231 / 415
連載
261.3獣人の町3(お客さんを連れて来たにゃ!)✔
しおりを挟む
「待たせたにゃ! ミューが美味しいお肉を食べれるところに案内するにゃ!」
「高いお店じゃないよね?」
「心配いらないにゃ! 安くて美味しいにゃ!」
猫耳娘のミューに案内されてやって来たのは、メインの通りから少し入った場所にある、流行っていなさそうな店だった。まず、立地が良くない。店の外観も綺麗とは言えない大丈夫だろうか?
美味しい肉料理と言っていたが、どんなお肉を食べさせてくれるのだろうか? 店に入ると五組ほどのテーブルとイスが置かれており、そのひとつのテーブルに猫獣人のふたりが座っていた。そのテーブルの上には肉が山盛りにされた大きな皿が置いてある。それを手掴みでふたりの猫獣人が食べている。テーブルの上には酒と思われるコップがふたつあったが、調味料などは置かれていなかった。肉には味がつけてあるのだろう。
なんの肉かは不明だが、焼いた肉をそぎ落としソースがかけられている。焼き過ぎているように見えるのだが本当に美味しいのだろうか? まずはテーブルに座る。メニューはどこだろうか? テーブルの上には無いし、壁にも貼られてはいない。
「お客さんを連れて来たにゃ! 今日はおごってもらえるからお肉五人前にゃ!」
案内したよ? 料理の名前が分からないとかやっぱり怪しいだろ。
「はーいにゃ! 五人前にゃ! あら、ミュー! エルフと人間、それに龍の子供? 珍しいにゃ!」
肉が山盛りにされた大きな皿を猫耳の女性が持って現れた。薄茶色の毛色や顔の輪郭がミューに似ているが親子だろうか?
「宿のお客にゃ。この人間がアルフレッドで、ミューのことをかわいいと言ってくれたにゃ!」
「そうにゃそうにゃ! それは良かったにゃ! うちのミューはかわいいからにゃ! 料理も美味しいからたくさん食べるにゃ! いけないにゃ、長話すると肉が焦げちゃうにゃ!」
ミューによく似た猫耳の女性は早口で言い終わると厨房に戻って行った。うん、確かに焦げ臭い。さっきまで気がつかなかったが、他にもミューによく似た猫耳の子供が店の端っこの椅子に座っていた。弟妹だろうか? ふたりがあまりにも早口だったため、会話に参加するタイミングを逃してしまった。
「さっきのは、ミューのお母さんなの?」
「そうにゃ! やっぱり分かるにゃ!」
「そっくりだから、誰が見ても分かると思うよ! お肉が大盛りだね」
目の前には、大盛りの肉の皿が五つ置かれている。出てくる速さからしても既に焼いてあったのではないだろうか。
「ミューはいっぱい食べるからこれくらい平気にゃ! アルフレッドもミルトも遠慮せずに食べるにゃ! この子たちは余裕で食べそうだにゃ!」
ミューは手で肉を掴むと口に頬張る。何となく無理に食べているように見えるのは気のせいだろうか?
「やっぱり母ちゃんの焼いた肉は……美味しいにゃ」
なんだかミューの顔が少し悲しそうに見えた。それに言葉と違って美味しい顔にはとても見えない。
〈驚いているようですが、この町ではよくあることですよ。子供が働き先でお客を捉まえて自分の親族の店に連れて行くんです!〉
俺はミューを不思議そうに見ていたようで、ミルトが念話で教えてくれた。そんなに表情が顔に出ていたのだろうか?
〈ミルトはこれが分かっていたから、俺が誘われても心配しなかったんだ!〉
〈ええ! 猫獣人は子だくさんですから。ここでお店をやっているだけでも、ミューは幸せな家に生まれたと思いますよ!〉
「ふたりで見つめ合っていないでいっぱいお肉を食べるにゃ!」
見つめ合って念話していたからだろう、ミューがお肉を勧めてきた。俺もミューのようにお肉を掴んで口に放り込む。
鶏の肉のような違うような。さっぱりしているがなんの肉だろうか? いや、それ以前に調理方法というか焼き方が酷過ぎる。お肉がパサパサでせっかくの旨味が損なわれている。どうやって焼いたらこんなにパサパサになるんだろうか?お肉にかかっているソースも薄味過ぎないか?
「ミュー、これは鶏肉なの?」
「違うにゃ。近くの川で獲れるにゃ。大きな口で油断したらこっちが食べられちゃうにゃ。ミューの父ちゃんも去年食べられたにゃ! それからお店も生活も大変になったにゃ!」
ミューは父親の事を想いだしたのだろう、悲しげな表情になってしまった。
「もしかして、それまでこのお店はお父さんが料理していた?」
「よく分かったにゃ! アルフレッドはミューの父ちゃんの料理を食べに来たことがあるにゃ?」
ミューが少し明るさを取り戻してきたかな。猫獣人だけに表情がコロコロと変わるな。
「ないよ。ミューはお父さんとお母さんのどっちの作ったお肉が好き?」
「……父ちゃんだにゃ! 父ちゃんが食べられちゃうまでは母ちゃんがお肉を運んでいたにゃ! 母ちゃんがお肉を焼くようになって、お客がほとんど来なくなったにゃ……だからミューがお客を連れてくるにゃ! 父ちゃんに焼き方を聞いておけばよかったにゃ!」
そういうことか。だから火加減が滅茶苦茶なんだな。ベビとチビからも〈パサパサなのノ〉〈アルママの焼くお肉がいいダォ〉と辛口な念話が届いている。どうやって焼いているんだ?
「ちょっと、お母さんの料理を見てもいい?」
「いいにゃ! アルフレッドは料理できるにゃ?」
「料理は好きだよ!」
「このままだとお店がつぶれるにゃ! 母ちゃんに美味しく焼けるように教えて欲しいにゃ!」
「できる範囲で教えるよ」
「本当にゃ!」
ミューの表情がパーッと明るくなった。
「高いお店じゃないよね?」
「心配いらないにゃ! 安くて美味しいにゃ!」
猫耳娘のミューに案内されてやって来たのは、メインの通りから少し入った場所にある、流行っていなさそうな店だった。まず、立地が良くない。店の外観も綺麗とは言えない大丈夫だろうか?
美味しい肉料理と言っていたが、どんなお肉を食べさせてくれるのだろうか? 店に入ると五組ほどのテーブルとイスが置かれており、そのひとつのテーブルに猫獣人のふたりが座っていた。そのテーブルの上には肉が山盛りにされた大きな皿が置いてある。それを手掴みでふたりの猫獣人が食べている。テーブルの上には酒と思われるコップがふたつあったが、調味料などは置かれていなかった。肉には味がつけてあるのだろう。
なんの肉かは不明だが、焼いた肉をそぎ落としソースがかけられている。焼き過ぎているように見えるのだが本当に美味しいのだろうか? まずはテーブルに座る。メニューはどこだろうか? テーブルの上には無いし、壁にも貼られてはいない。
「お客さんを連れて来たにゃ! 今日はおごってもらえるからお肉五人前にゃ!」
案内したよ? 料理の名前が分からないとかやっぱり怪しいだろ。
「はーいにゃ! 五人前にゃ! あら、ミュー! エルフと人間、それに龍の子供? 珍しいにゃ!」
肉が山盛りにされた大きな皿を猫耳の女性が持って現れた。薄茶色の毛色や顔の輪郭がミューに似ているが親子だろうか?
「宿のお客にゃ。この人間がアルフレッドで、ミューのことをかわいいと言ってくれたにゃ!」
「そうにゃそうにゃ! それは良かったにゃ! うちのミューはかわいいからにゃ! 料理も美味しいからたくさん食べるにゃ! いけないにゃ、長話すると肉が焦げちゃうにゃ!」
ミューによく似た猫耳の女性は早口で言い終わると厨房に戻って行った。うん、確かに焦げ臭い。さっきまで気がつかなかったが、他にもミューによく似た猫耳の子供が店の端っこの椅子に座っていた。弟妹だろうか? ふたりがあまりにも早口だったため、会話に参加するタイミングを逃してしまった。
「さっきのは、ミューのお母さんなの?」
「そうにゃ! やっぱり分かるにゃ!」
「そっくりだから、誰が見ても分かると思うよ! お肉が大盛りだね」
目の前には、大盛りの肉の皿が五つ置かれている。出てくる速さからしても既に焼いてあったのではないだろうか。
「ミューはいっぱい食べるからこれくらい平気にゃ! アルフレッドもミルトも遠慮せずに食べるにゃ! この子たちは余裕で食べそうだにゃ!」
ミューは手で肉を掴むと口に頬張る。何となく無理に食べているように見えるのは気のせいだろうか?
「やっぱり母ちゃんの焼いた肉は……美味しいにゃ」
なんだかミューの顔が少し悲しそうに見えた。それに言葉と違って美味しい顔にはとても見えない。
〈驚いているようですが、この町ではよくあることですよ。子供が働き先でお客を捉まえて自分の親族の店に連れて行くんです!〉
俺はミューを不思議そうに見ていたようで、ミルトが念話で教えてくれた。そんなに表情が顔に出ていたのだろうか?
〈ミルトはこれが分かっていたから、俺が誘われても心配しなかったんだ!〉
〈ええ! 猫獣人は子だくさんですから。ここでお店をやっているだけでも、ミューは幸せな家に生まれたと思いますよ!〉
「ふたりで見つめ合っていないでいっぱいお肉を食べるにゃ!」
見つめ合って念話していたからだろう、ミューがお肉を勧めてきた。俺もミューのようにお肉を掴んで口に放り込む。
鶏の肉のような違うような。さっぱりしているがなんの肉だろうか? いや、それ以前に調理方法というか焼き方が酷過ぎる。お肉がパサパサでせっかくの旨味が損なわれている。どうやって焼いたらこんなにパサパサになるんだろうか?お肉にかかっているソースも薄味過ぎないか?
「ミュー、これは鶏肉なの?」
「違うにゃ。近くの川で獲れるにゃ。大きな口で油断したらこっちが食べられちゃうにゃ。ミューの父ちゃんも去年食べられたにゃ! それからお店も生活も大変になったにゃ!」
ミューは父親の事を想いだしたのだろう、悲しげな表情になってしまった。
「もしかして、それまでこのお店はお父さんが料理していた?」
「よく分かったにゃ! アルフレッドはミューの父ちゃんの料理を食べに来たことがあるにゃ?」
ミューが少し明るさを取り戻してきたかな。猫獣人だけに表情がコロコロと変わるな。
「ないよ。ミューはお父さんとお母さんのどっちの作ったお肉が好き?」
「……父ちゃんだにゃ! 父ちゃんが食べられちゃうまでは母ちゃんがお肉を運んでいたにゃ! 母ちゃんがお肉を焼くようになって、お客がほとんど来なくなったにゃ……だからミューがお客を連れてくるにゃ! 父ちゃんに焼き方を聞いておけばよかったにゃ!」
そういうことか。だから火加減が滅茶苦茶なんだな。ベビとチビからも〈パサパサなのノ〉〈アルママの焼くお肉がいいダォ〉と辛口な念話が届いている。どうやって焼いているんだ?
「ちょっと、お母さんの料理を見てもいい?」
「いいにゃ! アルフレッドは料理できるにゃ?」
「料理は好きだよ!」
「このままだとお店がつぶれるにゃ! 母ちゃんに美味しく焼けるように教えて欲しいにゃ!」
「できる範囲で教えるよ」
「本当にゃ!」
ミューの表情がパーッと明るくなった。
6
お気に入りに追加
7,572
あなたにおすすめの小説
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。