5 / 15
4話 悩み~幽霊だって~
しおりを挟む
竜介と行動を共にすることになった私。決して頼もしい仲間……などではなかったが、一応世間話など小声でしながら歩いている。
自分のことを「我」とか私のことを「お前」とかかなり拗らせているような気がするけど……
もう変なものに絡まれるのはごめんなので、オープンキッチンのあった部屋を出て、そろりと奥の部屋へ向かう。
あった扉のドアノブをゆっくり回して開けると、やっぱりキィィ、と不気味な音がする。
そこは外の朝日が漏れて日が差し、なかなか明るい部屋だった。外で育ち放題の木々がちょうど邪魔をしていないのだろうか。
そんなことを考えながら、竜介と顔を見合わせアイコンタクトで入るぞ、と告げ一歩部屋に入った途端……ばっと髪の長い人影が振り返り、「キェェェェェー!」と奇声をあげて襲い掛かってきた。
私も竜介も、びくっと体を震わせたが、竜介に興味がないのか私しか目に入っていないようだ。
「ぬぉぉぉ!?」と私が素っ頓狂な声を出して、全力で右へ避けると、その人影はぴたりと止まり、こちらを凝視した。……人間じゃない。そして女ではない?
振り乱した髪からは、判別のつかない性別。
いや、性別などどうでもいい。何故この屋敷には血の気の多い者ばかりなのか。
完全に見つかってしまったし、変な声をあげてしまったし、向こうはこちらをがっつりと見ているし、無視しようがない。
「あんた……その顔……」
顔がどんどん近づいてきて、身の危険を感じながら竜介の方に後退し、どん、と彼にとぶつかった。そして思わず竜介の後ろにさっと体ごと隠して顔だけ出す。
「何我の後ろに隠れているのだ!」
そんな彼の声は聞こえない。うん、聞こえない。
竜介の腕をがっちり掴んで、何かあったら囮にしてやろうと目論むのは当然のこと。
「なっ……何でしょう?」
恐る恐る、首を傾げて無理やり笑顔を作る。
「アタシは……奇麗な女が嫌いなのよぉぉぉぉー!!」
首を掴まれそうになり、竜介の背中にぴょこりと隠れ、全力で彼を前に出そうとする。
「我は女ではない!」
そして混乱した彼も訳の分からないことを口走り、何故か、威張った。
「アンタは不細工だから、興味ないわ!」
そう目の前の幽霊は吐き捨て、私を追いかけ回して捕まえようと、いや掴もうと走ってくる。最初は竜介の周りをくるくる回っていたのだが、目を回した竜介が一言。
「我で遊ぶな!」
幽霊に向けて撃っているのだろう、先ほどの水鉄砲が、私にもかかり、幽霊と共に
「「うぇっ、しょっぱ! ぺっぺっ」」
と見事にハモってしまった。私は、竜介の元を離れるように部屋の端っこまで走る。
酒が完全に抜けていない私は息が上がってきて、目の前まで迫っていた幽霊に、止まって手を前に出す。ストップ…と息の切れた声を発すると意外にも幽霊は止まってくれた。
「ハァハァ……話し、合いましょ……とりあえず……」
「我の目が回ったではないか、まったく」
ふん!と竜介はその場に胡坐をかいた。そんな余計な茶々が入るが、私たちの耳には聞こえていたのか聞こえなかった。
何とか座って平和に、話し合いをして、自分がオネエであること、おかまバーで働いていて人気が出たが、客に左胸を思いっきり掴まれて潰れてしまったこと、誰にも相談することが出来なかったまま亡くなったのか、様々なことを話し出す。
髪を整えた彼女は、顔はとても女性らしく見えた。胸に入れたものが潰れてしまって、もう女ではないのだ、と思い自殺を決意して友達と共にビルの上から飛んだのだという。
私は相槌を打つくらいしか、このマシンガントークに入っていくことが出来なかった。
ようやく落ち着いたようで、出来た隙に入り込むように話しかける。
「胸を潰されるなんて……どんな客よ! 同じお水の”女”として許せんわ! どんな育てられ方したわけ? 親の顔が見てみたいわ!!」
ぷりぷりと腕と胡坐を組んで怒る私に、彼女はぽけっとした顔をした。そしてしばしの沈黙の後、
「アタシを女として見てくれるの……?」
涙をぽろりと流しながら問いかけてきた。
「えっ? 当たり前でしょ。自分の心が乙女なら乙女よ。あなたは体も立派な女じゃない……わっ!」
当然だと思っていることを口に出したら、その女は私に抱きついてきた。
「アンタ、見かけによらず良い女ね。アタシはさやか……」
抱きつきながら初めて、名前を教えてくれる。そして今度は私と竜介が何をしていたのか教える番になった。私はこの屋敷中の写真を撮らなければならないこと、竜介はただのおまけなことを話した。
「我がおまけだと!? 貴様ッ……ぶっ!」
私とさやかは先ほどの塩水鉄砲のお返しに、竜介が話し出してすぐ、グーでパンチを食らわせてやった。
「アタシもその旅についていくわ!」
「え゛っ……?」
何やら一人きらきらと、どこを見ているやら分からない眼差しで決意表明をする。
思わず変な声が出たが、竜介の時同様、着いてくるなといっても聞かないのだろうな、と頭を抱えて苦笑いした。
こうして3人で屋敷の探索を行うこととなった。
自分のことを「我」とか私のことを「お前」とかかなり拗らせているような気がするけど……
もう変なものに絡まれるのはごめんなので、オープンキッチンのあった部屋を出て、そろりと奥の部屋へ向かう。
あった扉のドアノブをゆっくり回して開けると、やっぱりキィィ、と不気味な音がする。
そこは外の朝日が漏れて日が差し、なかなか明るい部屋だった。外で育ち放題の木々がちょうど邪魔をしていないのだろうか。
そんなことを考えながら、竜介と顔を見合わせアイコンタクトで入るぞ、と告げ一歩部屋に入った途端……ばっと髪の長い人影が振り返り、「キェェェェェー!」と奇声をあげて襲い掛かってきた。
私も竜介も、びくっと体を震わせたが、竜介に興味がないのか私しか目に入っていないようだ。
「ぬぉぉぉ!?」と私が素っ頓狂な声を出して、全力で右へ避けると、その人影はぴたりと止まり、こちらを凝視した。……人間じゃない。そして女ではない?
振り乱した髪からは、判別のつかない性別。
いや、性別などどうでもいい。何故この屋敷には血の気の多い者ばかりなのか。
完全に見つかってしまったし、変な声をあげてしまったし、向こうはこちらをがっつりと見ているし、無視しようがない。
「あんた……その顔……」
顔がどんどん近づいてきて、身の危険を感じながら竜介の方に後退し、どん、と彼にとぶつかった。そして思わず竜介の後ろにさっと体ごと隠して顔だけ出す。
「何我の後ろに隠れているのだ!」
そんな彼の声は聞こえない。うん、聞こえない。
竜介の腕をがっちり掴んで、何かあったら囮にしてやろうと目論むのは当然のこと。
「なっ……何でしょう?」
恐る恐る、首を傾げて無理やり笑顔を作る。
「アタシは……奇麗な女が嫌いなのよぉぉぉぉー!!」
首を掴まれそうになり、竜介の背中にぴょこりと隠れ、全力で彼を前に出そうとする。
「我は女ではない!」
そして混乱した彼も訳の分からないことを口走り、何故か、威張った。
「アンタは不細工だから、興味ないわ!」
そう目の前の幽霊は吐き捨て、私を追いかけ回して捕まえようと、いや掴もうと走ってくる。最初は竜介の周りをくるくる回っていたのだが、目を回した竜介が一言。
「我で遊ぶな!」
幽霊に向けて撃っているのだろう、先ほどの水鉄砲が、私にもかかり、幽霊と共に
「「うぇっ、しょっぱ! ぺっぺっ」」
と見事にハモってしまった。私は、竜介の元を離れるように部屋の端っこまで走る。
酒が完全に抜けていない私は息が上がってきて、目の前まで迫っていた幽霊に、止まって手を前に出す。ストップ…と息の切れた声を発すると意外にも幽霊は止まってくれた。
「ハァハァ……話し、合いましょ……とりあえず……」
「我の目が回ったではないか、まったく」
ふん!と竜介はその場に胡坐をかいた。そんな余計な茶々が入るが、私たちの耳には聞こえていたのか聞こえなかった。
何とか座って平和に、話し合いをして、自分がオネエであること、おかまバーで働いていて人気が出たが、客に左胸を思いっきり掴まれて潰れてしまったこと、誰にも相談することが出来なかったまま亡くなったのか、様々なことを話し出す。
髪を整えた彼女は、顔はとても女性らしく見えた。胸に入れたものが潰れてしまって、もう女ではないのだ、と思い自殺を決意して友達と共にビルの上から飛んだのだという。
私は相槌を打つくらいしか、このマシンガントークに入っていくことが出来なかった。
ようやく落ち着いたようで、出来た隙に入り込むように話しかける。
「胸を潰されるなんて……どんな客よ! 同じお水の”女”として許せんわ! どんな育てられ方したわけ? 親の顔が見てみたいわ!!」
ぷりぷりと腕と胡坐を組んで怒る私に、彼女はぽけっとした顔をした。そしてしばしの沈黙の後、
「アタシを女として見てくれるの……?」
涙をぽろりと流しながら問いかけてきた。
「えっ? 当たり前でしょ。自分の心が乙女なら乙女よ。あなたは体も立派な女じゃない……わっ!」
当然だと思っていることを口に出したら、その女は私に抱きついてきた。
「アンタ、見かけによらず良い女ね。アタシはさやか……」
抱きつきながら初めて、名前を教えてくれる。そして今度は私と竜介が何をしていたのか教える番になった。私はこの屋敷中の写真を撮らなければならないこと、竜介はただのおまけなことを話した。
「我がおまけだと!? 貴様ッ……ぶっ!」
私とさやかは先ほどの塩水鉄砲のお返しに、竜介が話し出してすぐ、グーでパンチを食らわせてやった。
「アタシもその旅についていくわ!」
「え゛っ……?」
何やら一人きらきらと、どこを見ているやら分からない眼差しで決意表明をする。
思わず変な声が出たが、竜介の時同様、着いてくるなといっても聞かないのだろうな、と頭を抱えて苦笑いした。
こうして3人で屋敷の探索を行うこととなった。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる