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9. 宗谷社長
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真由美を『指導』してから1週間ほどが過ぎた。その後、大糸は何人かの他の女子社員を技術指導室に呼んで『指導』したが、真由美にはまだ触れていない。同じ女子社員ばかりを指導室に呼んでいると、その女子社員の部長に対する好意が役員に対するそれよりも大きくなることを恐れた執行部によって、女子社員に対する部署異動が発令されてしまうのだ。違う部に異動してしまうと、もはや部長には手出しできない。役員になるまでは、お気に入りの女子社員といえども他の女子社員と平等に扱う必要がある。
秋の日は短い。どっぷりと日も暮れてそろそろ退社時間が迫るころ、社長の宗谷が大糸の部屋にふらりとやってきた。
「やあ、大糸君。調子はどうだね?」
「はっ、社長。営業部では、今年度も無事に目標の売上高を上回ることができる見込みです。」
「うむ、そのようだね。いや、すばらしい。これはちょっとした陣中見舞いだ。気に入ってくれるといいが。」
宗谷は、その後ろに控えている自分のお気に入りの社長室付秘書を振り返った。秘書は
「宗谷社長からでございます。どうぞお受け取り下さいますように。」
そう言うと、秘書は、左手に下げていた紙袋から、分厚い封筒のようなものを取り出して大糸に渡した。
「社長、開けてもよろしいでしょうか。」
「もちろんだとも。」
「では、さっそく。」
中には、ビール券や清酒券がおよそ500万円分も入っていた。
「社長、こんなに頂いてもよろしいのでしょうか。」
「うん。いろんなところから貰うもので、こんなになってしまったんだが、どうもこういうものは使い方がよく分からないんでね。君は酒が好きだと聞いたんで、持ってきたんだ。ぜひ、営業部の皆を慰労するために使って欲しい。」
大糸は大のアルコール好きだが、それ以上に、自分の好みを社長が把握していることが嬉しかった。セイゴーで出世するためには、ワンマン社長である宗谷に気に入られることが何よりも重要なのだ。
「社長、ありがとうございます。」
大糸は、直立不動の姿勢で答えた。
ちょうどその時、大糸のためにお茶を淹れた真由美が大糸の部屋に入ってきた。部屋にいるのが社長だと気付くと、美しい瞳を大きく見開いてお辞儀をした。
「あら、社長。ようこそお越し下さいました。社長にもお茶をお淹れしますので、しばらくお待ちください。」
「いや、もう失礼するから、結構だ。ところで君は?」
「は、彼女は根岸真由美と申しまして、営業1課で主に医療用機器類の営業を任せております。」
と、大糸が代わって答えた。
「ほう。」と言いながら、宗谷は真由美の顔をじっと見つめる。
「わが社の女子社員の中でも、可愛い方じゃないか。根岸君、君、明日のお昼にでも社長室にまで来てくれないかな。ちょっと頼みたいことがある。」
「私が、でございますか?」
「うん、ぜひとも君にお願いしたいことがある。」
「それは光栄です。明日のお昼に、伺わせて頂きます。」と真由美は嬉しそうに返事をすると、「では、失礼します。」と、自分の部署に戻っていった。
大糸は、突然目の前が真っ暗になった。明日、間違いなく真由美は宗谷に抱かれるだろう。宗谷のことだから、真由美への生挿入と中出しも躊躇しないはずだ。それに、社長の手が付いている女子社員は、部長といえども『指導』できない、というのがセイゴーの不文律である。
「根岸君の月経周期はどうなっている?」と宗谷が大糸に聞いた。
「は。頂いたデータによると、ちょうど先週が排卵日でした。」
「ほう。ということは、今後1週間近くは子作りに励めるな。」
そう言って、宗谷は豪快に笑った。
「なんにせよ、明日が楽しみだ。」そう言い残すと、宗谷は部屋を出て行った。
宗谷が出て行った後で、宗谷が従えていた秘書の顔立ちが真由美と似ていたことに大糸は気づいた。真由美の容姿が、社長の好みと合致することに、どうしてこれまで気づかなかったのか。気づいていれば、社長がいる間は部屋に来ないように言っておいたのに。大糸は、自分の愚鈍さを呪った。
秋の日は短い。どっぷりと日も暮れてそろそろ退社時間が迫るころ、社長の宗谷が大糸の部屋にふらりとやってきた。
「やあ、大糸君。調子はどうだね?」
「はっ、社長。営業部では、今年度も無事に目標の売上高を上回ることができる見込みです。」
「うむ、そのようだね。いや、すばらしい。これはちょっとした陣中見舞いだ。気に入ってくれるといいが。」
宗谷は、その後ろに控えている自分のお気に入りの社長室付秘書を振り返った。秘書は
「宗谷社長からでございます。どうぞお受け取り下さいますように。」
そう言うと、秘書は、左手に下げていた紙袋から、分厚い封筒のようなものを取り出して大糸に渡した。
「社長、開けてもよろしいでしょうか。」
「もちろんだとも。」
「では、さっそく。」
中には、ビール券や清酒券がおよそ500万円分も入っていた。
「社長、こんなに頂いてもよろしいのでしょうか。」
「うん。いろんなところから貰うもので、こんなになってしまったんだが、どうもこういうものは使い方がよく分からないんでね。君は酒が好きだと聞いたんで、持ってきたんだ。ぜひ、営業部の皆を慰労するために使って欲しい。」
大糸は大のアルコール好きだが、それ以上に、自分の好みを社長が把握していることが嬉しかった。セイゴーで出世するためには、ワンマン社長である宗谷に気に入られることが何よりも重要なのだ。
「社長、ありがとうございます。」
大糸は、直立不動の姿勢で答えた。
ちょうどその時、大糸のためにお茶を淹れた真由美が大糸の部屋に入ってきた。部屋にいるのが社長だと気付くと、美しい瞳を大きく見開いてお辞儀をした。
「あら、社長。ようこそお越し下さいました。社長にもお茶をお淹れしますので、しばらくお待ちください。」
「いや、もう失礼するから、結構だ。ところで君は?」
「は、彼女は根岸真由美と申しまして、営業1課で主に医療用機器類の営業を任せております。」
と、大糸が代わって答えた。
「ほう。」と言いながら、宗谷は真由美の顔をじっと見つめる。
「わが社の女子社員の中でも、可愛い方じゃないか。根岸君、君、明日のお昼にでも社長室にまで来てくれないかな。ちょっと頼みたいことがある。」
「私が、でございますか?」
「うん、ぜひとも君にお願いしたいことがある。」
「それは光栄です。明日のお昼に、伺わせて頂きます。」と真由美は嬉しそうに返事をすると、「では、失礼します。」と、自分の部署に戻っていった。
大糸は、突然目の前が真っ暗になった。明日、間違いなく真由美は宗谷に抱かれるだろう。宗谷のことだから、真由美への生挿入と中出しも躊躇しないはずだ。それに、社長の手が付いている女子社員は、部長といえども『指導』できない、というのがセイゴーの不文律である。
「根岸君の月経周期はどうなっている?」と宗谷が大糸に聞いた。
「は。頂いたデータによると、ちょうど先週が排卵日でした。」
「ほう。ということは、今後1週間近くは子作りに励めるな。」
そう言って、宗谷は豪快に笑った。
「なんにせよ、明日が楽しみだ。」そう言い残すと、宗谷は部屋を出て行った。
宗谷が出て行った後で、宗谷が従えていた秘書の顔立ちが真由美と似ていたことに大糸は気づいた。真由美の容姿が、社長の好みと合致することに、どうしてこれまで気づかなかったのか。気づいていれば、社長がいる間は部屋に来ないように言っておいたのに。大糸は、自分の愚鈍さを呪った。
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