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第2話 ハルスの街
第37話 変態登場
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だがその話を知らない他の奴隷達は、無垢な笑顔で会話をし始める。
「ゾーイは良いなぁ!俺もアルス様と一緒に遊びたかったのに!」
「オレットさんは、勉強のが大事とか言って、全然遊んでくれないもんなー!仕事は簡単だから良いけど……」
「アルス様、今度は私達とも遊んでくださいよ!ゾーイばっかりズルいです!」
ブツブツと文句を言うミゲルとエリナ。オレットは意外と真面目なようで、俺が指示したことをしっかり守っているらしい。こんな事なら、遊ぶ時間も与える様に指示しておくんだった。
「わかった、わかった。オレットには遊びの時間も作る様に言っておくから。その代わり、勉強も仕事もしっかりやるんだぞ!」
「わーい!!ありがとうございます、アルス様!」
嬉しそうにはしゃぐ子供達を見て、在りもしない過去を妄想する。
俺にも彼らと同じように、同年代の子供達と遊ぶ時間があったら、一体どうなっていただろう。こんな馬鹿な考えなど浮かばず、立派な王子になるよう行動していたかもしれない。
だがもしそうだとしたら、俺の隣にルナは居ないだろう。居たとしても、今のような関係になれるとは到底思えない。互いが互いを尊敬し、尊重し合うそんな関係。この十二年があったからこそ、俺達はそこに辿り着けたんだ。
ルナの方をチラリと見ると、彼女は僅かに口元を緩めて見せる。それだけで体の芯が熱くなり、俺は頬を紅く染めながら目を逸らした。やはり、シェスカ姉様に嫌われようとも、ルナとの生活を離す気にはなれない。それを再確認できただけでも本当に良かった。
その時、応接室の扉が勢いよく開かれた。そこには先ほど出ていったシェスカ姉様の姿がある。だが一緒に出ていったはずの護衛の姿が無かった。
「遅くなって済まなかったな。どうしても……お前に見せなければならないものがあったのだ」
「見せなければならないモノ?いったい何ですかそれは」
姉様の言葉に少し不安になる。もしかして、俺を裁くような何かだろうか?まさか、ソフィアの研究がバレていて、彼女をここに連れてきているとか?
そんな不安が脳裏をよぎり、手に汗がにじみ始める。その直後、姉様は部屋の外に居る何かに声をかけた。
「おい、お前達!さっさと歩かんか!!」
じゃりじゃりと、鉄がすれる音が聞こえてくる。その何かは、姉様に引きずられてこの部屋の中へと入ってきた。それらの物体を見て、余りの衝撃に言葉を失う俺と幼い子供達。俺はそれらが視界に入らないように、咄嗟にゾーイの顔を両手で覆った。
「姉様……それはいったい」
「これか?これは私の奴隷達だ!さぁお前達、しっかり挨拶をせんか!」
姉様は手に持った鞭で、奴隷達の尻を思い切りぶっ叩く。バチーンともの凄い音がしたかと思うと、奴隷達は一斉に鳴き声をあげだした。
「ぶひぃ!ぶひぃ!ぶひぃ!」
「わはははは!そうだそうだ!しっかり鳴いて、挨拶しないとなぁ!」
光悦とした表情で奴隷達を見つめるシェスカ姉様。奴隷達の顔をよく見ると、二人とも先程出ていった護衛達だった。俺達が全員ドン引きしているのにもかかわらず、姉様達はプレイに没頭している。
「あの……シェスカ姉様。どういうことか、説明して頂けませんか?」
「ん?ああそうだったな!実は私にもお前と同じような性癖があってな?屈強な男共をこうして跪かせて、鳴かせるのがたまらなく好きなのだ!」
奴隷達を鞭で叩きながらそう語るシェスカ姉様の顔は、ソフィアと全く同じだった。姉様は話しながら何度も何度も、奴隷達の身体を鞭で叩いていく。その度に醜い声を上げる奴隷達。だがなぜか、奴隷達の顔はどこか嬉しそうだった。
「いやぁ、まさかお前も私と同じだったとはなぁ!この性癖のせいで、他の貴族と結婚も出来ず、誰にもバレないように過ごしてきたのだ!だがこれからはお前とこうして話せると思うと、気が楽になったぞ!」
「え……いや……俺はその──」
「どうした?何か問題でもあったか!?」
シェスカ姉様に問われ、俺は言葉を喉で詰まらせる。「実は全部嘘です」だなんて、もう二度と言えない。姉様は俺を同類と思って秘密を打ち明けた。その俺が、普通の性癖の持ち主だと知れば、恥ずかしさのあまり姉様の方が自死しかねない。
俺の計画は、砂城のように瞬く間に崩れて消えていく。だが今目の前で起きていることに比べれば、そんな些細な問題どうでもよかった。
敬愛するシェスカ姉様は、ただの変態でドS女王だったのだ。
「ゾーイは良いなぁ!俺もアルス様と一緒に遊びたかったのに!」
「オレットさんは、勉強のが大事とか言って、全然遊んでくれないもんなー!仕事は簡単だから良いけど……」
「アルス様、今度は私達とも遊んでくださいよ!ゾーイばっかりズルいです!」
ブツブツと文句を言うミゲルとエリナ。オレットは意外と真面目なようで、俺が指示したことをしっかり守っているらしい。こんな事なら、遊ぶ時間も与える様に指示しておくんだった。
「わかった、わかった。オレットには遊びの時間も作る様に言っておくから。その代わり、勉強も仕事もしっかりやるんだぞ!」
「わーい!!ありがとうございます、アルス様!」
嬉しそうにはしゃぐ子供達を見て、在りもしない過去を妄想する。
俺にも彼らと同じように、同年代の子供達と遊ぶ時間があったら、一体どうなっていただろう。こんな馬鹿な考えなど浮かばず、立派な王子になるよう行動していたかもしれない。
だがもしそうだとしたら、俺の隣にルナは居ないだろう。居たとしても、今のような関係になれるとは到底思えない。互いが互いを尊敬し、尊重し合うそんな関係。この十二年があったからこそ、俺達はそこに辿り着けたんだ。
ルナの方をチラリと見ると、彼女は僅かに口元を緩めて見せる。それだけで体の芯が熱くなり、俺は頬を紅く染めながら目を逸らした。やはり、シェスカ姉様に嫌われようとも、ルナとの生活を離す気にはなれない。それを再確認できただけでも本当に良かった。
その時、応接室の扉が勢いよく開かれた。そこには先ほど出ていったシェスカ姉様の姿がある。だが一緒に出ていったはずの護衛の姿が無かった。
「遅くなって済まなかったな。どうしても……お前に見せなければならないものがあったのだ」
「見せなければならないモノ?いったい何ですかそれは」
姉様の言葉に少し不安になる。もしかして、俺を裁くような何かだろうか?まさか、ソフィアの研究がバレていて、彼女をここに連れてきているとか?
そんな不安が脳裏をよぎり、手に汗がにじみ始める。その直後、姉様は部屋の外に居る何かに声をかけた。
「おい、お前達!さっさと歩かんか!!」
じゃりじゃりと、鉄がすれる音が聞こえてくる。その何かは、姉様に引きずられてこの部屋の中へと入ってきた。それらの物体を見て、余りの衝撃に言葉を失う俺と幼い子供達。俺はそれらが視界に入らないように、咄嗟にゾーイの顔を両手で覆った。
「姉様……それはいったい」
「これか?これは私の奴隷達だ!さぁお前達、しっかり挨拶をせんか!」
姉様は手に持った鞭で、奴隷達の尻を思い切りぶっ叩く。バチーンともの凄い音がしたかと思うと、奴隷達は一斉に鳴き声をあげだした。
「ぶひぃ!ぶひぃ!ぶひぃ!」
「わはははは!そうだそうだ!しっかり鳴いて、挨拶しないとなぁ!」
光悦とした表情で奴隷達を見つめるシェスカ姉様。奴隷達の顔をよく見ると、二人とも先程出ていった護衛達だった。俺達が全員ドン引きしているのにもかかわらず、姉様達はプレイに没頭している。
「あの……シェスカ姉様。どういうことか、説明して頂けませんか?」
「ん?ああそうだったな!実は私にもお前と同じような性癖があってな?屈強な男共をこうして跪かせて、鳴かせるのがたまらなく好きなのだ!」
奴隷達を鞭で叩きながらそう語るシェスカ姉様の顔は、ソフィアと全く同じだった。姉様は話しながら何度も何度も、奴隷達の身体を鞭で叩いていく。その度に醜い声を上げる奴隷達。だがなぜか、奴隷達の顔はどこか嬉しそうだった。
「いやぁ、まさかお前も私と同じだったとはなぁ!この性癖のせいで、他の貴族と結婚も出来ず、誰にもバレないように過ごしてきたのだ!だがこれからはお前とこうして話せると思うと、気が楽になったぞ!」
「え……いや……俺はその──」
「どうした?何か問題でもあったか!?」
シェスカ姉様に問われ、俺は言葉を喉で詰まらせる。「実は全部嘘です」だなんて、もう二度と言えない。姉様は俺を同類と思って秘密を打ち明けた。その俺が、普通の性癖の持ち主だと知れば、恥ずかしさのあまり姉様の方が自死しかねない。
俺の計画は、砂城のように瞬く間に崩れて消えていく。だが今目の前で起きていることに比べれば、そんな些細な問題どうでもよかった。
敬愛するシェスカ姉様は、ただの変態でドS女王だったのだ。
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