異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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191.ベビシェフの料理(よく見られているんだな)✔ 2024.2.1修正 文字数 前3,826後3,067減759

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 ウイングスーツの飛膜は修理したが、また破れてしまったんだ。体も成長していたので新しく作ることにした。次に破れると飛膜の替えがないので、今まで以上に大切にしなければならないんだ。

 今日も王妃様から手紙が届いている。もちろん、乳液を届けるようにと書かれており、金貨五十枚が同封されていた。おかげでかなりの金貨を手にすることができた。王城に配達に行く回数も増え、アルテミシア様の機嫌もいい。

 アルテミシア様によると、王妃様は俺が森の開拓や製塩所に学校を作ったりと、お金が必要になるからと考えての行動だったみたいだ。会うたびに止めてほしいと、心の中では思っていたが、感謝しなければいけないな。

 しかしだ、今回の乳液の独占販売により、王妃様の影響力がかなり強化されたという話も聞こえている。国内だけにとどまらず、魔法大国アスラダの王族や貴族にも影響力を持ったという話もあったんだ。

 国王陛下を見ていると、実は王妃様が裏ボスなのではと思うこともあるから、満更嘘ではないのかもしれない。

 今回のことで薬草畑も四倍の面積に拡張したし、課題に思われたピンクスライムの個体数も増やすことに成功している。

 ピンクスライムは沢山の薬草を与えて育てることまでは分かっていたんだけど、薬草以外は食べないからか、成長スピードが遅いんだ。早く分裂させる方法がないかと、実験を繰り返していたんだ。スライムの体はプルプルなので、俺の作り出した魔力水を大量に与えてみたら、成長速度が格段に速くなった。

 今育てているピンクスライムも、もう少しで分裂してくれるんじゃないかな。

 三日前にも乳液を五十本届けてきたんだけど、どこで嗅ぎ付けられたのか温泉と別荘の存在を知られてしまったみたいなんだ。温泉を造った当初は誘ってみようかという気持ちはあったんだけど、流石に王族となれば馬車の護衛などが大変になる。何日も王都を離れるなんて無理だろうと思い直したんだけどね。

 国王陛下は行く気満々な様子で、あちこちと日程調整を行っているらしい。突然来るなんてことはないだろうけど、俺になんの相談もないのが気になっているんだ。

 念のため色々と準備しておいた方がいい気がしてきた。ピンクスライムの実験や乳液の製造に時間を取られ、別荘に来るのは四日ぶりになる。

 別荘にやって来ると、数十匹の腹の開いた魚が天日干しされていた。きっとチビかベビが俺の真似をしたのだろう、切れ味抜群だぞ、風を制御して切ったのかな? 魚の処理も上手なものだ。この魚は湖に生息しているトラウトだな。

 煙の匂いも漂っている、燻製器も使用しているみたいだ。この匂いからすると、燻製に使う木もちゃんと把握している。俺が作業するのを観察していたんだな。キッチンに向かうと塩や砂糖が飛び散っていた。どうせなら後片付けも真似てほしいんだけどな。

 裏に回ってみたら、塩サケならぬ塩トラウトをぶら下げている真っ最中のベビを見つけた。どれだけ魚好きなんだ。

《ママ、お帰りなノ! ベビね、ママのようにお料理を始めたノ! チビとレックスおじちゃんも運ぶの手伝ってくれたノ》

 ベビは念話しながら飛んで来た。褒めてほしそうだな。

《ベビ、すごいね! 燻製器に何を入れているの?》

《えへへ、ママが作るの見てたから、オークとお魚を入れたノ! できたらママにも食べさせてあげるノ》

 ベビが得意げだ。やっぱり見られていたんだな。

《楽しみだな~、ベビ期待しているからね。だけど、使ったらキッチンを掃除してよ》

《全部終わってからやるつもりでいたノ。まだ、残っているノ》

《掃除するならいいよ、作業手伝おうか?》

《ベビがやるから大丈夫なノ》

 ひとりでやりたいんだな。ベビの様子を観察していたら、魚を掴んでお腹に爪を突き立てると、ピーーーっと綺麗に切り開いた。ナイフ並みの切れ味だな。風の刃を使ったのかと思っていたが違ったみたいだな。

 俺に見せつけるかのように魚の内臓を取り出すと、メチャクチャドヤ顔で見てきた。まさか龍が魚の加工をする姿を見るなんて、マイバイブルのラノベにもなかったな。もう、燻製造りで生きていけるんじゃないかな。

《ベビすごいね》

《えへへ、ママに褒められたノ》

 メチャクチャ嬉しそうにしているな。しかし、龍の爪ってあんなに鋭いんだ。肩もみとかしてやるって言われても絶対に断らないと危険だぞ。

 しかし、この調子で俺のやる事を覚えてもいいものか悩むな。他の龍たちの中で普通に暮らせるのか心配になってきた。育て方を間違えたかもしれないぞ。ママ龍さんに、うちの子に何を教えているのとか、怒られなきゃいいんだけど。

 野生動物は栄養価の高い内臓から食べるし、天日干しとかやらないからな。ベビときたら燻製に塩トラウトだからな……。

 早く引き取りに来てくれないと完全に人間の食生活に馴染んでしまいそうで怖いんだけど。ママ龍さん早く迎えに来てよ!

 魚の処理に忙しそうだから、邪魔しないように別荘や温泉の状況を確認して回るかな。

 見て回ったがこの前いた猿の姿は見えなかった。どこかに行ったのか、餌を食べに出かけているんだろうな。温泉に浸かる動物さえもいない。

 本日の夕食は、なんとベビシェフが作ると言っている。ここで食べるしかない、何を食べさせてくれるか楽しみだな。

 料理する間、温泉に浸かって来いとベビに言われた。いつもの俺の言動そのままだぞ。ここまで真似されるとはな~……言われた通りに入りに行って来るか。

 レックスとチビが戻ってきたようで温泉に浸かりに来た。一緒にのんびりと浸かる。オークを獲りに行っていたと教えてくれた。

《ママ! 料理できたの!》

 ベビに呼ばれたから上がるか、レックスとチビを温風を作り出す、乾かしてやる。

 ベビシェフの一品目は、アジの開きならぬ二メートル近いトラウトだ。豪快な料理が得意のようだな。

 なんとなく表面を見れば予想はついたが、しょっぱ過ぎだ。俺が塩を落すところは見ていなかったんだな。

 レックスも微妙な顔をしている。チビとベビも食べて気が付いたみたいだな、あえて指摘する必要は無さそうだな。今度教えてやるか。

 次が出てきた。ん! なんだこれは? もしかして燻製か? 炎を吹いたのか? 煙で燻すというよりは炙られて焦げている。

 オーク肉も水分が全部飛んでパサパサ感が半端ない。ここなんてカリカリだ。だけど、これはこれでジャーキーみたいで美味しいかも。

 三品目の天日干しの魚はいい感じに焼けて、いい匂いが鼻腔をくすぐる。これは期待できそうだ。醤油が数滴たらしたいところではあるが、素材の持つ旨味か、素直に美味い。

 全体的に火加減が強すぎるみたいだな。俺のように魔法で温度調節ができない上に、ベビの火炎は高火力過ぎて料理には向かないから仕方ないな。

《ベビ、最後に食べたお魚が一番美味しかったです。正直に言うからね、塩が多すぎるのと、火力が強すぎる。今度、教えてあげるから、ママと火力調整の方法も考えよう》

《ベビもそう思ったノ。ちゃんと言ってくれてありがとうなノ。ベビね炎は調整が難しいノ!》

《料理用ではないからな~、それなのによく頑張ったね》

《えへへ!ベビ頑張ったノ》

 レックスもチビも優しいな。文句のひとつも言わなかったよ。

 レックスがどこかに出かけて行った。ひとりで出かける回数が増えているのは気のせいだろうか? 最近忙しくて、料理を作りに来ないから出て行く準備でもしているのだろうか? 

 それとも、魔狼王だと言っていたから、魔狼迷宮や群れの面倒でも見に言っているのかもしれないな。レックスから言ってくれるまで黙って見守るしかないか。
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