329 / 415
連載
319.5グラン帝国潜入調査5(皇帝の失敗と計画)✔
しおりを挟む
皇帝の馬車だがやはり乗り心地がいいとは言えない、サスペンションを取り付けたいが、良好な関係を保てると判断してからだな。
他より高い建物が見えてきたが、何に使う施設だろうか? 聞く前に分かった。翼竜やワイバーンの宿舎だ。翼竜は地面からは飛び立てないようで、器用に嘴と翼にあるかぎ爪を使って搭を昇っている。
「興味があるようだな! 以前は山にあったんだが、情報は時間が重要だから、近くに造らせた!」
「すごいですね! 何匹くらいいるんですか?」
「教えられん、軍事機密だぞ!」
皇帝は笑いながら言うと、また、チビとベビを物欲しそうに見続けている。気付いていそうだな。家族なので譲ってはあげないよ。
ワイバーンに乗れば日帰りできそうだが、皇帝は飛べないんだろうな。竜騎士とか特別な名称で呼んでいたからね。
〈アルママ、このおじちゃんずっと見て来るダォ!〉〈そうなノ! 止めて欲しいノ!〉
チビとベビが俺を見つめて念話してきた。被害を出す前に止めてもらった方がいいな。
「皇帝陛下、この子たちを見るのはその辺で止めてもらえませんか、嫌がっていますから」
「それはすまない。ところで、その子たちの首に白銀色の首輪が装着されているが、どういう魔道具なんだ! 気になって仕方がない!」
皇帝が訊いてきたが、既に自分の答えは持っていそうだ。
「アルフレッド公爵、龍が二匹目撃されておりますが、どこにも飛び立っていないのです! あんなに大きな龍をどこに隠しておられるのですか?」
ボルトマン将軍が真顔で聞いて来た。皇帝は既に気が付いているようで、ボルトマン将軍に目を向け、また、チビとベビの首の魔道具に視線を戻した。
皇帝の口元は笑いを堪えているように見えて仕方がない。すまないと言いつつ、今度は魔道具を見るんだな。そろそろ止めてくれないとチビとベビの機嫌が悪くなるんだけど。
「教えられませんよ、軍事機密ですから!」
俺が皇帝の真似をしたのが笑いのツボにでも嵌ったのだろう。皇帝が大声で笑い出した。ボルトマン将軍は何がおかしいのかという目で皇帝を見ている。
「ボルトマン将軍、よく見ろ、お前の目の前にいるではないか!」
やっぱりな、皇帝はチビとベビの正体に気が付いている。ボルトマン将軍はチビとベビを見ているが、皇帝が言った言葉を理解できないでいるようだ。人間は自分の理解を超えることを想像することができないんだろうな。皇帝は笑い続けており、きっとツボにはまっているのだろう。だが、チビとベビの機嫌を損ねていることには気が付いていない。
〈このおじちゃん、うるさいダォ!〉〈ベビも限界なノ!〉
皇帝はチビとベビに嫌われてしまったな。仕方ない。馬車から降りるしかなさそうだ。どうせ、今回の潜入調査は失敗したし、龍だとバレているようだから先に飛んで行こう。本来の姿で貰った領地を見たら帰ることにするかな。
ホバリングで飛んで離れてから龍に戻ればいいだろう。
「申し訳ないですが、この子たちが帰りたがっていますから失礼します! また、機会があったら来させてもらいます!」
皇帝が笑うのを止め、真顔になった。自分のミスに気が付いたようだ。焦っているのがよく分かる。
「私が悪かった。これ以上、見つめないし笑わないから、帰ると言わないで付き合ってくれ! まだ話が終わっていないんだ! 会わせたい……」
会わせたい? 途中で止めてしまったが、誰に合わせたいんだろうか、気になる。
〈チビ、ベビ、謝っているから許してあげて! 我慢できる?〉
〈もう見られるの嫌ダォ!〉〈ママが言っても見るの止めなかったから嫌なノ!〉
これはダメなやつだ、魔力鑑定眼で見るふたりの姿が不安定になってきた。これ以上一緒にいるとふたりが爆発しそうだ。人化はコントロールが繊細だから、馬車の中で元の大きさにでも戻ってしまったら、チビとベビ以外は圧死する未来しか見えない。
〈分かった。帰ろう〉
皇帝陛下は許してくれるのを期待しているが、その考えは甘いし遅すぎた。俺は理由を説明し無理だと伝える。
ボルトマン将軍が俺の発言で、やっと目の前の子供が龍であることを認識したようだ。目が飛び出るのではないかと思えるほど大きく見開き、「この子供が大きな龍なのですか!?」と、驚いている。
皇帝陛下は少しおろおろしており、いつもの威厳が感じられない。
「初めてお前に勝った気がして浮かれてしまった。ボルトマン将軍も目の前の龍に気が付かないのもおかしくてだな。本当にすまなかった。私の計画を伝えれていないのだ。計画だけ話す時間をくれないか?」
いつもクールな皇帝の姿はどこにもなく、必死になんとかしようとしている。ふたりだけ先に返せればいいが、一緒にいることを条件にグラン帝国に来たからな。バレたらサーシャは許してくれないだろう。そうなると、今後の活動に支障が出てしまう
〈チビ、ベビ、このおじちゃんがお話したいんだって! 短く話してもらうから、もう少しだけ待ってくれる? どうしても無理なら馬車から降りていいから〉
ふたりはお互いの顔を見合わせると渋々了解してくれた。
皇帝の話はとんでもない内容だった。領地を国境ぎりぎりまで広げ、俺の領地と一緒にしたいそうだ。まさかそんなことを考えていたなんて、そんなの普通の人は思いつかないよ。
最初は土地を俺に渡すことを検討していたが、費用がかかり過ぎたため、税金は納めて欲しいそうだ。だが、管理や法は俺の領地と同じものを適用してくれて構わないと言ってきた。
俺の領地と同じ法を適用とか可能なのだろうか? 関税はどのタイミングでかければいいのだろうか? 国境だが線だけにして検問は行わない。これはヨーロッパにはよくある光景だ。職員への支払いは誰がどうやるのか? 土地の管理はどうするんだ?
人や物の移動が自由に動かすなら、欧州連合の経済統合体みたいに考えればいいのかな? 皇帝は当初、住民ごと俺に譲渡しようと計画しており、揉めないように身元も調べていた。
これは簡単な話ではないぞ、それに勝手に判断なんてできない。陛下に報告して判断を仰がなければならない案件だ。
簡単な街の計画図を渡された。その中には、皇帝とボルトマン将軍、俺の別荘が並んで表記されていた。流石に侵略する気はないようだ。
他にも色々な話題が出てきた。邪神教との戦いで異神国パズズに対して、メダリオン王国、グラン帝国、魔法大国アスラダは共闘した、それにより三国の関係が強固になっていた。
それで、魔法のスクロールが大量にグラン帝国に入っていたんだな。どうやら、魔法大国アスラダも魔蟻のスタンピード、岩風竜、病原菌テロで大打撃を受け、物資やお金が必要だったみたいだ。
グラン帝国からは石炭と木材を大量に輸出していた。木材は今回の移転工事で出たやつじゃないかな。うちを通過する物資が増え、通行税が増えているのは報告を受けている。
魔道具は賢者様が考案したモノで、魔法大国アスラダから購入したと自慢げに聞かされた。
グラン帝国内の邪神教の調査は、このまま皇帝に任せておけばいい。優先事項は皇帝の申し出をどのように取り扱うか陛下に相談することだろう。それが終われば、魔法大国アスラダにある賢者の資料を確認しに行くことにしよう。もちろん、邪神教の施設調査も合わせて行うつもりでいる。
皇帝とボルトマン将軍は残念そうにしていたが、別れることにした。このまま別荘に滞在するから、会いに来て欲しい、今回の償いはさせてもらうと申し立ててきた。
一度、領地にチビとベビを連れ帰り、気持ちを落ち着かせた。空腹だったことも原因のひとつだったようで、ハンバーグやステーキを食べてやっと落ち着いてくれた。龍の巨体を維持するためにはエネルギーの摂取は必要だよね。ちょっとしか食べていないから気が立っていたんだろうな。皇帝に悪いことをしたかもしれないな。
デザートは、カカオ豆とフルーツからチョコレートパフェを作った。アイスクリームの代わりにコーヒーゼリーとプリンを使ったんだが、サーシャもチビとベビにも大好評だった。口の周りをチョコレートでベタベタにして、二個目を食べていたからね。
城に飛び、陛下に皇帝の提案を伝えると、難しそうな顔をし、宰相を呼びに行かせていた。これから頭脳労働になるだろうから、砂糖たっぷりのチョコレートを渡しておいたよ。
その足で皇帝の別荘に向かった。メダリオン陛下には伝えたので決まったら報告しに来ると言っておいた。
エンゲルベルト皇帝が別荘に来いと何度も誘っていた理由が分かった。二歳の皇女と生まれて三か月の皇太子を見せたかったみたいだ。皇女様は人見知りもなく、俺にも抱っこさせてくれたんだ。皇太子の手なんて小さくてメチャクチャかわいかったからね。皇后も気は強そうだったけど綺麗な方だったよ。チョコレートは甘いのと苦めな二種類のモノを渡しておいた。何か皇女と皇太子にプレゼントを考えないとね。
別荘にはちょくちょく足を運んでいるそうで、だから誰も反対しなかったんだろうね。グラン帝国の中で一番安全な場所に別荘を建てたとニコニコしながら皇女を抱っこしていたよ。以前と皇帝のイメージが違い過ぎる。
無理すれば日帰りもできそうな距離なので、馬車でうちの屋敷に寄ってもらうように伝えると、皇帝とボルトマン将軍が、子供のようにキラキラした目になり喜んでいたのはここだけの話だ。
呼んだ目的だが、一番は馬車の改造だ。リーフ式サスペンションとダンパーを取り付けておいた。何台も取り付けた実績があり、慣れているから作業は直ぐに終わったよ。
二つ目は、ここに皇帝が来たいと言っていたから招待したんだ。こんな機会はそうそうない、別に隠すものもないから好きなだけ見てと言ったら、すごく喜んでくれたよ。
うちの町は突然のグラン帝国皇帝の訪問で騒ぎになってしまった。警備のためにお父様とカイル兄さんが慌てており、俺に文句が言いたそうな顔をしていたな。そういえば、連れて来るって言い忘れていた、ごめんなさい。
結局、皇帝たちは二日間滞在し、見るものすべてに驚いていたな。特に農業法人に興味を示していた。ワインやグラッパも気に入ったと言うので、マシュー商会に案内した。纏まった量を購入したいと交渉しているようだったが、きっと持ち帰って貴族との交渉に使うのではないだろうか。
完成した馬車の乗り心地に満足したようで、また何かで礼はさせてもらうと、購入した商品と共に嬉しそうに帰って行った。
他より高い建物が見えてきたが、何に使う施設だろうか? 聞く前に分かった。翼竜やワイバーンの宿舎だ。翼竜は地面からは飛び立てないようで、器用に嘴と翼にあるかぎ爪を使って搭を昇っている。
「興味があるようだな! 以前は山にあったんだが、情報は時間が重要だから、近くに造らせた!」
「すごいですね! 何匹くらいいるんですか?」
「教えられん、軍事機密だぞ!」
皇帝は笑いながら言うと、また、チビとベビを物欲しそうに見続けている。気付いていそうだな。家族なので譲ってはあげないよ。
ワイバーンに乗れば日帰りできそうだが、皇帝は飛べないんだろうな。竜騎士とか特別な名称で呼んでいたからね。
〈アルママ、このおじちゃんずっと見て来るダォ!〉〈そうなノ! 止めて欲しいノ!〉
チビとベビが俺を見つめて念話してきた。被害を出す前に止めてもらった方がいいな。
「皇帝陛下、この子たちを見るのはその辺で止めてもらえませんか、嫌がっていますから」
「それはすまない。ところで、その子たちの首に白銀色の首輪が装着されているが、どういう魔道具なんだ! 気になって仕方がない!」
皇帝が訊いてきたが、既に自分の答えは持っていそうだ。
「アルフレッド公爵、龍が二匹目撃されておりますが、どこにも飛び立っていないのです! あんなに大きな龍をどこに隠しておられるのですか?」
ボルトマン将軍が真顔で聞いて来た。皇帝は既に気が付いているようで、ボルトマン将軍に目を向け、また、チビとベビの首の魔道具に視線を戻した。
皇帝の口元は笑いを堪えているように見えて仕方がない。すまないと言いつつ、今度は魔道具を見るんだな。そろそろ止めてくれないとチビとベビの機嫌が悪くなるんだけど。
「教えられませんよ、軍事機密ですから!」
俺が皇帝の真似をしたのが笑いのツボにでも嵌ったのだろう。皇帝が大声で笑い出した。ボルトマン将軍は何がおかしいのかという目で皇帝を見ている。
「ボルトマン将軍、よく見ろ、お前の目の前にいるではないか!」
やっぱりな、皇帝はチビとベビの正体に気が付いている。ボルトマン将軍はチビとベビを見ているが、皇帝が言った言葉を理解できないでいるようだ。人間は自分の理解を超えることを想像することができないんだろうな。皇帝は笑い続けており、きっとツボにはまっているのだろう。だが、チビとベビの機嫌を損ねていることには気が付いていない。
〈このおじちゃん、うるさいダォ!〉〈ベビも限界なノ!〉
皇帝はチビとベビに嫌われてしまったな。仕方ない。馬車から降りるしかなさそうだ。どうせ、今回の潜入調査は失敗したし、龍だとバレているようだから先に飛んで行こう。本来の姿で貰った領地を見たら帰ることにするかな。
ホバリングで飛んで離れてから龍に戻ればいいだろう。
「申し訳ないですが、この子たちが帰りたがっていますから失礼します! また、機会があったら来させてもらいます!」
皇帝が笑うのを止め、真顔になった。自分のミスに気が付いたようだ。焦っているのがよく分かる。
「私が悪かった。これ以上、見つめないし笑わないから、帰ると言わないで付き合ってくれ! まだ話が終わっていないんだ! 会わせたい……」
会わせたい? 途中で止めてしまったが、誰に合わせたいんだろうか、気になる。
〈チビ、ベビ、謝っているから許してあげて! 我慢できる?〉
〈もう見られるの嫌ダォ!〉〈ママが言っても見るの止めなかったから嫌なノ!〉
これはダメなやつだ、魔力鑑定眼で見るふたりの姿が不安定になってきた。これ以上一緒にいるとふたりが爆発しそうだ。人化はコントロールが繊細だから、馬車の中で元の大きさにでも戻ってしまったら、チビとベビ以外は圧死する未来しか見えない。
〈分かった。帰ろう〉
皇帝陛下は許してくれるのを期待しているが、その考えは甘いし遅すぎた。俺は理由を説明し無理だと伝える。
ボルトマン将軍が俺の発言で、やっと目の前の子供が龍であることを認識したようだ。目が飛び出るのではないかと思えるほど大きく見開き、「この子供が大きな龍なのですか!?」と、驚いている。
皇帝陛下は少しおろおろしており、いつもの威厳が感じられない。
「初めてお前に勝った気がして浮かれてしまった。ボルトマン将軍も目の前の龍に気が付かないのもおかしくてだな。本当にすまなかった。私の計画を伝えれていないのだ。計画だけ話す時間をくれないか?」
いつもクールな皇帝の姿はどこにもなく、必死になんとかしようとしている。ふたりだけ先に返せればいいが、一緒にいることを条件にグラン帝国に来たからな。バレたらサーシャは許してくれないだろう。そうなると、今後の活動に支障が出てしまう
〈チビ、ベビ、このおじちゃんがお話したいんだって! 短く話してもらうから、もう少しだけ待ってくれる? どうしても無理なら馬車から降りていいから〉
ふたりはお互いの顔を見合わせると渋々了解してくれた。
皇帝の話はとんでもない内容だった。領地を国境ぎりぎりまで広げ、俺の領地と一緒にしたいそうだ。まさかそんなことを考えていたなんて、そんなの普通の人は思いつかないよ。
最初は土地を俺に渡すことを検討していたが、費用がかかり過ぎたため、税金は納めて欲しいそうだ。だが、管理や法は俺の領地と同じものを適用してくれて構わないと言ってきた。
俺の領地と同じ法を適用とか可能なのだろうか? 関税はどのタイミングでかければいいのだろうか? 国境だが線だけにして検問は行わない。これはヨーロッパにはよくある光景だ。職員への支払いは誰がどうやるのか? 土地の管理はどうするんだ?
人や物の移動が自由に動かすなら、欧州連合の経済統合体みたいに考えればいいのかな? 皇帝は当初、住民ごと俺に譲渡しようと計画しており、揉めないように身元も調べていた。
これは簡単な話ではないぞ、それに勝手に判断なんてできない。陛下に報告して判断を仰がなければならない案件だ。
簡単な街の計画図を渡された。その中には、皇帝とボルトマン将軍、俺の別荘が並んで表記されていた。流石に侵略する気はないようだ。
他にも色々な話題が出てきた。邪神教との戦いで異神国パズズに対して、メダリオン王国、グラン帝国、魔法大国アスラダは共闘した、それにより三国の関係が強固になっていた。
それで、魔法のスクロールが大量にグラン帝国に入っていたんだな。どうやら、魔法大国アスラダも魔蟻のスタンピード、岩風竜、病原菌テロで大打撃を受け、物資やお金が必要だったみたいだ。
グラン帝国からは石炭と木材を大量に輸出していた。木材は今回の移転工事で出たやつじゃないかな。うちを通過する物資が増え、通行税が増えているのは報告を受けている。
魔道具は賢者様が考案したモノで、魔法大国アスラダから購入したと自慢げに聞かされた。
グラン帝国内の邪神教の調査は、このまま皇帝に任せておけばいい。優先事項は皇帝の申し出をどのように取り扱うか陛下に相談することだろう。それが終われば、魔法大国アスラダにある賢者の資料を確認しに行くことにしよう。もちろん、邪神教の施設調査も合わせて行うつもりでいる。
皇帝とボルトマン将軍は残念そうにしていたが、別れることにした。このまま別荘に滞在するから、会いに来て欲しい、今回の償いはさせてもらうと申し立ててきた。
一度、領地にチビとベビを連れ帰り、気持ちを落ち着かせた。空腹だったことも原因のひとつだったようで、ハンバーグやステーキを食べてやっと落ち着いてくれた。龍の巨体を維持するためにはエネルギーの摂取は必要だよね。ちょっとしか食べていないから気が立っていたんだろうな。皇帝に悪いことをしたかもしれないな。
デザートは、カカオ豆とフルーツからチョコレートパフェを作った。アイスクリームの代わりにコーヒーゼリーとプリンを使ったんだが、サーシャもチビとベビにも大好評だった。口の周りをチョコレートでベタベタにして、二個目を食べていたからね。
城に飛び、陛下に皇帝の提案を伝えると、難しそうな顔をし、宰相を呼びに行かせていた。これから頭脳労働になるだろうから、砂糖たっぷりのチョコレートを渡しておいたよ。
その足で皇帝の別荘に向かった。メダリオン陛下には伝えたので決まったら報告しに来ると言っておいた。
エンゲルベルト皇帝が別荘に来いと何度も誘っていた理由が分かった。二歳の皇女と生まれて三か月の皇太子を見せたかったみたいだ。皇女様は人見知りもなく、俺にも抱っこさせてくれたんだ。皇太子の手なんて小さくてメチャクチャかわいかったからね。皇后も気は強そうだったけど綺麗な方だったよ。チョコレートは甘いのと苦めな二種類のモノを渡しておいた。何か皇女と皇太子にプレゼントを考えないとね。
別荘にはちょくちょく足を運んでいるそうで、だから誰も反対しなかったんだろうね。グラン帝国の中で一番安全な場所に別荘を建てたとニコニコしながら皇女を抱っこしていたよ。以前と皇帝のイメージが違い過ぎる。
無理すれば日帰りもできそうな距離なので、馬車でうちの屋敷に寄ってもらうように伝えると、皇帝とボルトマン将軍が、子供のようにキラキラした目になり喜んでいたのはここだけの話だ。
呼んだ目的だが、一番は馬車の改造だ。リーフ式サスペンションとダンパーを取り付けておいた。何台も取り付けた実績があり、慣れているから作業は直ぐに終わったよ。
二つ目は、ここに皇帝が来たいと言っていたから招待したんだ。こんな機会はそうそうない、別に隠すものもないから好きなだけ見てと言ったら、すごく喜んでくれたよ。
うちの町は突然のグラン帝国皇帝の訪問で騒ぎになってしまった。警備のためにお父様とカイル兄さんが慌てており、俺に文句が言いたそうな顔をしていたな。そういえば、連れて来るって言い忘れていた、ごめんなさい。
結局、皇帝たちは二日間滞在し、見るものすべてに驚いていたな。特に農業法人に興味を示していた。ワインやグラッパも気に入ったと言うので、マシュー商会に案内した。纏まった量を購入したいと交渉しているようだったが、きっと持ち帰って貴族との交渉に使うのではないだろうか。
完成した馬車の乗り心地に満足したようで、また何かで礼はさせてもらうと、購入した商品と共に嬉しそうに帰って行った。
1
お気に入りに追加
7,572
あなたにおすすめの小説
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。