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第一幕「武田滅亡」
しおりを挟む○天正十年四月 三河国
織田勢、登場。
光秀「信長様、もう間もなく家康殿の岡崎城でございまする」
信長「うむ」
おます、おかめ顔を隠して登場。
光秀「お主ら何者じゃ?」
おます「信長、覚悟!」
信長に襲いかかるが光秀、信忠らによって遮られる。
おかめ「くっ!」
おます、おかめ退場。
信忠「待て!」
信忠を抑える信長。
信長「信忠。良い、放っておけ」
信忠「はっ」
光秀「まさか、こんなところで襲われるとは」
信忠「あの動き、おそらく伊賀の者でございましょう」
信長「伊賀の忍びの生き残りか」
光秀「噂によりますと、家康殿が伊賀の者たちを匿っていると
聞きます」
信長「何じゃと?」
光秀「あくまで噂ですが」
信忠「では、家康殿が襲ったと?」
光秀「なくはないかと」
信長「で、あるか」
光秀「この先、岡崎城にて家康殿がお待ちしておりますが、
如何致しますか?」
信忠「父上、念のため迂回致しますか?」
信長「いや、構わぬ。このまま岡崎城へと向かう」
信忠「よろしいので?」
信長「家康が儂を裏切る事はない。行くぞ」
信忠「はっ」
織田勢、退場
○ 三河国 岡崎城
徳川勢、織田勢を迎え入れる。
家康「信長殿、ようこそお越し下さいました」
信長「うむ」
家康「信長殿、此の度は武田討伐おめでとうございまする」
一同「おめでとうございまする」
信長「うむ、武田とは長い戦であった。一時は危うかったが、
信玄が死んでくれて命拾いしたわ」
光秀「信長様には天運がついておりますからな」
家康「此度も穴山梅雪殿がこちら側に寝返ってくれたおかげで
だいぶ助かりましたからな」
信長「ふっ、奴の寝返りなど倒す相手が一人減っただけにすぎん。
そうじゃ家康よ」
家康「はっ」
信長「伊賀の忍びたちを匿っているという噂があるが、本当か?」
家康「・・・噂でございましょう」
信長「で、あるか」
家康「・・・」
信長「まあ良い。ところで此度の武田討伐で、お主たち徳川も
大いに活躍してくれた」
家康「ありがとうございまする」
信長「さらには甲斐からの帰り、様々なもてなし感謝する」
家康「恐悦至極に存じまする」
信長「ひいては、その労をねぎらい穴山梅雪と共に、我が安土に
参るが良い。今度は儂がもてなしてやろう」
家康「恐れ多い事でございまする」
信長「構わぬ。そうじゃ、ついでに京や畿内なども
廻ってくるとよい」
家康「畿内をですか?」
信長「そうじゃ、ゆっくりと廻ってゆけ」
家康「しかし、駿河国の本格的な統治もこれからですので」
信長「そんなものは誰かに任せるがよい」
酒井「殿、我らにお任せ下さいませ」
信長「忠次よ。もちろんお主らも一緒じゃ」
酒井「わ、我らもですか?」
信長「そうじゃ」
酒井「か、かしこまりました」
信長「どうじゃ家康。よかろう?」
家康「・・・かしこまりました」
信長「うむ。では、待っておるぞ」
家康「はっ」
信長「それでは皆の者、安土へ帰るぞ」
織田勢「はっ」
織田勢、退場。
石川「織田家の領地に殿と我ら徳川の重臣を連れて来いとは・・・」
榊原「何か匂いまするな」
本多「罠、という事か?」
酒井「何を物騒な事を申す」
石川「東側の脅威であった武田が滅んだ今、織田にとって
我ら徳川は用済みと思われているかもしれん」
酒井「そんな事は・・・」
石川「儂はまだ信康様の一件を忘れた訳ではないからな」
酒井「んっ・・・」
一瞬、言葉に詰まる酒井。
酒井「しかし、信長殿もこうして我らの領地を通っておるのじゃ。
我らも行かない訳にはいくまい」
石川「しかし、万が一何かあった場合・・・」
酒井「信長殿とて長年の同盟関係にある我らを攻撃したとならば、
世間での評判も悪くなる」
石川「だと良いのだかな。殿、断るなら早い方がいいかと」
家康「信長殿の申し出じゃ。お断りする訳にはいくまい・・・
ちと、一人にさせてくれまいか」
石川「はっ」
家臣たち退場。
家康「・・・信康」
信康(声)「父上、このままでは徳川は織田に滅ぼされまする。
武田が滅びれば、次に織田の標的となるは徳川ですぞ!」
家康「信康、お主の言っておった事が本当になってしまうのか?」
暗転
○ 茶屋邸 幕間
子供「ねえ、ねえ、信康ってだ~れ?」
茶屋「家康様の長男じゃ。しかしな、信長殿のご命令で家康様は
信康様を殺さねばならなかったのだ」
子供「かわいそー」
茶屋「信康様だけではない、信康様の御母上・瀬名姫様も
殺されてしまうのじゃ」
子供「織田信長ってひどいねー」
茶屋「家康様もこのお二人が亡くなった事をひどく悲しまれた」
子供「二人は何で殺されちゃったの?」
茶屋「ん~簡単にざっくり言うと、敵である武田軍と仲良く
しようとしていたからじゃが、もっと詳しく知りたいか?」
子供「うん」
茶屋「ではな、物販コーナーに前回の舞台『覇王の子』のDVDが
売っているのでそれを買えばわかる」
子供「でも、お高いんでしょう?」
茶屋「なんと○○円じゃ」
子供「え~安い~」
茶屋「そうじゃろ~」
子供「お買い得だね」
茶屋「だね」
茶屋、咳払いして一息ついて。
茶屋「ま~そんな訳で家康様は、この信長殿からのお誘いを
大層悩まれたそうな」
暗転
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