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244.1怪しさ満点(美味しい話には気をつけよう)✔
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帆船に帰ると、エグザイルエルフたちが酒盛りの真最中だった。ココナッツの実に入ったお酒があったので少しだけ味見させてもらうことにした。見た目は濁ってどろっとしている。紫の甘酒かどぶろくというところかな。味は……少しネバっとしたちょっぴり甘みのあるお酒だ。そこまでアルコール度数は高くない。発酵期間が短いのだろう。テレビでしか見たことはないが、アマゾンの奥地の先住民の作るお酒とかに近いのではないだろうか。ワインやグラッパを知ってしまうと、進んで飲みたいとは思わないだろう。
お酒好きなエグザイルエルフたちが残していた理由が分かった気がしてきた。グラッパやワインの方がアルコール度数が高くて美味しいからな。船長たちにグラッパとワインの樽を売りはしたが、この調子で飲んでいたら直ぐに飲み干してしまうのではないだろうか。グラッパを飲ませてしまった俺も悪いから、責任を感じてしまうな。
◇ ◇
翌日には帆船が出港するだろうと考えていたが、エグザイルエルフたちがやらかしていた。
朝起きると、なんとグラッパの樽が全て空になっており、二日酔いで動けないエグザイルエルフたちが甲板に転がっている。
明日は必ず出港すると船長は言っているが怪しすぎる。え! グラッパが切れたから必ず出港できるって。説得力がありすぎる。まさかアルコール度数の高いグラッパを、こんなに短期間で飲み干してしまうとは思っていなかった。俺の持つエルフの精霊的なイメージが崩壊している。もう、ただの酒好きになってしまった。
変身魔道具の説明を簡単に受ける予定になっていたが、まるまる一日分の時間ができてしまった。
魔道具がもらえたことは素直に嬉しいが、美味しい話には気をつけなければならないだろう。それに変身は苦痛を伴いそうだからな。
人魚達はなぜ自分たちで宝物を回収せずにそのまま放置しているのだろうか? 宝物に興味がない?……そんなことは考えられない。姫様がくれた宝は回収されたものだったし、海底の宮殿にも宝が山積みにされていた。それに宝の場所を記載した海図まで作られているではないか。この印も怪しい。〇ではなく×なのだ。……エグザイルエルフの海図でも×で記載されていたんだよね。
今までなら、シーサーペントが危険で回収できなかった可能性はあったと思う。しかし、討伐された今、自分たちで回収できる筈だ。「アルフレッドが好きなだけ」みたいに言っていたが絶対に何かある。×印の場所が島の北側ではなく、西側に集中していることも気になる。北側の沈没船の調査は、まだ行われてさえいないのではないだろうか?
そういえば護衛をとか、海の精霊様がついているから大丈夫とか、王様が怪しい発言をしていたな。人魚達は絶対に何かを隠している。海の中で使える武器は……棒手裏剣とナイフだろうか? 爆裂弾は使えるだろうか? 使えたとしても地上程の威力は発揮できそうにないな。前世なら水中銃だが反発力や伸縮性に優れたゴムがない。とにかく探りを入れておいた方がよさそうだ。……嫌な予感がする。
「ねえ、ミルト。島の西側に行ったことはある?」
「島の西側ですか? 港が東側で、航路から外れているのでないですね。何か気になることがあるんですか?」
「これなんだけど! 危険な場所とか記載されていたりする?」
宝の海図を見せる。ミルトが船長たちを呼びに行ってくれた。それから五分ほどで船長たちがこの帆船に集まって来た。
「これなんですが、何か危険な場所とかだったりします?」
再度、宝の海図を提示する。
「すまない、その場所は航路から外れているからな! 調査も行っていないな。だが、これは怪しい!」
「呼び立ててすみませんでした」
「いいよ。どうせ今日は暇だから」
船長たちは互いに目で合図をすると自分たちの持ち場に戻っていった。
漁師さん達に聞いてみることにしよう。
みんな相当飲んだみたいだな。振る舞い酒だけではないように見える。頭が痛そうな人たちが多いな。
声をかけたら不機嫌になりそうだ。酔っ払いは面倒だから気を付けないとね。
楽しそうな話し声が聞こえて来た。
何人かの人が今も楽しそうに飲んでいる。この人達なら話しかけても大丈夫そうだ。
「楽しそうですね! シーサーペントが倒されて良かったですね!」
「おうよ! シーサーペントのせいで魚の豊富な漁場が占領されていたからな。助かった。これで前のように魚が獲れるってことよ!」
漁師さんで間違いなさそうだ。全身日焼けしていて体つきもごつい。髭を生やしていて髪は後ろで束ねている人が多い。
「ちょっと教えてほしいのですが、この島の西側には危険な場所とかあったりします!」
「島の西側か? ……危険と言えば危険だな。あそこは全速で通ることを薦めるぞ! とにかく低速と停まるのは止めた方がいいからな! まあ、近づかないのが一番だがな!」
「やっぱり!」
「ぼうず! まさか行こうとしてないだろうな! あそこには化け物が出るぞ! 島の西側で沈んだ帆船が結構な数ある筈だ! いいか、おじさんからの忠告だからな!」
「ありがとうおじさん! 気を付けます」
「もう酒しか残ってないから、やれるものがない! ありゃ! この酒はもう駄目になっている。こりゃあ、飲むと腹を壊してしまう」
「ありがとう! お酒は遠慮しておきます。おじさん達の大漁を願っています!」
「ありがとうぼうず! 気をつけて帰れよ!」
完全に出来上がっている漁師たちに別れを告げる。やっぱり、化け物が出るから宝物が回収できていないんだ。シーサーペントを倒せるなら、化け物も簡単に倒してくれるとか思っていそうだな。
せめて、そういう危険は事前に伝えてほしい。人に頼むのとか嫌なのだろうか?
どうしても欲しいものがあるとかでなければ、今回、危険を冒してまで行く必要はないかな。素直に頼めばいいのに嫌になる。そういえばアクア姫も、シーサーペントをミルト達の帆船に押しつけて来たな。
人魚は自分たちでできないことは、他の者に任せようとするのかな? そんな気がしてきた。色々と考え事をしながら帆船に帰ってきた。すると、俺の帰りを待っていたかのように、人魚たちが帆船の周りの海から顔をのぞかせた。
お酒好きなエグザイルエルフたちが残していた理由が分かった気がしてきた。グラッパやワインの方がアルコール度数が高くて美味しいからな。船長たちにグラッパとワインの樽を売りはしたが、この調子で飲んでいたら直ぐに飲み干してしまうのではないだろうか。グラッパを飲ませてしまった俺も悪いから、責任を感じてしまうな。
◇ ◇
翌日には帆船が出港するだろうと考えていたが、エグザイルエルフたちがやらかしていた。
朝起きると、なんとグラッパの樽が全て空になっており、二日酔いで動けないエグザイルエルフたちが甲板に転がっている。
明日は必ず出港すると船長は言っているが怪しすぎる。え! グラッパが切れたから必ず出港できるって。説得力がありすぎる。まさかアルコール度数の高いグラッパを、こんなに短期間で飲み干してしまうとは思っていなかった。俺の持つエルフの精霊的なイメージが崩壊している。もう、ただの酒好きになってしまった。
変身魔道具の説明を簡単に受ける予定になっていたが、まるまる一日分の時間ができてしまった。
魔道具がもらえたことは素直に嬉しいが、美味しい話には気をつけなければならないだろう。それに変身は苦痛を伴いそうだからな。
人魚達はなぜ自分たちで宝物を回収せずにそのまま放置しているのだろうか? 宝物に興味がない?……そんなことは考えられない。姫様がくれた宝は回収されたものだったし、海底の宮殿にも宝が山積みにされていた。それに宝の場所を記載した海図まで作られているではないか。この印も怪しい。〇ではなく×なのだ。……エグザイルエルフの海図でも×で記載されていたんだよね。
今までなら、シーサーペントが危険で回収できなかった可能性はあったと思う。しかし、討伐された今、自分たちで回収できる筈だ。「アルフレッドが好きなだけ」みたいに言っていたが絶対に何かある。×印の場所が島の北側ではなく、西側に集中していることも気になる。北側の沈没船の調査は、まだ行われてさえいないのではないだろうか?
そういえば護衛をとか、海の精霊様がついているから大丈夫とか、王様が怪しい発言をしていたな。人魚達は絶対に何かを隠している。海の中で使える武器は……棒手裏剣とナイフだろうか? 爆裂弾は使えるだろうか? 使えたとしても地上程の威力は発揮できそうにないな。前世なら水中銃だが反発力や伸縮性に優れたゴムがない。とにかく探りを入れておいた方がよさそうだ。……嫌な予感がする。
「ねえ、ミルト。島の西側に行ったことはある?」
「島の西側ですか? 港が東側で、航路から外れているのでないですね。何か気になることがあるんですか?」
「これなんだけど! 危険な場所とか記載されていたりする?」
宝の海図を見せる。ミルトが船長たちを呼びに行ってくれた。それから五分ほどで船長たちがこの帆船に集まって来た。
「これなんですが、何か危険な場所とかだったりします?」
再度、宝の海図を提示する。
「すまない、その場所は航路から外れているからな! 調査も行っていないな。だが、これは怪しい!」
「呼び立ててすみませんでした」
「いいよ。どうせ今日は暇だから」
船長たちは互いに目で合図をすると自分たちの持ち場に戻っていった。
漁師さん達に聞いてみることにしよう。
みんな相当飲んだみたいだな。振る舞い酒だけではないように見える。頭が痛そうな人たちが多いな。
声をかけたら不機嫌になりそうだ。酔っ払いは面倒だから気を付けないとね。
楽しそうな話し声が聞こえて来た。
何人かの人が今も楽しそうに飲んでいる。この人達なら話しかけても大丈夫そうだ。
「楽しそうですね! シーサーペントが倒されて良かったですね!」
「おうよ! シーサーペントのせいで魚の豊富な漁場が占領されていたからな。助かった。これで前のように魚が獲れるってことよ!」
漁師さんで間違いなさそうだ。全身日焼けしていて体つきもごつい。髭を生やしていて髪は後ろで束ねている人が多い。
「ちょっと教えてほしいのですが、この島の西側には危険な場所とかあったりします!」
「島の西側か? ……危険と言えば危険だな。あそこは全速で通ることを薦めるぞ! とにかく低速と停まるのは止めた方がいいからな! まあ、近づかないのが一番だがな!」
「やっぱり!」
「ぼうず! まさか行こうとしてないだろうな! あそこには化け物が出るぞ! 島の西側で沈んだ帆船が結構な数ある筈だ! いいか、おじさんからの忠告だからな!」
「ありがとうおじさん! 気を付けます」
「もう酒しか残ってないから、やれるものがない! ありゃ! この酒はもう駄目になっている。こりゃあ、飲むと腹を壊してしまう」
「ありがとう! お酒は遠慮しておきます。おじさん達の大漁を願っています!」
「ありがとうぼうず! 気をつけて帰れよ!」
完全に出来上がっている漁師たちに別れを告げる。やっぱり、化け物が出るから宝物が回収できていないんだ。シーサーペントを倒せるなら、化け物も簡単に倒してくれるとか思っていそうだな。
せめて、そういう危険は事前に伝えてほしい。人に頼むのとか嫌なのだろうか?
どうしても欲しいものがあるとかでなければ、今回、危険を冒してまで行く必要はないかな。素直に頼めばいいのに嫌になる。そういえばアクア姫も、シーサーペントをミルト達の帆船に押しつけて来たな。
人魚は自分たちでできないことは、他の者に任せようとするのかな? そんな気がしてきた。色々と考え事をしながら帆船に帰ってきた。すると、俺の帰りを待っていたかのように、人魚たちが帆船の周りの海から顔をのぞかせた。
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