当に亡くなられてしまったのか・・・」
斉藤「殿」
光秀「何じゃ?」
斉藤「これは好機かもしれませんぞ?」
光秀「好機じゃと?」
斉藤「ええ。信長様のいない織田家は、もはや烏合の衆。
この機に畿内を征圧し・・・」
光秀「ま、待て。お主、何を言っておる」
斉藤「殿、殿が天下人になる絶好の機会ですぞ」
光秀「な、何じゃと」
斉藤「織田の諸将たちが散っておる今が好機かと」
光秀「も、もし信長様が生きておったらどうするのじゃ?」
斉藤「すでに各地に物見を放っております故、見つけ次第・・・」
光秀「・・・儂が天下人に」
暗転
○ 河内国 木津川付近
徳川一行、登場。遅れて穴山も登場。
穴山「はぁはぁ、ま、待ってくれ」
榊原「梅雪殿、お急ぎ下され」
穴山「一体、どこへ向かっておるのだ?」
酒井「京は奴らがおるかもしれんので、向かうは東」
石川「伊賀国じゃな」
穴山「伊賀?忍びの国ではないか。そんな物騒な所を通って
大丈夫か?」
本多「昨年、信長殿によって多くの伊賀者が殺された。なので、
今は皆おとなしくしておるはず」
家康「こんな時に半蔵がいてくれればな」
酒井「おますやおかめも伊賀の者じゃからな。
道案内にはうってつけだったのじゃが」
榊原「いない者の事を言うても仕方ありますまい」
石川「そうじゃな、先を急ごう」
穴山「・・・儂、おしっこがしたい」
榊原「・・・梅雪殿」
酒井「ん~如何するかな」
榊原「仕方ない。儂がお供致します」
穴山「おお。す、すまんな」
酒井「では、我らは先に行っておるぞ」
榊原「はっ。すぐに追いかけます」
榊原と穴山以外退場
榊原「では、ここで待ってますので」
穴山「行かんでくれよ」
榊原「はいはい」
穴山、後ろを向いて用を足す。
穴山「ふ~。いや~一時はどうなるかと思ったが、何とか
ここまでは来れたな」
石川「おい康政、ちょっと来れるか?」
榊原「はっ」
榊原を呼ぶ石川。穴山はしゃべっていて聞こえていない。
穴山「と言っても儂は甲斐まで戻らなければならないのでな。
まだ大分あるのだが」
榊原、退場。入れ替わりで逆側から死人登場。穴山に近づく。
穴山「あ、すまんな長くて。結構我慢していたからな。
もうちょっとで終わるからな」
死人、穴山の隣に来る。穴山、気づかない。
穴山「おい、おるのか?」
穴山、顔は見ず手だけで死人の腕を握る。
穴山「お、おったか。行ってしまったかとおもったではないか。
あ、すまんな、汚い手で触ってしまって。いや、しかし、
お主たちも・・・」
穴山、死人に気づく
穴山「ぎゃああ!」
穴山、腰を抜かす。死人が続々登場。
穴山「あ、あ、あ、あああああ」
最初の死人が穴山に襲いかかると次々に穴山に群がる死人たち。
穴山「うぎゃああああああーー」
慌てて榊原が戻るも時すでに遅し。
榊原「梅雪殿!」
石川、登場。
石川「ば、梅雪殿・・・康政、もう無理じゃ。行くぞ」
榊原「梅雪殿・・・」
榊原、酒井退場。
暗転
○ 伊賀国
一人の死人が佇む。背後から半蔵が近づき死人を倒す。
半蔵「どこもかしこも死人だらけじゃな」
信長「狙いは儂のようじゃからな。儂の気配を察しておるのか」
信長、信忠に支えられながら登場。
その後方を守るように、おますとおかめも登場。
信忠「父上、ご無理なさずに」
信長「大丈夫じゃ。それよりも、お主の話は本当であろうな?」
おます「ええ。本能寺で死人を率いていたあの男、
伊賀を治める十二人衆の一人・森田浄雲」
信長「あの男、見覚えがある。儂が殺したはず」
おかめ「おそらく浄雲は、伊賀忍法の秘術を使った」
信忠「秘術?」
半蔵「死んだ者を蘇らせる術、か」
おます「ええ。十二人衆だけに伝えられる秘術」
おかめ「しかし、蘇らせるには死んだ者の強い意志が必要」
信長「それが、儂への恨みという訳か」
おます「おそらく」
半蔵「そうか、それで信康様も」
信忠「で、どうすれば奴らはいなくなるのだ?」
おかめ「あの術は、伊賀にある十二人衆の秘宝がなければ
使えない。だから、その秘宝さえ壊してしまえば」
信長「死人は消えるという訳か」
半蔵「それにしても、お主たちどうしてそんなに詳しいのだ?」
おます「私たちの父も十二人衆の一人でしたから」
半蔵「なるほど。そういう事だったか」
おかめ「そんな父も昨年・・・」
信長「儂が憎いか?」
おます「ええ。何でしたら今ここで殺したいくらいですわ」
信忠「何じゃと!」
信長「信忠、構わん」
信忠「はっ」
信長「お主たち、三河で儂を襲った者たちであろう」
信忠「何!」
おかめ「知っておったのですか?」
おます「では、なぜ今まで」
信長「そんな細かい事に構っておる暇はない。儂の目的は、
天下じゃ。儂に恨みを持つ者は多い。しかし、
そんな者たちにいちいち構っていてはきりがないからな」
おます「我々など眼中にはないと言う事ですか」
信長「そういう事じゃ」
そこへ明智の忍び、登場。五人を囲む。
信忠「何じゃ、お主ら?」
半蔵「伊賀者ではないな」
信忠「その姿、明智殿の忍びか?何故、我らを狙う?」
忍び「・・・」
信長「光秀め、ここに来て欲が出よったな」
信忠「死人だけでも厄介だというのに」
半蔵「やるしかないか」
立ち回り。信忠は信長を守るため参戦しない。ほぼ互角の戦い。
突如、忍びの一人が倒れる。その後ろから酒井、登場。
酒井「半蔵、無事であったか」
半蔵「酒井殿!」
家康一行、登場。
半蔵「殿!」
本多「今は、こやつらが先じゃ」
立ち回り。明智勢、倒れる。
半蔵「殿。ご無事で何よりです」
家康「お主たちもな。そして、信長殿もご無事のようで」
信長「うむ。とんだ旅になってしまったな」
家康「いえ」
半蔵「殿。死人を止める方法がわかりましたぞ」
家康「何と」
おます「伊賀にある十二人衆の秘宝さえ壊せば死人は消えるはず」
榊原「なるほど。で、その秘宝とやらはどこにあるのだ?」
おかめ「この先にある伊賀忍の里にあります」
森田「飛んで火にいる夏の虫とは事のことじゃな」
森田と死人たち登場。客席からも
森田「死人が闊歩する伊賀の地にわざわざ足を踏み入れるとは」
おます「森田浄雲」
森田「ほう、儂を知っておるのか。しかし、知った所で
どうなる訳でもあるまい」
半蔵「おます、おかめ。お主たちは先に行け」
本多「ここは我らに任せよ」
おかめ「はい」
おます、おかめ退場。
森田「追え!」
死人数名、二人を追って退場。
森田「織田信長、もう逃がしはせんぞ」
信長「ふん、ここでけりをつけてくれようぞ」
森田「かかれ!」
大立ち回り。三々五々。
榊原の前に立ちはだかる死人になった穴山。
榊原「梅雪殿!?」
穴山「うぎゃあああ!」
榊原「拙者のせいで、すまぬ」
榊原、穴山を倒す。
穴山「うきゃああ!」
おますとおかめの前に立ち塞がる一人の死人。
おます「父上!」
襲いかかる死人。
おかめ「父上、お止め下さい!」
依然攻撃を続ける死人。
おます「父上、お許しを」
おますとおかめ、死人を倒す。
家康、石川、半蔵の前に信康が立ちはだかる。
家康「信康・・・」
石川「信康様」
信康「はあああ!」
信康、躊躇する事なく襲いかかる。
家康「信康。儂の事がわからんか?」
信康「うあああ!」
信康、気づく様子はない。
家康「だめか」
森田「ふん、死人になった者に何を言っても無駄よ」
石川に襲いかかる信康。鍔迫り合い。
石川「半蔵、今じゃ」
半蔵「はっ」
半蔵、信康に斬り掛かろうとするも刃を止める。
半蔵「くっ。やはり、拙者には信康様は斬れぬ・・・」
信康「はああ!」
信康、半蔵と石川を払いのける。
石川「くっ」
そこへ信長と信忠、登場。
信康「のぶながぁ!」
信長に襲いかかる信康。信忠が立ちはだかる。
信忠「信康殿、死人になってまで父上を殺したいか」
信康「うぐああ!」
信忠「哀れなり」
信長「徳川で相手ができぬのであれば、我らが相手をしてやろう」
信康vs信長、信忠。信長が負傷しているため互角の戦い。
森田「行けぇ!信長を殺すのじゃ!」
信康、二人を押し倒し、倒れた信長に斬り掛かる。
信忠「父上!」
信忠、信長をかばって斬られる。
信忠「ぐっ!」
信長「信忠!」
信忠を抱きかかえる信長。信康はそれをただ見詰める。
信康「はぁはぁはぁ」
信長「信忠、しっかり致せ」
信忠「父上、すみませぬ。このようなところで」
信長「信忠、もうよい。しゃべるでない」
信忠「父、上・・・」
息を引き取る信忠
信長「信忠・・・」
その様子を見ていた信康、頭を抱え出す。
信康「う、ぐ、あ、ああ」
森田「ん、どうした?」
家康「信康・・・」
信康「うぐあ、あああああああ!」
叫び終わると信康、ふらふらと森田に近づき刀で刺す。
森田「うぐっ!な、何じゃと・・・」
森田、倒れる。
家康「信康」
信康「父上、死してまでご迷惑をおかけして申し訳ありませぬ」
信康、倒れる。
家康「信康!」
家康、信康を抱きかかえる。
家康「信康め。困った長男じゃ」
信康「父上」
死人の群れが周囲を取り囲む。
石川「殿」
半蔵「ちと、やばいかもしれませんな」
そこへ酒井、本多、榊原、茶屋、客席から登場。
酒井「殿ー!」
おますとおかめも秘宝を持って客席より登場。
おます「家康様!」
全員、舞台上へ。
おます「これを壊せば死人たちはいなくなります」
おます、秘宝を家康へ渡す。
家康「うむ」
家康、信康を見る。
信康「父上、やってくだされ」
家康「信康よ、先に行って待っておってくれ」
信康「ええ、ゆっくり待っておりますよ」
家康「すまんな、不肖の父を持って」
信康「こちらこそ不肖の息子で申し訳ありません」
家康、秘宝を壊す。
死人たち「う、ああ、あああ」
信康「父上、お達者で」
家康「うむ」
信康を含む死人たち消えてなくなる(森田はそのまま)
榊原「終わりましたな」
酒井「これで心置きなく三河へ帰れる」
森田、素早く起き上がり信長を捕まえる。
信長「貴様!」
半蔵「まだ生きておったか!」
森田「逃さん。こやつだけは逃さんぞ」
石川「何という執念じゃ」
森田「ふっふふふ。こやつも冥府へと道連れにしてくれるわ」
信長「ぐっ!」
森田「ふははは、ふはははは!」
家康「信長殿ー!」
信長と森田、消えて行く。
茶屋「消えてしまった」
酒井「天下人にもっとも近い信長殿がいなくなったら、この後、
一体どうなってしまうのか」
本多「後継ぎである信忠殿も・・・」
榊原「また世が乱れますな」
石川「今はまず三河へ戻る事が先決じゃ」
家康「そうじゃな。三河へ帰るとするか」
半蔵「おます、おかめ。お主たちはどうする?伊賀に残るか?」
おます「我らは、すでに徳川の家臣。一緒に参りまする」
本多「茶屋殿は如何しますか?」
茶屋「ここまで来たのですから、儂も三河までご一緒致しまする」
酒井「殿」
家康「うむ、では皆で三河へ戻るぞ」
一同「はっ」
暗転
○ 幕間 茶屋邸
茶屋「死人たちを倒し、家康様一行は無事に三河へと
戻って行くのであった。めでたしめでたし」
子供「めでたしめでたし」
茶屋「さて、儂のお話はここまでじゃ」
子供「ねぇねぇ、死人は本当に全員いなくなったの?」
茶屋「たぶんな」
子供「え~怖いよ~」
茶屋「安心せい。その時は儂が守ってやる」
子供「絶対守ってね」
茶屋「任せよ」
二人、退場。その後を死人がついて行く。
○三河国
墓の前で手を合わせる家康。半蔵、おます、おかめ登場。
半蔵「殿、こちらでしたか」
家康「伊賀者たちの墓を作った。これで彼らも成仏するであろう」
おます「ありがとうございまする」
おかめ「きっと父も喜んでおります」
家康「うむ。して、如何した?」
半蔵「はっ。明智光秀殿と羽柴秀吉殿が山崎にて戦を行い、
羽柴秀吉殿が勝利したそうです」
家康「そうか。では、次の天下人は秀吉殿という事か」
半蔵「そうなるかと」
家康「・・・いや」
半蔵「?」
家康「ここからじゃな」
半蔵「ここから?」
家康「天下人の争いは始まったばかりじゃ。
儂も名乗りを上げるとするか」
半蔵「殿」
家康「信長殿と、信康の為にもな」
半蔵「最後まで殿について行きまする」
家康「しっかりついて参れ」
半蔵「はっ」
家康を先頭に全員退場。
しばらくした後、墓から手が飛び出す。
暗転
おわり
0
お気に入りに追加
1
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
鬼を討つ〜徳川十六将・渡辺守綱記〜
八ケ代大輔
歴史・時代
徳川家康を天下に導いた十六人の家臣「徳川十六将」。そのうちの1人「槍の半蔵」と称され、服部半蔵と共に「両半蔵」と呼ばれた渡辺半蔵守綱の一代記。彼の祖先は酒天童子を倒した源頼光四天王の筆頭で鬼を斬ったとされる渡辺綱。徳川家康と同い歳の彼の人生は徳川家康と共に歩んだものでした。渡辺半蔵守綱の生涯を通して徳川家康が天下を取るまでの道のりを描く。表紙画像・すずき孔先生。
AIシミュレーション歴史小説『瑞華夢幻録』- 華麗なる夢幻の系譜 -
静風
歴史・時代
この物語は、ChatGPTで仮想空間Xを形成し、更にパラレルワールドを形成したAIシミュレーション歴史小説です。
【詳細ページ】
https://note.com/mbbs/n/ncb1a722b27fd
基本的にAIと著者との共創ですが、AIの出力を上手く引出そうと工夫しています。
以下は、AIによる「あらすじ」の出力です。
【あらすじ】
この物語は、戦国時代の日本を舞台に、織田信長と彼に仕えた数々の武将たちの壮大な物語を描いています。信長は野望を胸に秘め、天下統一を目指し勇猛果敢に戦い、国を統一するための道を歩んでいきます。
明智光秀や羽柴秀吉、黒田官兵衛など、信長に協力する強力な部下たちとの絆や葛藤、そして敵対する勢力との戦いが繰り広げられます。彼らはそれぞれの個性や戦略を持ち、信長の野望を支えながら自身の野心や信念を追い求めます。
また、物語は細川忠興や小早川隆景、真田昌幸や伊達政宗、徳川家康など、他の武将たちの活躍も描かれます。彼らの命運や人間関係、武勇と政略の交錯が繊細に描かれ、時には血なまぐさい戦いや感動的な友情、家族の絆などが描かれます。
信長の野望の果てには、国を統一するという大きな目標がありますが、その道のりには数々の試練や困難が待ち受けています。戦いの中で織り成される絆や裏切り、政治や外交の駆け引き、そして歴史の流れに乗る個々の運命が交錯しながら、物語は進んでいきます。
瑞華夢幻録は、戦国時代のダイナミックな舞台と、豪華なキャストが織り成すドラマチックな物語であり、武将たちの魂の闘いと成長、そして人間の尊厳と栄光が描かれています。一つの時代の終わりと新たな時代の始まりを背景に、信長と彼を取り巻く人々の情熱と野心、そして絆の物語が紡がれていきます。
【短編】輿上(よじょう)の敵 ~ 私本 桶狭間 ~
四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】
今川義元の大軍が尾張に迫る中、織田信長の家臣、簗田政綱は、輿(こし)が来るのを待ち構えていた。幕府により、尾張において輿に乗れるは斯波家の斯波義銀。かつて、信長が傀儡の国主として推戴していた男である。義元は、義銀を御輿にして、尾張の支配を目論んでいた。義銀を討ち、義元を止めるよう策す信長。が、義元が落馬し、義銀の輿に乗って進軍。それを知った信長は、義銀ではなく、輿上の敵・義元を討つべく出陣する。
【表紙画像】
English: Kano Soshu (1551-1601)日本語: 狩野元秀(1551〜1601年), Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
空蝉
横山美香
歴史・時代
薩摩藩島津家の分家の娘として生まれながら、将軍家御台所となった天璋院篤姫。孝明天皇の妹という高貴な生まれから、第十四代将軍・徳川家定の妻となった和宮親子内親王。
二人の女性と二組の夫婦の恋と人生の物語です。
前夜 ~敵は本能寺にあり~
四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】
織田信忠は、本能寺の変の前夜、父・信長を訪れていた。そして信長から、織田家の――信忠の今後と、明智光秀の今後についての考えを聞く。それを知った光秀は……。
【表紙画像・挿絵画像】
「きまぐれアフター」様より
戰國ノ美姫
天地之詞
歴史・時代
動亂の世、世は戰亂に溢れ巷は戰火に焼かるる許りなり。この動亂を抑へ天下をして己が掌中に収めしむる爲、覇を稱へむとする者多かり。戰亂の陰に落涙するも甲斐なきこととなりぬれば、失せにけるもの多かりとかや。
動乱の世、世は戦乱に溢れ巷は戦火に焼かれるばかりである。この動乱を抑え天下を我が物にせんと、覇を唱えようすものは数多い。戦乱の陰に涙をながしても無駄なこととなってしまったので、死んでしまう者も多いとか。

竹束(1575年、長篠の戦い)
銅大
歴史・時代
竹束とは、切った竹をつなげた盾のことです。室町時代。日本に鉄砲が入ってくると同時に、竹束が作られるようになります。では、この竹束は誰が持ち、どのように使われたのでしょう。1575年の長篠の戦いに参加した伊勢の鉄砲足軽とその家人の視点で、竹束とその使い方を描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる