2 / 36
悪役令嬢となっての罰
この国では
しおりを挟む
この国の貴族は十六歳になると社交界デビューをし、十八歳になると成人となる。
その間に令嬢達は良い旦那様がいないかと探したり、逆も然りで恋愛をしたり、恋人ができたり、婚約したり……時間はいくらあっても足りないと皆焦っている。
かく言う私はもう十八歳になってしまった。
でものんびりだ。
それまで何事もなく、健やかに生きて来た。
今夜は兄に連れられ、兄の婚約者のご令嬢イアサントと会い、少し話をして二人はどこかに行ってしまった。
まあ、戻って来るだろう。
兄はきちんとした人だから、お相手の方もお優しいし何も心配していない。
それよりも何度目かの舞踏会に飽きて来た。
毎回同じなのだ。
踊りませんか? とダンスに誘ってくれる人は誰もいないのでずっとひっそりと隅の方で一人座っていれば全てが終わる。
勉強をしに行った学び舎でもそうだった。静かに目立たず、終わって行った。
それに今や次期王様候補第一位のライアン様の好きな色である青いドレスを身に付けていれば、尚更地味に埋もれて行ってしまう。
ずっと喋らず座り続けるのもうんざりだ。
お尻が痛い。立とう……そう思った時、ふと声が聞こえたのだ。
この社交界、噂はいつもどこでもしてる。
ヒソヒソコソコソ、誰それが浮気しただの子供が生まれただの……その中でもとびきりヤバそうなのが耳に入って来た。
……あの方が王位を狙ってる? ……ああ、何でもそいつだったらちょろいな! っていう軽口を聞いてしまったようでな……これは時間の問題かもしれないが……まさか! いやまさかだろう? 困るよ、今始まっては……ほら、あそこに血の気の多い公爵様が……! 聞かれたらマズイ! 次期の中でも一番弱そうに見えるあの方が実は一番お強いのだ……血の海になるぞ……。
(とてもじゃないが恐ろしい! 誰がそんな事を企てるのかしら?)
今まで生きて来て一度もそういう経験はない。
だから安心していた。
だけど、もし……その方でなくてもそんな恐ろしい真っ赤な地になれば――私は見たくない! だから私は行動を起こすことにした。
あの次期王様候補第三位の公爵、リアム様がこちらをじっと静かに見ていても私は躊躇うことなく走り出してしまった。
その間に令嬢達は良い旦那様がいないかと探したり、逆も然りで恋愛をしたり、恋人ができたり、婚約したり……時間はいくらあっても足りないと皆焦っている。
かく言う私はもう十八歳になってしまった。
でものんびりだ。
それまで何事もなく、健やかに生きて来た。
今夜は兄に連れられ、兄の婚約者のご令嬢イアサントと会い、少し話をして二人はどこかに行ってしまった。
まあ、戻って来るだろう。
兄はきちんとした人だから、お相手の方もお優しいし何も心配していない。
それよりも何度目かの舞踏会に飽きて来た。
毎回同じなのだ。
踊りませんか? とダンスに誘ってくれる人は誰もいないのでずっとひっそりと隅の方で一人座っていれば全てが終わる。
勉強をしに行った学び舎でもそうだった。静かに目立たず、終わって行った。
それに今や次期王様候補第一位のライアン様の好きな色である青いドレスを身に付けていれば、尚更地味に埋もれて行ってしまう。
ずっと喋らず座り続けるのもうんざりだ。
お尻が痛い。立とう……そう思った時、ふと声が聞こえたのだ。
この社交界、噂はいつもどこでもしてる。
ヒソヒソコソコソ、誰それが浮気しただの子供が生まれただの……その中でもとびきりヤバそうなのが耳に入って来た。
……あの方が王位を狙ってる? ……ああ、何でもそいつだったらちょろいな! っていう軽口を聞いてしまったようでな……これは時間の問題かもしれないが……まさか! いやまさかだろう? 困るよ、今始まっては……ほら、あそこに血の気の多い公爵様が……! 聞かれたらマズイ! 次期の中でも一番弱そうに見えるあの方が実は一番お強いのだ……血の海になるぞ……。
(とてもじゃないが恐ろしい! 誰がそんな事を企てるのかしら?)
今まで生きて来て一度もそういう経験はない。
だから安心していた。
だけど、もし……その方でなくてもそんな恐ろしい真っ赤な地になれば――私は見たくない! だから私は行動を起こすことにした。
あの次期王様候補第三位の公爵、リアム様がこちらをじっと静かに見ていても私は躊躇うことなく走り出してしまった。
2
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない
かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」
婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。
もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。
ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。
想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。
記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…?
不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。
12/11追記
書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。
たくさんお読みいただきありがとうございました!

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!
藤原ライラ
恋愛
ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。
ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。
解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。
「君は、おれに、一体何をくれる?」
呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?
強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。
※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる