【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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8.デート?…もどき

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「そしたら俺ソファーで寝ていい?」
「え。…あー、俺がソファーで寝るからベッド使っていいよ」
「いや…正直あの部屋で寝れる気しねぇし、俺こっちで寝させて」

 ?マークを浮かべてこちらを見つめる顔から目をそらす。ワンテンポ遅れて閃いたような表情をしてニヤッと口角をあげる。堪らなくなって思わず睨み返す。

「…大体お前な‼俺が抵抗しないからって背中にちゅっちゅちゅっちゅしやがって!乳首だって俺は別に感じな…い…」

 たまらず言い返したが、触れられてピりついた感覚を思い出して語気が弱まってしまう。最悪だ、これじゃ実は感じてました!みたいに思われる。

「どっちも嫌ならやめるけど、これからどんどん気持ちよくなるかもしれないのにいいんだ?」
「…………嫌とは、別に…」

 みるみる小さくなる俺に対してコイツはにこにこ楽しそうだ。

「ていうか明日土曜だし別に俺は一緒に寝」
「それ以上言うなら帰る」

 そんなやりとりの末、俺はソファーを勝ち取った。男ふたりでひとつのベッドなんて狭すぎるし、なんでコイツとそんな密着して寝ないといけないんだ。いつもの女達なら喜んでその提案を飲むのかもしれないが俺はそんなことで喜ばない。

 布団を受け取ってソファーに横たわる。今日1日の出来事が脳裏に浮かんでくる。すぐ耳元で聞いた声がフラッシュバックしてぞわぞわとした感覚が体に走る。ソファーを選んでも意味がなかったかもしれない。…俺のあれを見て勃ってたってことだよな?いつからあんな風になってたんだろう、あいつは最後までそんな素振り見せてなかった。俺が自分のことで精いっぱいだったのもあるんだろうけど…ヘンな奴。考えが浮かんでは消すことを繰り返すうちに眠りに落ちていた。
 

 髪の間を指が優しくとおるのを感じて目が覚める。

「あ、ごめん起こした?おはよう」
「はよ…」
「体平気?朝飯食べられそう?」

 無言で頷くと「それならよかった」と言って離れていく。正直朝は弱いしまだ眠っていたい。でも流石に人様の家のリビングでずっと眠りこけているわけにもいかない。キッチンの方が明るいのをぼんやり見て、部屋全体の電気つけてくれりゃあ腹くくって起き上がれるのにな…と思う。カチャカチャと食器の軽く当たる作業音がまた眠気を誘う。今度はじゅーっと何かを焼く音が聞こえてきて眠気眼を擦ってキッチンの方へ向かう。スクランブルエッグとソーセージらしい。

「…毎日朝からちゃんと作ってんの?」
「日によるな、今日は気分いいからいつもよりちゃんとしてるかも。パン焼いて食うだけの日も多い」
「ふーん…俺、いっつもヨーグルトだけ」

 どこの食べてんの?とか、はちみつと食うと美味いとかそういうことをだらだら話しているうちにソーセージも焼きあがった。二人分が皿に盛られたのを受け取って席に着く。普段食べないから食欲もなくてモソモソと食事を口に運ぶ。用意してもらった側でこの態度はよくないか、と力の入らない顔のままなんとか「美味いよ」と伝えたらそれだけで満足そうに笑っていて朝に強いやつはいいな、と思った。

「今日予定なかったら映画行かない?最近話題のアクションの」
「あー俺もちょうど見たかったやつ。行く」

 食べ終わった後、少しだらだらして映画館へ向かった。着替え持ってないし一旦帰ろうと思っていたが、「サイズほとんど一緒だから」と言われて借りた服を着ていくことになった。映画館に着いてチケットを買う。まだ早い時間だから見やすい座席が残っていてよかった。ドリンクを買う列に並んでいると見慣れた顔と目があった。

「井口だ、よお」
「…うお、一瞬誰かわかんなかったわ。なんかお前雰囲気違わん?」
「そう?」
「俺の服だからじゃない?」

 確かに髪はなぜかいつもよりサラサラだし葉大の服を着せられて系統も違うから別人に見えるのかもしれない。なぜ服を…?と言いたげな顔をされて慌てて「ゲームやってたら熱中しちゃって泊めてもらったんだ」と付け足す。ふーん、と興味なさそうに相槌を打った後、井口は自慢げに「俺、彼女と来てっからさ」といつものように彼女自慢をし、ドリンクを二つ買ってシアタールームに消えていった。彼女は先に座っているのだろうか。

 映画は面白かった。派手なアクションにかっこいいキャラクター、怒涛の展開には手に汗を握った。普段は出掛けるのが面倒でサブスクで見てばかりだけど、やはり映画館で見る映画はド迫力で良い。
 一人では来なかっただろうから誘ってもらえてラッキーだった。感想を話しながら帰るとあっという間に自宅の近くまで着いていた。

「んじゃまたな。服は洗って返すから」
「わかった。映画付き合ってくれてありがとう」

 こっちこそ、と返して帰る姿を見送る。なんかデートみたいだなと一瞬思ったのをブンブンと頭を振ってかき消す。あいつにとってはあれもこれも全部いつものことで大した理由なんてないんだろう、きっと。
 そう思うことにした。
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