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6 カヤバセ村
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馬車に少し大きな振動に揺られて、カヤバセ村に向かって暫くした頃。
「お母様。」
「ん?なあに、リーチェ。あら、」
リーチェが何かの変化に気がつき、続いてエレナが気づいた。
「空気が…。」
「重い。」
二人にだけ重力が増したように感じられた。お互い頷き合って、一層気を引き締めて村へと向かった。
カヤバセ村は山の中にぽっかり空いた空間に作られた村だ。入るためには、山道を歩いて進まなくてはいけない。
御者とはここで別れ、二人は山の中に入っていった。
歩いているベアトリーチェの後ろで、草の擦れる音がした。ベアトリーチェは振り返ると、白い兎がこちらの様子を窺っていた。
ベアトリーチェが側に寄ってじっと見つめ、白い毛に手を伸ばすと、兎はいきなりの事でベアトリーチェの指を噛もうとした。
しかし、兎の歯が到達する前に精霊達が兎の動きを止めた。
「だーめ。」
精霊は、ぺちんと兎を叩いた。怒られた兎は一瞬ポカンとして、精霊達を見返した。
「叩いては駄目。ごめんね、うさぎちゃんはびっくりしちゃったんだよね?」
兎は鼻をひくひく動かしてから、ベアトリーチェにすり寄った。兎特有の柔らかな毛が心地よい。
「リーチェ?早く行きましょう。」
少し先に進んだエレナが声をかける。
「はーい。じゃあね、うさぎちゃん。」
兎に手を振って、その場から離れた。兎は、去っていく後ろ姿をじっと見ていた。
やっとカヤバセ村に到着した二人は、村の入り口から辺りを見回した。
先ずは病人が運ばれているであろう奥の広めの建物に向かって行く。
念のためノックをし、ドアを開けてみた……
集められて横になっている人に、赤いアザのようなモノがあり、熱があるのであろう息が荒かった。
「そらそうよね、病だって言ってるのだから。」
ベアトリーチェは、村長らしき人がこちらに向かって来ているなか、扉を閉めた。
「ではお母様、私はその辺を調査してきます。一緒に行きますか?」
「そうねぇ、私は村を調査してみようと思うわ。」
二人は素早くその場を離れ、各自で動き出した。
扉を開けた村長が、
「はれ?確かに誰かそこにいたような。」
「お母様。」
「ん?なあに、リーチェ。あら、」
リーチェが何かの変化に気がつき、続いてエレナが気づいた。
「空気が…。」
「重い。」
二人にだけ重力が増したように感じられた。お互い頷き合って、一層気を引き締めて村へと向かった。
カヤバセ村は山の中にぽっかり空いた空間に作られた村だ。入るためには、山道を歩いて進まなくてはいけない。
御者とはここで別れ、二人は山の中に入っていった。
歩いているベアトリーチェの後ろで、草の擦れる音がした。ベアトリーチェは振り返ると、白い兎がこちらの様子を窺っていた。
ベアトリーチェが側に寄ってじっと見つめ、白い毛に手を伸ばすと、兎はいきなりの事でベアトリーチェの指を噛もうとした。
しかし、兎の歯が到達する前に精霊達が兎の動きを止めた。
「だーめ。」
精霊は、ぺちんと兎を叩いた。怒られた兎は一瞬ポカンとして、精霊達を見返した。
「叩いては駄目。ごめんね、うさぎちゃんはびっくりしちゃったんだよね?」
兎は鼻をひくひく動かしてから、ベアトリーチェにすり寄った。兎特有の柔らかな毛が心地よい。
「リーチェ?早く行きましょう。」
少し先に進んだエレナが声をかける。
「はーい。じゃあね、うさぎちゃん。」
兎に手を振って、その場から離れた。兎は、去っていく後ろ姿をじっと見ていた。
やっとカヤバセ村に到着した二人は、村の入り口から辺りを見回した。
先ずは病人が運ばれているであろう奥の広めの建物に向かって行く。
念のためノックをし、ドアを開けてみた……
集められて横になっている人に、赤いアザのようなモノがあり、熱があるのであろう息が荒かった。
「そらそうよね、病だって言ってるのだから。」
ベアトリーチェは、村長らしき人がこちらに向かって来ているなか、扉を閉めた。
「ではお母様、私はその辺を調査してきます。一緒に行きますか?」
「そうねぇ、私は村を調査してみようと思うわ。」
二人は素早くその場を離れ、各自で動き出した。
扉を開けた村長が、
「はれ?確かに誰かそこにいたような。」
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