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272.2ケンタウロスの村2(ホルスとメノス)✔
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この症状には原因となる何かがある筈だ。問診から始めよう。
「いつ頃立てなくなったの? 五日前とか?」
「なんで分かったんだ! 五日前に魔蜂がメノスを刺したんだ。高熱が出たのでエルフに高い金を支払い癒しの魔法をかけてもらった。熱は下がって命は助かったんだが、脚に力が入らない状態が続いている!」
「ホルス兄さん、もうこれ以上ワタシにお金を使うことは止めて! 知っているでしょ! 魔蜂に刺されて立て無くなれば、どうなるか! ワタシも長くは生きれないわ!!」
メノスさんがかなり投げやりになっている。病は気からではないが気力がなくなると、一気に弱るからな。
「メノス、何を言い出すんだ! アルフレッドが治してくれる。ダメでも兄ちゃんが龍の所に行って、エリクシアを手に入れてきてやるから心配するな!」
ホルスさんが寄り添い、必死に宥めている。ここでエリクシアが出て来るなんて。ケンタウロスも勇者の仲間で、ホルスさんはその末裔なんだろうか?
「龍の所なんて戻って来るまで何十日もかかるはずだから、ワタシがそれまで生きているとは思えない。ワタシのせいで兄さんまで怪我したら嫌だから止めて!」
ホルスさんもメノスさんも話が重すぎる。馬は立てなくなると長くは生きられないと聞いたことがある。やはりケンタウロスも同じなのだろう。これは早くなんとかしてあげたい。
魔蜂に刺されたことが原因なのは間違いない。だけど、足が動かない理由が分かっていない。癒しの魔法のイメージが定まらない。漠然とし過ぎているが、足が動くようにイメージし、癒しの魔法を行使してみる。
この村も魔力が濃いから、取り込んで利用できれば神聖力の消費を抑えられるだろう。
俺は、座り込んでいるメノスさんの体の上に両手を掲げる。周囲の魔力を取り込みつつ、腹、胸、頭に意識を集中していく。魔力を濃縮しながら体の中で循環させる。
メノスさんとホルスさんが分かりやすいように、癒しの魔法は効果のありそうな、それらしい呪文を唱えよう。
「聖なる力よ。ここに集まりてメノスさんの脚を動くように治して欲しい! ヒール!」
俺の両手から、うっすらと発光した温かい魔力が溢れ出し、メノスさんの体に降り注ぐ。降り注いだ魔力はジワジワとメノスさんの体に吸い込まれていく。……十分ほど続けた。
「アルフレッド! あんなに長い間、癒しの魔法をかけて疲れが出ないのか? エルフは三分ほどの癒しの魔法でも、ゼエゼエと息が上がっていた! それに癒しの魔法はあんなに光ったりしなかったぞ!」
「大丈夫! 疲れは出てないよ。効果があればいいけど! メノスさん、動かせそう?」
メノスさんが脚を動かそうとしているが、思うようにいかないみたいだ。生まれたての小鹿のように体がプルプルと震えていて立ち上がることはできなかった。
「アルフレッドさんの癒しの魔法でかなり楽になったわ! でも足は思うように動かせないみたい」
メノスさんとホルスさんが、落胆しているように見える。一度の癒しの魔法では効果が出ないのかもしれない。もう一度行使する。
「聖なる力よ。ここに集まりてメノスさんの脚を動くように治して欲しい! ヒール!」
俺の両手から、うっすらと発光した温かい魔力が溢れ出した。さっきよりも魔力を濃縮させてみたがどうだろう。メノスさんの体に降り注ぐと魔力はジワジワと体に吸い込まれていく。今度は倍の二十分程続ける。少し神聖力を消耗してしまったか。
「アルフレッド! 無理し過ぎではないのか? 倒れられても困るぞ!」
ホルスさんが心配そうに声をかけてくる。
「メノスさん、脚を動かしてみて!」
メノスさんが脚を動かそうとする。さっきよりは震えが小さく、改善しているように見える。何度か癒しの魔法をかけ続ければ動かせるようになりそうだ。
「ダメ! 立てないわ! 体の痛みはアルフレッドさんの癒しの魔法で楽になったわ。だけどやっぱりダメ! ダメなの! 脚が思い通りに動いてくれないの!」
メノスさんが少しヒステリックになっている。
「アルフレッド、ありがとう! 無理を言った。もう十分だ!」
ホルスさんとメノスさんが気落ちしているのが伝わって来る。
「何回か癒しの魔法をかけ続ければ改善するかもしれない!」
「いや、もういい! エリクシアをオレ様はエリクシアを手に入れに龍の所に行く!」
ホルスさんの顔が険しい。
「いつ頃立てなくなったの? 五日前とか?」
「なんで分かったんだ! 五日前に魔蜂がメノスを刺したんだ。高熱が出たのでエルフに高い金を支払い癒しの魔法をかけてもらった。熱は下がって命は助かったんだが、脚に力が入らない状態が続いている!」
「ホルス兄さん、もうこれ以上ワタシにお金を使うことは止めて! 知っているでしょ! 魔蜂に刺されて立て無くなれば、どうなるか! ワタシも長くは生きれないわ!!」
メノスさんがかなり投げやりになっている。病は気からではないが気力がなくなると、一気に弱るからな。
「メノス、何を言い出すんだ! アルフレッドが治してくれる。ダメでも兄ちゃんが龍の所に行って、エリクシアを手に入れてきてやるから心配するな!」
ホルスさんが寄り添い、必死に宥めている。ここでエリクシアが出て来るなんて。ケンタウロスも勇者の仲間で、ホルスさんはその末裔なんだろうか?
「龍の所なんて戻って来るまで何十日もかかるはずだから、ワタシがそれまで生きているとは思えない。ワタシのせいで兄さんまで怪我したら嫌だから止めて!」
ホルスさんもメノスさんも話が重すぎる。馬は立てなくなると長くは生きられないと聞いたことがある。やはりケンタウロスも同じなのだろう。これは早くなんとかしてあげたい。
魔蜂に刺されたことが原因なのは間違いない。だけど、足が動かない理由が分かっていない。癒しの魔法のイメージが定まらない。漠然とし過ぎているが、足が動くようにイメージし、癒しの魔法を行使してみる。
この村も魔力が濃いから、取り込んで利用できれば神聖力の消費を抑えられるだろう。
俺は、座り込んでいるメノスさんの体の上に両手を掲げる。周囲の魔力を取り込みつつ、腹、胸、頭に意識を集中していく。魔力を濃縮しながら体の中で循環させる。
メノスさんとホルスさんが分かりやすいように、癒しの魔法は効果のありそうな、それらしい呪文を唱えよう。
「聖なる力よ。ここに集まりてメノスさんの脚を動くように治して欲しい! ヒール!」
俺の両手から、うっすらと発光した温かい魔力が溢れ出し、メノスさんの体に降り注ぐ。降り注いだ魔力はジワジワとメノスさんの体に吸い込まれていく。……十分ほど続けた。
「アルフレッド! あんなに長い間、癒しの魔法をかけて疲れが出ないのか? エルフは三分ほどの癒しの魔法でも、ゼエゼエと息が上がっていた! それに癒しの魔法はあんなに光ったりしなかったぞ!」
「大丈夫! 疲れは出てないよ。効果があればいいけど! メノスさん、動かせそう?」
メノスさんが脚を動かそうとしているが、思うようにいかないみたいだ。生まれたての小鹿のように体がプルプルと震えていて立ち上がることはできなかった。
「アルフレッドさんの癒しの魔法でかなり楽になったわ! でも足は思うように動かせないみたい」
メノスさんとホルスさんが、落胆しているように見える。一度の癒しの魔法では効果が出ないのかもしれない。もう一度行使する。
「聖なる力よ。ここに集まりてメノスさんの脚を動くように治して欲しい! ヒール!」
俺の両手から、うっすらと発光した温かい魔力が溢れ出した。さっきよりも魔力を濃縮させてみたがどうだろう。メノスさんの体に降り注ぐと魔力はジワジワと体に吸い込まれていく。今度は倍の二十分程続ける。少し神聖力を消耗してしまったか。
「アルフレッド! 無理し過ぎではないのか? 倒れられても困るぞ!」
ホルスさんが心配そうに声をかけてくる。
「メノスさん、脚を動かしてみて!」
メノスさんが脚を動かそうとする。さっきよりは震えが小さく、改善しているように見える。何度か癒しの魔法をかけ続ければ動かせるようになりそうだ。
「ダメ! 立てないわ! 体の痛みはアルフレッドさんの癒しの魔法で楽になったわ。だけどやっぱりダメ! ダメなの! 脚が思い通りに動いてくれないの!」
メノスさんが少しヒステリックになっている。
「アルフレッド、ありがとう! 無理を言った。もう十分だ!」
ホルスさんとメノスさんが気落ちしているのが伝わって来る。
「何回か癒しの魔法をかけ続ければ改善するかもしれない!」
「いや、もういい! エリクシアをオレ様はエリクシアを手に入れに龍の所に行く!」
ホルスさんの顔が険しい。
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