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別れは突然に

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  彼に…彼と恋に落ちたのは突然だったの。


年に1度の村のお祭りに久しぶりに里帰りした私は、隣のおばさんに流されるままに、屋台の手伝いをさせられてたの。

まあ、小さい頃よくお世話になったから1日位いいか。と思ってね?


串焼きの売上は村で一二を争うほど良かったわ。お礼って程でもないけど、お祭りの終盤には売り切れてたから、ちょっと早めのパーティーをしようって事になって

簡易テーブルを作ってパーティーをしてたんだけど、おばさんやおじさんのテンションが段々高くなっていって、傍を通る人も巻き込んで中々大きなパーティーになっちゃったんだ

流石に2人ともお酒が回ってきたのが分かったから、そろそろお開きにして送ろうと思ったんだけど、なにせ酔っ払った大人2人を運ぶのには無理があって

2人を支えて立ち上がった瞬間、バランスをくずしちゃったの


「倒れる!!」
思わず目を思いっきり瞑っちゃったんだけど…


しばらく経っても地面に叩きつけられなかった

「大丈夫?」
村では嗅いだことのない、ミントの香りが私を支えてくれてたの

彼は素早く2人を私から移動させて、何度言ってもかたくなに家まで送ってくれたの

いままでそんな事を男性にしてもらった事なんて無かったから、申し訳なさと驚きで、お礼をするって言ったんだ。

そしたら彼、何て言ったと思う?

「じゃあ、君の時間を少しくれない?……あ…と、本当は、お礼の食事目当てで助けたんだ。ごめんね、一目惚れ…かも。」

耳や通った鼻筋まで真っ赤にしてはにかんだ彼を見た瞬間、私は堕ちたんだと思う。



初めは、週に2、3回デートをしてたんだけど、付き合って1年経ったある日、

「カノンと1年一緒に居るけど、どんどん好きになっていくよ。狡いね。俺にももっと君に好きになってもらえる機会をくれない?」

「あ、ありがとう/////……でも、お互いの仕事もあるし、もっと会うのは難しいね…」

「そうじゃなくて……一緒に暮らさない?」

「え…?」

「ご、ごめん!まだ早かったかな?でも、カノンは魅力的だから、俺が不安って言うのが本音なんだけど。自分勝手だったね、忘れて!」

悲しそうな顔で去ろうとした彼の腕を、思わず両手で掴んじゃった

「違うの!すごく、嬉しい!えと……お願い、します。」

顔に熱が集まるのが分かった。だけど、それよりも嬉しくて心臓が破裂しそうだった

でも、彼のへにゃりと笑った顔をみたら、そんなのどうでもよくなってた
(あ……また耳と鼻筋が真っ赤。ふふふ)

この事を知ってるのは私だけの秘密





そう言って、カノンは幸せそうに笑ってサンドイッチを頬張っている

私の半年後に来たカノンは、初めから人懐っこく、よく賄いを食べる仲だ。
しかし、良い子だけど、秘密を出会って半年の私に喋って良いのだろうか。まあ、喋る相手もいないし、私は一向に構わないのだが。

そう考えつつ、相槌をうってサンドイッチを頬張る。トマトの果汁と辛子マヨネーズが相まってパンが吸い込み、ベチャベチャになった物を無理矢理飲み込んだ

「で、その彼とはもう付き合ってどれくらいなの?」

飲み物で洗い流そうと思ったが、私が唯一苦手な炭酸飲料だった。いつもはレモンウォーターなので油断した。どうやら、今日は運が良くないようだ。

「あ、今日ラッキー♪コーラじゃん!えーとね。5年かな?」
「じゃあ、4年同棲してるんだ。結婚もうすぐじゃないの?ここ来たばっかだよね?」
「なんかねー。最近彼の仕事が忙しいみたいで、話も全然出来ないんだよね…もちろんあっちもご無沙汰。」
「ごふっ!?いきなりぶっ込んで来ないでよ。あー、もう熟年夫婦みたいな?」
「そうなのかなー?でもさ、まだ結婚してないし、ドキドキしたいんだよね~。でさ、今執事のマーロン君と話すとキュンキュンしちゃうの!彼可愛くない?」
「何それ浮気?可愛い…かな?」
「違うの!俳優にキュンキュンする感じ?あの無意識に距離近かったり私にだけ気安かったりする感じが!きゃーーー!」

カノンは机に突っ伏しているが、正直そこまで良い部類には入らないと思う。
目は二重だが、小さめで離れているし、顔は四角い。あと一歩感が否めない。


そんな彼が、手紙を持ってこっちに近づいて来た

「カノン、ライアさん、お疲れ様です。カノンに手紙、ほれ。」
「へ?ありがとう~。そっか。私の衣装棚移動するからそっちに届けられないのか。あ!彼からだ!!」
「そういう事。いつも手紙なんて来ないよな?見てみたら?」


その言葉を聞いてか聞く前にか、手紙を開いて読み始めたカノン

いつもに増して筋肉緩みっぱなしだった彼女だが、直ぐに真顔になり、次第に血の気が引いているのが分かるほど真っ白になっていった


「…どうしたの?」
思わず聞いた私の顔を見たカノンの目には、光が無くなっていた


無言で手紙を私達に向けて置いた。


そこに書かれていた内容は、簡単に一言



「別れよう」




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