異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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388.人魚からの念話(近況報告)✔

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 二ヶ月ほど経過したある日、人魚から〈万年亀が到着した〉と念話が届いた。ちゃんと念話の魔道具は使えていて安心したよ。

 予想はしていたが本当に二ヶ月も掛かってしまったな。こんなに日数が掛かるなら南半球までの往復になると最低でも一年半は掛かるんじゃないかな。

 人魚から準備していた食料などを積み込んで出発したと念話が届いた。念話なんだけど、魔力の消耗を抑えるために必要最小限にしているんだ。

 途中で魔力が切れるようなことになると連絡できないし、居所が分からなくなってしまうんだ。そんなことになれば何かあった時に探すのが大変だからね。

 魔力タンクとしての魔石も貸与したんだけど、人魚って驚くほど魔力の扱いが苦手な種族で、念話の魔道具に魔力を補充することができなかったんだよ。

 人化の魔道具はどうしているのか訊いてみたら、地下の儀式する場所に充填するための魔道具があるんだってさ。そこでしか充填出来ないって言っていたから、魔力溜とか魔法陣とかの関係なんだろうね。

 一年半も魔力がもつとは思えないよね、充填できる魔道具を作ってやらないと……とりあえずになるけど、人化が解除された時を想定して水槽を造った方がいいよね。次の島が見えたら念話してくれるように伝えておこう。チビとベビにまた土を運んでもらわないとね。

 鈍感と自分で言っていたから大丈夫かもしれないけど、また重たくなるのはアンフィトリーテーの負担になるんだよね。あの大きな体を維持するために、何を食べているのかも気になるんだけど、知らない方がいい気もしているんだよね。


 建国してからも俺は忙しく仕事に追われている。特に精霊の行っている魔の森化に時間を取られているんだ。無計画に樹木を増やすから、せっかく開拓した獣人の村が飲み込まれたりして大変だったんだよ。

 もう少し俺の話を聞いてほしいんだけど、下級精霊が張り切り過ぎて暴走するんだよね。上級精霊がしっかりと管理してくれないと困るんだけどな。

 どうやら、コントロールは難しいみたいだね。魔大陸の森ではこれが当たり前なんだってミルトが教えてくれた。村を避けてとかは人の一方的な都合だから、精霊には関係ないんだってさ。きっと、この森に木を生やそうみたいな感じなんだろうね。

 朝起きたら村が森に飲み込まれているなんてこともあるんだってさ、当事者である獣人やドワーフは文句言ってないからいいのかな?


 三ヶ月ほどして人魚から〈小さな島が見えている〉と念話が届いたんだよ。直ぐにチビとベビにお願いして向かっている。どこにいるかは魔道具で位置が分かるから迷ったりはしないからね。

 だけど、島ではなかったんだよ。もう気付いていると思うんだけど、万年亀だったんだ。それもアンフィトリーテーの子供だと言うんだからね。もう、赤道付近の大きくて狂暴な魔物って万年亀で合っているよね?
 
 土がないと水槽は造れない、島が見つかってからになるな。人魚達は元気そうにしているし、結構楽しんでいるみたいで安心したよ。

 だけど、食料を確保するのは命がけになるみたいだね。全部大きくて狂暴なんだって、だから、捕食する側でもあるけど、捕食される側でもあるんだって言っているからね。周りに島がないと魚なんて探すのは大変じゃないのかと思ったんだけど、万年亀の周りには自然と生き物が集まってくるんだってさ。なるほどね、だから食べ物には困らないんだ。

 しかし、海は広いな、三百六十度が海で何もないんだからね。羅針盤やコンパスを使っていないのにどこに向いて泳いでいるかよく分かるよね。

 ボーっと海を眺めていたら、チビが突然、海に潜ってしまった、きっと獲物が見えたんだろうね。

 両手両足で大きな獲物を抱えて戻って来た。でかいな、十五メートルはあるぞ、人魚はこれを獲って食べているのか? なるほど、あの口の大きさと鋭い歯、逆に襲われることになるのも分かる。

 サメかシャチみたいだが、魚なのか哺乳類なのか、それとも魔物かもしれないな、魔力鑑定眼で見たら魔石が体内にある、魔物なんだな。

〈ママ、ベビも獲りたいノ! 行くノ!〉

〈待って、万年亀の背中に下ろしてからにし……〉

 ザバーン!!

 間に合わなかった。ベビと共に海にダイブだ! 

 うわー海中はこんな感じなんだ。これなら食料には困らないな、だが、迂闊に飛び込めば捕食されてしまうのもわかる。俺にかぶりつこうとしてくる魔物もいる。だが、海の精霊が防いでくれた。

 あ! こいつら、万年亀が帆船を沈めるのを待っているんじゃないのか! きっとそうだ。だから一緒に行動しているんだな。ベビが大きなやつを抱えると浮上して行く。

 プハー! 

〈ベビ、急に潜るのは止めてよね!〉

〈ごめんなさいなノ!〉

 チビもベビも言うと同時に行動しちゃうんだよね。今回が初めてのことではないんだよ、きっとまたやるからね。

 生は怖いから加熱してから食べようね。アンフィトリーテーの背中でチビとベビが火炎を吐いている。熱くはないんだろうけど迷惑な客だよね。

 人魚達が調味料とナイフを手に集まってきた。おこぼれにありつこうというんだな。なんてうれしそうな顔をしているんだろうか。

 足りないのか? またチビが潜って行くと十メートルの魔物を抱えて帰ってきた。いくらでも獲れるな。

 鶏肉に近い? 臭くない、塩コショウすればイケるぞ! 偶にはこういうシンプルなのもいいな。人魚も美味しそうに頬張っている。もしかして、空腹だったのか? 

 ベビにお願いして、もう何匹か獲ってもらうと人魚に感謝されたよ。やっぱり命がけだったんだな、よく生き残れたなと感心させられた。

 魔力水も作って提供しておいたからね。それと濡れた服も洗っておいたよ。しかし暑いな、きっと赤道の近くなんじゃないかな? 服なんてすぐに乾いたからね。

 さて、魔道具の充填も済ませたし安否の確認もできた。そろそろ帰るかな。次こそ島が見つかったら念話してもらうように言って帰路についた。

 二つの島が並んで浮かんでいるように見え、神殿に見える建物が気を引く、上陸したくなる気持ちもわかるな!

 次の念話は何ヶ月後になるんだろうね? 次に来るときには調味料セットを差し入れしてあげるかな。
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