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第2話 ハルスの街
第36話 大勢の共犯者
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翌日。朝食の際、俺とルナのどこかぎこちないやり取りを見て、他のメイド達がキャーキャー騒いでいた。何故かルイスからも「おめでとうございます」との言葉を貰うしまつ。全員が何かを勘違いしているみたいだが、ルナが嬉しそうにしていたので、あえて否定することはしなかった。
そしてその日の午後、俺は屋敷の応接室でシェスカ姉様と対峙していた。俺の後ろにはカイルとアンヌ以外にも、トト村で購入した子供の奴隷達が並んで立っている。
「話があると言われて来てみれば……お前がこんな馬鹿な事をしているとはな」
奴隷達の姿を見て怒りをあらわにするシェスカ姉様。俺は開き直った態度で、シェスカ姉様に話し始める。
「馬鹿な事だなんて、姉様も分かってませんねぇ。この子達は、自ら望んで俺に買われたんですよ。なぁカイル、そうだよな?」
「はい……」
俺の問いかけに、カイルは作り笑いを浮かべて返事をした。その後直ぐに、カイルは顔を歪めてみせる。勿論、これは事前に決めておいた段取りだ。演技派のカイルなら上手くやってくれると思っていたが、ここまで上手に表情を変えるとは驚きだった。
シェスカ姉様はカイルの演技に気付かず、俺を睨みつけながら机を力強く叩いて見せる。
「あれが、望んで買われた奴隷の姿だと言うのか?ふざけるのもいい加減にしろ!あの子達が悲しんでいるのがまだ分からんのか!」
「言いがかりは止めてくださいよ。子供達は皆、この屋敷で楽しく暮らしていますよ?なぁゾーイ。昨日も俺と一緒に皆で楽しく遊んだよなぁ?」
俺はゾーイをこちらに呼びつけて、頭をなでながらそう問いかける。その問いかけに、彼は満面の笑みを浮かべながら答えてくれた。
「はい!昨日はアルス様と一緒に、いーっぱい遊びました!凄く楽しかったです!」
「ははは!それならまた一緒に遊んでやろう。今度はアンヌも一緒にな!」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
アンヌもまたゾーイと同じような顔で嬉しそうに笑って見せる。二人の言葉と表情は、カイルとは違い、嘘偽りのないものだった。
二人にはカイルのように、演技をしろと言った指示はしていない。八歳の子にシェスカ姉様を騙すような演技をするは無理があるだろうし、アンヌは大根役者だ。
だから俺は、ゾーイが嘘をつかなくても良いように昨日の午後を使って、本当に遊んでやった。鬼ごっこやかくれんぼ、戦いごっこまでしてやった。その結果が、今の返事を生み出したのだ。それを知っているアンヌは、普通に遊べると思って喜んだ。
二人の無垢な笑顔に、シェスカ姉様は信じられないといった様子で俺を見つめて来た。
「……馬鹿な!こんな子供達と、お前は一体どんな遊びをしたというんだ!」
「ただの遊びですよ。勿論、沢山気持ちよくしてあげましたがね」
姉様の頭の中で『遊び』という単語がどのように変化を遂げているかは分からない。だが間違いなく、正し意味では理解していないだろう。
その判断が間違っていないと思わせるべく、俺は下卑た笑みを浮かべて姉様を見つめた。俺の表情を見て姉様は全て悟ったのか、深く息を吐いてゆっくりとその場で立ち上がる。
あれほどまでに輝いていた姉様の瞳が、暗く沈んだ闇の色へと染まっていった。もうあの頃の姉様に会えることは無い。覚悟を決めていたとはいえ、やはり心に来るものはあった。
だがこれで俺の評価はガタ落ちすること間違いない。シェスカ姉様がこの事実を広げれば、俺が帝国の間者を炙り出したなんて噂も消えてなくなるはずだ。
「少し……待っていろ」
そう言うと姉様は護衛を引き連れて部屋の外へ出て行ってしまった。緊張の糸が切れたのか、体が急激に重くなる。俺は盛大に息を吐いて、背もたれにもたれかかった。
「ああぁぁ、しんどかった!カイルもありがとうな!お前のお陰で、シェスカ姉様も完全に騙せたぞ!」
「ありがとうございます。でも……本当に宜しかったのですか?」
カイルは心配そうに俺の顔を見つめる。俺はその問いに答えることなく、静かに微笑んだ。
カイルには昨日俺の全てを打ち明けた。実は俺には自堕落な生活を送る目的がある事。その目的のために、悪徳領主を目指していること。
その話をした時、カイルはかなり引いていた。まぁ目的が変だし、自分の所の領主が、悪徳領主を目指していると宣言する奴だったら誰でも引くし、怒るだろう。
だが領民を傷つけるような行動はしない。一年後にはこの領地にある膿と共に消え去る。そう説得したら、カイルは渋々協力すると言ってくれた。
そしてその日の午後、俺は屋敷の応接室でシェスカ姉様と対峙していた。俺の後ろにはカイルとアンヌ以外にも、トト村で購入した子供の奴隷達が並んで立っている。
「話があると言われて来てみれば……お前がこんな馬鹿な事をしているとはな」
奴隷達の姿を見て怒りをあらわにするシェスカ姉様。俺は開き直った態度で、シェスカ姉様に話し始める。
「馬鹿な事だなんて、姉様も分かってませんねぇ。この子達は、自ら望んで俺に買われたんですよ。なぁカイル、そうだよな?」
「はい……」
俺の問いかけに、カイルは作り笑いを浮かべて返事をした。その後直ぐに、カイルは顔を歪めてみせる。勿論、これは事前に決めておいた段取りだ。演技派のカイルなら上手くやってくれると思っていたが、ここまで上手に表情を変えるとは驚きだった。
シェスカ姉様はカイルの演技に気付かず、俺を睨みつけながら机を力強く叩いて見せる。
「あれが、望んで買われた奴隷の姿だと言うのか?ふざけるのもいい加減にしろ!あの子達が悲しんでいるのがまだ分からんのか!」
「言いがかりは止めてくださいよ。子供達は皆、この屋敷で楽しく暮らしていますよ?なぁゾーイ。昨日も俺と一緒に皆で楽しく遊んだよなぁ?」
俺はゾーイをこちらに呼びつけて、頭をなでながらそう問いかける。その問いかけに、彼は満面の笑みを浮かべながら答えてくれた。
「はい!昨日はアルス様と一緒に、いーっぱい遊びました!凄く楽しかったです!」
「ははは!それならまた一緒に遊んでやろう。今度はアンヌも一緒にな!」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
アンヌもまたゾーイと同じような顔で嬉しそうに笑って見せる。二人の言葉と表情は、カイルとは違い、嘘偽りのないものだった。
二人にはカイルのように、演技をしろと言った指示はしていない。八歳の子にシェスカ姉様を騙すような演技をするは無理があるだろうし、アンヌは大根役者だ。
だから俺は、ゾーイが嘘をつかなくても良いように昨日の午後を使って、本当に遊んでやった。鬼ごっこやかくれんぼ、戦いごっこまでしてやった。その結果が、今の返事を生み出したのだ。それを知っているアンヌは、普通に遊べると思って喜んだ。
二人の無垢な笑顔に、シェスカ姉様は信じられないといった様子で俺を見つめて来た。
「……馬鹿な!こんな子供達と、お前は一体どんな遊びをしたというんだ!」
「ただの遊びですよ。勿論、沢山気持ちよくしてあげましたがね」
姉様の頭の中で『遊び』という単語がどのように変化を遂げているかは分からない。だが間違いなく、正し意味では理解していないだろう。
その判断が間違っていないと思わせるべく、俺は下卑た笑みを浮かべて姉様を見つめた。俺の表情を見て姉様は全て悟ったのか、深く息を吐いてゆっくりとその場で立ち上がる。
あれほどまでに輝いていた姉様の瞳が、暗く沈んだ闇の色へと染まっていった。もうあの頃の姉様に会えることは無い。覚悟を決めていたとはいえ、やはり心に来るものはあった。
だがこれで俺の評価はガタ落ちすること間違いない。シェスカ姉様がこの事実を広げれば、俺が帝国の間者を炙り出したなんて噂も消えてなくなるはずだ。
「少し……待っていろ」
そう言うと姉様は護衛を引き連れて部屋の外へ出て行ってしまった。緊張の糸が切れたのか、体が急激に重くなる。俺は盛大に息を吐いて、背もたれにもたれかかった。
「ああぁぁ、しんどかった!カイルもありがとうな!お前のお陰で、シェスカ姉様も完全に騙せたぞ!」
「ありがとうございます。でも……本当に宜しかったのですか?」
カイルは心配そうに俺の顔を見つめる。俺はその問いに答えることなく、静かに微笑んだ。
カイルには昨日俺の全てを打ち明けた。実は俺には自堕落な生活を送る目的がある事。その目的のために、悪徳領主を目指していること。
その話をした時、カイルはかなり引いていた。まぁ目的が変だし、自分の所の領主が、悪徳領主を目指していると宣言する奴だったら誰でも引くし、怒るだろう。
だが領民を傷つけるような行動はしない。一年後にはこの領地にある膿と共に消え去る。そう説得したら、カイルは渋々協力すると言ってくれた。
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