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ローズ
しおりを挟む「よし。これをこうして……それにあれを加えて……■■■を混ぜれば完成。後はアレンが帰ってくるタイミングでこの薬を飲んで私がマロンに会いに行けば………完璧ね。」
魔法鍋に入った青紫色をした液体を見て、私は満面の笑みを浮かべる。
私が作ったのは変身液と呼ばれる物で、自分が望んだ姿に一定時間なれるという液体だ。この液を作るのはかなりの技術が必要だったり、それを作る材料が貴重だったりで、百グラムで家が一つ建てられるほど高い物となっている。そんな高いお金私が持っている訳が無いので、何年も独学で勉強していく内に、最近はやっとこうして変身液を作ることが出来た。
鍋から用意しておいた魔法瓶に変身液を入れると、コルクでしっかりと蓋をする。これ一つで家が建てられる程の価値があると思うと何処に置こうか迷うが、いつも通り自分のベットの下に置いておくことにした。これで、後は買っておいた服を着て………
私には思い人が居る。
その人の名前はアレントレイルという名前で、私はアレンと呼んでいる。アレンは冒険者をやっていて、世に蔓延る魔物を駆っている。青く銀色に光る大剣が特徴で、魔物と戦っている姿はとても格好いい。いつもはふわふわとしてぱっとしない顔立ちだが、戦闘中だと王子様のような凛とした顔立ちに変わるのだ。私は、そんなアレンに魔物に襲われている時に助けられた。その時は、王子様が私の為に助けに来てくれたようで、今でも鮮明に記憶が残っている。
しかし、そんな思い人には妻が居る。
アレンは結婚をしていたのだ。グラッセマロンという美女と。
助けられた後、私は服が破れたりしていて、そのままアレンの家を借りることにしたのだが、家にマロンが居た時の絶望は凄かった。そのまま家に入れられた私は、冒険者は気性の激しい人が多いと言うし、もしかしたら襲われるかもと少し期待していたのだ。……多分、私は助けて貰った時からアレンに惚れていたのだと思う。
私は、アレンにマロンが居ることを知っても、アレンを諦めることは出来なかった。アレンと結びつきたい。アレンと共に生きていきたい。アレンの子供が産んでみたい。
そんな感情が、心の内から溢れてきたのだ。
叶わない恋だとしても、体は彼を求めてしまったのだ。
だから私は、ロマンに近付いて、アレンの話を聞くことにした。好きな食べ物や嫌いな食べ物。趣味や駆ってきた魔物の種類など様々なことを。アレンの好きな物や嫌いな物を知った私は、アレンにアタックをすることにした。アレンの冒険についていってご飯を作ってあげたり、大剣の手入れをしたり、駆ってきた魔物を拾うのを手伝ったり。幸い、私はアレン程では無いがアレンに何とか付いていく程の実力はあった。魔物に襲われたあの日から訓練をやり始めたからだと思うが、間近で格好いいアレンの姿が見られるのは私にとって幸福の時間だった。
そんな私は、アレンに告白をした。
満月が宇宙から地上を照らしている夜の寝る直前と言ったところで、私はアレンにほんの少しの期待を持って告白をすることにした。
結果は……当然駄目だった。
マロンが居るからと……当たり前の理由だった。
分かっていたことだから悲しみも薄かったが、やはり私は諦めなかった。
だから私は……『マロンが浮気していたらどうだろう』と、この変身液を作ることを始めた。
この変身液の作り方は、誰も教えてくれない。
当たり前だろう、ブレイタの作り方を教えて誰でも作れるようになったら、価値が下がってしまう。もしかしたらと、本などを探し歩いても、ブレイタの作り方の載った本は何処にもなかった。……だから、私は噂を元にブレイタの調合を手探りで始めた。
ブレイタは、一生を懸けても作れるか怪しい液体である。
だから、私は一生を終えるまでに作れるか不安だったが、数年の内に何とか作ることが出来た。それはもう、神から与えられたチャンスのように。もうそろそろで寝ようと目を擦りながら作っていたら、ほんの少しだけだがブレイタが作られていたのだ。
ブレイタが作れたことを知った私は、メモに今回使った材料を全て書き写した。まさか作れると思っていなかった私は、ブレイタを見て夜だというのに叫んでしまった。私は、そのメモを元にもう少しブレイタが作れるように、実験を始めた。
そんな実験の元、私は今作ったようにブレイタを作れるようになっていった。最初は失敗することもあったが、今では絶対に失敗しないという程に。そんな私は、そろそろ作戦に出ることにした。
その作戦とは、
①アレンが冒険から帰ってくる日に、私は男性になる。
②男性となった私がマロンに無理矢理近付いて、マロンと私が恋人ではと疑うようなことをする。
③そこに来たアレンが、変身した私とマロンが浮気をしているのではと疑う。
④アレンが浮気されたことに傷付いて、マロンと離婚。
⑤マロンに裏切られて悲しいところに、私が慰めるように近付く。
⑥そのままフィニッシュ。
よしよし。
後は男性の服を買ってきて、マロンに近付くだけ。
私は、ブレイタの入った魔法瓶を抱えて寝た。
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