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8話 恋するオトメン?~竜介の恋~
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「ふぅ、ちょっと休憩~」
よっこいしょ、と私は付け加えながら階段の手摺に寄りかかるようにして座る。
色んなことに巻き込まれすぎていささか疲れてしまった。
まだ部屋は、残っているけれど。
考え事をしていると、竜介、さやか、王子の順で横で並び、同じようにこてんこてん、と同じように寄りかかってきた。
「休めねぇぇぇ重い! お前らは赤べこか! せめて下に座るとかしなさいよ! 横に並ばんでいいわ!」
「いいツッコミね、明菜! まだまだ大丈夫じゃない」
さやかにウィンクされて溜息をつく。何が大丈夫なのか最早ツッコミを返す気力も勿体ない。
さやか以外はその一声ではぶーぶー言いながらもそれぞればらばらのところに座る。
この間にも、浮遊霊のような薄いタイプの霊は通り過ぎる。声にのみこまれないように、私は気休めの清めの酒を一升瓶ごと一口飲んだ。知らぬ間に憑りつかれているなんてことはないけれど。
しばらくの沈黙のあと、最初に口を開いたのは意外にも竜介だった。
私の方を意を決したように振り返り、
「おい、明菜、貴様はっ……」
続きを話さず、そこで途切れてしまった会話に、不覚にも気になった私は応答する。
「……何よ?」
「恋愛相談にのるのも得意なのか?」
もう一口、と日本酒を口に含んで飲み込んだ時に、
「ぶはっ、げほげほっ……いきなり何? まさかあんた好きな人いるの?」
酒が気管に入り、盛大に咽た。タオルをバッグから取り出して、口を拭う。そしてついでにと思い、化粧を直そうとポーチと手鏡を取り出す。
「咽ることはないだろう……失礼な女だ。もちろん我には好きな女性がいる」
話を聞いてみると、職場が同じで2つ年上の女性に恋焦がれているそうだ。
それも完全なる片思いかと思いきや、信じられないことにドライブやデートをする仲だという。
「お前、俺と同じくらいやるな!」
王子がうんうん、と頷きながら竜介の肩を軽く叩く。
「私は嫌だわ、こんな男」
さやかはうげーというような顔をして顔の前でないない、と手を振る。
「……もうそれ付き合ってるんじゃないのー?」
ファンデを塗りなおしながら、竜介の耳に届くように話す。
「やはりそうなのか!?」
思った以上の反応が返ってきた上に、彼は勢い余って立ち上がる。
私を含めた3人はびくっとした。私は鏡を落としかけたくらいだ。
竜介はこちらの反応を見てもう一度座り、唾を飲み込む音の後、32だと結婚は焦るのか、と聞いてきた。
「そりゃそうよ、焦るわよ!!」
「結婚したら俺みたいな可愛い子が産まれるんだぞ!」
さやかと王子が口々に言っているが、私は華麗にスルー。
真面目に聞かれているし、真面目に答えてやるか……
「うーん、人によると思うけど」
と私は付け加え、話し出す。
子供を早く産んで育てたい人だっているし、好きな人との結婚に夢を持っている人もいる、と話すと、竜介は何やら考え出した。
そしてぶつぶつと言い始める。
明菜とさやかが顔を見合わせてくすっと笑ったが、彼は気づかないようだった。
「まるで初恋してる男の子みたいね」
「喋り方に問題あるけどね」
なんて微笑ましく思っている私達だった。
王子はというと、幽霊でも眠くなるのか、明菜の腕の中でぐっすり眠っているのだった。
もし自分の子供がいたら、こんな感じなのだろうか……と思いながら明菜は王子の頭を撫でた。
「あっ」
と私は竜介の方を振り返る。
「なっ……なんだ!?」
はっと我に返った竜介が勢いよく頭を抱えていた手をどけ、私の方に振り返る。
「してないなら、ちゃんと告白はしなさいよ?」
びしっと指をさして言ってやった。
竜介は再度項垂れるのだった。
よっこいしょ、と私は付け加えながら階段の手摺に寄りかかるようにして座る。
色んなことに巻き込まれすぎていささか疲れてしまった。
まだ部屋は、残っているけれど。
考え事をしていると、竜介、さやか、王子の順で横で並び、同じようにこてんこてん、と同じように寄りかかってきた。
「休めねぇぇぇ重い! お前らは赤べこか! せめて下に座るとかしなさいよ! 横に並ばんでいいわ!」
「いいツッコミね、明菜! まだまだ大丈夫じゃない」
さやかにウィンクされて溜息をつく。何が大丈夫なのか最早ツッコミを返す気力も勿体ない。
さやか以外はその一声ではぶーぶー言いながらもそれぞればらばらのところに座る。
この間にも、浮遊霊のような薄いタイプの霊は通り過ぎる。声にのみこまれないように、私は気休めの清めの酒を一升瓶ごと一口飲んだ。知らぬ間に憑りつかれているなんてことはないけれど。
しばらくの沈黙のあと、最初に口を開いたのは意外にも竜介だった。
私の方を意を決したように振り返り、
「おい、明菜、貴様はっ……」
続きを話さず、そこで途切れてしまった会話に、不覚にも気になった私は応答する。
「……何よ?」
「恋愛相談にのるのも得意なのか?」
もう一口、と日本酒を口に含んで飲み込んだ時に、
「ぶはっ、げほげほっ……いきなり何? まさかあんた好きな人いるの?」
酒が気管に入り、盛大に咽た。タオルをバッグから取り出して、口を拭う。そしてついでにと思い、化粧を直そうとポーチと手鏡を取り出す。
「咽ることはないだろう……失礼な女だ。もちろん我には好きな女性がいる」
話を聞いてみると、職場が同じで2つ年上の女性に恋焦がれているそうだ。
それも完全なる片思いかと思いきや、信じられないことにドライブやデートをする仲だという。
「お前、俺と同じくらいやるな!」
王子がうんうん、と頷きながら竜介の肩を軽く叩く。
「私は嫌だわ、こんな男」
さやかはうげーというような顔をして顔の前でないない、と手を振る。
「……もうそれ付き合ってるんじゃないのー?」
ファンデを塗りなおしながら、竜介の耳に届くように話す。
「やはりそうなのか!?」
思った以上の反応が返ってきた上に、彼は勢い余って立ち上がる。
私を含めた3人はびくっとした。私は鏡を落としかけたくらいだ。
竜介はこちらの反応を見てもう一度座り、唾を飲み込む音の後、32だと結婚は焦るのか、と聞いてきた。
「そりゃそうよ、焦るわよ!!」
「結婚したら俺みたいな可愛い子が産まれるんだぞ!」
さやかと王子が口々に言っているが、私は華麗にスルー。
真面目に聞かれているし、真面目に答えてやるか……
「うーん、人によると思うけど」
と私は付け加え、話し出す。
子供を早く産んで育てたい人だっているし、好きな人との結婚に夢を持っている人もいる、と話すと、竜介は何やら考え出した。
そしてぶつぶつと言い始める。
明菜とさやかが顔を見合わせてくすっと笑ったが、彼は気づかないようだった。
「まるで初恋してる男の子みたいね」
「喋り方に問題あるけどね」
なんて微笑ましく思っている私達だった。
王子はというと、幽霊でも眠くなるのか、明菜の腕の中でぐっすり眠っているのだった。
もし自分の子供がいたら、こんな感じなのだろうか……と思いながら明菜は王子の頭を撫でた。
「あっ」
と私は竜介の方を振り返る。
「なっ……なんだ!?」
はっと我に返った竜介が勢いよく頭を抱えていた手をどけ、私の方に振り返る。
「してないなら、ちゃんと告白はしなさいよ?」
びしっと指をさして言ってやった。
竜介は再度項垂れるのだった。
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