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255.1神聖力枯渇(救急龍ベビ、救命神獣ベス)✔
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ベスは、ハイルーン邸の二階の窓からふたつの月、ルーナとルナを見上げていた。
高度と速度が違い不規則に周回していますから、ルーナとルナがこれだけ近くに並んで見えることは珍しいですね。
ルーナとルナの事を知っている方はどれくらいますかね。ほとんどいないでしょうね。ルーナには女神様の神殿があり、この観察するために不規則に周回しているとか。地上から見るとルーナとルナが同じ大きさに見えるけれど、飛んでいる高さが違っていて、実はルーナの方がルナより倍以上大きいとか。あー、アルフレッド様に教えてあげたい。だけど、女神様に口止めされていますからできないですね。
アルフレッド様が魔大陸に旅立ってからというもの、女神様からの連絡がない。忘れられていないか心配になります。ですが、用もないのに念話しては不敬になりますし、女神様はルーナでどうしておられるのでしょうか。……考えるまでもないですね。
きっと、私の事は忘れていてもいつものようにアルフレッド様を見ていそうですね。そろそろ魔大陸に到着されたでしょうか? また無茶をしてなければいいですけど。あーアルフレッド様の料理が食べたい。早く帰ってくれませんかね。ベビやチビのように大食漢ではないので、一緒について行ければよかったのですが。お土産があるといいですね……。
《ベス、あの方が大変です。ベビと一緒に今すぐ向かってください!》
《何があったのですか? 女神様ご自身で助けられないんですか?》
《直接干渉できないことをベスも知っているでしょ! 言い争っている時間はありません。神聖力をほとんど使いきってしまわれました!》
《え! あの膨大な神聖力を使い切ったんですか? いったい何をしたら使い切れるんですか? 少しですが補充もしていたんですよ!》
《言わなくても知っています。早く向かってください!》
《分かりました。直ぐに向かいます!》
〈ベビ! 聞こえてる? アルフレッド様がピンチです! 今直ぐ送ってください!〉
《聞こえているノ! もう向かっているから家の前に出ていてほしいノ!》
ベスは階段を走り降りると、器用に玄関のドアノブを両手で回して外に出る。
サーシャがベスに気がついた。
「ベス! お外に行くのです? サーシャも一緒に行きたいのです!」
ベビが猛スピードで飛んでくるのが見える。ベスはサーシャの言葉に反応しない。
「あ! ベビも来たのです!」
〈ベスママ! 早く乗ってほしいノ!〉
〈ベビ! 急いでください! アルフレッド様が危険な状態になっているそうです!〉
ベスはいつになく慌てる。
〈分かったなノ! 全速力で飛ぶから落ちないでなノ!〉
〈ベビの背中は滑るから、掴むものもないし……そうか、掴める大きさになればいいですね〉
ベスはベビの背中に飛び乗ると丁度いい大きさになり、胴体を抱きかかえた。
「サーシャも一緒に行きたいのです!」
ベスがチラッとサーシャを見たが、直ぐに前を向いた。
《出発してください!》《任せてなノ!》
ベビはベスを背中に乗せたまま飛び上がる。
「待ってー! サーシャも行きたいのです。置いて行ったら、プンプンでメッなのです!」
ベビはべスを乗せて猛スピードで飛んで行く。後にはサーシャがポツンと取り残され、すねていた。
《女神様! アルフレッド様はどうして神聖力を使い切り、危険な状態になったのでしょうか?》
《信じられないことですが、小さいとはいえ、島ひとつを精霊に働きかけて動かしてしまいました。神の領域に人間の体で踏み込むなんて無茶苦茶です! そのため、私の渡した神聖力をほとんど使い切ってしまいました! とにかく急いでください!》
《それはまた無茶なことを……》〈ベビ全速力でお願いします!〉
〈精一杯頑張っているノ! もうこれ以上早くは飛べないノ! でも、急がないとママとの繋がりが弱まっているノ!〉
ベビは、ハイルーン領を飛び立って約五時間後にアルフレッドの元に到着した。六千キロの距離を音速の時速千三百キロで飛行していた。
ベビの現れた島は大変な騒ぎになっている。その背中には大きくなったベスがしがみついていた。ベビが地上に降りるや否や、ベスはアルフレッドが運び込まれた族長の家を目指す。
ベスは体を元の大きさにすると、器用に前足を使いドアを開ける。アルフレッドが寝かされているベットへと近づいていく。周りの人達は動くことができずにいた。
ベスは、血の気の失せたアルフレッドを心配そうにのぞき込むと、体を包み込むように寄り添わせた。ベスの体がうっすらと発光し始めると神々しい光が溢れ出した。光はアルフレッドの体に吸い込まれている。すると、アルフレッドの顔が少しずつ色を取り戻していく。
高度と速度が違い不規則に周回していますから、ルーナとルナがこれだけ近くに並んで見えることは珍しいですね。
ルーナとルナの事を知っている方はどれくらいますかね。ほとんどいないでしょうね。ルーナには女神様の神殿があり、この観察するために不規則に周回しているとか。地上から見るとルーナとルナが同じ大きさに見えるけれど、飛んでいる高さが違っていて、実はルーナの方がルナより倍以上大きいとか。あー、アルフレッド様に教えてあげたい。だけど、女神様に口止めされていますからできないですね。
アルフレッド様が魔大陸に旅立ってからというもの、女神様からの連絡がない。忘れられていないか心配になります。ですが、用もないのに念話しては不敬になりますし、女神様はルーナでどうしておられるのでしょうか。……考えるまでもないですね。
きっと、私の事は忘れていてもいつものようにアルフレッド様を見ていそうですね。そろそろ魔大陸に到着されたでしょうか? また無茶をしてなければいいですけど。あーアルフレッド様の料理が食べたい。早く帰ってくれませんかね。ベビやチビのように大食漢ではないので、一緒について行ければよかったのですが。お土産があるといいですね……。
《ベス、あの方が大変です。ベビと一緒に今すぐ向かってください!》
《何があったのですか? 女神様ご自身で助けられないんですか?》
《直接干渉できないことをベスも知っているでしょ! 言い争っている時間はありません。神聖力をほとんど使いきってしまわれました!》
《え! あの膨大な神聖力を使い切ったんですか? いったい何をしたら使い切れるんですか? 少しですが補充もしていたんですよ!》
《言わなくても知っています。早く向かってください!》
《分かりました。直ぐに向かいます!》
〈ベビ! 聞こえてる? アルフレッド様がピンチです! 今直ぐ送ってください!〉
《聞こえているノ! もう向かっているから家の前に出ていてほしいノ!》
ベスは階段を走り降りると、器用に玄関のドアノブを両手で回して外に出る。
サーシャがベスに気がついた。
「ベス! お外に行くのです? サーシャも一緒に行きたいのです!」
ベビが猛スピードで飛んでくるのが見える。ベスはサーシャの言葉に反応しない。
「あ! ベビも来たのです!」
〈ベスママ! 早く乗ってほしいノ!〉
〈ベビ! 急いでください! アルフレッド様が危険な状態になっているそうです!〉
ベスはいつになく慌てる。
〈分かったなノ! 全速力で飛ぶから落ちないでなノ!〉
〈ベビの背中は滑るから、掴むものもないし……そうか、掴める大きさになればいいですね〉
ベスはベビの背中に飛び乗ると丁度いい大きさになり、胴体を抱きかかえた。
「サーシャも一緒に行きたいのです!」
ベスがチラッとサーシャを見たが、直ぐに前を向いた。
《出発してください!》《任せてなノ!》
ベビはベスを背中に乗せたまま飛び上がる。
「待ってー! サーシャも行きたいのです。置いて行ったら、プンプンでメッなのです!」
ベビはべスを乗せて猛スピードで飛んで行く。後にはサーシャがポツンと取り残され、すねていた。
《女神様! アルフレッド様はどうして神聖力を使い切り、危険な状態になったのでしょうか?》
《信じられないことですが、小さいとはいえ、島ひとつを精霊に働きかけて動かしてしまいました。神の領域に人間の体で踏み込むなんて無茶苦茶です! そのため、私の渡した神聖力をほとんど使い切ってしまいました! とにかく急いでください!》
《それはまた無茶なことを……》〈ベビ全速力でお願いします!〉
〈精一杯頑張っているノ! もうこれ以上早くは飛べないノ! でも、急がないとママとの繋がりが弱まっているノ!〉
ベビは、ハイルーン領を飛び立って約五時間後にアルフレッドの元に到着した。六千キロの距離を音速の時速千三百キロで飛行していた。
ベビの現れた島は大変な騒ぎになっている。その背中には大きくなったベスがしがみついていた。ベビが地上に降りるや否や、ベスはアルフレッドが運び込まれた族長の家を目指す。
ベスは体を元の大きさにすると、器用に前足を使いドアを開ける。アルフレッドが寝かされているベットへと近づいていく。周りの人達は動くことができずにいた。
ベスは、血の気の失せたアルフレッドを心配そうにのぞき込むと、体を包み込むように寄り添わせた。ベスの体がうっすらと発光し始めると神々しい光が溢れ出した。光はアルフレッドの体に吸い込まれている。すると、アルフレッドの顔が少しずつ色を取り戻していく。
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