異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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261.2獣人の町2(猫耳娘)✔

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 俺達が町を取り囲む柵に到着する頃には、先行したふたりのエグザイルエルフが嬉しそうに待っていた。ミルト達は門番の狼に見える獣人と二言三言会話をすると、俺たちは町の中に入ることができた。

 待っていたエグザイルエルフに案内されて宿屋に向かう。見た目は少し大きな二階建ての一軒家というところだろうか。一階の中央にある入り口から宿屋に入ると、右側が固められた土間で食事ができるようになっている。テーブルと椅子が八組ほど置いてあり、左側が宿泊の受付、その奥が厨房になっているようだ。また時間が早いためか俺たち以外に客の姿がほとんどない。

 受付は……猫耳娘、猫獣人? それともケット・シーかな? カウンターで見えないが尻尾はあるのだろうか? 語尾も聞いてみたい。

「お連れの方たちですかにゃ!」

「にゃ!」きたー。かわい過ぎるだろ! 「にゃ!」ですよ。もっと近くで猫耳娘の生「にゃ!」が聞いてみたい。

「本日はお世話になります! アルフレッドです!」

「お客様は人間ですかにゃ? エルフと人間のパーティーは珍しいにゃ!」

「にゃ! が、めちゃくちゃかわいいですね!」顔がにやけてしまう。

「にゃにゃ! かわいいだなんて照れるにゃ! もしかして、うちを口説いているかにゃ!」

 カウンターの向こうで猫耳娘がこてっと首を傾げる。うん、これもかわいいです。

「アルフレッド、こんなところで受付嬢を口説いてはダメですよ!」

「口説いてないから。「にゃ!」ですよ「にゃ!」かわいい以外に表現できないでしょ!」

「そんなに獣人がお好きなら、食事の後に他の者たちと一緒に出掛けられれば会えると思いますよ! それよりも周りの視線が痛いですから止めてください!」

 ミルトに言われて冷静に周りを見ると、冷ややかな獣人の視線と楽しそうに見てくるエグザイルエルフ達の視線に気がついた。コスプレとかではないリアルに頭の上でケモ耳が生え、ピクピクと動いているんですよ。日本人なら、普通、興奮するでしょ!

「大変失礼しました。ミルト、迷惑料を彼女に渡した方がいい?」

「止めてください。お金を渡したらそれこそ問題になりますよ! 後で他の者たちは、そういうお店に行くと思いますから、その時に渡してください! 受付嬢に手を出してはいけませんよ!」

 ミルトは顔を赤らめながら見てくる。なるほど、エグザイルエルフ達が興奮していたのは、これからそういうお店に行くからなんだ。エッチな奴だと思われていそうだな。急に恥ずかしくなってきたぞ。

 「アルフレッド、一度部屋に行きましょう。それから町を少し案内します。食事は露店で欲しいものがあれば買って食べてもいいですし、この宿でも食べれます。他にも食事のできる店がいくつかありますよ」

 視線が痛いからここから離れたいんだね。「ごめんねミルト、俺のせいで恥ずかしい思いをさせてしまって」まずは受付嬢に謝っておかなければ。

「ごめんね。つい、お嬢さんの『にゃー』が可愛すぎて許してください!」

「別にかまわないにゃ! 人間の子供にかわいいと言ってもらえて、ミューも嬉しかったからいいにゃ! お詫びがしたいなら、食事をごちそうして欲しいにゃ!」

「え!」

 一気に周りの視線がきつくなり気温が下がった気がする。

「アルフレッドは、悪い奴に見えないから、今晩食事だけなら付き合ってあげてもいいにゃ!」

 ヤバいな。これでは完全にナンパに成功した奴みたいではないか。エグザイルエルフ達まで呆れて口をポカンと開けたままになっている。詫びがしたいならと言われると断れそうにない。どこかに食べに行くのはまずい気がするから、みんなが誤解しないようにここで食べるのがよさそうだな。

「ではさっきのお詫びという事で、このお店でミューさんの好きなものをごちそうしますよ!」

「ここの食事はいつでも食べれるから、ミューが他のお店に案内してあげるにゃ!」

 非常にまずい気がしてきた。怒らせたせいでぼったくりのお店に連れていかれるのだろうか? もふもふしたいくらいかわいくて、悪い猫耳娘には思えないが大丈夫だろうか?

「ミルト助けて!」

 振り返ってみるとエグザイルエルフ達がニヤニヤしている。

「アルフレッド、自業自得です! お詫びにごちそうしてあげてください!」

「……これって、大丈夫なの?」

「え! 大丈夫ですけど、そんなにかわいい猫耳娘から食事に誘われて、何か心配することがありますか?」

「……そうなの?」

「そうでしょ! ではみんなと食事に行きますんでミューさんと楽しんできてください!」

 ミルトの言葉に棘を感じる。

「ミルトも食事の後にみんなと、そういうお店に行くの?」

「え! 行きませんよ。食べたら部屋に戻りますから!」

 ミルトは行かないらしい。よかった。

「護衛、いつもご苦労様です。ミルトの事は気にせず食事に行ってください。少ないですがこちらをどうぞ!」

 俺は袋の中から、魔大陸銀貨を三十枚取り出し渡した。エグザイルエルフ達が大喜びだ。

「「「「「ありがとうございます。楽しんできてください!」」」」」

 お礼を言った途端にミルトと俺を残して走り去ってしまった。

「ミルトにもお詫びに夕食をおごるよ!」

「一緒に行ってもいいんですか?」

 ミルトの顔がめちゃくちゃ驚いている。

「ミルトごめん、本当は不安なので一緒に行ってよ。あ、ミルトの護衛を残すのを忘れちゃった!」

「それは構いませんが、折角のチャンスなのに!」 

「ミューさん。夕食はミルトも行きますよ」

「もう少しで今日の仕事が終わるにゃ! 待っていてほしいにゃ! 美味しいお店に案内してあげるにゃ!」

 急遽待ち時間ができたので、宿の裏手に泊めてある幌ヤーク(馬)車の改造に向かう。

 直ぐに土魔法を使い、車体をジャッキアップする。近くの井戸から桶に水を汲んでくると、砂粒を混ぜてウォーターカッターの魔法で魔蟻の脚を切断した。魔蟻の脚と土魔法でリーフ式サスペンションを作る。何度も制作したので慣れたものだ。取り付けも簡単に終わらせることができた。ショックアブソーバーを作る時間は無いので後日にする。作業を見ていたミルトがポカンとしており、完全に呆れている。

 片付けていると、猫耳娘のミューが呼びに来た。
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