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お茶が美味しいね爺
しおりを挟む「リンナ。お前との婚約を破棄する。」
「何でですか?」
「それはお前が、ラテーシャを何度も何度も苛めたからだ。覚えてないとは言うなよ?」
「ラテーシャって誰ですか?」
「しらばっくれるなこの陰湿女!!嫌だと思うけど、少しラテーシャ来てくれ。」
婚約者である王子とお茶をしてくるよう、昔からお世話になった執事である爺から言われた為、王子に会いに行くことにすると急に婚約破棄を叩き付けられた。
しかも、ラテーシャという名前も知らないような女を苛めたからという理由で。
婚約者である王子の怒声が部屋に響くと、少し経ってからラテーシャという赤い髪をした女性が入ってきた。
「ラテーシャ大丈夫かい?」
「少しは大丈夫になりました。」
「あぁ、可哀想なラテーシャ。おいっ!!リンナ。お前どうしてくれるんだよ。こんなに可愛いラテーシャをよくもこんな目にしてくれたな。」
「ロイ様大丈夫です。私はロイ様が優しく私の話を聞いてくれたお陰で、もう心はあまり痛くなくなったので。」
「ラテーシャ………。今すぐ謝れ。土下座しろ、土下座。」
「この人に私何もしてないですよ!」
「ふざけるのも大概にしろ。まだ嘘をつくつもりか。」
した覚えのないことを勝手にしたことにされ、更にそのしたことについて土下座をしろと言われたので、私は反発する。……っていうか、王子に可愛いと言われたり優しくされたことが婚約者の私ですら無いのに、何故この女性は王子に可愛いと言われたり、こんな風に心配されているのだろうか。
別に、私は王子が好きじゃないので嫉妬なんてするわけ無いが少し気になる。
「大丈夫ですロイ様。私は………。でも、少し心が痛くなってきたので、出来れば部屋に戻りたいんです。」
「分かった。辛いのに、ラテーシャをリーナに会わせたりしてごめんな。さぁ、早くこんな部屋からは出よう。……リーナ。後で覚えてろよ。」
辛そうな顔をするラテーシャという女性を支えて、王子は部屋を出ていく。出ていく際、王子に殺意の込められた目で睨まれたが、本当に何があったのだろう。
部屋で一人になった私は、爺の居る部屋に戻ることにした。
■■■■■■■■■
王子と会わなくなってから二週間後。
気付けばあの王子は逮捕されていた。
実は、あの女は「魅了」というスキルを持った他国のスパイをしていたサキュバスだったらしく、サキュバスに魅了を使われ、魅了された王子は「好きな人が言ったことが正しくないわけない」と、簡単に私があの女を苛めたと信じてしまった。
そして、私に苛められて可哀想だと思った王子は、気分が少しでもマシになるように、あの女を国宝が眠る部屋に入れたり、国家機密が隠された部屋などにどんどん入れたらしく、気づいたらあの女に国宝や国家機密を奪われて他国へ逃げられたようだ。
国を支える国宝や、他国に知られたら絶対にいけない国家機密を他国に持っていかれる。
そんなことを招いた王子に、王子の父である王様は凄いお怒りの様子で、「こんなことを招く奴に次期国王は無理だ」と、あの王子を廃嫡にして、怒りのあまり実の息子だというのに、無期懲役という重罪をおくりつけたらしい。
ちなみに、次期国王はあの王子の一個下の、あの王子よりも決断力やカリスマ力がある弟がやることになった。
聞けば聞くほど、王子が阿保だなという話だが、そんな話を爺と楽しくお茶をしながら話す。
実のところいうと、私は爺のことが好きだ。
いつも私の話を真剣に聞いてくれてたり、適格なサポートをしてくれたり、何かあった時は物凄い強さで敵を倒してくれる格好良くて男らしい爺。
───あの王子との婚約も無くなったことだし、もしかしたら爺と………
私は、そんな下心を持ちながらも爺と楽しく話す。
「爺と飲むお茶は美味しいね」などと、さりげなく爺に気付いて貰えるように言葉を選びながら。
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