異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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389.嬉しい知らせ(懐妊ラッシュ)✔

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 カイル兄さんが、また第二騎士団長代理の職に就くそうだ。そう、妻のクリス第二騎士団長が懐妊されたんだよ。元気なうちにどんどんと産むつもりなんだろうね。またしばらくの間、カイル兄さんは団長に囲まれた肩身の狭い生活を送ることになるんだな。頑張れカイル兄さん。

 この知らせを聞いていたアルテミシアの顔は複雑な表情をしていた。口では良かったですねと言っていたが、どこかさえない表情をしていたんだ。

〈女神様、計画はどうなっていますか?〉女神様は応えてはくれない。

 うちの夕食にはクロード兄さん夫婦も参加することがよくあるんだ。その時はアルテミシアとスノーレット様が嫁同士で話をしている姿をよく見かけていた。

 しかし、ここ最近はクロード兄さん夫婦が食事に顔を見せることがないんだ。カイル兄さんと仕事では会っているし関係は良好のままなんだけどね。

 スノーレット様の顔を見ることがなくなっているな、体長を崩されたのかな? 癒しの魔法をかけにと考えたが、癒しの聖女と呼ばれていたお母様が訪問していることに気が付いた。

 どうやら、酷いつわりになっているらしい、アルテミシアの心情を考慮しているため、懐妊していることを伏せてくれているようだ。気を使わせてすみません。

 折角の気遣いなので、アルテミシアに伝えることはしないでおこう。毎日、アルテミシアの顔を見ているとかわいそうになることもあるんだ。女神様は何をやっているんだろうか? と、月を見上げていたら、アルテミシアが微笑んでいた。

 もしかして……違っていると大変だから言われるまで待つからね。

「アルフレッド、もしかしたら懐妊したかもしれないわ! まだ、様子を見た方がいいけれど間違いないと思うの!」

 何か確信できることがあるのだろう、アルテミシアの顔が優しくなっている。

〈女神様、ありがとうございました!〉今回も女神様は応えてはくれない。

「これでアルテミシアもママだね! 体を大事にして無理はしないようにしてね!」

「ええ、いつも気を使わせてしまって……ありがとう……」

 アルテミシアの目にはうれし涙が浮かんでいる。今まで辛かったのがよく分かっているからね、うれし涙もでるよね。

 まだ、言わないで欲しいというので安定期に入るまでは伏せておくことにした。

 正直なところホッとしたよ。見ていて可哀そうになっていたからね。腰が痛くなったり食べれなくなったりと大変になるだろうから、毎日癒しの魔法をかけてあげよう。

 ベビーベットにベビーカー、抱っこ紐も作ろうかな。ベットメリーにロッキングホース……紙おむつは高分子吸収剤か、今の俺には作れそうにないな。

 こっちでは乳母を雇うんだったよな。今から探すか? まだ早すぎるか? あーなんかてんぱってきたぞ!

「アルフレッド、落ち着いてください。あなたが産むわけではありませんよ!」

「そうだけど、僕にできることをやっておきたくて!」

 アルテミシアに笑顔が戻っている。やっぱり女性の笑っている姿はいいな。この笑顔を守らないとね。  

 クロード兄さんの赤ちゃん用にも作ろうかな? いや、俺が全部やるとクロード兄さんのすることがなくなってしまうな。

 お母様にだけは、それとなく伝えて様子を見てもらうように言っておかないとね。産んだことのある人がいてくれると心強いんだよ。

 俺がバタバタとやっていると、〈今回はちゃんと島を見つけた〉と人魚から念話が届いた。早速、チビとベビにお願いして向かったんだ。直ぐに土を運んで水槽を造ろうとしたら、トリートーンの背中に造ってくれと言って来たんだ。そう、アンフィトリーテーは子供の万年亀トリートーンと行動を共にしていたんだよ。

 またかよ、ん! 今までと様子が違うな、二匹の後ろの鰭にロープやら残骸やらが絡まって泳ぎ難そうにしており、銛が刺さっているじゃないか。

〈アンフィトリーテー、もしかして襲われたの?〉  

〈そうよ、人魚が目当てだったみたいよ。トリートーンや私の背中に上がろうとしてきたから沈めてやったわ!〉

 明らかに今回は沈めたと自覚していた。鰭や首のあたりに沢山の銛が刺さっていたからね。相手は万年亀を討伐する気だったのかもしれないな。なんて無謀なやつらなんだよ。

〈トリートーンって男の子だよね?〉

〈ええ、トリートーンは男の子よ! 今度、アルフレッドに娘のロデーも紹介してあげるわ! 今、どこにいるか分からないから気長に待っていて! ねえ、刺さっているやつを取ってくれない!〉

 アンフィトリーテーが目の上に刺さった銛を邪魔そうにしている。

〈直ぐに取り除くから待っててよ!〉

 チビとベビに海の魔物を警戒してもらいながら、絡まったロープや残骸を取り除いていく。海に捨てるとまた誰かに絡まるといけないな。

〈チビ、これを燃やして灰にしてくれる!〉

〈任せてダォ! ゴーーー!〉

 チビが火炎で燃やして処分してくれたんだけど、危うく俺の腕まで燃やされそうになったからね。返事と同時に火炎を吐くんだから、本当にせっかちなんだよね。

 首と鰭に刺さっている銛も抜いて癒しの魔法をかけておく。甲羅ではない動く場所には刺さるんだな。

 近くにあった島には、多くの鳥とイグアナやゾウガメみたいな魔物が生息していたが人は住んではいなかったよ。飲み水を確保するのが大変そうなので人が住むのは難しいんじゃないかな。

 運んでくれた土でトリートーンの背中に大きな水槽を造ったよ。トリートーンが必死に首を逸らして水槽を見ている、なんで嬉しそうなんだろう? 重たくて邪魔なだけだよね? もしかしてアンフィトリーテーと同じがよかったのか?

 今回も魔道具に魔力を充填しておいた。次は南半球の人魚に会う時になるかな?

 アルテミシアとお腹の子が気になる。

〈チビ、ベビ帰ろう!〉

〈任せるダォ!〉〈任せてなノ!〉

 チビとベビはフワッと上空に浮き上がると一気に加速した。
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