本能寺の変 Z

八ケ代大輔

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第三幕「死人」

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○安土城外 総見寺 
 
  信長の舞。それを見守る一同。
 穴山「いや~信長様。素晴らしき舞じゃ!」
 信忠「父上、御見事でございまする」
 信長「さて儂のような素人よりも、今度はちゃんとした玄人に
    舞ってもらうか」
 信忠「よし、次じゃ」
  しかし、しばらく経っても誰も現れないので信長苛つく。
 信長「何をしておる。早うせんか!」
  舞い手ではなく死人が登場。
 信長「おう、ようやっと・・・」
  一同おののく。
 死人「のぶ、なが・・・のぶな、が・・・」
  死人、信長に近づいていく。
 信忠「貴様、何者じゃ!」
  信忠、死人を斬るも死人はすぐ立ち上がる。
 信忠「化け物め!」
  信忠、何度も斬りつけてようやく死人を倒す。
 信忠「はぁはぁ」
 酒井「本当に、死人が現れよった」
 信長「あの死人ども、儂を狙っておるのか・・・」
 信忠「父上、如何致しますか?」
 信長「信忠、京へ向かうぞ」
 信忠「はっ」
 家康「信長殿」
 信長「家康、お主たちにも迷惑をかけるな」
 家康「いえ。して、信長殿はどちらへ?」
 信長「京へ参る。京の寺に儂の仏門の師がおるのでな。
    死人について問うてみる」
 家康「かしこまりました」
 信忠「父上、各地の諸将にも万が一の際は、すぐ戻って
    来られるように文を送っておきまする」
 信長「うむ、まかせた。では、我らは京へ向かう準備を致す」
  織田勢、退場。
 家康「梅雪殿は如何致しますか?」
 穴山「わ、儂か。儂は、お、お主たちと一緒に行っても構わんぞ」
 榊原「田舎侍と一緒でも構わんと?」
 穴山「そ、そうじゃ」
 榊原「・・・死人が怖いのでは?」
 穴山「そ、そそ、そんな訳がなかろう!」
  半蔵、穴山の後ろから死人の真似をして近づく
 半蔵「う、うぅ、うああ」
 穴山「ひゃああああああ!」
 本多「こら、お主たちふざけるでないぞ」
 石川「そうじゃ。現に死人が本当に現れたのじゃ」
 酒井「殿、我らは如何致しますか?」
 石川「三河へ戻りますか?」
 家康「いや、我らも予定通り京へと向かおう」
 酒井「はっ。して、京のどちらへ?」
 家康「茶屋じゃ」
 酒井「はい?」
 家康「京の茶屋へ向かう」
 酒井「・・・あ~なるほど」
 穴山「京に茶屋など沢山あるではないか?」
 榊原「その茶屋ではござらんよ」
 穴山「どの茶屋じゃ?」
 半蔵「ついてくればわかりまする」
  徳川勢、退場
 
○ 安土城外 夜 
 
織田の忍びが登場。
 忍び「では各々方、文を各地の諸将に届け・・・」
そこへ数人の死人が立ち塞がる。
 忍び「死人か?」
  立ち回り?死人に囲まれ次々にやられる忍びたち。
 忍び「う、うああああーーー!」
  死人の群れから森田、登場。
 森田「信長め。京に行ったところで逃がしはせんぞ」
  暗転
 
○京都 茶屋邸
 
  徳川勢を迎える茶屋。
茶屋「家康様、ようお越し下さいました」
家康「茶屋よ、久しぶりじゃな」
穴山「茶屋?」
半蔵「そう、このお方こそ茶屋四郎次郎殿。元々は徳川の家臣で
   あったが今は京で商人をしておる」
茶屋「茶屋四郎次郎でございまする」
穴山「穴山梅雪と申す」
酒井「いや~茶屋殿。もう立派な京の商人といった感じじゃな」
石川「ちと太ったのではないか?」
茶屋「あまり動いてはおりませんでな」
榊原「三方ヶ原での戦いぶりが噓のようですな」
茶屋「いやはや、お懐かしい」
家康「しばし世話になるぞ」
茶屋「どうぞどうぞ、ごゆっくりと」
家康「ところで京の様子はどうじゃ?」
茶屋「そうですな。ここ最近は落ち着いておりまする」
家康「そうか」
茶屋「それにしても安土は大変な事になっているようですな」
酒井「もう話が行っていたか」
茶屋「商売には情報が重要ですので」
石川「して、安土の話はどのように聞いておる?」
茶屋「へい。死人が出たそうですが・・・聞いた話によると
   安土での死人騒動は収まったとか」
穴山「何じゃと?」
茶屋「ええ、数日前からてんで現れなくなったとか」
榊原「その話本当でござるか?」
茶屋「ええ」
家康「やはり、信長殿を追っておるのか・・・」
茶屋「信長殿を?」
酒井「うむ。どうやらそうらしい」
茶屋「でしたら大変ですぞ。信長殿は、この隣にある本能寺に
   来られるという噂」
穴山「何じゃと?」
茶屋「まだ来られていないそうですが、数日の内に本能寺に
   入られるとか」
石川「茶屋殿、それは真か?」
茶屋「ええ、おそらく本当かと」
酒井「殿」
家康「うむ・・・ここも危ないという事か」
穴山「い、家康殿。すぐに離れた方がいいのではないか?」
本多「しかし、このまま逃げ続けるのも」
榊原「死人がなぜ現れたのかも突き止めんとな」
家康「うむ」
茶屋「それと家康様」
家康「ん?」
茶屋「この件と関係があるのかどうかわかりませんが、三河から
    不審な知らせが・・・」
家康「何じゃ?」
茶屋「はっ。それが・・・」
榊原「茶屋殿、どうしたのじゃ」
茶屋「あ、いえ、何やら信康様の墓が暴かれたとか」
石川「何じゃと!」
茶屋「細かい事はわかりませんが、そのような知らせが」
酒井「まさか、信康様も死人に?」
石川「そ、そんな訳がなかろう」
本多「殿」
家康「うむ・・・とりあえず今は本能寺から離れる事が先決じゃ」
本多「はっ」
榊原「信長殿と死人の件は如何致しますか?」
家康「うむ・・・」
半蔵「殿。でしたら拙者がここに残り本能寺の様子を探りまする」
家康「半蔵」
 おます「殿、我らも残らせていただけないでしょうか?」
 家康「お主たち」
おかめ「あの死人、どこかで見覚えが」
酒井「お主たちの知り合いと申すか?」
おかめ「いえ、そこまではわからないのですが」
おます「とても気になりますので」
家康「相分かった」
本多「お主たちだけでは心細かろう。儂も残ろう」
榊原「死人が相手だぞ。大丈夫か?」
本多「儂を誰だと思ってる。本多平八郎が死人如きに負けはせん」
酒井「本多平八郎がおれば百人力じゃな」
家康「では、すまぬがお主たちに任せるとしよう」
本多「はっ」
 家康「茶屋よ、すまぬな。ゆっくりしていたかったが」
 茶屋「いえ、構いませぬ」
 酒井「して、殿。どちらへ向かいますか?」
 家康「ん~」
 茶屋「では、大坂の堺に拙者の知り合いがおります故、
    そちらに行かれては?」
 家康「何から何まですまぬな」
 茶屋「いえいえ、家康様の為ならば」
 家康「かたじけない」
 本多「殿、お気をつけて」
 家康「うむ。お主たちも気をつけるのだぞ」
 本多「はっ」
  暗転
 
○茶屋邸 幕間
 
茶屋「どうじゃ、ようやっと儂が登場じゃ」
子供「じぃじ、若~い」
茶屋「そうじゃろ~」
子供「かっこいいね~」
茶屋「そうじゃろ~」
子供「別の人みたい~」
茶屋「儂じゃ。あれは儂の若い頃じゃ。と、儂の事は置いといて。
   ともあれ家康様は京を離れられ、大坂の堺へと向かわれた。
   時を同じくして京では、ついに織田信長殿が本能寺に
   入られた。その途端、今度は京の街中で死人が現れる
   ようになったのじゃ」
子供「こ、怖いよ~」
茶屋「さてさて物語はついに、本能寺の変に入るのであった」
 暗転
 
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