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第2話 ハルスの街

第33話 麗しい美女

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 誇らしげに胸をそらすルナ。この大規模な工事に対する資金援助は、彼女の余計な気遣いだと分かった。言いたいことは山ほどあるが、俺の発言にも原因が無いとは言えないから、それについては納得せざるを得ない。

 しかし、冒険者達の反応に関しては、まだ理由が判明していなかった。

 協会の職員連中が俺に対して感謝をするのは分かる。劣悪な職場環境を変えてくれたのが俺だと分かっていたから、皆がメレーナのような態度を取ったのだ。

 だが冒険者達にとっては、この施設はそこまで重要性を持つものではないはず。ただ依頼の受注をこなし、仕事が終われば酒を飲む場所。その価値しかないはず。それなのに、受付前にいた冒険者達は俺を羨望の眼差しで見つめて来ていたのだ。

 ただ心当たりがないわけではない。約二週間前に、フランツ達に話した内容。それを彼らが広めていたとしたら、アルス王子が帝国の間者を退けたという武勇伝として捉えられかねない。

 嫌な予感がする中、俺はオルトに問いかけた。

「オルト。そう言えば、ミゲルという冒険者がこの街で活動していると聞いたのだが。なかなか腕が立つ冒険者らしいな。良ければ今度紹介してくれ」

 あえて間接的な質問で、オルトの反応を観察する。ミゲルがこの街から姿を消したことは、すでにもう確認済みだ。だがその原因が俺であることは、フランツ達しか知らないはず。

 オルトがそれを知らない可能性を考慮しての質問だったが、それは全く意味をなさなかった。

「殿下もお人が悪いですなぁ!その冒険者を消した張本人である殿下に、紹介なんて出来やしませんよ!その奴隷の子供達も普段の振る舞いも、帝国を惑わすためにあえてやっていたと、フランツ達が話しておりましたよ!」
「はははは……そう、か。まぁ、うん……もう好きにしてくれ」

 ここに来た時嫌な予感はしていたが、これまでの行いが全て水の泡になってしまうとは。俺に対して怒りの矛先を向けていたフランツ達も、真逆の対応をしてくるという事か。

 なんだか、急にやる気がなくなってきた。つい昨日までは、うきうきの気分で今日の来訪を心待ちにしていたのに。冒険者達から向けられる、侮蔑や憎悪を含んだ視線をもう二度と味わうことが出来ないなんて。

 どうせ俺が何をしても、全部裏目に出てしまうんだ。悪事を働いても、このど天然メイドが素晴らしい気づかいをしてくれて、逆の結果になってしまう。

 もういっそのこと、何もしないで過ごすことにしよう。

「悪い……気分が悪くなってきたから、今日は帰らせてもらう」

 俺が真っ青な顔になってふらつきながら立ち上がると、オルトが慌ててメレーナを呼びつけた。

「大丈夫ですか、殿下!おいメレーナ!すぐに薬師協会に連絡を!ハイポーションの在庫ならまだあるはずだ!」
「いや、大丈夫……工事の明細はまた後日聞かせてくれ」

 そんなオルト達の手を振り切り、俺は部屋を出ていく。ふらつく足取りで廊下を進んでいくと、後ろからカイルとアンヌが心配そうに声をかけてきた。

「殿下……大丈夫ですか?」
「もしかして、俺達のせいで何か大変なことになっているとか……冒険者の皆さんも俺達を見ても、変に声を荒げなくなってきましたし」

 二人も周りの変化に気づいているのだろう。俺が企てていた計画が破綻したという事が。もしかしたらその原因が自分たちにあるのかもしれないと、そう思っているのかもしれない。

 そんなことは全くないのだが、今の俺はそれを否定する気分になれなかった。

「ああ……まぁ大丈夫だよ。これから暫くは自由に過ごすつもりでいるから、二人も自由にすごしてくれていいからな」
「え?わ、わかりました……」

 ギクシャクした雰囲気に包まれる中、俺達は受付へと戻ってきた。冒険者達の視線は、相変わらず以前のモノとは全く違っている。常人であれば心地の良い筈の空間が、俺にとっては息苦しい空間へと生まれ変わっていた。思わずため息をこぼしたその瞬間、改装されたばかりの扉が勢いよく開かれる。

 そこに現れたのは、真っ白な鎧に身を包んだ、金髪の見目麗しい女性だった。
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