聖豪商事株式会社

セイゴー

文字の大きさ
上 下
1 / 16

1. セイゴー営業部

しおりを挟む
 大糸洋一44歳は、聖豪商事株式会社、略してセイゴーの営業部長である。セイゴーは、非上場ながら国内大手の一つに数えられる規模の会社であり、44歳でそこの部長職にあるのは、若い。これは彼が優秀だったためであるが、また彼の性欲の強さゆえでもあった。セイゴーでは、男子社員は部長職に就くと、そこの部に所属する女子社員に性的な指導を行うことが許される。
 セイゴーは、女子社員が美女揃いであることで、その業界内では有名である。女子社員は採用時に教養だけでなく容姿に関しても厳しく審査され、また定年が33歳に設定されている。それでもなお競争率は非常に高い。その人気の理由は採用後の給与の高さと、その後の可能性にある。入社1年目の大卒女子社員の平均年収は1500万円を軽く超える。加えて、セイゴーの女子社員は、その教養レベルと美貌により、多くのテレビ局や事務所から、アナウンサーや女優としてのオファーが引きも切らない。セイゴーにとっても、男子社員への福利厚生的な効果や、美女を揃えることによる営業その対外的な面への効果を考えると、この程度の給与の支払いは、むしろ安いといえる。
 セイゴー営業部は、その下に営業1課から営業6課まで6つの課を擁している。このうち営業1課は個人や小事業所を対象とした大型機器類の販売を手掛けており、男子社員と女子社員とがペアを組んで営業を行う。女子社員の巧妙な接待で商談相手の理性を失わせている間に男子社員が契約を取る、という、なんとも古典的な営業手法だが、この手法に弱い個人営業主は多い。他社より割高であっても飛ぶように契約がとれていくのだ。ここで最も重要なのが女子社員の接待技術である。営業部長の重要な職務の一つが、その技術の訓練にあった。
 大糸は、営業1課の今年度の成績が気になっていた。特に、開業医を相手に医療用器具を販売する、小浜啓介と根岸真由美のチームの成績が思わしくない。真由美は今年大学を出たばかりの23歳。160センチのやや小柄な身長にセミロングの髪をポニーテールにした清楚な女子大生という雰囲気を漂わせており、切れ長の眉に黒目がちの大きな目が美しい。スーツの上から控えめに膨らんだ形の良いバストは、それほど大きいわけではないが、男たちの目を吸い寄せるだけの美しさとセックスアピールを含んでいる。真由美に興味を示さない男など、まずいないだろう。それに、セイゴーが営業する医者は皆、下半身にはだらしないスケベなおやじばかりだ。大糸はまず1課長の篠ノ井丈二を呼んで事情を聞いた。篠ノ井は、大糸の懐刀とでもいうべき男である。
 「小浜君と根岸君のチームだがね。」篠ノ井を自分の机に呼ぶと、大糸は言った。「どうも成績が良くないようなのだが。」
 「はっ、部長、この件は本課でも懸案となっております。小浜君と根岸君の仕事ぶりは、私の方でも注意しておりました。どうも、原因は根岸君の方にあるようでして。」
 「ほう、どういうことかね?」
 「根岸君は特に医者受けしそうな清楚な美人ですが、本人としては意図してそれを営業の武器にしないようにしているようでして。小浜君がいろいろとフォローしているようなのですが、大事な商談の日はわざとケバい感じの化粧をしたり、ボディラインが隠れるようなだぶだぶのスーツを着たりして、小浜君としても顧客に対して義理が立たず、困っているようです。ご存じの通り、わが社はこちら方面のサービスがその筋では有名でして、だからこそ顧客としては期待が裏切られたというところでしょうか。一度、部長じきじきのご指導が必要かと、私の方から伺おうと考えていたところでした。」
 「そうか。そういうことなら、指導しないといかんね。しかし、おとなしく指導室に付いて来るかな?」
大糸は、部長室の入り口脇にある【技術指導室】と書かれた小さな扉に目を移した。この中で真由美を『指導』する場面を想像すると、股間が固く勃起するのを感じた。
 「もちろん、わが社としては、新人研修いらい、女子社員には部長・役員に対して憧れの感情を抱くよう、いろいろと洗脳に近い指導も行っています。ですので、指導室までは、呼べば素直に来るとは思います。しかし、実際にご指導される段になると、まだちょっと抵抗するかも知れませんね。やはり、最初に指導室に呼ばれる際は、いつものように私の方で一芝居打ちましょうか?」
 「そうだな。そうしてもらうとしよう。早速だが、明日の午前中あたり、空いているのでどうかな。」
 「明日の午前中ですね。ちょっとお待ちください。根岸君のスケジュールなどを確認しますので。」
 篠ノ井は、自分の机に戻ると、パソコンからいくつかファイルを開いて内容を確認した。
 「根岸君は、明日はちょうど排卵日頃ですので、ご指導には最適かと存じます。ただし、妊娠しやすい時期ですので、くれぐれもご注意下さい。彼女は今日も商談のはずですが、おそらくまとまらないと思いますので、それをネタに、明日の朝、一芝居打つことにします。」
 「うむ。ありがとう。しかし、君には、せっかくの美人に対していつも憎まれ役ばかりさせてしまってすまんね。」
 「いえいえ。それが課長の仕事だと心得ていますので。それに、どうせ課長だと、うちの女子社員には指一本出すわけにはいきませんし。その代わり、部長が役員に昇進された際には、よろしくお願いしますよ。」
 「はは、まあ、その時は悪いようにはせんよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

処理中です...