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1話
しおりを挟む剣技や魔法の存在する中世ヨーロッパのような街並み。
魔法が存在するように魔物も存在し、魔物を討伐して収入を得る冒険者や、その冒険者を纏める冒険者ギルドというような物も存在している。
数多くの男が叶いようのない夢でありながらも心の隅で待ち望んだファンタジー世界。
そんな世界に気付けば俺は転生していた。
忘れようと思っても絶対忘れそうにない地球という星で社会人として働いていた記憶。その記憶の中には、現在俺が生活しているファンタジー世界を待ち望んでいたという記憶も残っている。しかし、現在俺は今の生活に少し怯えなから過ごしている。
街中を歩いてみれば女性、女性、女性、女性。
地球で住んでいたことを前世というのならば、この世界の女性は前世でいう痴女だろう。
平然と下ネタを友達同士言い合い、男を見たという情報が流れでもしたら見たと言う現場へ直ぐに向かい、服を着るというのは寒い時以外着ることはなく、通常は下着姿で自分の体を周囲に見せ付けながら歩いている。
前世と今世でこんなにも女性の普段の行いが変わっているというのには、男が女性に比べて極端に少ないということが関係していると思う。
前読んでみた本によると、この世界の男女比は大体一対千らしい。
昔は男女比が一対三くらいと、今以上に男女比の差は見られなかったらしいが、魔王と呼ばれる前世のラスボスのような魔物が全世界の女性に男子の出生率を急激に少なくする魔法を掛けたらしく、男の出生率はみるみる内に低下。
現在ではその魔王と呼ばれる奴は討伐されているようだが、現在でも魔王の残した魔法は女性に影響しているらしく、少しずつ影響力は低下しているらしいが男女比が昔のようにまだ戻ることはなく今の一対千という男女比になっているらしい。
そして、男が極端に少なくなるにつれて上昇していったのが女性の性欲。
男が少なくなり、異性を見る機会が極端に少なくなってしまった結果、女性は極端に異性を求めるようになった。下ネタを言い合うのも性欲が溜まっている結果だが、下着を見せているのも男を誘惑する為らしい。
そんな世界な為、俺は現在男であることを隠して生活している。
仮に隠さなかったとしたら、一日中俺は女性に襲われ続けてしまうだろう。
俺のストライクゾーンは、お嬢様のような上品なお方だ。
決して、下ネタを暇さえあれば言っているような奴ではない。
前世ではそんな方との出逢いは無かったが、この世界では男ということもあり前世のイケメンや金持ちを凌駕出来る部分はある。それに、前世基準で言えば俺はかなりの上位に位置する中性的な顔立ちで、前世とは違って顔もいい。
だから、付き合える可能性も十分にあるということだ。
それに、剣技や魔法がある世界なので、折角だし俺は剣技や魔法を極めてみたいのだ。俺よりも魅力的な男が万が一現れてしまった場合でも、力さえあれば俺を選んで貰えるかもしれない。……決して、性欲に染まった女性から逃れる為に力を付けたいとかではない。
「おはようお兄ちゃん!! 一緒にご飯食べよ!!」
「おお。もうそんな時間か。」
ベットの上で今一度今の俺の状況について頭の中で整理していると、ハルが飛び付いて来た。
白銀のシルクのように綺麗で繊細な髪に、子動物のような愛らしさのある肢体に整った顔立ち。
サファイアとエメラルドが調和したような、透き通った綺麗な青碧色のぱっちりとした目。
身長は百五十センチ位で、大体小学校高学年から中学くらいの大きさだろうか。
まるで天使のような可憐さを持つハルは、俺の癒しだ。
前世でもこんな妹が欲しかった。
俺に飛び付いてすりすりと甘えるように俺の体に顔を擦るハルを、俺は優しく抱き寄せた。
「ん……お兄ちゃん温かい。」
「ポカポカして気持ちいいな。」
この世界の季節は前世の日本のように四季があり、現在の季節は春。
春は寒さで眠っていた動植物を起こし、心地よい暖かい風を吹かせるイメージだが、朝はまだ寒い。
だから、春の朝はハルと抱き合って体を温める。
けっして、やましい気持ちをもってやっている訳ではない。
大天使ハルが甘えて来たので、俺は甘やかしているだけだ。
……たまに俺から頼むこともあるけど。
ハルの繊細な銀色の髪を優しく撫でていると、下から母さんの大きな声が聞こえてきた。
「朝ごはん出来たから下りておいで。」
今世の母さんは物凄く温厚で落ち着いた性格で、基本呼び掛けるようなことはせず大体は俺達に自由にさせる。遅刻しそうになった時や間違ったことだけ呼び掛けたり注意をしてくれる、聖母のような母さんだ。
だというのに、声を掛けてきたということは……ハルの髪を撫で過ぎたということだろう。
俺に撫でられて気持ち良くなったのか、ぱっちりとした目を閉じて再び眠りにつきそうになっていたハルを抱っこして、階段を下りた。
「母さん。おはよう。」
「おはようノア。ハルが呼びに行ったと思ったけど……もしかして、寝ちゃってた?」
「いや、髪の毛を撫でてたら寝ちゃってさ。声を掛けてくれてありがとう。あのままだったら遅刻してた。」
「ふふっ。遅刻しないように、ご飯早く食べちゃいなさい。」
俺の腕の中で寝ていたハルをソファーに寝かせ、椅子に座って既に用意されていた朝食を食べることにする。
ハルは俺と違ってまだ時間があるため、まだ起こさなかった。寝ているのを起こすのは可哀想だし、恐らく時間になればお母さんが起こしてくれるだろう。
すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てるハルを横目に、美味しそうな朝食を食べ進めた。
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