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新人従業員達の打ち上げ

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今日は朝から濃い珈琲を飲んで気合いを入れる。
いつもは5時に始めればいいが、今日はそういう訳にはいかない。
   私達新人メイドは直接お嬢様のお着替えの補助をする訳ではないが、その代わりに会場のセッティングにてんやわんやだ。


「そっちのテーブルは左利きのご婦人がいらっしゃるから逆よ!」
「きゃー!テーブルクロスにシミが!!」
「まだお皿は置かないで!ホコリが落ちるでしょう!」


こういう時に限ってアクシデントも出てくる。

「ハエが入ってきた!!そっち!」
「こんの忙しい時に!!」



しかし、全員流石プロ。どうにか予定の時間より2時間早めに準備が終わり、何事もなくパーティーは始まった。

「お疲れ様~!あとは会場の中級メイドの姉さん達が招待客のお相手をしてくれるから、ひとまず終わった~!」
「本当。姉さん達はこれからだもんね。上に上がりたいけど、このままだと体力持たなそうだわ。」

カノンが持ってきたオレンジジュースを持って待機室に向かう。
後はパーティーの後片付けをすれば、今日の業務は終了だ。待機室には、軽食が用意されているため、小声で喋りながら軽食を摘む。

暫くすると、廊下が賑やかになったあと静寂が訪れ、侍女長が片付けの指示を出しに来た。





「では、今日の業務は以上です。旦那様から朝ごはんはパーティーの残りをお召し上がりの為、私達は全員朝はお休みを頂いております。このお心遣いを明日からの仕事に打ち込むように。お疲れ様でした。」


わっ!!と明るい雰囲気のまま、着替えて打ち上げに向かう。








「「「「「お疲れ様です!!!」」」」」

全員各々のお酒を飲みながら、先程のパーティーの緊張した顔が完全に取れていた。

「何度もパーティーは経験しても、慣れないわね~」

侍女長は梅酒ロックを煽りながら呟いた。基本カノンと侍女長が話しているのを私は同じ梅酒ロックを飲みながら聞いている。

「えー?!侍女長って貴族出身ですよね?」
「貴族って言っても、私は子爵。ご招待客の皆様は伯爵以上の王宮パーティとさほど変わらない方々なのよ?気を抜いたら手が震えそうよ。」
「あれ?でも今は伯爵夫人様ですよね?」
「今はね。根っこは変わらないわよ。そういう貴方たちも誰と結婚するか分からないんだから。しかもここは玉の輿の宝庫だしね。」
「玉の輿の宝庫って!確かにそうですけど!私達はお眼鏡に叶いませんよー!」
「分からないわよー。彼氏は2人ともいないの?」
「この間、急に振られちゃいました。えへへ。」
「あら。でもあの彼、女遊び激しいって聞くから別れて正解よ。次行きなさいな。ライアは?」
「私は……いい人がいれば、でしょうか?どうもこの人!っていう人がいなくて…我儘ですが…」
「おひとり様が充実してる証拠じゃない。」
「でも、いつかは結婚しなくちゃいけませんし。」
「私達は人生を楽しむために生まれてきたんだから、無理に恋や結婚をしなくてはいけない訳ではないわよ?そりゃあ…みんなで生きている以上ルール、税金とかを払う為に働かなくちゃいけないけれど、それだって残りは楽しく生きるために働いているようなものだし。」



侍女長の梅酒の氷のカランと言う音が響いた。それほどまでに、全員侍女長の言葉に耳を傾けていた。

「そうですよね…じゃあ、後悔しないように考えてみます。」
「固いわねぇ。案外、何も考えないでのらりくらり生きていた方が上手くいくこともあるわよ。」
「侍女長凄いです!俺、あんまり侍女長と話す事ないけど、姐さんって感じしますね!」

メイを皮切りに侍女長の周りが騒がしくなり、ほんのり照れたのか、お酒が回ったのか頬が赤くなってはにかんだ顔は素直に可愛いな、と思った。


「はいはい!私の事はいいから、明日も仕事ないわけじゃないんだし、帰るわよ!」

照れ隠しか、口早に侍女長は終了の合図をし、打ち上げも終わりを告げた。




「ライア、一緒に帰ってお風呂入ろう!」
カノンがほろ酔いで腕に抱きついてきた。こういう所は庇護欲をそそって、年上の女性や男性にも人気な理由だろうと解釈した。


「そういえばライアさん、この間言ってたフルーツが入ったけど、見る?」

肉屋の人と少し話していたジョンが遅れてやってきた。ライアとお風呂は魅力的だけど、フルーツは今度いつ入荷するか分からない。

断然フルーツだろう。


「ごめん、カノン。先帰ってて!」
「えー。じゃあ、先にお風呂入って寝ちゃうからねー!」
「分かった!ゆっくり休んで。」
「ライアもね」


そう言って、足早にジョンの後を追いかけた。


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