異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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261.3獣人の町3(お客さんを連れて来たにゃ!)✔

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「待たせたにゃ! ミューが美味しいお肉を食べれるところに案内するにゃ!」

「高いお店じゃないよね?」

「心配いらないにゃ! 安くて美味しいにゃ!」

 猫耳娘のミューに案内されてやって来たのは、メインの通りから少し入った場所にある、流行っていなさそうな店だった。まず、立地が良くない。店の外観も綺麗とは言えない大丈夫だろうか? 

 美味しい肉料理と言っていたが、どんなお肉を食べさせてくれるのだろうか? 店に入ると五組ほどのテーブルとイスが置かれており、そのひとつのテーブルに猫獣人のふたりが座っていた。そのテーブルの上には肉が山盛りにされた大きな皿が置いてある。それを手掴みでふたりの猫獣人が食べている。テーブルの上には酒と思われるコップがふたつあったが、調味料などは置かれていなかった。肉には味がつけてあるのだろう。

 なんの肉かは不明だが、焼いた肉をそぎ落としソースがかけられている。焼き過ぎているように見えるのだが本当に美味しいのだろうか? まずはテーブルに座る。メニューはどこだろうか? テーブルの上には無いし、壁にも貼られてはいない。

「お客さんを連れて来たにゃ! 今日はおごってもらえるからお肉五人前にゃ!」

 案内したよ? 料理の名前が分からないとかやっぱり怪しいだろ。

「はーいにゃ! 五人前にゃ! あら、ミュー! エルフと人間、それに龍の子供? 珍しいにゃ!」

 肉が山盛りにされた大きな皿を猫耳の女性が持って現れた。薄茶色の毛色や顔の輪郭がミューに似ているが親子だろうか?

「宿のお客にゃ。この人間がアルフレッドで、ミューのことをかわいいと言ってくれたにゃ!」

「そうにゃそうにゃ! それは良かったにゃ! うちのミューはかわいいからにゃ! 料理も美味しいからたくさん食べるにゃ! いけないにゃ、長話すると肉が焦げちゃうにゃ!」

 ミューによく似た猫耳の女性は早口で言い終わると厨房に戻って行った。うん、確かに焦げ臭い。さっきまで気がつかなかったが、他にもミューによく似た猫耳の子供が店の端っこの椅子に座っていた。弟妹だろうか? ふたりがあまりにも早口だったため、会話に参加するタイミングを逃してしまった。

「さっきのは、ミューのお母さんなの?」

「そうにゃ! やっぱり分かるにゃ!」

「そっくりだから、誰が見ても分かると思うよ! お肉が大盛りだね」

 目の前には、大盛りの肉の皿が五つ置かれている。出てくる速さからしても既に焼いてあったのではないだろうか。

「ミューはいっぱい食べるからこれくらい平気にゃ! アルフレッドもミルトも遠慮せずに食べるにゃ! この子たちは余裕で食べそうだにゃ!」

 ミューは手で肉を掴むと口に頬張る。何となく無理に食べているように見えるのは気のせいだろうか?

「やっぱり母ちゃんの焼いた肉は……美味しいにゃ」

 なんだかミューの顔が少し悲しそうに見えた。それに言葉と違って美味しい顔にはとても見えない。   

〈驚いているようですが、この町ではよくあることですよ。子供が働き先でお客を捉まえて自分の親族の店に連れて行くんです!〉

 俺はミューを不思議そうに見ていたようで、ミルトが念話で教えてくれた。そんなに表情が顔に出ていたのだろうか?

〈ミルトはこれが分かっていたから、俺が誘われても心配しなかったんだ!〉

〈ええ! 猫獣人は子だくさんですから。ここでお店をやっているだけでも、ミューは幸せな家に生まれたと思いますよ!〉

「ふたりで見つめ合っていないでいっぱいお肉を食べるにゃ!」

 見つめ合って念話していたからだろう、ミューがお肉を勧めてきた。俺もミューのようにお肉を掴んで口に放り込む。

 鶏の肉のような違うような。さっぱりしているがなんの肉だろうか? いや、それ以前に調理方法というか焼き方が酷過ぎる。お肉がパサパサでせっかくの旨味が損なわれている。どうやって焼いたらこんなにパサパサになるんだろうか?お肉にかかっているソースも薄味過ぎないか?

「ミュー、これは鶏肉なの?」

「違うにゃ。近くの川で獲れるにゃ。大きな口で油断したらこっちが食べられちゃうにゃ。ミューの父ちゃんも去年食べられたにゃ! それからお店も生活も大変になったにゃ!」

 ミューは父親の事を想いだしたのだろう、悲しげな表情になってしまった。

「もしかして、それまでこのお店はお父さんが料理していた?」

「よく分かったにゃ! アルフレッドはミューの父ちゃんの料理を食べに来たことがあるにゃ?」

 ミューが少し明るさを取り戻してきたかな。猫獣人だけに表情がコロコロと変わるな。

「ないよ。ミューはお父さんとお母さんのどっちの作ったお肉が好き?」

「……父ちゃんだにゃ! 父ちゃんが食べられちゃうまでは母ちゃんがお肉を運んでいたにゃ! 母ちゃんがお肉を焼くようになって、お客がほとんど来なくなったにゃ……だからミューがお客を連れてくるにゃ! 父ちゃんに焼き方を聞いておけばよかったにゃ!」

 そういうことか。だから火加減が滅茶苦茶なんだな。ベビとチビからも〈パサパサなのノ〉〈アルママの焼くお肉がいいダォ〉と辛口な念話が届いている。どうやって焼いているんだ? 

「ちょっと、お母さんの料理を見てもいい?」

「いいにゃ! アルフレッドは料理できるにゃ?」

「料理は好きだよ!」

「このままだとお店がつぶれるにゃ! 母ちゃんに美味しく焼けるように教えて欲しいにゃ!」

「できる範囲で教えるよ」

「本当にゃ!」

 ミューの表情がパーッと明るくなった。
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