上 下
28 / 46
第2章 筆頭土地神は大変です

第28話 無敵の男の殺害方法

しおりを挟む
 ミモイ村へ帰ると、ミィミィとチルチルの姿を見た村人達がパニックを起こしてしまった。何とか俺とシズクちゃんの使い魔であることを説明して、その場を静める。

 それからすぐに村の中を確認するも、まだ誰かが訪ねてきている様子はなかった。でももしかしたら、俺達が居ない間に訊ねてきたかもしれない。俺は確認のためにフランクさんの元へと向かった。

「ナオキ様、どうなされたのですか!?昨日出発したばかりではありませんか!」

 昨日出発したばかりの俺が慌てた様子で帰ってきた事で、フランクさんはとても驚いた様子で目を丸くしていた。

「ちょっと事情が変わってさ!俺が居ない間に、トルネア領主の使いみたいな人が訪ねてきたりしなかったか!?」
「領主様の使いですか?そのような方は来ていないと思いますが……いったいどうなされたのです?」

 そう問いかけてきたフランクさんの顔は少し不安そうに見えた。領主の使いと聞いて、俺が村から出て行ってしまうと思ったのかもしれない。相手側はそうしようと企てているみたいだが、美人のお姉さんならいざ知らず、禿オヤジの元へなんて行ってたまるものか。

「何処で聞いたかは分からないが、領主が俺の能力を知ったみたいなんだ。そこで、俺の能力を利用して、『ルキアス村』が製造してる魔法薬の買取価格を下げようとしている」
「なんと!土地神であるナオキ様を、私利私欲のために使おうと言うのですか!!」

 話を聞いたフランクさんは怒りを露にして、掌を机に叩きつける。

「そうみたいだ。だからその内この村へやってくると思う。その時に俺が居なかったら、村の皆に何するか分からないだろ?不安だから急いで戻ってきたんだ」
「ナオキ様……私達の身を案じてくださるとは!!」

 俺の言葉を聞いて、感激の涙を流すフランクさん。ここへ来る道中、エイリスさんが俺にしてくれた話をそのままフランクさんに伝えただけなのだが、まぁ良いだろう。

エイリスさん曰く、村人達が正直に話したとしても、嘘をついているとか言って難癖付けられて、荒探しされる可能性もあるらしい。

 その結果、皆で大切に育ててきた野菜や果物を徴収されてしまうかもしれない。それだけ絶対に避けないといけない。

「使者はいつやって来るか分からないからな!出来るだけ三つの村で情報を共有しておいてくれ!対応は俺がするから、絶対に馬鹿な真似はしないでくれよ!」
「仰せのままに!!直ぐに話をしてまいります!」

 そう言ってフランクさんは俺に頭を下げると、家から飛び出していった。そしてフランクさんと入れ替わるように、エイリスさん達とシズクちゃんがやって来た。

「まだ訪ねて来ていないみたいで良かったですね。ですが、使者が来るのは時間の問題ですよ?貴方が対応すると仰っていましたが……一体どうするつもりですか?」
「流石に領主の使いに適当な対応は出来ねぇぞ?それなりの振舞いを見せてやらねぇと、あっちにも立場があるからな」

 普段強気なルーシーさんでも、流石に表情を曇らせている。フレイとミリアさんも同意見なのか、何度も頷いていた。

「ではワシが話をつけるというのはどうじゃ!?トルネアの領主であれば、ワシの名を知らぬはずが無いであろう?」

 ワシの出番じゃと張り切って身を乗り出すシズクちゃん。だがお忘れだろうか。彼女は百年以上も姿を現してはいないのだ。

「それが一番無難だと思うんだけど。向こうはシズクちゃんが本物の土地神シズクだって知ってるのか?百年以上も姿を見せてなかったんだろ?」
「そ、そうじゃった!!ワシがあった領主は前の前の奴じゃった!!どうするのじゃ、ナオキ!!」

 案の定、あたふたしだすシズクちゃん。他の4人もどうするか頭を抱えていたが、俺は村に着くまでの道中で、一つだけ作戦を考えついていた。

「領主は俺の能力を利用して、魔法薬の買取価格を下げようとしてるんだろ?だったら領主が利用しようとしてる俺の能力が、期待してるほど凄くなかったら良いんじゃないか?」
「あぁん?何言ってんだ、ナオキ」

 俺の説明が下手だったのか、ルーシーさんは怒り気味にそう呟く。その隣で、エイリスさんがハッとした表情を浮かべてくれた。

「なるほど!自分の能力を偽り、回復薬よりも価値が低いように見せかけるというのですね?」
「そうです!そうすれば領主側も俺に騙されたと言い訳がつきますし、魔法薬の買取価格を正常に戻してくれると思いませんか!?」
「良い考えではありませんか!!領主側の面目も保てますし、その案で行きましょう!」

 初めて意見があった俺達は固い握手を交わす。この作戦が上手くいけば、全て元通りに収まるはず。

 何とかなりそうな空気が漂い始める中、ミリアさんが話づらそうな表情をして手を上げた。

「ミリアさん、どうしました?」
「あのぉ、凄く良い案だとは思うんですけど……神を詐称したとして、ナオキさんが処罰されませんかね?ほら、お爺さんの話では、土地神を自称する男を利用するとか言ってたじゃないですか!」

 ミリアさんの言葉により、明るくなっていた場の空気が、氷のように冷たくなっていく。

「どどどどうしよう!!最高の案を思い付いたと思ったのに、これじゃあ俺殺されちゃう!!」
「落ち着いてください!!貴方は何をされても死なないじゃないですか!!」
「そうだった!!はぁービックリした!脅かさないでくださいよ、ミリアさん!」

 そう、俺は無敵の男。処罰されようとも、俺は傷つかないのだから死にはしない。教会がやって来たところで、俺を罰せられる手段なんて無いんだ。

 そう強気になる俺隣で、フレイが不思議そうに首をかしげて見せる。

「いやでも、犯罪者として投獄される可能性はありますよ?武器では傷がつかなくても、餓死する可能性はあるんじゃないです?」
「ちょおっとフレイ!!なんて酷いこと言いやがる!!俺をビビらせて楽しんでるのか!!」
「わあわあ!揺らさないでくださいよぉ!!フレイはあくまでも、可能性を示唆しただけです!!」

 涙を流しながら、鬼畜野郎フレイをぐわんぐわん揺すり続ける。彼女に傷つけられた俺のブロークンハートは、そんじゃそこらの癒しでは治らないだろう。結局翌日の朝まで作戦会議は続いたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大
ファンタジー
神様にいっぱい希望を出したら意思疎通のズレから竜人になりました。 異世界を救ってほしい。 そんな神様からのお願いは異世界に行った時点でクリア⁉ 異世界を救ったお礼に好きなように転生させてくれるっていうからお酒を飲みながらいろいろ希望を出した。 転生しても人がいい……そんな希望を出したのに生まれてみたら頭に角がありますけど? 人がいいって言ったのに。 竜人族? 竜人族も人だって確かにそうだけど人間以外に人と言われている種族がいるなんて聞いてないよ! それ以外はおおよそ希望通りだけど…… 転生する世界の神様には旅をしてくれって言われるし。 まあ自由に世界を見て回ることは夢だったからそうしますか。 もう世界は救ったからあとはのんびり第二の人生を生きます。 竜人に転生したリュードが行く、のんびり異世界記ここに始まれり。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』 俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。 レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。 「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」 レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。 それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。 「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」 狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。 その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった―― 別サイトでも投稿しております。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...