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荒戸井村問題
給湯室の二人
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更新されるか分からない不安からパンナコッタを作らずにいたのが悪かったのだろうか、富塚君は連日、新しい派遣社員の荒戸さんに次々と優しく仕事を教えて行く。
そうなってしまうのは荒戸さんという女性が二十五歳で若く、化粧もバッチリ! 私と同じ小柄なのに痩せていて、でも梅沢さんと比べるとちょっと太っていて、それでもそんなの気にしてない! というような明るく深くは考えてない子供のような感じで、スカートを好み、明らかに富塚君を狙ってますよ……感があるからだろうか。
課長のお気に入りになったのはそんな女性でお酒とタバコが好きだからとか、そんな荒戸さんが嫌いと言う相楽さんとか、梅沢さんは出たな! ライバル! とかなり警戒しているし、猫かぶりがピンと来てしまうような計算高い甘えた声でいるのが好かないなどという話を今日も聞いてしまって私の体調はよろしくない。
きっと高校生の富塚君ならばホイホイとそんな荒戸さんと付き合ってしまうだろう。
そういう意味では彼女と富塚君はお似合いでとても仲よろしくやっていると思う。
でも、私にもそういった優しさ、仕事中にも見せてほしい……。そんなモヤモヤの中、六月一日となり、一課の方からあの井村さんがやって来てしまった。
富塚君と須磨さんの間に仕事を教わる時だけ座っていた荒戸さんが完全に須磨さんの席になってしまったし、須磨さんは今まで奈雲さんの席だった所に移動し、奈雲さんは荒戸さんが座っていた育休中だった人の向かいの席となり、井村さんはそんな奈雲さんから引き継ぎがある為、私の右隣で育休中だったが、もう辞めてしまった人の席となった。
この変わりようがしんどい……。けど、最近、富塚君の帰りは定時ではないと聞く。それはこの荒戸さんがいつもやらかすからだそうで、それでも課長は私より強く怒らずにまだ来て日が浅いからね……と優しく注意する。
これは完全に負けた! そして、派遣会社から何も言って来ない所を見ると、私、本当に……。
家に帰り、一人契約書を見れば、三か月更新ではなく、六月いっぱいまでとなっていた。ヤバイ! そういえば、四月の途中からですので、少し契約期間が短くなりますが、これの次はちゃんと他の皆さんと同じように三か月更新となりますので……とかって、担当の人が言っていたような気がする……。完全に理解することなく、ふーん、そうなんだ……ともう緊張であんまり何を話され、言ったか覚えてないような感じの私に救いはあるのだろうか。
次の日もお昼休みに梅沢さんと荒戸さんが居ないからと相楽さんは言う。
「大丈夫よ、荒戸さんが来たからって、日下さんを辞めさせはしないでしょう。何たって今は日下さん、完全に井村さんの下だし。富塚君の下には荒戸さんになってるんだから。あたしはもういろんな人の下だけど」
そう言って、相楽さんは郵便局行って来るわね……と行ってしまった。
一人、スマホで求人情報を見ていると梅沢さんが戻って来て、私はすっとスマホを閉じ、梅沢さんと二人きりになるのが嫌でトイレに行こうと席を立った。
トイレからの帰り、何となく給湯室の明かりが気になってちょっと見てしまった私は愕然とした。
何でそんなににこやかにタバコ臭い二人が並んで冷蔵庫見ながら話してんの? それもデレデレした感じ見たくなかった。
「良いじゃないですかぁ!」
「だーめっ!」
何、この富塚君の甘々過ぎる声の感じ! 優し過ぎだし、私に使ったことのないやつ! ダメって、こっちが言ってあげたいわ! そんなことを言われた荒戸さんはさらに楽しそうに会話を続ける。
そりゃあ、隠れて聞いてるこちらに二人が全然気付かないの良しと思う反面、気付いてほしいな……という心の葛藤が、その後しばらく富塚君と何も話さない……に繋がるとは思ってもみなかった。
そうなってしまうのは荒戸さんという女性が二十五歳で若く、化粧もバッチリ! 私と同じ小柄なのに痩せていて、でも梅沢さんと比べるとちょっと太っていて、それでもそんなの気にしてない! というような明るく深くは考えてない子供のような感じで、スカートを好み、明らかに富塚君を狙ってますよ……感があるからだろうか。
課長のお気に入りになったのはそんな女性でお酒とタバコが好きだからとか、そんな荒戸さんが嫌いと言う相楽さんとか、梅沢さんは出たな! ライバル! とかなり警戒しているし、猫かぶりがピンと来てしまうような計算高い甘えた声でいるのが好かないなどという話を今日も聞いてしまって私の体調はよろしくない。
きっと高校生の富塚君ならばホイホイとそんな荒戸さんと付き合ってしまうだろう。
そういう意味では彼女と富塚君はお似合いでとても仲よろしくやっていると思う。
でも、私にもそういった優しさ、仕事中にも見せてほしい……。そんなモヤモヤの中、六月一日となり、一課の方からあの井村さんがやって来てしまった。
富塚君と須磨さんの間に仕事を教わる時だけ座っていた荒戸さんが完全に須磨さんの席になってしまったし、須磨さんは今まで奈雲さんの席だった所に移動し、奈雲さんは荒戸さんが座っていた育休中だった人の向かいの席となり、井村さんはそんな奈雲さんから引き継ぎがある為、私の右隣で育休中だったが、もう辞めてしまった人の席となった。
この変わりようがしんどい……。けど、最近、富塚君の帰りは定時ではないと聞く。それはこの荒戸さんがいつもやらかすからだそうで、それでも課長は私より強く怒らずにまだ来て日が浅いからね……と優しく注意する。
これは完全に負けた! そして、派遣会社から何も言って来ない所を見ると、私、本当に……。
家に帰り、一人契約書を見れば、三か月更新ではなく、六月いっぱいまでとなっていた。ヤバイ! そういえば、四月の途中からですので、少し契約期間が短くなりますが、これの次はちゃんと他の皆さんと同じように三か月更新となりますので……とかって、担当の人が言っていたような気がする……。完全に理解することなく、ふーん、そうなんだ……ともう緊張であんまり何を話され、言ったか覚えてないような感じの私に救いはあるのだろうか。
次の日もお昼休みに梅沢さんと荒戸さんが居ないからと相楽さんは言う。
「大丈夫よ、荒戸さんが来たからって、日下さんを辞めさせはしないでしょう。何たって今は日下さん、完全に井村さんの下だし。富塚君の下には荒戸さんになってるんだから。あたしはもういろんな人の下だけど」
そう言って、相楽さんは郵便局行って来るわね……と行ってしまった。
一人、スマホで求人情報を見ていると梅沢さんが戻って来て、私はすっとスマホを閉じ、梅沢さんと二人きりになるのが嫌でトイレに行こうと席を立った。
トイレからの帰り、何となく給湯室の明かりが気になってちょっと見てしまった私は愕然とした。
何でそんなににこやかにタバコ臭い二人が並んで冷蔵庫見ながら話してんの? それもデレデレした感じ見たくなかった。
「良いじゃないですかぁ!」
「だーめっ!」
何、この富塚君の甘々過ぎる声の感じ! 優し過ぎだし、私に使ったことのないやつ! ダメって、こっちが言ってあげたいわ! そんなことを言われた荒戸さんはさらに楽しそうに会話を続ける。
そりゃあ、隠れて聞いてるこちらに二人が全然気付かないの良しと思う反面、気付いてほしいな……という心の葛藤が、その後しばらく富塚君と何も話さない……に繋がるとは思ってもみなかった。
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