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34. 傷痕と
しおりを挟む「なんで葉大?」
基本的に隠し事に対してしつこそうだったりうるさかったりするのは阿川だ。葉大ではない。嫌な予感に心臓の音が大きくなっていく。いやまさかバレているはずはない。
「……なんとなく…間違え……。……いや!……お前ら付き合ってんだろーー!!」
引き返せない、言わずにはいられない、というように幾度か口が開いたり閉じたりした後、意を決した井口の言葉がガラガラの教室に響いた。
「は………や、…誰と?」
勢いよく発されたその言葉が頭の中でこだまする。喉が絞められたみたいにうまく声が出なくて声が掠れる。自分でも苦しい反応だってことなんかわかった。思ったことが全部にじみ出てしまうその性分が憎い。バレている、バレていた。いつから?どうして?どうすれば、次から次へと疑問が浮かんでは心臓の音にかき消されていく。バレたくない癖に迂闊だった。浮かれすぎていた。恋愛の話なんてすべきではなかったのだと後悔してももう遅い。中学の時に言われた言葉が頭を殴ってくるようだった。葉大が同じように俺を突き放すわけがないと頭で考えても嫌な記憶がそれを邪魔する。
……
その日は良く空気の澄んだ冬の夜だった。日課になった先輩からの電話がいつもより遅かったことをよく覚えている。ずっと自室でそわそわしながら待っていた。ようやく鳴った着信音に喜々としてスマホを握った。
「もしもし!真波く」
「あのさ、友達にこないだ出掛けたの見られてて…その、きもいとか…言われて。俺、色々考えたんだけどさ…考えてたらなんか周りの目気にしてまで付き合いたいのかとか思って…なんか好きかもわかんなくなって、別れてくれないかな。…ごめん別れよう!」
聞いたことのない暗い絞りだすような声にぴたりと時が止まったような気さえした。
…結局俺は何も言い返せないまま電話は切られて、次の日から何にもなかったみたいに先輩は目を合わせることすらしてくれなくなったんだっけな。
……
「嘘ヘタクソか…‼いや、これも秘密のつもりなんだろうなって黙ってるつもりだったんだけど…やらかしたわ。すまん」
変わらず勢いのついた井口の言葉に我に返り、思わず顔を見やる。しょぼしょぼと勢いを失ってついには申し訳なさそうに伏せられた目に軽蔑や嘲笑の色は見えない。
「い、いつから?」
「1か月前?くらい」
「1か月⁉な…なんで???」
「いや色々あるけど」
「…色々」
「話聞いてるとさ、一人暮らしとか昔からの知り合いとか葉大とお前の彼女の共通点多いし、彼女お前より力あるし…あとお前らの話、行った場所とか話がちょこちょこかぶってんだよ」
そりゃそうか。お互い知っていればいずれわかることだったんだ、なぜこんなことにも考えが及ばなかったのかという後悔と気づかせてしまった罪悪感で気が重い。
「…ごめん。いや、聞きたくないよな、友達だし男…だし」
「まぁ流石に気付いた時は衝撃受けたけど、あいつの話だと思うとおもろいし別にいいんじゃね。お前楽しそうだし」
優しい言葉がじんと響く。危うく泣きそうになった。
「…ありがとう。よかった、けど…あいつってわかった上で全部話聞いてたってこと?無理…しぬ、しねる」
いつもと変わらないまっすぐなその目と言葉に安堵すると共にじわりと恥ずかしさがこみ上げて顔を腕にうずめる。強張っていた体がすこしずつ緩んでいく。
「いや死ぬなよ。てかさ、お前が他の奴と距離近い時あいつの目死んでる。こないだの3限のときとか。こう、こうなってる。おもろいから俺結構見ちゃう」
「なにそれ知らん…」
「それよかあいつ隠す気あんの?お前にベッタリ…なのは前からだけどさ。こんだけ一緒にいて阿川よく気付かねぇなって思うもん」
「…そんなべったりか?まぁ…やめろって言っとく」
阿川は気付いてないのか。あいつは声でかいし、たまにそれ言う?ってことを言うから正直バレていなくて良かったと思う。
「今まで黙って聞いててくれてありがとな。井口と友達になれて良かったよ。…でも流石にもう言うのはやめるわ」
「えっ?いや待て。俺に前みたいにひとりでひたすら話せって言うの⁉」
「え、まぁ…そうなる」
「俺は気にしないんだけど…まぁ相手知られてたら嫌か」
「……俺、無理、ごめん」
「無理にとは言わんけど、お前もこの手の話好きだろ。多分1か月後には普通に話し出すにジュース賭けるわ」
「んなわけない」
(と言ったが次の週の後半には我慢できずに話した)
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