【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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44. 人混み

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 教室のドアを開けると、スマホを見て話し合っていた井口と阿川がこちらを向いた。

「ただいまー」
「おかえりーってあれ、一緒に戻ってきたん」
「家近いしな」
「そう。はい、井口これ」
「おー!助かるわ。やっぱ冬は温かいラテよなー」

 ペットボトルに頬ずりする井口を横目にスマホ画面をスクロールする。

「イルミどこ行くとか決めたん、てか行く前に飯食いにいこうぜ」
「おう!決めてある!じゃあもう行くか!」

 道なりにあるラーメン屋に寄ってから、目的の大きい公園へと向かうことにした。



 まだクリスマス前だというのに到着した公園は人であふれてかえっていた。しばらく写真を撮ったり屋台の食べ物を楽しんだりした。出発前の阿川は彼女探しに意気込んでいたが、女の子を前にするとキョドりすぎて声をかけることもできていなかった。

 ふいに肩を寄せられる。

「俺たち自販機探して飲み物買ってくるけど、なんかいる?」
「え」

 思わず葉大の顔を見た。その視線は阿川と井口に向けられている。

「俺はいいやー」
「俺もいらん!可愛い子見つけたら連絡しろ!」
「声もかけられないくせに?」
「うっせー!」

 そんなやりとりが徐々に遠くなって、人混みに消える。期せずして二人きりになったことに内心舞い上がるのを悟られないように抑えてこれまで通ってきた道を思い出して指差す。

「自販機、あっちにあった気ぃする」
「あーいや、四人で見るのもいいんだけどちょっとでも二人で見たくて。だから本当は飲み物欲しいわけじゃないんだけど一応向かおうか」

 何も隠さないその言葉に、その表情に顔が熱くなる。

「ここ来てからずっと久がキラキラしてんの、綺麗」
「…お前の方がキラキラしてんの似合うよ」

 言ってから無性に恥ずかしくなって近くのイルミネーションへと視線をずらす。光が点灯するたびに飾られた球体がチカチカと光を反射してまぶしい。ふいに視界の右側が暗くなって唇に柔らかい感触がする。手袋越しに小指が絡められるのがわかった。

「おまっ…外…」
「誰も俺たちのこと見てないよ。カップルだらけでみんなそこらじゅうでしてるし大丈夫でしょ。…そういう問題じゃないか、ごめん、やだった?」

 緩やかに眉を下げて微笑む。じっと見つめてくるその目が俺をどうしようもなくさせる。

「別に…嫌じゃない。……あと一回だけな」

少し驚いた顔してこちらを見つめた後、もう一度軽く唇を重ねる。嬉しそうな葉大の顔につられて頬が緩んだ。右手の手袋を外すと冷たい空気に包まれた。その手を葉大に差し出す。

「ん。戻るまでだからな。…葉、お前ずるいよ」
「それ、久が言う?」

 差し出した手を葉大が握ったその一瞬、冷たさを感じたが、手のひらが触れるとすぐにじわりと体温が伝わってくる。

「久の手、ちゃんとあったかい」
「おかげさまで」

 自動機を見つけた。温かいお茶を買って来た道を引き返す。示し合わせるでもなくのんびりとした足取りになっていた。

「お前ら何手ぇ繋いでんの」

 聞き慣れた声がした。
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