私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3

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誰ですか貴方?

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「今日は、久しぶりにアレンが帰ってくるのよね。昼頃に帰ってくるって言ってたし、そろそろ材料を買いに行かなくちゃ。えーっと、何を買えば良いんだっけ?」

 現在家にある材料と睨めっこしながら、小さく千切った紙に買う物をメモっていく。今日は冒険に出かけていたアレンが帰ってくる日。いつもなら、サンドイッチに牛乳でお昼は済ませるが、今日はもっとちゃんとした物を作るのだ。鳥を丸々一匹オーブンで焼いた物や、貝類や野菜、魚などを入れて牛乳と共に煮込むシチュー。今日作る物は、全てアレンの大好物。久しぶりに会えるアレンにワクワクするが、アレンは喜んでくれるだろうか。私の作る料理を、美味しいと言ってくれるだろうか?アレンが帰ってきたら、一緒に食べさせ合いっことかしたいな~

 うふふと、アレンが帰ってきた時を妄想して、私は戸締まりなどを確認して家を出る。洗濯物も昨日の内に全部片付けたし、後は買い物に行って料理を作るだけ。あぁ~アレンに抱き締められながら『ただいま』とか言われるのだろうか?早く帰ってこないかな~

 最高で幸せな一日になるだろう。
 そんなことを思いながら扉を開けると、そこには銀髪の真っ白な衣装を着た男性が立っていた。顔はこちらを向いていないので分からないが、かなり身長が高い。アレンと比べると流石に小さいが、それでも結構ある。180後半はあるだろうか?家の前で立っているけど、何か私に用でもあるのだろうか?

 開けた扉を閉めようと、懐から鍵を取り出すと、鍵を取り出す時になった金属と金属のぶつかり合う音が耳に入ったのか、目の前の男性は鍵を取り出した瞬間こちらにくるっと体の向きを変えてきた。見えなかった顔が明らかになるが、かなりの美貌だ。すべすべとした肌に凛とした顔立ちにぱっちりとした目。アレンとはまた違ったイケメンだが、こんなイケメンが私に何の用だろうか?イケメンなんて、夫であるアレンしか私は知らないのだけど?

 目の前の男性をじーっと見つめていると、その男性ははっきりとした真面目な顔で口を開いた。

「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」

 その男性はそう言うと、キュっと体を回転させて私に向かってぶらぶらとした手を後ろ姿から向けてくる。どうしてこの男性は私の名前を?それに婚約破棄って……私結婚してるし、夫も生きてるんですけど?名前を知ってる時点で人違いって訳じゃなさそうだけど………とりあえず、知らんということだけは伝えておこうか。一応。

「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」

 私がそう言った途端、私の名前を知っている男性はその場でピタリと動きが止まる。まるで氷漬けにされたようにピタッと止まったので、その姿に笑いそうになってしまったのは、悪く思わないで欲しい。笑いを溢さないように笑いを抑えながらその場で私もピタッと止まると、男性はくるっとまた回転して私の方を驚いたような顔で見てきた。

「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」

 は?
 だから知らんて。

 私の中で目の前の男性に対する警戒度が更に上がる。
 私の愛する人はアレン以外に存在しないし、これからもアレン以外の人を愛するつもりはない。大体私の愛する人って自分から言うとか……うん?いやもしかして。アレンの友達は冒険好きの悪ノリが好きな人が多いから、もしかして私はからかわれているのかな?

「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」

 気を遣って家を使わせてあげようと思ったのに、また意味不明な回答をされた。いつもの私ならこの人のノリについていくかもしれないが、今日はこの人についていく暇はない。むしろ、アレンが帰ってくる時に悪ノリをされるのはこちらとしても腹が立つ。ぷんすか。

「もういいですから……とりあえず、退いて下さい。急ぎの用があるので出掛けなくてはいけないので……」
「急ぎの用なんかよりも、夫の俺が全てにおいて大事だろ。そんなの後にしろ。」
「だから、貴方は私の夫じゃないですから。いい加減にしないと、怒りますよ?」

 もう半分怒っているけど。
 そもそも、この人は私の夫と言っているけど、夫だとしても婚約破棄を言ったんだから関係ないよね?それに、ってことはまだ結婚してないんだから、夫って呼び方も何か違和感が………
 
 喋りかけるのすら面倒臭くなってきたので、放っておいて早くこの場から逃げてしまおうと思ったら、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。あれ?昼頃に来るって言ってなかったっけ?

 後ろを振り向いてみると、そこには大剣を担いだアレンが近付いて来ていた。

「おおっ?外に出ての出迎えか~?マロンに……隣の男は誰だと思ったら、ローズじゃねぇか。男の振りなんかして、何してんだよ。」
「えっ!?ローズだったの?ていうか、お昼頃に帰って来るって言ってたけど、少し早くない?」
「マロンに早く会いたくなって。昼頃よりも早く帰って来たんだよ。」
「ちょっ!?私はローズじゃないわよ。」

 アレンの言葉に頬が熱くなってくるのを感じながら、カーナトリエと名乗る男性をじっくりと観察する。じっくりと髪から足の下まで見るが、やはりローズにはどうも見えない。髪も赤いバラのような好き通った赤色じゃなくて真っ黒だし、体型もスラッとした物じゃなくて肩幅が広くて、少しゴツイ。どこがローズ何だと思ったら、アレンがその男性に近付いていった。

「嘘言ってもバレてるぞ?お前はローズだろ。そんなに言うんだったら解除レリースの魔法唱えていいか?」
「レ、レリース?そ、それはいけないんじゃないの?」

 目の前で慌てる男性。
 その姿だけ見れば、お茶目なローズによく似ている。
 だけど、どうしてもローズには見えない。

「もう唱えちゃうけどいいよな?『解除』」
「や、やめなさいよ。そんな魔法唱えちゃ……」

 アレンが解除レリースと唱えたかと思うと、眩い光を辺りに撒き散らす男性。
 その光はそろそろ昼になるというのに、その男性を見つめることが出来ないくらい強く激しい。まるで太陽を見ているかと思うほど光が濃く、少し暖かさも感じる。光が強過ぎて光を見ないように下を向いていると、アレンが近付いて来て、そっと抱き締めながら目元を隠すように服で顔を包んでくれた。 

 アレンに抱き締められること数十秒。
 アレンに抱き締められていることに幸せを感じていると、アレンは優しく私の肩を叩いて、クルっと男性が居た場所に私の体を向けた。本当はもう少しアレンに抱き締められていたいなと思ったが、アレンの服から少しずつ男性が居た場所に目を向けると、そこには私の知っているローズが居た。

「もうぅ……何でバレちゃうのよ……せっかく、上手くいくと思っていたのに…」

 泣いているというオプション付きで。
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